人はなぜソシャゲに課金するのか 「人権キャラ」 | ぢゅ@メラゾーマPのブログ(ソシャゲ)

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ソシャゲプロデューサー歴4年のぐだぐだ人間によるブログ。ボカロPもしてました。最近の興味は地方創生。

ぢゅです。どもども。

今回は、前回の最後のほうでチラッと出した「人権キャラ」というワードについて書いてみようと思います。「人権キャラ」とは、ゲーム内で最高のパフォーマンスを出すために欠かすことのできないキャラクターのことです。

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いくつかのソシャゲでは、共に戦うチームである「ギルド」が実装されています。そして、ギルド同士を競わせ、順位(ランキング)を付けるといったイベントが開催されます。ランキング上位のギルドには良い報酬が与えられますが、上位に入賞するためには、強いプレイヤー同士でギルドを組む必要があります。

【事例①】
あなたは、ランキング上位常連のギルドで、マスター(リーダー、責任者)を務めています。ある日、ひとりのメンバーが脱退したので、ギルドに1名分の空きができてしまいました。あなたは、次のイベントに間に合うよう、BBSやSNSで新メンバーを募集します。すると、2名の希望者が応募してきてくれました。うち1名は、あなたのギルドに是が非でも参加したいという熱意あるメッセージを送ってきてくれました。そしてもう1名は、人権キャラを所持している旨のメッセージを送ってきてくれました。あなたはギルドのマスターとして強いメンバーを仲間にする責務があるため、人権キャラを持っているプレイヤーのほうを新メンバーに選んだのでした。

…というように、「人権キャラ」はギルドメンバーの試金石のような役割を果たします。

ランキング上位を狙うギルドでは、人権キャラを持っていないプレイヤーは足手まといになってしまいます。このことから、未所持のプレイヤーには上位ギルドに参加する権利がないと考える人が出現し、「人権」という言葉が使われるようになります。

この言葉は、他人に対してマウントを取りたがる残念な人が好んで使う傾向になるいった負の側面を持っています。ソシャゲ界隈では一般的な用語になりつつありますが、時と場合は考えて使ったほうが良いワードです。得てして、ソシャゲ内にはマウントを取りたがる人たちがいます。まだ人間として成熟していない…というか、世の中に対して誇れるものがまだない承認欲求の塊のような中学生や高校生プレイヤーが、ちょっとしたことでマウントを取りたくなる気持ちは大人の方々なら理解できるでしょう。この他に、現実世界で成長から目をそらしている大人は、努力をせずに良い格好をしたいというマインドセットに陥りがちです。そういう人たちが現実逃避してソシャゲにやってきて、たかだか強いキャラを持っているというだけでマウントを取ってしまうのです。

マウントを取られると、取られた本人は気にしないようにしていても、どこかでネガティブな感情が芽生えたり、ストレスを感じたり、無駄に考えたりしてしまいます。ですので、マウントを取ってくる人には、ソシャゲでも現実でも、近づかないようにしましょう。

さて、「人権キャラ」は一見するとゲームバランスを崩しているように見えますが、それでも実装されるのはどうしてでしょうか。

現実世界では、スキルや能力を育むのは時間がかかる行為であり、加えてアウトプットするにも一定の労力がかかるため、成長が実感できる機会はなかなかありません。それが、ゲームであれば、簡単に成長でき、簡単にその成果を実感できます。それがゲームが好まれる要因の一つです。「楽をして成長を実感したい」というニーズがあるのです。

ですので、ソシャゲ運営陣は、ちょっとずつ強いキャラをリリースし、そのニーズを課金につなげようとします。ちょっとずつ…であるのは、他のキャラの価値を下げすぎないようにするためです。しかしながら、いつもちょっとずつにしていると、プレイヤーはその成長速度に慣れてしまい、飽きてきます。そこで、目立った強さのキャラ、つまり「人権キャラ」を実装し、「変化」という名のストレスを発生させ、ゲーム内に熱気を取り戻させるのです。

