ぢゅです。どもども。
Q.「人はなぜソシャゲに課金してしまうのか」
A.「それは、人だから」
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前回は「サンクコスト」がプレイヤーさんに与える影響について簡単な事例を紹介しました。第2回となる今回は、そのサンクコスト(これまで無駄にしてきた投資)が悪さをする「コンプガチャ」について書いていきたいと思います。
業界に詳しい方は、「あれ?日本ではコンプガチャは禁止のはずだよね」と思われるでしょう。そのとおりです。コンプガチャとは、複数の景品を揃えることで特別なアイテムを入手できる機構を組み込んだガチャイベントのことです。過度な課金促進につながることからコンプガチャ自体は禁止となっていますが、実は、コンプガチャの仕組みを別の形で取り入れることで課金を促進している例が世の中にはあります。ここでは、そういった活用例を「コンプガチャもどき」と呼ぶことにしましょう。
まず、コンプガチャの悪さ加減を紹介します。例えば、超レアアイテムが3種類混ざっているガチャがあるとします。そして、それらの超レアアイテム3種類全てを揃えると最強のアイテムが貰えるというコンプガチャイベントが開催されたとします。1つ目の超レアアイテムの排出率は20%、2つ目の超レアアイテムの排出率は1%、そして3つ目の超レアアイテムの排出率は0.01%だとしましょう。このガチャを引き始めるとき、超レアアイテムのどれかが当たる確率は、21.01%です(それぞれの排出率の合計です)。よって、10連ガチャを1回まわしただけで、どれか1つを引き当ててしまう方はちらほらいるでしょう。たとえば、そのときに排出率20%のアイテムを引き当てたとして、続けて、残り2種類のどちらかを引き当てる確率はというと、1.1%になります(補足:一般的なソシャゲのガチャは引いても引いても中身が減っていかないので、何度引いても確率は同じになります)。約1%というとかなり低い確率に思えるかもしれませんが、10連ガチャを何度かまわすと、当たる人はちらほら出る感じです。
で、運よく1つ目と2つ目を引き当てた方は、あと1つ揃えば最強のアイテムが手に入るという状況におかれます。この状況で、ガチャをまわすためのアプリ内通貨(ダイヤやジュエルのこと。アプリによって名称は異なる)が尽きてしまった場合、課金するかどうかを判断することになります。そのとき、サンクコストを勿体ないと感じてしまうという人間のサガにより、「ここまでで2つ手に入った。この2つを手に入れるまでに使った投資を無駄にしたくない。そして、このチャンスを逃したくない。」といった思考が生まれ、課金につながる…といった流れになります。
加えて、人は確率というものに運命を感じてしまう特殊な生き物です。ですので、「2つまで当てることができた。この幸運を活かすべきだ」といった思考で、課金行為を正当化する人もいるでしょう。
ただ、最後に引き当てなければいけない超レアアイテムの排出率は0.01%です。普通、なかなか出ません。はじめのうちは「まぁ、この確率では出ないよな。でも30連くらいで当たればラッキーだから、ちょっとだけやってみるか」という軽い気持ちかもしれません。その気持ちがやがて、「ここまで来たんだ。あと1つなんだ!」と、まるで物語の主人公にでもなったかのように、ある意味ちょっとした義務感を持ちながら、ガチャを引き続け、サンクコストをあきらめることができず、廃課金(過度な課金)してしまう…
以上がコンプガチャです。実際は、コンプガチャに廃課金した人の全員が上記のような思考に陥っていたわけではなく、アプリの中での尊厳や居場所を守るために、確率が低いことを認識したうえでアプリに献金をするという前向きなスタンスで遊んでいらっしゃった方もいたことをここに記したいと思います。
で、コンプガチャは国内市場では既に禁止されていますが、ここからは、その仕組みをうまく活用している「コンプガチャもどき」について紹介していきます。
【事例1】
