「この小説のテーマは、人類と異星文明とのコンタクトです。本書を通じて、それがたんなる絵空事ではなく、非常に現実的な問題だということを描こうとしたつもりです。なぜならそれは、いつ起きてもおかしくないからです。」
この小説とは、壮大なSF小説「三体」のこと。
もちろんこれをスピーチしたのは、三体の著者である劉慈欣(りゅう じきん、1963年6月23日 - )。
昨年の8月のことです。
彼いわく、人類と異星文明とのコンタクトはいつ起きてもおかしくないのです。
そして「それは、全人類がともに直面しなければならない問題」であり、「人類がどのような未来にたどり着くかは、いまのわたしたち全員に共通する選択と努力に大きく左右されます」と。
今回の感染症の世界規模の大騒ぎは、このコンタクトの前哨戦なのでしょうか?
全人類がともに直面しなければならない問題に出会ったのは、有史以来初でしょう。
そして、どのような危機にせよ、人類がどのような未来にたどり着くか不安にならざるを得ません。
余談ながら、劉慈欣(りゅう じきん)は新海誠さんのアニメが好きだそうで、特に「秒速5センチメートル」が好きだそうです。
また翻訳者に言わせると、第三巻の完結編がシン・エヴァンゲリオンのクライマックスが重なるそうです(僕はあまりそうは思わなかったのですが、ある意味で近いものもあるとも思いますが)。
Netflixでも映像化されるそうですが、何よりもまず邦訳を読破したいですね!
本当に素晴らしいSF大作です。
1巻が素晴らしかったのですが、2巻はもっと素晴らしく、完結編はどうなるんだろう、、、と心配しました。
著者もそれは同じだったようで(いや、スケールが全然違いますが)、著者いわく「最初の二巻はSFファン以外の一般読者に広く受け入れてもらうべく、現代もしくはそれに近い時代を背景にすることで物語の現実感を高め、SF的要素を現代的なリアリティに立脚させようとした」そうです。
しかし、完結編は遥か彼方まで話が広がるために、一般受けが不可能となる。
これだけ話題になった作品ながら、完結編を前に著者は成功を諦めます。
(引用開始)
「出版社とわたしの到達した結論は、第三巻が市場で成功することはありないので、既存のSFファン以外の読者を取り込もうとするのは諦めるのが最善というものだった。かわりにわたしは、ハードコアのSFファンと自任する自分自身にとって心地よい”純粋な”SF小説を書くことにした。そうして自分自身に向けて書いた第三巻には、〇〇と〇〇、〇〇と〇〇が詰め込まれ、〇〇は〇〇まで伸びていた。
(引用中断)
最後は引用者によって伏せ字としました。
なぜなら、読書の楽しみを奪いかねない行為だからです。
三体を読んだ人ならば、この伏せ字に何が入るか分かります。
すごいです。
で、ハードコアなSFファンである自分自身にとって心地よい”純粋な”SF小説を書いたら、、、、それがシリーズ全体の人気に繋がったのは、このハードコアな最終巻だった、、、と。
まさに、「わからないものだね(What do you know?)」(ルー・タイス)ですね。
(引用再開)
ところが、心底驚いたことに、シリーズ全体の人気につながったのは、このSFファンにだけ向けて書かれた第三巻だったのである」(引用終了)
何を書いてもネタバレになるので、書けませんが、本当に素晴らしい作品。
数日徹夜をしても読み通したい作品です。いや、何年かかっても(^o^)!
(上記の引用は、この下巻のあとがきより)
僕らも劉慈欣(りゅう じきん、1963年6月23日 - )に見習って、市場での成功はもとより諦めて、自分自身たちにとって、心地よい純粋な気功をひたすらに追い求めましょう。
それはとてもニッチですし(それで結果的に成功することなどを求めるべくもなく)、ただ成功しようが失敗しようが自分自身にとって、心地よいものなのでそれは十分に幸福であり、十分に成功なのです。
上に移動すれば、するほどに、シンプルな世界が広がっていきます。
そしてまさに死神永生(『三体』三巻のサブタイトル)ということも見えてきます。
(引用開始)
「おまえたちがここに来たのは、きっと重要な任務のために違いない。だが、焦るな。どのみち終末は避けられない。だから、今を楽しめ」
「もし上空にヘリがいなくても、そんなに落ち着いていられる?」AAが言った。
「いられるさ。子どもよ、教えてやろう。西暦時代に死の病に罹ったとき、おれはまだ四十歳だったが、それでも落ち着いていた。死ぬことは怖くなかったし、冬眠するつもりなんてさらさらなかった。ところがショック状態に陥って、知らないうちに医者の判断で冬眠させられた。目が覚めてみたら、そこはもう抑止紀元だったというわけさ。新しい命を与えられたんだと思ったが、それはただの幻想だった。死は少し遠のいただけで、いまもまだ先のほうでおれを待っている・・・。
灯台が完成した夜、ボートで海に出て、灯台の光を離れたところから眺めていて、そのときだしぬけに悟った。死とは、永遠に点灯している唯一の灯台なんだと。つまり、人間、どこへ航海しようと、結局いつかは、この灯台が示す方角に向かうことになる。すべてが移ろいゆくこの世の中で、死だけが永遠だ」(引用終了)
つまらないまとめ方をすれば、「Memento mori(死を忘れるな)」であり、ソクラテス風に言えば「哲学は死の練習」と、、、、、、いや、本当につまらないですね。
つまらなすぎるので、引用に語らせて終わります。
「死とは、永遠に点灯している唯一の灯台なんだと。つまり、人間、どこへ航海しようと、結局いつかは、この灯台が示す方角に向かうことになる。すべてが移ろいゆくこの世の中で、死だけが永遠だ。」
「どのみち終末は避けられない。だから、今を楽しめ」
p.s.ちなみに、このブログのタイトルは僕の大好きなキャラクターの深すぎる言葉より!
「人間性をなくしたら、われわれは多くのものを失う。しかし、獣性をなくしたら、われわれは全てを失う」(三体Ⅲ『死神永世』)
他にもいろいろと名言のオンパレード。ゾクゾクするような物語と共に、心に響きます!!
「生存の障害となるのは弱さや無知ではない。傲慢こそが生存の障害となる。」(三体Ⅲ『死神永世』)
というわけで、「三体」、まだ読んでいない方は、楽しんでください!!
読んだ方も再読しましょう!!