本論文は、ERA検査はメリットがないどころか有害である可能性を示しています。しかも、本論文の著者にはERA検査の開発に携わった方が2名含まれており、今後物議を醸し出しそうです。
Fertil Steril 2021; 118, 724(イタリア) DOI:https://doi.org/10.1016/j.fertnstert.2022.07.007
Fertil Steril 2021; 118, 737(米国)コメントDOI:https://doi.org/10.1016/j.fertnstert.2022.07.031
要約:スペインの複数のIVIRMAクリニックにおいて、初回胚移植で陰性だった方を対象に、2回目胚移植に際してERA検査を実施して移植日を決定した群(ERA群)とERA検査を実施しなかった群の妊娠成績を後方視的に検討しました。自己卵3,239周期の2回目胚移植の結果は下記の通り(有意差の見られた項目を赤字表示)。なお、初回の胚移植が新鮮胚移植だった場合には2回目も新鮮胚移植、初回の胚移植が凍結胚移植だった場合には2回目も凍結胚移植を対象としました。
PGTなし 新鮮胚移植 凍結胚移植 ERA群 P値
臨床妊娠率 43.0% = 46.6% > 31.8% 0.014
流産率 16.4% 19.6% 30.6% NS*
出産率 34.4% = 35.2% > 18.2% 0.005
*NS=有意差なし
PGT正常胚 新鮮胚移植 凍結胚移植 ERA群 P値
臨床妊娠率 49.4% 49.1% 40.7% NS
流産率 9.8% 14.5% 22.5% NS
出産率 43.5% = 40.3% > 29.9% 0.029
なお、ドナー卵子2,133周期の2回目胚移植も同様の結果でした。
解説:最近、ERA検査に否定的な報告が増えています。本論文は、ERA検査はメリットがないどころか有害である可能性を示しています。本論文の著者にはERA検査の開発に携わった方が2名含まれており、開発者が自らの検査を否定するという珍事に驚きを隠せません。
コメントでは、2021年に発表された大規模なランダム化試験でERA検査の有用性が否定されたこと、ERA検査は米国保健社(center for medicare and medicaid service)が認可していますが、FDA(米国食品医薬品局)の認可が取れていないことを指摘しています。
なお、ERPeak検査を否定する論文は、現在のところありません。ERA検査とERPeak検査では、検査に使用している着床関連遺伝子の内容が大きく異なっています。リプロダクションクリニックでは、ERPeak検査をもとに、これまで1200名を超える方が妊娠に至っています。
下記の記事を参照してください。
2022.8.28「☆ERA検査の有用性は否定的!? メタアナリシス」
2021.11.9「黄体ホルモン濃度と着床の窓」
2021.8.19「子宮内の液体を用いて着床の窓の検査が可能!?」
2020.8.19「ホルモン補充周期のE2値は着床の窓に影響しない」
2012.12.28「採卵前の黄体ホルモン(P)上昇」
2019.9.9「☆着床期に内膜は薄くなる方が良い!?」
2019.6.29「告知:ERPeak検査導入のお知らせ」
2019.4.12「子宮内膜受容能 その1:子宮内膜受容能とは?」
2018.4.28「着床障害には、着床の窓のズレと壊れがある!?」
2018.3.26「ERAテスト:カナダからの報告」
2018.3.14「ER Map®/ER Grade®とは?」
2018.1.31「非侵襲的NCS検出法」
2017.10.19「☆着床の窓:スペインから続報」
2015.9.4「☆黄体ホルモン濃度はいくつあれば良い?」
2014.12.21「☆ERAテストについて」
2014.12.19「子宮内膜の着床能の研究 続報」
2014.11.25「子宮内膜の着床能の研究」
2014.10.6「☆着床の窓がズレている場合」
2014.8.10「「着床の窓」について」
2014.8.7「☆☆着床の窓はいつ開く?」