☆ERA検査の有用性は否定的!? メタアナリシス | 松林 秀彦 (生殖医療専門医)のブログ

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本論文は、ERA検査の有用性に関するメタアナリシスを行ったところ有用性が乏しいことを示しています。

 

F&S Rev 2022; 3: 157(ベトナム)DOI:https://doi.org/10.1016/j.xfnr.2022.06.002

要約:これまでに報告されたERA検査の有用性に関する17論文(ランダム化試験4論文、コホート研究13論文)のメタアナリシスを実施しました。評価項目は、着床率、臨床妊娠率、妊娠継続率、出産率、流産率です。結果は下記の通り(有意差ありを赤字表示)。

 

着床率         オッズ比(信頼区間)

コホート研究9論文    0.88(0.73〜1.05)

ランダム化試験3論文   1.37(1.00〜1.88)

全体           1.00(0.83〜1.20)

 

臨床妊娠率       オッズ比(信頼区間)

コホート研究10論文    0.91(0.79〜1.06)

ランダム化試験2論文   1.30(1.09〜1.54)

全体           0.99(0.85〜1.15)

 

妊娠継続率       オッズ比(信頼区間)

コホート研究7論文    0.97(0.87〜1.09)

ランダム化試験1論文   1.24(0.86〜1.77)

全体           0.99(0.89〜1.11)

 

出産率         オッズ比(信頼区間)

コホート研究7論文    1.04(0.79〜1.38)

ランダム化試験2論文   1.25(1.01〜1.54)

全体           1.17(1.00〜1.37)

 

流産率         オッズ比(信頼区間)

コホート研究5論文    1.02(0.69〜1.52)

ランダム化試験2論文   1.32(0.76〜2.28)

全体           1.12(0.81〜1.54)

 

なお、ランダム化試験の4論文はいずれも研究のバイアスが高いため信頼性が低い研究でした。出産率に関するサブグループ解析では、反復胚移植不成功患者では有意差はみられず、初回胚移植のみで有意差が認められました。臨床妊娠率に関するサブグループ解析では、特徴は見出されませんでした。

 

解説:子宮内膜受容能検査(いわゆる着床の窓を調べる検査)には、現在ERA検査ERPeak検査などがあります。ERA検査については多数の論文がありますが、最近はその有用性を否定するものが少なくありません。本論文は、ERA検査の有用性に関するメタアナリシスを行ったところ、その有用性が乏しいことを示しています。本論文の著者は、現在の証拠からはERA検査を日々の臨床に用いるのは控えるべきだとし、大規模なランダム化試験の必要性を唱えています。

 

一方、ERPeakは新しい検査であり、これから論文が増えることで正しい評価が下せるようになります。

 

下記の記事を参照してください。

2021.11.9「黄体ホルモン濃度と着床の窓

2021.8.19「子宮内の液体を用いて着床の窓の検査が可能!?

2020.8.19「ホルモン補充周期のE2値は着床の窓に影響しない

2012.12.28「採卵前の黄体ホルモン(P)上昇

2019.9.9「☆着床期に内膜は薄くなる方が良い!?

2019.6.29「告知:ERPeak検査導入のお知らせ

2019.4.12「子宮内膜受容能 その1:子宮内膜受容能とは?

2018.4.28「着床障害には、着床の窓のズレと壊れがある!?

2018.3.26「ERAテスト:カナダからの報告

2018.3.14「ER Map®/ER Grade®とは?

2018.1.31「非侵襲的NCS検出法

2017.10.19「☆着床の窓:スペインから続報

2015.9.4「☆黄体ホルモン濃度はいくつあれば良い?

2014.12.21「☆ERAテストについて

2014.12.19「子宮内膜の着床能の研究 続報

2014.11.25「子宮内膜の着床能の研究」
2014.10.6「☆着床の窓がズレている場合」
2014.8.10「「着床の窓」について」

2014.8.7「☆☆着床の窓はいつ開く?」