ゴルフ直線打法 -25ページ目

円周イメージを打ち破る

ハーディーの言う「二平面型」のスイングは、肩のスイング面と腕のスイング面の合成で出来上がっています。これらのスイング面は、クラブ・ヘッド円周状の動きが生み出すものと捉えられています。このことは、スイング面のイメージが、クラブ・ヘッドを円周状に振る意識と密接に繋がっていることを示します。

そこで今回は、この円周イメージを一気に打ち破ることを試みます。これは簡単です。「核心打法」では、右腕の動きがボールを肩の上を通して投げるオーバ-・ハンド型の動きと同じになります。この動きを試してみればよいのです。

右手を固く握りしめ、右脇前を通して肩の右後ろに引き上げ、そこから一気に右脇前に振り下ろします。この振り下ろしの動作を強力に実行します。思い切り叩きつけるように振るのです。すると、振り下ろされた右拳が一気に左へ振り切られます。注意して見ると、この瞬間両脚に緊張が走り、右拳の内側が左方向を向いて走ります。

これに対して、右拳を円周状に振って右肩後ろまで上げ、そこからまた円周状に振り下ろして左に振り抜くと、これにつれて膝が右に左にと動きます。この振り方では、腕が体の前を振り抜かれるスピードが、前の縦に振り下ろす動きに比べ遙かに劣ります。

左腕でも同じような実験ができます。左手の拳の背中を、右脇前に向けて投げつけるように振り下ろすと、次の瞬間脚腰が緊張し、左拳の背中が左を向いたまま一気に左へ振り抜かれます。円周状に振る動きでは、右腕の場合と同様に、縦に振り下ろす動きの場合に比べ、振り抜きが遅くなります。その上腕の動きが複雑になります。

飛ばしの世界記録を作ったケリー・マレーが薪割りの斧を振る写真があります(「世界一の飛ばしの記録」(07-12-05))。この縦振りの動きがボールを打つ動作に繋がる仕組みは、普通の人には疑問として残ります。拳を握って思い切り振り下ろすという簡単な動作の実験が、この疑問を解く鍵が膝を含む脚腰の動きにあることを体感的に理解させてくれるのです。

一旦この実験で円周イメージの呪縛から解放されれば、「核心打法」の動きの自然さが理解できます。これで、円周イメージに結びついた「スイング面」よさようなら、ということになります。

こう書いて来ると、何とも簡単な話のように見えますが、実はこれもスイングの動きと足の動きの繋がりに注目することを知っていたからできたことです。一時テレビ・コマーシャルに「違いの分かる男」という言葉が登場しましたが、われわれも「違いの分かるゴルファー」への一歩を踏み出したわけです。

これで話が終わりになると、このブログもお終いになります。ところが、まだまだ話は続きます。

足の「螺旋」の動きが直線的なインパクトを生む

スイング面の具体的なイメージとして捉えやすいのは、クラブのシャフトが描く面です。インパクト近辺のシャフトの動きを現すものが、いわゆるシャフト・プレーンです。インパクトでこの面にクラブを戻すというわけですが、これだけではシャフトの傾きやヘッドの軌道は捉えられません。

ホーガンのスイング面は目標線(ボールと目標地点を結ぶ直線)を含んで肩に掛かる平面ですが、ハーディーの肩のスイング面は肩関節(肩甲上腕関節)を固定して振る時にクラブ・ヘッドが動く面、腕のスイング面は肩を固定して肩関節の動きで腕を振る時のスイング面を意味しているようです。

ハーディーはこれらの二つのスイング面でヘッドが円周状に振られるものと考え、二つのスイング面が一致するものを「一平面型」、異なるののを「二平面型」として、それぞれの構造を議論しています。「二平面型」の場合、腕のスイング面は地面に対する傾斜が急で、より傾斜の少ない肩のスイング面の動きと合成されてインパクトでボールを打つと見ています。

二つのスイング面が一致する「一平面型」に比べ、「二平面型」はインパクトの一点で合わせるタイミングが難しいとしていますが、どちらの場合もインパクトでヘッドが直線的に動く話はありません。ホーガンはダウンのスイング面はバックの面に対してインサイド・アウト方向に傾くとしていますが、この場合もインパクトでヘッドを元の平面に戻す必要があります。

スイング面のイメージに依存するこれらの議論では、クラブを振る腕の動きの構造とスイング面との関係が明瞭でないために、インパクトの直線的なヘッドの動きを意識的に確保する必要があります。ところが、右手の平の内側を机の脚に当てて左に引いてみると、腕が机の脚を左へ押します。同様に、左手の背を机の脚に当てて左に引くと腕が机の脚を左に押します。

