いつもありがとうございます、一葉です。
弊宅閲覧者数・延べ50万人様を記念して、つねごろ様からお与かりした記念リクエストの最終話をお届け致します。
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■ その腕の中で眠りたい ◇20 ■
翌日、少し遅めの午前中。
蓮とキョーコは、クーやジュリと一緒にゲストたちが宿泊しているレンタルハウスに向かった。
アメリカでは結婚式翌日に、結婚式でお世話になった人を招いてのブランチタイムがあるのだ。
これも通常は新婦側が用意し、サンドイッチやソーセージ、サラダやスイーツなどを準備して、滞在場所に持って行くのであるが、案の定、レンタルハウス内の冷蔵庫には食材がこんもりと残っていた。
そこで、主にキョーコとクーが、それらの材料を使ってブランチメニューを用意し、遅れてリビングダイニングに集まって来たゲスト達と一緒にブランチタイムを楽しんだ。
食べ切れなかった分は全てクーの胃袋に。
ちなみに、保津修平、胃袋ブラックホール説を知らなかった面々の驚愕はかなり凄まじかったことを追記しておく。
このあと、ゲストたちはそれぞれがレンタルハウスを後にした。
奏江と千織はせっかくアメリカに来られたからと、2~3日観光してから日本に戻る予定らしく、二人で予約したホテルへ。
ジェリー・ウッズは自分の店。
そしてローリィ宝田は、こっちに来るのも久しぶりだからと息子を呼び寄せ、デュリスと3人でしばしを過ごしてのち日本へ。
蓮とキョーコ、二人のマネージャーである社は、ロサンゼルス国際空港でお土産を買い漁ったあと、空港でゆったり一日を過ごしてから翌一番の便で日本に戻った。
全員の見送りが済んでから、蓮とキョーコは二人でマリッジライセンスの申請に向かった。
マリッジライセンスは、日本のように誰が提出しても受け付けされるものではなく、必ず当人同士の申請でなければならない。申請時に二人が揃っている事が、受付される必要最低限の条件なのである。
申請に向かう直前に、義理の母親となったジュリエナからキョーコはある言葉をもらっていた。
それは、結婚したことを強く実感できるものだった。
「 久遠。改めて結婚おめでとう。
24年前の2月10日、あなたはこの世に生まれたの。
クーが一日に食べる量を考えれば、あなたの体重はそれとは比較にならないぐらい軽かったけれど、生まれたばかりのあなたを初めて抱いたとき、私はあなたの命の重みを感じたのよ。
とても嬉しかったわ。それをまるで昨日のことのように覚えてる。
そして、キョーコ 」
「 はいっ?! 」
「 私はあなたが生まれた時を知らない。あなたの体重が何グラムだったのかも、どんな幼少期を過ごしたのかも 」
「 はい 」
「 でも、忘れないで。あなたの命も、久遠の命も、この世にたった一つだけ。だから、毎日を大切に生きて欲しいわ。あなたは私の大切な娘になった。それを決して忘れないでちょうだい 」
「 …っっっ…はい、ありがとうございます 」
「 それとね、私のことはジュリママと呼んで頂戴ね。私は本当に楽しみにしていたの。娘が出来るのを 」
「 はい、ジュリママ 」
「 まぁ、いい子ね、キョーコ!!本当に可愛いわ、本当に嬉しいわ!! 」
「 あうっ…あ、う… 」
「 母さん、抱きしめすぎ!!キョーコはまだ完治していないんだって!! 」
