今月のFertil Steril誌の特集は「子宮内膜受容能」についてですので、3回に分けてご紹介いたします。
Fertil Steril 2019; 111: 611(米国)doi: 10.1016/j.fertnstert.2019.02.009
Fertil Steril 2019; 111: 618(米国)doi: 10.1016/j.fertnstert.2019.02.011
要約:通常着床の窓は3〜6日開いているとされていますが、ある種の炎症や基質疾患が存在すると短くなったり変化したりするのではないかと考えられています。もちろん着床が成立するためには、受精卵と子宮内膜の双方の条件が満たされることが必要ですので、子宮内膜のみを見ていては片手落ちです。着床の窓を調べる検査として最初に登場したERAテストの有用性を証明するためには、国際的な規模でのランダム化試験が必要であり、ERAテストの有用性が証明されるためにクリアしなければならない項目は下記です。
1 ERAテストの異常率は、着床障害のある方とない方で違うこと
2 ERAテスト異常の方では、着床率低下となること
3 ERAテストの再現性があること(移植周期には検査できないため)
4 ERAテストに基づく移植により着床率が改善されること
5 ERAテストでは病理組織学的検索をしていないため、異常な子宮内膜の検出ができないこと
また、最近Endometria Function TestやReceptivaDxテストなどの新しい検査が登場しています。前者は病理組織学的検査と内膜発生の双方をみる検査であり、後者は子宮内膜症に特徴的なBCL6を調べる検査です。
解説:「子宮内膜受容能」は極めて難解な分野であり、研究段階あるいは発展途上の分野です。2011年のERAテストの登場からまだ8年、これからも新たな検査が登場し、新しい発見が生まれることでしょう。まだまだクリアしなければならない課題が山積みです。
着床の窓については下記の記事を参照してください。
2018.3.26「ERAテスト:カナダからの報告」
2018.3.14「ER Map®/ER Grade®とは?」
2018.1.31「非侵襲的NCS検出法」
2017.10.19「☆着床の窓:スペインから続報」
2015.9.4「☆黄体ホルモン濃度はいくつあれば良い?」
2014.12.21「☆ERAテストについて」
2014.12.19「子宮内膜の着床能の研究 続報」
2014.11.25「子宮内膜の着床能の研究」
2014.10.6「☆着床の窓がズレている場合」
2014.8.10「「着床の窓」について」