これらの右から左へ机の脚を押す腕の動きでインパクト時点のグリップを引けば、体の前でヘッドは直線的に左に押されます。これを支えるのが、両足の「螺旋」の動きです。実際にクラブを握り、ヘッドを机の脚に当て、両方の脛を左回りに回すように脚腰を踏ん張れば、グリップは机の脚を強く左に押します。

一旦この動きに慣れれば、グリップを強く左に引こうとするだけで自然にこの動きに入ります。これに対して「回転」の動きで両足を縦の軸回りに左に回すと、リストが左に回ってフェースは閉じ気味になり、グリップは手前に引き込まれます。「螺旋」の場合の強力な直線的な引きは現れません。これは広背筋が縮む動きになるからで、「螺旋」の場合は腕が伸びて広背筋も伸びます。

これまでスイング面を議論して来た人達は、腕とクラブの大きな動きに目を奪われ、足もとの地球との結びつきを議論していないのです。これについての対策を次回に考えます。

スイング面という言葉の曖昧さ

レッドベターは、彼の経験では大部分のゴルファーは、スイング面をアドレス時のシャフトの線を延長したものと見る方が、肩に掛かるホーガンのスイング面より役に立つと考えるとして、インパクトではこの面に近く、あるいはこの面に合わせるようにシャフトを戻せと書いています(David Leadbetter THE FUNDAMENTALS OF HOGAN Doubleday 2000 p.58)。

アドレスでライ角に合わせクラブを構えれば、当然グリップをアドレスの構えの近辺に戻さなくてはボールを目的通りに打てません。その意味ではこの教えは当たり前のことです。問題は実際の打球時点でのヘッドの軌道の確保で、このためには、グリップを体に繋いで振る仕組みを教えないスイング面は、何の役にも立たないのです。

実際のスイングではクラブは曲面を描いて動き、右手と左手の握りの相対的な動きが問題になります。これを制御する方法を教えないスイング理論はボールを打つには役に立ちません。レッドベター自身、ゴルフのスイングの動きは、野球の動きとは違って複雑であり、” offers endless variations of the plane”(面の無限の差異を生む)と書いています。

更に彼は、多くの技術的には欠陥のあると見えるスイング面が、実際にはよい結果を生んでいることも指摘しています(p.60)。これから見れば、我々普通のゴルファーには、スイング面とは何かが分からなくても当然ということが分かります。

スイング面のイメージの不確からしさを証明する、より科学的な資料が手許にあります。これはGOLF DOGEST, JULY 1986に載ったRobert Carneyの記事で、SHATTERING THE SWING PLANE AND OTHER TEACHING MYTHS(スイング面その他の教育神話を粉砕する)というものです。

Ralph Mann博士がコンピュータ・グラフィックスを使い、ツアーの最良のスイングの真実を告げるという記事で、52人の優れたプロのスイングを観測し、ゴルファーのモデルを開発し計測した結果の話です。頭はスイング中静止しているとの指摘に続き、バックやダウンの「平面」は存在せず、手やヘッドは曲面上を動くと指摘しています。

更に、多くのゴルフ教師は、彼のダウンスイングがバックスイングより外側(outside)だと知ればびっくり仰天するだろう、これでも目標線よりは内側(inside)なのだ(マーク・オメーラが唯一の例外)、とも書かれています。

ダウンはバックの面の下を通るという「迷信」にとらわれていて、この話で混乱を感じるゴルファーは多い筈です。この記事と、レッドベターによるスイング面の無限の変動の可能性の指摘を見れば、スイング面のイメージの曖昧さが浮き彫りになります。これに対比すると、動きの形を与える「核心打法」の仕組みの優位性が明らかになります。

というわけで、もうしばらく「核心打法」の動きの細部を追うことにします。

思い込みの怖さ

19番ホールの筈が、次第に深刻な話になって来てしまいましたので、今回は息抜きとして思い込みが理解を妨げるという至極当たり前の話をすることにします。

第二次大戦が終わったある日、当時下宿していた旧制中学時代の恩師(英語の先生)の家に進駐軍の将校が何人かやって来ました。なかなか品のよい紳士達でしたが、近くの飛行場に輸送機で着陸したとのことで、これから町に買い物に行きたいというのです。