「 やだ、ごめんなさい!私ったらなんてことを…。ごめんなさいね、キョーコ 」
「 う…いえ、大丈夫です 」
「 そうだ!あなたの体の傷が癒えた頃、二人でお買い物に行きましょう。クーと久遠は家に置いておけばいいわ。だってお買い物は女同士だけの方が絶対に楽しいもの。ね? 」
マリッジライセンスの申請が終わったら、蓮とキョーコは日本に戻ることになっていた。
マネージャーの社に次いで早い戻りとなる予定だ。
それを知っているのに敢えてジュリが約束を差し出してくれたのは、寂しいと思ってくれているのかもしれない、とキョーコにも悟ることが出来た。
「 はい、楽しみにしています 」
「 それまでは、録画してもらった昨日の結婚式を繰り返し眺めて過ごすことにするわ 」
二人の結婚式は、クーやジュリの友人たちがいくつも撮り収めてくれていた。
正確には結婚式だけではなく、レセプションも同様である。
もちろんそれは集約され、プロの手で編集されたのち、SNSで後日配信されることになっていた。
ちなみに、キョーコの体についていた痣や傷は、結果として特殊メイクを使って隠された。
蓮がそれを強く望んだからである。
「 キョーコ。お願いだから、傷や痣は特殊メイクを使って隠して欲しい 」
「 どうして?確かに回避方法としては間違っていたかもしれないけど、でもこの傷は… 」
「 俺が苦しいんだ、キョーコ。俺が苦しい・・ 」
「 ・・・・コーン 」
「 君にとっては勲章に思えるものかもしれない。でも、俺にとってその傷たちは俺がキョーコを守れなかった証そのものだ。それを思い知らされているみたいで苦しい。
式の日だけでいいから、お願いだから特殊メイクを使って。身勝手でごめん 」
そう告白をされて
キョーコ自身が自分の身勝手さに気付いた。
今までずっと蓮に着替えを手伝ってもらっていたけれど、もしかしたらこれらの傷を見るたびに彼は胸を痛めていたのかもしれない。
それを想像して本当に申し訳なく思った。
「 ごめんなさい、コーン。私、自分のことしか考えていなかった。そうよね、判った。特殊メイクをしてもらうことにする 」
そして日本に帰る直前の夜に
二人はデュリスが手配してくれた4つ星ホテルのジュニアスイートに泊まった。
ロサンゼルス国際空港から目と鼻の先にある、あのホテルである。
部屋に踏み入り、カウチソファに腰を下ろした蓮は、かつて宿泊を延長し、一人で寝泊まりしたあの時のことを思い出し、苦々しく眉をひそめながら力弱くキョーコを自分に引き寄せた。
「 改めて思う。君が目覚めてくれて本当に良かった。
即死してもおかしくなかったと医者に言われたときは言葉通り、目の前が真っ暗になった 」
「 …ごめんなさい 」
「 肋骨と、肺に傷を負った以外に重篤な症状が見られない、これは奇跡ですよなんて言われても、少しも嬉しくなかった 」
「 ごめんなさい 」
「 しばらく眠り続けることになるだろうって言われて、毎日、毎日、繰り返し君のマッサージを施しながら、このまま目覚めなかったらどうしようって、そのことだけ嫌ってほど考えた 」
「 ごめんなさい、コーン 」
「 もうあんなことは二度と嫌だ 」
「 うん、ごめんね。でも私、ずっと聞こえていたよ? 」
「 え? 」
「 私が寝ていた間、ずっとキョーコ頑張れ、キョーコ頑張れって、私を励ましてくれていたでしょう?
