弁護士契約。
契約することを前提に、私は
もう何件目かもわからない弁護士事務所を
訪れた。
これまで話を聞いた弁護士の
アドバイスを元に修正を重ねた
不倫に関するレジュメは、
さらに分厚さを増し、とても重い。
ちょっと頼りなさそうな男性弁護士が
コピーしたその資料に目をやりながら
私の話に耳を傾ける。
「慰謝料は最高で
250万は取れるでしょう。
不倫相手の配偶者からご主人に
請求があったとしても、
こちら側の支払いが
多くなることもないと思いますよ」
さっきまでの気弱そうな雰囲気から
一変して、その男性弁護士は
強気な表情で言った。
正直、私は
250万は希望額だな…と思った。
実際は100万にも、150万にも
なりうるだろう。
ま、弁護士が慰謝料250万の獲得を
目指して動いてくれるのなら、悪くもない。
あとは、動き方次第でもある。
「W不倫という面倒な案件ですけど
大丈夫ですか?」
私は目の前の弁護士に
慰謝料の金額よりも大事なことを確認をした。
「大丈夫です。問題ありません。
請求することのリスクを、ちゃんと
ご理解いただけているのであれば」
リスクは当然、覚悟のうえ。
こうして私は、
最後に訪れた弁護士事務所と
そのまま委任契約を結ぶことにした。
ところが…
夕方になって、弁護士から1本の電話が入る。
(つづく)
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