ロマサガrsというアプリのガチャからは、歴代のシリーズに登場した魅力的なキャラクターたちが排出されます。排出されるキャラの中には、同名のキャラクターであっても、覚えられる技が異なるものがあります。たとえば、ロマサガ2に登場した最終皇帝(女)というキャラクターには、「月光」という回復技を覚えられるバージョンと、「水鳥剣」という範囲攻撃技を覚えられるバージョンがあります。そして、このアプリの特徴として、同名のキャラクターであれば他のバージョンが覚える技を1つだけ付与できるといった機能があります。あなたは、あるときの期間限定ガチャイベントで、イベントの目玉キャラである最終皇帝(女)の「月光」バージョンを入手することができました。アタッカーであるのにも関わらず回復技を持つこのキャラはとても優秀で、あなたはクエストを何度も周回し、ステータスを高めました。その数か月後、また別の期間限定ガチャイベントが開催されました。そこには最終皇帝(女)の「水鳥剣」バージョンが排出率1%で含まれていました。あなたが、ここまで鍛え上げてきた最終皇帝(女)「月光」バージョンに、範囲攻撃技である「水鳥剣」を付与すれば、その強さは盤石になります。そこであなたは、最終皇帝(女)の「水鳥剣」バージョンを、課金してでも入手することにしました。しかし、なかなか「水鳥剣」バージョンは出てくれません。ガチャをまわしまくり、アプリ内通貨が尽きるたび、あなたは課金を繰り返すのでした…
【事例2】
プリコネリダイブというアプリのガチャからは、とても愛くるしい女性キャラクターたちが排出されます。排出されるキャラの中には、同名のキャラクターであっても、衣装が異なるものあります。たとえば、キョウカという女性キャラクターには、通常バーションと、ハロウィンバージョンがあり、恋愛パラメータがそれぞれ別個に儲けられています。この恋愛パラメータを向上させると衣装個別のシナリオが楽しめることに加えて、ステータスが微増します。このステータスの微増は、他のバージョンの同名キャラクターにも反映されます。あなたは、魔法アタッカーとして優秀な通常バージョンのキョウカを鍛え上げ、通常クエストやイベントで活用しまっくていました。とあるハロウィンで盛り上がるシーズン、期間限定ガチャイベントが開催され、そのガチャにはハロウィンバージョンのキョウカが排出率0.7%で含まれていました。普段からキョウカをパーティに入れ、愛着を持っているあなたは、ハロウィンバージョンのシナリオも楽しみたいと思うのと同時に、通常キョウカのステータス底上げのために、ハロウィンバージョンを入手したいと思いました。以下略。
この類似している2つの事例はいずれもコンプガチャではありません。コンプガチャのように1つのガチャイベントで複数の景品をコンプする必然は無いものの、「とあるキャラを持っていることで、残りのキャラが欲しくなる」というコンプガチャの仕組みだけが採用されているのです。今回ご紹介した事例は、ガチャをまわすモチベーションを高めていることに変わりはないものの、コンプによる効果はいずれも「限定的」であり、圧倒的なものではありません。もしも圧倒的なコンプ効果が表れるようゲームデザインされてしまうと、それは、プレイヤーが楽しめるものから一変し、大きな混乱とプレイヤー離れを引き起こし、程度がひどい場合は新たな法規制の誕生にもつながる可能性があるでしょう。
もしもこの文章を読んでくださっているあなたがソシャゲの運営側であるならば、コンプガチャもどきの取り扱いにはくれぐれもご注意ください。
プレイヤーとしては、アプリの中に潜む「コンプガチャもどき」を探し出し、そのコンプ効果を正しく把握しましょう。あなたが Pay to Win(課金額で勝つこと)を目指すプレイヤーでない限り、コンプ効果が大きなアプリに対しては足を洗うことをおすすめします。また、「コンプしなくったって、どうせしばらくしたらそれ以上に強いキャラが出てくるさ」といった気持ちでスルーという選択肢を持てる人になりましょう。その選択肢を持ったうえでのめるこむなら、私は止めません(笑)
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今回はここまでにしようかと思います。(一度、書き出すと、ほんと止まらなくなるわ…)
次回は、ガチャにはまる原因の1つである「射幸性」(ギャンブル性)についての説明と、その活用例について紹介します。
ではでは、課金は計画的に!そして、次回もお楽しみに。
ばいみー