【事例②】
あなたはランキング上位のギルドでマスターを務めています。しかしながら、最近、月1回開催されるランキングイベントにしかモチベーションがわかず、普段は物足りなさを感じています。そんなとき、次のガチャイベントで新規実装される魔法少女キャラの情報が飛び込んできました。この魔法少女は、圧倒的な火力(ダメージ量のこと)を持つアタッカーでありながら、敵の防御力を下げることができるアシストとしての役割も担うことができるとのことです。このソシャゲのランキングイベントは体力の高いボスを相手にギルドメンバー全員でどれだけのダメージ量を出せるかを競うオーソドックスなものになっており、このようなタイプのイベントでは、この魔法少女のような特徴が非常に有効であることは多くのプレイヤーに周知の事実です。人権キャラとの呼び声が高い魔法少女がガチャイベントで実装された瞬間、ゲーム全体の熱量があがります。それと連動するように、アプリ売上ランキングでこのソシャゲが急上昇をはじめます。あなたの脳は、過去に強いキャラを引き当てたときに感じた快楽の記憶を呼び起こし、この魔法少女が手に入ったときの快楽のイメージと重ね合わせます。あなたの脳は、過去に強いキャラを引き当てたときに注ぎ込んだ課金量を思い出させることはありません。そして、魔法少女を目当てに、興奮の中、ガチャを引き始めたあなた。しかしながら、なかなか当たりません。200連…、300連…、まだ当たりません。700連…、800連…、すでに課金額は20万円を超えました。ギルドのチャットを見ていると、多くのギルドメンバーが引き当てたことがわかります。あなたは、引けていないのは自分だけではないかと思い始め、危機感を持ち、900連…、1,000連と引き続けます。しかし、当たりません。そして、あなたの軍資金は尽きたのでありました。あなたは、ギルドチャットに「引退します」と打ち込み、ギルドマスターを他のメンバーに譲り、ギルドから抜け、アプリをそっと閉じたのでした。

…ソシャゲにおいて、上位層のほうにいると、まわりで目につくプレイヤーも上位層になりがちです。上位層には人権キャラを手に入れるプレイヤーが多いことから、ほぼ全員が入手しているのではないかという錯覚に陥りることがあります。人気タイトルにもなれば、人権キャラを出るまで引く動画や、引けた後にその使用感について紹介する動画がWeb上に溢れかえります。それを見て、引くのが普通なのだと思ってしまうことがあります。また、マウント取りたいだけの残念な人間が、声たかだかに引き当てたことを自慢してきます。また、権威のあるプレイヤーや尊敬するプレイヤーが「このキャラは絶対に入手すべき」という私見を発信していたりします。このような要素が組み合わさると、特定のキャラを引き当てることに固執してしまう集団を生み出してしまいます。群集心理(集団心理)と呼ばれる、一つの例に集団全体が偏るという事象です。人間は集団になると、非合理な行動を取ってしまうことがあるのです。

そして、この事例では、人権キャラを入手できなかったプレイヤーが引退を決意するに至っています。大金や多くの時間を注ぎ込んでいるので、サンクコスト(これまでにつぎこんだ投資)を考えると引退は無いのではないかと思うかもしれません。しかし、人間は「失う」ということに敏感な生き物です(プロスペクト理論)。「今までの地位を維持できない」という損失に過敏に反応し、それを耐えられないと感じてしまう人がいます。完璧主義である人ほど、その傾向が強いような気がします。

このプレイヤーのような、ゲームを盛り上げ、かつ、課金をしてくださる方の引退はゲームにとって大きなマイナスです。ましてや、「人権キャラを入手できなければ引退」という例に群集心理が働こうものなら、ゲームから上位層が減っていき、サービス終了が近づいてくるでしょう。運営側に伝えたいのは、このような上質なプレイヤーを引退に追い込んでいいのかということ、それから例え引退しなかったとしても、次に同等の強さを持ったキャラが出るまでの数か月の間、そのプレイヤーに我慢を強いていいのかということです。

ということで、ガチャに「天井」が実装されることになります。「天井」は、ガチャを一定回数まわせば、目当てのキャラを入手できる機能です。天井機能を実装するとアプリ全体での課金量は減ります。そろそろ天井だからもうちょっと頑張って引く…みたいな課金促進になるケースもあるでしょうが、課金総量は減るのが通常だと思います。

アプリのリリース直後やプロモーションの成功等でDAU(Dairy Active Users:1日当たりのプレイヤー数)が増えているうちはいいですが、高止まりが見えてくると、既存プレイヤーの囲い込みがより一層大事になります。「天井」を実装していない場合、運営側はそのタイミングで一考すべきでしょう。

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今回はここまでですー。本来「人権」とは、国民全員が持つ、侵すことのできない永久の権利ですからね。人権キャラって呼び方、変ですよ(本音)
 
ではでは、課金は計画的に!そして、次回もお楽しみに。
 
ばいみー

 

 

 

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