人はなぜソシャゲに課金するのか 「ガチャ設計~後編」 | ぢゅ@メラゾーマPのブログ(ソシャゲ)

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ソシャゲプロデューサー歴4年のぐだぐだ人間によるブログ。ボカロPもしてました。最近の興味は地方創生。

ぢゅです。どもども。

今回は前回のつづきで、ガチャイベントの設計について書いていきますー。ってか、本音を書くと、イベント設計について書くの、ちょっと早すぎたなぁと感じています。かなり端折っているつもりですがそれでも盛沢山すぎる…

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さて、マーケティングの4Pというフレームワークを活用し、ガチャイベントの企画&設計についてポイントをまとめている最中でした。Product、Price、Placeについては前回のブログを参照いただくとして、今回は最後のPであるPromotionについて事例を交えながら紹介します。

【事例①】
あなたがはまっているとあるソシャゲに、最近、ストーリーの最新話が追加されました。最新話では、自らの右腕を犠牲にして主人公を救った女性忍者キャラの背負ってきた格好良すぎる運命と悲しい過去が明らかになり、あなたはこの女性忍者キャラのファンになってしまいました。そして今日、その女性忍者が目玉キャラとして設定されたイベントガチャが開始されました。このソシャゲはそこそこ人気のタイトルで、新しいイベントがはじまる度、何人もの実況者(Youtuber等)がプレイ動画をアップします。そのプレイ動画の1つを見てみると、排出率0.7%の女性忍者キャラを見事に引き当てた実況者が「強い!これは絶対に引くべき!」と言っています。それを見たあなたは、早速アプリを立ち上げ、ガチャイベントの画面にたどり着きます。ガチャを引きたい衝動にかられますが、それでも一旦立ち止まって、本当に引くべきかを検討します。すると、ガチャイベント画面に大きく存在感のあるフォントで書かれている「期間限定!」「初回10連が半額(有料ダイヤのみ)」というキャッチが目に飛び込んできます。そしてあなたは、初回10連(半額)をまわすために課金するのでありました。

…ではこの事例について、運営側が何を準備したか、見ていきましょう。まずは、ストーリーで活躍したキャラクターを、その興奮が冷めないうちにガチャの目玉キャラに設定しました。ストーリーを使って、商品価値を向上させたのです。逆のパターンもあります。目玉キャラの宣伝のために、ストーリーの中で印象的な役割を演じさせるというものです。芸能人を売り出す、プロダクションのようですね。


それから、ゲーム実況者に依頼し、目玉キャラを使用感を伝える動画をアップしてもらいました。話が少し脱線しますが、このように書くと、世の中の全てのプレイ動画がそうなのかと思えるかもしれませんが、実際はそのような依頼に基づく動画は少ないです。また、企業から依頼されたスポンサー付きの動画であれば、ほとんどの実況者は動画内でそのことを示唆しますので、その動画が依頼に基づくものかどうかは、多くの場合、見ればわかります。

話を戻します。この事例で、運営はガチャイベントの画面上で「お得感」「限定感」をわかりやすく訴求しています。今回のケースでは、プレイヤーはガチャイベント画面にたどり着いた時点で商品(女性忍者)に大きな価値を感じており、ガチャを引く理由を何でもいいから探している状況(確証バイアス)です。ですので、嫌でも目に入るように目立たせて、お得だよー、限定だよーと伝えることで、ガチャを引く理由を提供し、最後の一押しをしたのです。

「最後の一押し」は、リアル世界の営業担当者や店頭販売員にとっては日常的な行動です。デパートのブランドコーナーで店員さんから聞こえてくる「私もそれがいいと思います。お客様の今日の髪型にピッタリですね」というやつです。最後の一押しは、購入(課金)に踏み切りやすくすると同時に、購入者の納得感や満足度を高める役割を果たします。

【事例②】
あなたは、ガチャイベントの目玉キャラである女性忍者をどうしても手に入れたいと強い衝動を感じました。が、初回の10連ガチャでは引き当てることができませんでした。そのまま、追い課金&追いガチャをしたくなりましたが、イベント期間はまだまだ永いので、一旦その日は課金を我慢しました。数日後、クエストをプレイしていると、フレンドが提供してくれるサポートキャラにその女性忍者キャラが設定されていました。サポートキャラとして借りてプレイしたあなたは、そのキャラの圧倒的な強さを体感します。そして、手に入れたい衝動が再び沸き起こります。そこに運営から、1周年のアニバーサリーだとか、アプリストアで売上1位に輝いたお礼等の理由で、かつてない程に大量の無料ダイヤが配布されました。あなたは歓喜し、そのダイヤを使ってイベントガチャをまわします。配られた大量ガチャにより50回連続でガチャをまわすことができました。あなたはこれほど連続でガチャをまわしたことがなかったので、今まで感じたことのない大興奮状態になりました。しかし、お目当ての女性忍者はまだ手に入りません。あなたは迷うことなく課金をし、ガチャを引き続けるのでした。

…このように、ソシャゲでよくあるサポートキャラ機能は、一見すると初心者やフレンドをアシストする仕組みなのですが、一方で、他のユーザーが所持しているキャラを欲しいと思わせる効果があります。

もう一段踏み込んで考えてみましょう。この事例で、サポートキャラ使用時に「圧倒的な強さ」を体感したのは、その背景にどのような設定が行われていたからでしょうか。単純に、そのキャラが圧倒的に強いのでしょうか。残念ながら、そんなことは運営の上手なソシャゲではありえないでしょう。なぜなら、圧倒的に強いキャラをリリースしてしまうとステータスのインフレが起こり、ゲームバランスが崩れ満足度が下がる=離脱率が上がる(やめる人が増える)ことにつながります。それに加え、圧倒的なキャラをリリースし続けると、今の時点での最強を目指す必要性が薄れるため、課金量が減ることになります。

圧倒的な強さの体感を生み出したのは、キャラの側にではなく、クエスト側に、そのキャラが特に活躍できるような調整が入っているからです。その目玉キャラを弱点とする敵が出現したり、スキルのタイミングが噛み合う等の細かな点がうまく作られているはずです。(Promotionではなく、Productの話になってしまいました)

そして、大量の無料ダイヤ配布です。これはほぼ全てのプレイヤーに喜ばれるPromotionではありますが、ガチャイベントと組み合わせると強力な快楽を生み出し、依存症を招く麻薬のような働きをしてしまいます(依存については、第3話を参照ください)。「運営が大量なダイヤを配布したから、誰も課金しないだろうなぁ。売上は下がるだろうなぁ」と思っていたら、アプリストアの売上ランキングで1位になっているとかありますよね。恐い話です。

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今回はここまでです。前回と今回の2回に渡り、イベント設計のポイントについて紹介しました。一部で廃課金についても触れましたが、それ以外のほとんどの箇所では、月の課金額が1万円までのプレイヤーをターゲットにして書きました。
 
ではでは、課金は計画的に!そして、次回もお楽しみに。
 
ばいみー