Q&A3026PGT-A正常胚で枯死卵でした | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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Q40歳、男性不妊で顕微受精


10年前に二段階胚移植で双子の女児出産(帝王切開)、5年前に男児(帝王切開)を出産しており、第4子の希望です。7週での流産が1回ありますが、その時は胎嚢も小さく心拍も最初からゆっくりで自然排出されました。染色体の検査は行っていません。妊娠できたら3回目の帝王切開となるため、中期流産を避けたくPGT-Aを行いました。正常胚が1つでき(6日目胚盤胞5BA)、ホルモン補充周期で先月移植し陽性判定でしたが、6週6日で胎芽も心拍もなく、2箇所のクリニックで枯死卵と言われてしまいました。染色体正常胚が枯死卵となる理由はなんでしょうか。アスピリン、ヘパリンも併用していました。不育症検査では抗カルジオリピン抗体IgMが正常上限値だったくらいです。ERAで半日ズレがあり6日目に移植、ラクトフローラ補充済み、慢性子宮内膜炎陰性でした。胚生検によるダメージの場合着床しないものだと思っていましたが枯死卵となることもありますか。次はどうしたらよいでしょうか。

 

APGT-A正常胚の妊娠率は50〜65%、流産率は5〜10%というのが一般的です。したがって、正常胚でも流産します。流産の時期は5〜6wのように早期の場合も、8〜9wのようにある程度育ってからの場合もあります。前者は枯死卵(empty GS)となり、後者は心拍確認後の心拍停止となります。

 

理由は明らかではありませんが、細胞採取(胚生検)によるダメージであると考えられます。PGT-Aで採取しているのは胎盤になる細胞(TE細胞)です。TE細胞は着床する細胞ですので、減少すると着床率(妊娠率)が低下します。同様に、TE細胞は胎盤になる細胞ですので、減少すると胎盤が上手く作れなくなり、流産に至るものと考えます。

 

PGT-Aを実施すると、正常胚2個で1人の赤ちゃんが誕生する計算になりますので、もう一度PGT-A正常胚移植を行なってみるのもありです。一方で、今回正常胚1つを得るために何個の胚盤胞を必要としたかがわかっていると思いますので、例えば2個PGT-Aを実施して1個正常なのでしたら、PGT-Aせずに2個移植するという方法もありです。

 

なお、このQ&Aは、約2ヶ月前の質問にお答えしております。