先生は都合が悪く、お前が通訳をしろということで、ショッピングに同行しました。あれこれ日本の反物などを買い込んで無事帰還ということで、のんびりと話をしていたのですが、突然話が通じなくなりました。

さかんにアプラという言葉が出ます。まるで「油」のような響きです。これがどうしても理解できないのです。

遂に手に持っていた小さな英和辞書でその単語を指さして貰いました。operaだったのです。確かに発音記号でみればアプラに近い発音であることが分かります。野球のアウトがoutであることを考えれば、このoの発音はは「自然」なものです。ところが、われわれ日本人にはオペラという言葉が定着していますから、アプラがoperaであるとは考えもつかなかったのです。

その後で飛行場に連れて行かれ、輸送機の室内に上がってみました。エンジンの試運転ということでしたが、突然乗降口のドアを閉めようとします。沖縄に連れて行かれるかと不安になり、下ろしてくれと叫んだのですが、試験的に飛ぶだけでまた戻ると言うのです。

やがて白波の打ち寄せる田子の浦の海岸線が眼下に広がり、駿河湾の青さが目にしみます。着陸に失敗して急上昇、体中のものが上がってくる感じで椅子にしがみつく中に、無事姿勢を立て直して着陸しました。

どうして今こんなことを思い出したのかと不思議な気がしますが、ゴルフの話に英語がしばしば登場するためだと思います。読み方を間違えるのは無害ですが、意味のはっきりしない言葉を使うのは危険です。各人の知識に依存して、勝手な解釈をする危険があるからです。スイング面はswing planeの訳ですがその解釈は大丈夫でしょうか。

しばしば使う肩と腕の「魔法の動き」は純国産ですが、言葉の解釈には同様な危険があります。これ一つを誤解するだけで「核心打法」の話は通じなくなります。

どうやら、アメリカのゴルフ指導者にとっても、スイング面の解釈は明確ではないようです。これを裏付ける資料が手許にあることに気がつきました。次回はその内容を紹介します。

足の「螺旋」と「回転」の動きの利用

スイングの中で脚腰の動きと地球との対応を決めるのが足の動きで、ここに登場したのが足の「螺旋」の動きと「回転」の動きがです。これらの動きの特徴は、それぞれの動きの作り方が分かり易く、ほぼ一通りに決まることで、その使い方が分かればバックのスタートの方法も決まります。

両手をグリップの形に握り合わせて腕を固め、両足先で地面を左に押す「回転」の動きを試すと、足が前後の軸回りに右回りに回り、腰が右に回りグリップは横に引かれます。これでレッドベターの重視したバックのスタートの右への引きの動きが体感できます。

これに対して踵を軸に両脛を左に回す「螺旋」の動きでは、グリップは急角度で引き上げられる動きに入ります。これが「核心打法」のスタートの動きです。これら二種類の「バランスを崩す」動きの作り方が分かれば、それに続くスイングの動きは、かなり意識的に追跡できるようになります。

この結果から、腰の回転の動きで振るスイングだけを取り上げ、これがただ一つの正しいものであるかのように説明する指導書には問題があることが分かります。スイング面に二種類あるというジム・ハーディーの指摘(2005年)は、この意味では正しいのです。彼の見方は、スイング面は肩のスイング面と腕のスイング面の合成で出来上がるというものです。

ところが、異なる構造のスイング面の存在は、既に1958年に公開された英国ゴルフ協会の研究成果に明瞭に示されています(参照:「機械的な見方と科学的な見方」(07-02-09))。肩のスイング面と腕のスイング面と言われてもその内容は明瞭ではありませんが、この研究では具体的に肩の回転とリストの回転が生むクラブの動きと捉えています。

何れの場合も、これらのスイング面を生み出す体の動きの構造は示されず、スイングの動きと地球との繋がりも指摘されていません。この場合、肩の動きすなわち体の動きと、腕の動きは別々のパワー源で駆動されることになり、これらの働きの合成法が問題になります。これで実際上は無限に多くの動きが可能になります。

これに対し、腕と肩の繋がりを固定して、足の「螺旋」や「回転」の動きを作ると、確かにそれぞれ一定のスイングの動きが現れます。固めた肩と腕とグリップの仕組みを、これらの足の動きが生む背骨の動きで振れば、明確な二つのバックスイングの動きが得られることが分かります。

足の「螺旋」の動きと「回転」の動きで、バックスイングの動きを作ってみて下さい。その安定感が感じられる筈です。これでスイングのスタートで悩むことはなくなります。ダウンも同様にして考えれば、これらの足の動きの組み合わせだけで、四種類のスイングが得られることになります。

