子宮内の液体を用いて着床の窓の検査が可能!? | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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本論文は、子宮内の液体を用いて子宮内膜の着床の窓の検査が可能であることを示しています。

 

Hum Reprod 2021; 36: 2249(イタリア)doi: 10.1093/humrep/deab123

要約:87名の方から得られた子宮内の液体を用いて、RNAプロファイルを検討しました。まず、10名(卵胞期5名、黄体期5名)の方の子宮内膜サンプルと子宮内の液体から得られたRNAプロファイルの一致率を検討したところ、相関係数はPearsonが0.70(P<0.0001)、Spearmanが0.65(P<0.0001)と一致しました。次に、妊娠歴のある14名と正常胚移植で妊娠しなかった49名の子宮内の液体から得られたRNAプロファイルをLH+2とLH+7で比較したところ、どちらも周期に基づくRNA発現に変化を認めましたが、妊娠歴のある方と正常胚移植で妊娠しなかった方ではLH+7でのRNA発現に有意な違いが認められました(前者ではERA検査で用いられている遺伝子発現通りであり、後者では異なる発現パターンを示しました)。

 

解説:本論文そのものは極めて難解ですが、結論は単純明快で、子宮内膜を採取せずに、子宮内の液体で着床の窓の検査が可能であることを示しています。非侵襲性の検査になれば、患者さんの負担も減るというのが狙いです。実用化にはもう少し時間がかかるかもしれませんが、この先が楽しみな研究です。

 

下記の記事を参照してください。

2020.8.19「ホルモン補充周期のE2値は着床の窓に影響しない

2012.12.28「採卵前の黄体ホルモン(P)上昇

2019.9.9「☆着床期に内膜は薄くなる方が良い!?

2019.6.29「告知:ERPeak検査導入のお知らせ

2019.4.12「子宮内膜受容能 その1:子宮内膜受容能とは?

2018.4.28「着床障害には、着床の窓のズレと壊れがある!?

2018.3.26「ERAテスト:カナダからの報告

2018.3.14「ER Map®/ER Grade®とは?

2018.1.31「非侵襲的NCS検出法

2017.10.19「☆着床の窓:スペインから続報

2015.9.4「☆黄体ホルモン濃度はいくつあれば良い?

2014.12.21「☆ERAテストについて

2014.12.19「子宮内膜の着床能の研究 続報

2014.11.25「子宮内膜の着床能の研究」
2014.10.6「☆着床の窓がズレている場合」
2014.8.10「「着床の窓」について」

2014.8.7「☆☆着床の窓はいつ開く?」