私、そのとき多分夢を見ていたの。そこは自分以外の全てが真っ暗闇だった。
私自身、少しも身動きが出来なくて、心細くて仕方なかった。だけどしばらくしたら、体のあちこちが温かくなり始めたの。そのうち遠くに光があることに気付いた。
最初は立ち上がる事さえ出来なかったけれど、そのうち徐々に動けるようになっていって、少しずつ少しずつ、私は光に近づいて行った 」
「 そうなの? 」
「 そう。光に近づくほどはっきりと聞こえた。キョーコ頑張れって、コーンの声が。やっと光にたどり着いたと思った瞬間に目が覚めて、思った通り、目の前にコーンがいて、やっぱりコーンだったって思ったのよ 」
「 …俺も、似たような経験、したことがある。ダークムーンの撮影のとき 」
「 それ、もしかしたら車のシーンでのこと? 」
「 ん 」
「 じゃあ、私たち、もう絶対に大丈夫ね! 」
「 うん? 」
「 私に何かあってもコーンが引き戻してくれるし、コーンに何かあったとしても絶対に私が引き戻してあげる!! 」
「 ・・・・本当だね? 」
「 どうしてそこで確認をするの? 」
「 いま、苦い過去を思い出したから 」
「 苦い過去? 」
「 そう。迷惑極まりない勘違いで、ライバルに譲られそうになった過去 」
「 …っっっ!!! 」
「 ここで誓って、キョーコ。もう絶対に、誰にも俺を譲らないって 」
「 譲らないわよ、一歩だって!だって私、コーンの妻になったのよ!? 」
「 そ。それを聞いて安心しました 」
「 でもコーン。私、不思議に思うんだけど。森住さんって結局、何のためにあんな事をしたんだと思う?私に対する嫌がらせ?…にしては、リスクがあり過ぎたと思うの。確かにあの時、私たちは日本語で会話をしていたけど、もし周りに日本語が判る人が居たらって、少しでも考えなかったのかなって。改めて思い返してみるとすごく不思議で… 」
「 俺が思うに 」
「 うん 」
「 セドリックのせいだと思う 」
「 は?どうして突然。なんであの人が出てくるの? 」
「 アイツがそう言っていたから 」
森住仁子に灸を据えたあと
結局別れさせることが出来なかったか…って。
「 え? 」
「 思えば、俺達がLAに到着していたことを父にばらしたのはアイツだった。
そして森住仁子の狙いはアメリカでの華々しい女優デビュー。そのために強力な後ろ盾を欲していた。
恐らく、俺達を別れさせることが出来たら、セドリックが振り向いてくれるかもって、思い込んだ。…というより、思い込まされたんだと思う。踊らされている事なんて、薄々気づいていただろうに。
そう考えると、3年という月日は思いの他彼女には辛かったのかもな 」
「 …ってことは、森住さん、少なくとも彼には本気だったってことなのかしら 」
「 どうでもいいよ、そんなこと。俺にとってはどうでもいい 」
言いながら少しずつ、蓮はカウチソファの上で身を滑らせた。
キョーコを変わらず抱えてはいたが、やがて目的の姿勢に至ったところでキョーコの胸元に顔を寄せた。
甘える子犬のように近づいてきた蓮の頭を、キョーコが優しく両手で包む。
それに安心したのか、蓮が静かに瞼を伏せた。
熱い吐息が胸にかかった。
「 コーン? 」
「 ずっと、恋しかったよ、キョーコ 」
「 うん、ごめんね。私はもう大丈夫だから 」
「 君の腕の中じゃないと、俺は安心して眠れないんだから 」
「 そうよね。私もそう 」
互いの体を引き寄せ合い、夫婦と認められて初めて寄り添う密な夜。
改めて実感できた。
この腕の中だけが、唯一安眠できる場所だと。
式を挙げることが出来て本当に良かったと。
END
お付き合いくださって本当にありがとうございました。
ちなみに、最終話の内容で『そんなことがあったんだ?』と思われたお嬢様は、18話が未読かと思われます。今一度ご確認くださいね。
さて、こちらのリクエストは『アム〇様のfainallyの歌詞で、ウェディング系のちょいとシリアス路線』を一葉センスで調理願います、と頂いておりました。
一葉センスぅ(笑) もちろんそれでしか書けませんけど~~w
ちなみに蓮キョのウェディング話は過去に何度か書いたことがありますが、何度書いてもいいものです♡
ネタ重複は極力避けている私ですが、蓮キョのウェディング話はバリエーションを変えて何度でも執筆してみたいと思える唯一の設定だと言えるかも。
とはいえ、途中のシリアスの重苦しさには、私同様、読者様も四苦八苦したかもですね。でも、そんな思いを味わったからこそ、幸せがより引き立つのだと私は思っております。回収できなかった設定があるのですけどね。どないしよw
お付き合いくださり、本当に有難うございました。
最後に。リクエストをくださったつねごろ様。本当に有難うございました。
⇒その腕の中で眠りたい◇20・拍手
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