ここで更に重要な問題は、従来のスイング面の議論では、インパクトの直線的なヘッドの動きは捉えられないということです。

動きを作るには地球との対話を考える

「核心打法」の話がひとまず纏まったところで、手許にあるゴルフの解説書を何冊か見直してみました。驚いたことに、バックのスタートの動きを作り出す「仕組み」の話は見られないのです。そこで、著名なゴルフ教師レッドベター氏の著書、David Leadbetter 100% Golf, Collins, 2002(塩谷紘訳 レッドベターの100パーセント・ゴルフ 新潮社2003年)を開いてみました。

そこでは、腕とクラブを一緒に引け(Start your arms and the club away ‘together’)と言うテーマで、その鍵はクラブを右に動かす時に、肩と腕の三角形保つことに意識を集中することだと書かれています。これは上達したゴルファーには有効な助言でしょうが、我々のような普通のゴルファーには難しい説明です。このような動きの作り方が分からないのです。

19番ホールの最初の話、「動きを作るにはバランスを崩す」(08-02-02)で見たように、体の動きを生み出すには、地球との対話が必要です。ところが、ゴルファーは自分が地球にぶら下がって(ぶら上がって?)クラブを振っていることを忘れがちです。「直線打法」のごく初期ブログ(06-03-26)では、図入りでこのことを注意しています。

不思議なことに、これまでゴルフの指導書で、この点の重要性を指摘した話を読んだ記憶がありません。実際は、地球と体の接点になる両足の動きを通じて地球に話しかける以外に、動きを作る方法はないのです。何故この話が出ないのかと言えば、日常生活では腕を使って仕事をしているからで、この場合足のことは意識に上りません。

レッドベターが腕とクラブを一緒に引くスタートと言う時には、アドレスの構えで肩と腕とクラブを一体化させ、この腕を引っ張る動きでバックに入るというイメージなのだと思われます。腕を動かすのに一々考える人はいませんから、これでは動きの作り方が分からないなどと言うと、逆に変人扱いされるかも知れません。

ところが、重い荷物を持ち上げてくれと言われると、誰でも足場を意識します。脚腰の踏ん張りがなくては、重い物は動かせないからです。そこで、重いクラブを振ることを考えれば、誰でも脚腰の動きが気になります。しかもこのクラブで正確にボールを打とうとすれば、脚腰の動きと腕の動きの繋がりが気になります。

手は器用に動きますが力はなく、動きの安定性確保は難しくなります。そこでグリップをしっかり握るわけですが、腕の動きも自由度が大きすぎるために、腕とクラブの一体化が重視されることになります。ところが、この腕とクラブのシステムを安定に動かすには脚腰の動きが必要になります。結局バックのスタートは脚腰の動きで実行しなければならないのです。

結論から言えば、足先で地球を左右に押す「回転」の動きでは腰の回転が生まれ、踵で地球を押しながら脛を左に回す「螺旋」の動きでは、脚腰が地球を押す力を利用する「核心打法」の動きが生まれるのです。

体重移動は迷信?

「体重移動」と言われると、多くの人はバックで体重をを右足に掛け、一気に体重を左足に移してダウン、というイメージを持つのではないでしょうか。実は、一流のプロはこんな動きをしていないのです。

手許にGOLF DIGESTの1989年4月号の記事の切り抜きがあります。これはLew FishmanによるWEIGHT SHIFT(体重移動)という題の話で、1988年の30人のトップ・プロの実測結果を1962年当時のプロの同様な実測結果と比較したものです。

1962年の結果では、当時のゴルフ界に衝撃波が走ったと言います。ドライバーで言えば、平均で右足にトップで71パーセント、インパクトで53パーセント(半分以上!)の重さが掛かっていたというのです。1988年になると、これが更に80パーセントと60パーセントと増加しています。アイアンについても同様です。計測上の問題はあるかも知れませんが驚くべき結果です。

その上、飛ばすゴルファーは飛ばないゴルファーより、トップで10パーセント、インパクトで5パーセント以上も余計に右足に体重が掛かっており、高いボールを打つゴルファーも右足の荷重が多いと言うのです。バックで右足に体重を移動し、ダウンで左脚に体重を移動してクラブを振るという、目からの情報で頭が勝手に作り上げるイメージでは、全く説明のできない事実です。

