ビジョンとともに働くということ/山口周 中川淳 24149 | 年間365冊×今年20年目 合氣道場主 兼 投資会社・コンサル会社 オーナー社長 兼 グロービス経営大学院准教授による読書日記

ビジョンとともに働くということ/山口周 中川淳 24149

 

★★★★★

ああ、この様に言語化すれば良かったんだ、

と山口周さんに教えて頂くことができた本。

 

 はじめに 問題が希少化している時代に求められること
 長く評価されてきた「正解を出せる人」


 これまで長いこと、私たちの社会では「正解を出せる人」が

 高く評価されていました。

 原始時代以来、私たちの社会は

 常に多くの「不安」「不便」「不満」という

 問題に苛まれており、この問題に対して正解を出せる人に

 大きな富が集まりました。

 寒い冬に外で洗濯するのはとても辛い? 洗濯機をどうぞ!
 家の中で食べ物を保存できない? 冷蔵庫をどうぞ!
 毎日お風呂に入れたらなあ? 湯沸かし器をどうぞ!

 そして、このような時代があまりにも長く続いたために、

 多くの人は未だに「正解を出せる人」に

 大きな価値があると思い込んでいます。

 だからこそ、依然として学校教育では

 「正解を早く正確に出せる人」が

 高い評価を得て高偏差値の学校へと進学し、

 社会的に高い評価を得ます。

 しかし現在、これまでに高く評価されてきた

 「与えられた問題に対して、

 早く正確な答えを出せる」だけの人材は

 急速にその価値を失いつつあります。

 

 なぜか? もはや誰も問題を与えてくれないからです。

 私たちの社会は「物質的な生存条件の確保」という、

 古代以来私たちを悩ませ続けてきた問題をすでに解決しています。

 昭和30年代の日本において、豊かな生活の象徴とされた

 いわゆる「三種の神器」とはすなわち、

 冷蔵庫、洗濯機、テレビという家電製品でしたが、

 今日ではこれらの家電は路上に捨てられていても

 拾ってい く人がいない・・・・・

 つまり「無料でも要らない」と言われるまでになってしまいました。

 ビジネスというのは基本的に「問題の発見」と「問題の解消」を

 組み合わせることによって富を生み出す営みです。

 過去の社会において「問題」がたくさんあったということは、

 ビジネスの規模を規定するボトルネックは

 「問題の解消」にあったということです。

 だからこそ20世紀後半の数十年間という長いあいだ

 「問題を解ける人」「正解を出せる人」は労働市場で高く評価され、
 高水準の報酬を得ることが可能でした。

 このボトルネックの関係は、今日では逆転しつつあります。

 つまり現在の社会では、かつて過剰だった問題が希少になる一方で、

 かつて希少だった正解が過剰になっているということです。

 

グロービスの予習や講義で

「正解ばかりを探してしまう人」

が後を絶たない。

その皆様にはここを読ませてあげたいな。

 

 「問題の希少化」を招いたのは構想力の衰え

 では、どのようにして「問題」を発見し、提起するのでしょうか?

  この論点を考察するにあたって、

 そもそも「問題とは何か」という点について考えてみましょう。

 問題解決を専門とする 職業=コンサルティングの世界では、

 「問題」を「望ましい状態と現在の状態が一致していない状況」と

 定義します。

 「望ましい状態」と「現在の状態」に「差分」があること、

 これを「問題」として確定するということです。

 したがって「望ましい状態」が定義できない場合、

 そもそも問題を明確に定義することもできないということになります。

 つまり「ありたい姿」を確定的に描くことができない主体には、

 問題を定義することもできない、ということです。

 「問題の希少化」という「問題」の本質はここにあります。

 つまり「問題の不足」という問題は、

 そもそも、私たち自身が「世界はこうあるべきではないか」

 あるいは「人間の暮らしはこうあるべきではないか」ということを

 イメージする構想力の衰えが招いている、ということなのです。

 

 ここで、本書のテーマである「ビジョン」の

 重要性が浮かび上がってきます。

 私たちは「ありたい姿」のことをビジョンと表現しますが、

 つまり「問題が足りない」というのは

 「ビジョンが不足している」ということなのです。
 これは企業にしても産業にしても社会にしても

 地域にしても個人にしても同様です。

 取り組むべき問題=アジェンダを明確にすることには企業の、

 あるいは産業の、あるいは社会の、あるいは地域の、

 あるいは個人の「ありたい姿=ビジョン」が

 明確になって初めて可能になります。

 問題を生み出すことができないというのは、

 要するに「あるべき姿=ビジョン」が不足している、

 ということなのです。

不足、で済めばよいが、そんなこと考えたことも無いし

氣付いてもいない、という企業、個人が大半だよね。

ここまでは山口周さんのプロローグだが、

中川淳さんとの対談で面白いと思ったのがここ。

中川さん、グッドクエスチョン!

 

 中川 周さんの個人としてのビジョンはなんですか。

 

 <中略>

 

 山口 「たぶん、その悩ましさは年代によっても違うのだろうと思います。

 以前、リクルートワークス研究所の犬久保幸夫さんが

 「キャリアは前半と後半でまったく種目が変わる。

 前半は激流下り、後半は山登り」とおっしゃっていて、

 とても良い表現だと思ったんですよ。

 前半は自分でコントロールできない激流下りみたいな日々だから、

 岩にぶつかったり転覆したりしないようにしながら、

 とにかく生き残らなくちゃいけない。

 それをやっているうちに、いろんなスキルが身についたり、

 仲間ができたり、信用ができたりしていくわけです。

 その激流を下っていくと、いずれはなだらかな流れになる。

 そのまま海に出ちゃう人も多いんですが、

 なだらかな川面から周囲を見渡すと、

 いろんな山があることがわかるんですよ。

 だらだらとそのまま海に出ていかない人は、

 そこで「俺はあの山に登ろう」と自分で決める。

 たとえばファイナンスの専門家になって

 経営をサポートする立場になろうとか、

 もちろんなかには経営者になろうとする人もいるでしょう。

 何であれ、登る山を決めればそのためには

 何をすべきかがわかりますよね。

 

実に上手いメタファーだ。

「前半は激流下り、後半は山登り」

確かに自分もそうだ。

状況に応じて自分が採るべき戦略が変わる、ということだね。

余り若い方に「自分のToBeを持て!!」と叫ぶのも

あまりよくないかな、とちょっと反省。

確かに自分も20代はサバイバルで必死だった。

 

 

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