マハーバーラタはラーマーヤナと並ぶインドの古典長編叙事詩、というのは学校で習いました。なんでもマハーバーラタは、いまだに全部日本語に翻訳されていないらしく、またインドでテレビドラマ化したものは、仮にNHKの大河ドラマにすると2年余りに及ぶ長編だったそうです。
初代大統領のスカルノのことについては「大統領」や「インドネシア語」のところで既に書きましたが、スカルノの名前の由来は、「ス」というジャワ人がよく名前に付ける接頭語と「カルノ」に別れ、この「カルノ」が、まさにマハーバーラタの物語の中に出てくる勇敢な戦士の名前が引用されているのです。
マハーバーラタの中のカルノは、日本でいえばさしずめ義経のような、勇敢な戦士ながら悲劇のヒーローとなるような存在です。日本の判官贔屓に似たような感情がジャワ人の心にもあるせいか親しまれ、結構男性の名前に使われることがあります。ちなみに私のハンドルネーム karno も、恐れながらこれから拝借しました。
ジャワではワヤンのラコン(演目)でマハーバーラタの話が出てくることが多く、これは以前「イスラム教」や「ガムラン」で書きましたが、9割方イスラム化しているインドネシアで、今もヒンドゥー文化が根付いていることが窺えます。マハーバーラタの影響は、インドネシアだけではなく広く東南アジアでも見られ、また中国や日本に古くからある勧善懲悪の物語などにも、多かれ少なかれ影響していると言われています。
2017年10月の東京歌舞伎座で、このマハーバーラタの物語を歌舞伎で演じられるという話を初め聞いたときには耳を疑いましたが、実際にこの「マハーバーラタ戦記」を観てみると随分思い切った企画で、特に尾上菊之助演じる主役の迦楼奈(カルナ:カルノ)はなかなかの名演で楽しめました。インド大使館の方々も観覧されたと聞いていますが、もしインドネシアの人々がこれを観るとどんな感想を漏らすのか、興味のあるところです。