Fishmanの説明でも、体重移動の話は昔から一貫して謎であるとされています。ところが、「核心打法」では両腕を固めて「深いトップ」に入れます。当然右足に荷重が掛かります。そこから体の右側で振り切ってダウンからインパクトの実行です。全てが体と地球の間の力のやり取りの話で、右足に体重が残るインパクトも至極当たり前に見えます。

「体重移動」のイメージの混乱から「核心打法」で脱却するという体験を試みるのも悪くはないでしょう。

実は、今回に予定した話は、スイングの体の動きを生み出す、足の「螺旋」と「回転」の話でした。しかし、これらの動きの構造とその役割の話は極めて重要な問題に関係するものですから、これは次回に回すことにします。

動きを作るにはバランスを崩す

今回からは19番ホールということで、話が粗雑になってもお許しを願いたいと思います。まず、腰の回転です。優れたゴルファーのスイングを見ると、腰を回す動きが目に入ります。これを見る人は腰を回してクラブを振っていると考えます。こうして腰の回転がクラブを振る原動力だという迷信が生まれます。ところが、腰を回す動きは難しい問題を含んでいるのです。

じっと静かに立っているのは簡単です。ところがここから動きに入る仕組みは簡単ではありません。その証拠として、指導者の書くゴルフの本では、このために「体重移動」とか「重心移動」などという「専門用語」を使います。これらの言葉で話されると、何となく分かったような気がしますが、実は易しい話ではありません。その内容は明瞭ではないのです。

まず「重心移動」を考えてみましょう。重心とは、地球が物体を引っ張る力を一纏めにして考える時、これが作用する点を意味します。体の場合には、地球の引力が体重に比例する力でこの点を引っ張っている、と考えればよいでしょう。体の重心は腰椎の前の辺りあります。体を上下左右に移動させれば重心が動くわけで、この「重心移動」を実現するのは当然ながら体の動きです。

体重は体を引っ張る重力の大きさで、これを移動させるという「体重移動」は、地球を押して体を支える力(これまで荷重と表現したもの)の地球に対する作用の仕方の変化を意味します。重心を佐右に移動すれば、両足に掛かる力も変化します。「体重移動」が生まれるわけです。しかし、重心を安定に保っていても、肩を右に傾けたり左に傾けたりすれば、両足に掛かる力は変わります。

問題の、静かに立っている所から動きに入る動作は、体のバランスを崩す動きです。しかし崩れ過ぎたたバランスは、即座に恢復させなくてはなりません。立っていられなくなるからです。

瞬発的な力を発揮する「火事場の馬鹿力」と呼ばれる現象は、通常の動きでは考えられないバランスの崩れの中で現れるものと思われます。ここから、上手くバランスを崩すことで予期以上の力を出す可能性が見えて来ます。優れたゴルファーは、普通の人が想像しない体のバランスの崩しを利用し、大きな飛距離を確保している可能性があります。

こうなると、腰の回転の動きでクラブを振るという常識的な見方とは異なり、体のバランスを崩すことで腰の回転が生まれ、これで強力なスイングの動きが実現する、という見方が生まれます。尻を左に振って腕を左に振るのではなく、体の左への動きの限界で尻が逆に右に回り、これとバランスして腕とクラブが左に振られると見ることになります。

結局、「体重移動」や「重心移動」そのものではなく、これらを生み出す、体のバランスを崩す動きの作り方が問題なのだということになります。イメージのコペルニクス的転換です。

ゴルフの話は奥が深い、と詠嘆的になっても何の役にも立ちません。これらの問題の具体的な解決の手段は既に「核心打法」で示されているのです。足の「螺旋」と「回転」の動きがそれです。

実用版「核心打法」

「核心打法」の要点は、頭を安定に保つ背骨の動きを利用し、体の不要な動きを排除して両腕の協調した動きを引き出すことです。当然背骨の動きは脚腰の動きに繋がり、足の「螺旋」の動きを通じて地球に繋がります。これと膝の方向転換の働きを利用すれば、背骨の一方向の動きを継続するだけで、バックとダウンの動きが実現します。

背骨や脚腰の動きなどを支える体の仕組みに関わる筋群の数は極めて多く、それらが様々な形で協力して動きを作り出しています。これを構造的に追求すると無限に難しい話になります。結局、「パワー源の働きでスイング面を捉える」(08-01-30)で纏めた動きの内容を活用し、これを元に実際のスイングの動きを作り、その総合的な効果を実験的に確認することになります。

複雑な説明では実用になりませんから、主な動きを必要十分な形で簡明に記述するのがここでの最終の仕事になります。この考えに沿い「核心打法」実行上の要点を書き出してみると、以下のように簡単なものになります。

1. アドレスで「マジック・グリップ」を固め、肘を伸ばして脚腰の緊張を確立する。

2. 足の「螺旋」の動き(脛の左回り)を確認しながら、背骨の動きでバックとダウンを実行する。

3. 「深いトップ」への動きで、膝の方向転換の動きを確認する。

4. ダウンからインパクトの動きを、両脚の強力な踏ん張り(地面を押す動き)で実行する。

5. 一貫して肩と腕の「魔法の動き」が実現することを確認する。

これらを綜合してスイングの実行イメージに纏めれば、
  「マジック・グリップ」で両腕を固めて伸ばすアドレスの構えを作り、
   腕を固めたまま確実に「深いトップ」に入れ、
   脚腰の踏ん張り一気に体の右側で振り抜く」
となります。これで「核心打法」が実用的に固まります。極めて簡単です。

「パワー源の働きでスイング面を捉える」(08-01-30)で示した、肩と腕の動きを背骨の動きを通じて脚腰の動きに直結させることでスイングを実現する構造は、手許のゴルフの文献では見たことがありません。現在手に入る情報による限りでは、これは純国産の新理論(!)と言えるでしょう。

長期間に渡った「直線打法」の追求は、これでひとまず終わりです。不明な点は、以前のブログの中の、より詳しい説明を参照して下さい。話の内容が時間的に変化している場合は、最近の話を信用して下さい。これからは付録ということで、思い付くことを雑然と書き留めることにします。

「体の右側で振り切る」動き

最近のこのブログの主な話題は左腕の使い方でした。これは歴史的に見ても、繰り返し議論されて来たものです。それでも誤解と思われる理解の仕方がいろいろ登場していることを見れば、このブログで取り上げたのも当然なことと言えます。

肩と腕の「魔法の動き」の完全実行でクラブを振れば、自然に一定の振り方に落ち着きます。こうして「核心イメージ」に到達し、それを具体化して「核心打法」が固まったのです。これは与えられた「魔法の動き」という材料が生み出したもので、「魔法の動き」を体感的に捉えていない人には「不自然」に見えるスイングになります。

考え出す本人も、「定義に従って」動きを作っているわけで、始めから感覚的に納得して振っているわけではありません。そこで、くり返し実験する中に思い掛けないイメージが湧いて来るのを経験します。その羅列が先頃の「「核心打法」開眼特集」(08-01-21)です。しかし左腕の動きには軽く触れているだけですから、ここでその感覚的なイメージについて説明を加えます。

左腕の主な動きの感覚は「体の右側で振り切る」イメージが生みます。「「マジック・グリップ」再確認」(2007-12-14)では、体の右側で振り切る秘訣は、この時の左腕の動きに慣れることだと書いていますが、これに対応する右腕の動きはオーバーハンド型の動きです。この右腕の動きが、「体の右側で振り切る」イメージと、これに伴う左腕の動きのイメージを生んだのです。

グリップと腕を固めて肩と腕の「魔法の動き」を実行すると、この「体の右側で振り切る」という感覚の動きが現れます。左に振って行くという意識ではなく、体の右側で腕を伸ばし切ってインパクトに入るという動きです。これが「核心打法」のダウンの左腕の動きを生みます。

このダウンの動きを意識的に実行すると、左腕が裏返って行くような感じになります。初めてこれを体験した時は大いに驚き、これで大丈夫かと不安になったのですが、しボールは見事に飛んで行きました。その後全く予備知識なしの二人が即座にこの型の動きでナイス・ショットを飛ばすのを見て、これが極めて自然な動きであることが納得できました。

この動きの感覚は文字通り清水の舞台から飛ぶ感じで動きを試す中で浮かんだものです。これはオーバーハンド型の右腕の動きを生む、右肩の「魔法の動き」に対応する、左肩の「魔法の動き」の感覚です。「深いトップ」に入れる動きで、肩と腕の「魔法の動き」を確実に実行してダウンに入れば、必然的に現れる動きなのです。

こうした「艱難辛苦」の経験を通じて、「核心打法」理解が進んだにわけで、途中の話は混乱を含む複雑なものになりました。しかし、最近のパワー源の働きの構造把握により、「核心打法」の仕組みのイメージは実用上十分なまでの完成度に到達したと思われます。そこで次回にはこれらを綜合し、実用版「核心打法」の形に纏めます。