その腕の中で眠りたい ◇1 | 有限実践組-skipbeat-

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こちらは蓮キョ中心、スキビの二次創作ブログです。


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 いつもありがとうございます、一葉です。

 弊宅閲覧者数・延べ50万人様を記念して、つねごろ様からお与かりした記念リクエストをお届け致します。



 こちらは原作沿いです。それ以外の設定に関しましては内容からお察しください。

 それと、大変恐縮ですが、こちらは45巻に収録されるACT.273のネタを含む予定です。コミックス派でネタバレ回避お嬢様は45巻発売後にお付き合いくださいませ(。>人<。) 


 なお、こちらはリクエスト成就作となります。内容リクエストを頂いても応諾できません。また閲覧はあくまでも自己責任をお願い申し上げます。



■ その腕の中で眠りたい ◇1 ■





 ロサンゼルス国際空港から目と鼻の先にある、4つ星ホテルの一室に蓮が足を踏み入れたのは、23時を少し過ぎた頃だった。


 プライベートでの初帰国は一ヶ月の滞在を予定している。だというのにそれに見合わぬ小さなスーツケースを携えていた蓮は、予約されていた部屋を見るなり苦笑を浮かべた。



「 …っ…ちょっと広すぎないか、これ…… 」



 どうやらフロントのあれは聞き間違いではなかったらしい。部屋は確かにジュニアスイートに相違なく。


 口元を柔らかく結び、瀟洒なカーテンが下がっている窓に近づく。母のスカートに隠れながら様子見しようとする悪戯っ子のようにカーテンドレープを軽く束ねた蓮は、窓の向こうに広がっている夜景にしばし見入った。




 ……懐かしい…なんて感慨を覚えるほど愛した街ではなかったはずだった。けれど今こんなにも深い郷愁が沸くのは、この地が自分の生まれ育った場所だからだろうか。




 カーテンの皺を正し、踵を返した。ソファに腰を下ろそうと歩みを進める。

 ソファの前にはカフェテーブルが置かれていて、その机上に、まるで巨人のブーケをそのまま花瓶に挿したかのような立派な花々が咲いていた。


 その花瓶に添えるように祝福の意を伝える赤ワインがようやく蓮の目に触れる。

 部屋に入ったときそれに気づけなかったのは、恐らく花瓶の花が立派過ぎたせいだろう。


 あるいは、驚かそうとした意図的な配置だったのか。



 冷えた赤ワインにはメッセージカードが添えられていた。

 そこには懐かしい字でCongratulationとだけあった。



「 …大歓迎だな。ありがとう、本当に 」


 喜びで心が震える。東京を発つ時に抱いていたそれよりもっと強い感情が渦巻く。

 本当に、とうとうこの日がやって来たのだ…と、それを強く実感できた。



 ソファに腰を下ろし、もう一度やけに広い部屋を見回した蓮は、キョーコの顔を脳裏に思い浮かべて両目を細めた。



「 だから言ったのに。どうするんだよ、こんなに広い部屋。俺一人で一週間ここで過ごすのか? 」



 この部屋に泊ればいいのに

 5分前まで隣にいたキョーコは、絶対だめだと拒絶した。




「 うそ?どうして一緒の部屋なんですか?そんなのあり得ないです! 」


「 どうしてって…。別に、普通のことだからだろう 」


「 普通?これは普通じゃないですよ。だって私たちまだ結婚前なのに 」


「 いや、普通だろう。だって俺たちは式を挙げるためにLAに来たんだし 」


「 そうですよ。つまりまだ結婚前なんです!だからこそけじめは付けなきゃ。一緒の部屋なんて絶対だめ!! 」


「 なんでだよ。じゃあ、どうするの?せっかくデュリスさんが部屋を用意してくれたのに 」


「 はい、そうですよね!その好意を無駄にするわけにはいきませんから、その部屋は敦賀さんが使ってください。私は自費で自分の部屋を取りますから 」


「 ちょっ…!!なんで結婚する二人が別々の部屋を取る必要があるんだ。一緒の部屋でいいだろう? 」


「 ダメですよ。だって結婚前ですから。何よりご両親へのご挨拶がまだなのにそんな破廉恥な真似は出来ません。けじめです 」


「 あのね、けじめって言うけど、一緒の部屋に泊ったかどうかなんて言わなければ誰にも分からないことだし、そもそも俺の両親はそんなのを気にする人たちじゃないんだ。むしろこれから結婚しようって二人が一緒の部屋じゃなかったってことに不安を覚えるタイプだよ 」


「 そうなんですか。でもそれは私が確かめた情報ではないのでダメです。けじめですから 」



 未来の花嫁はあくまでもけじめだから…という主張を曲げず、結局とっとと自分で部屋を取ってしまった。



「 …ま、でもそういう所も好きなんだから、もうしょうがないよな 」



 そう。自分はもうどうしようもないほどキョーコを愛してしまっているのだ。

 そんな彼女の一挙手一投足が愛しくて、あの子なしでは生きて行けない…とはっきり言葉に出来るほど。



 天井を仰ぐようにソファに背中を押し付けた蓮は、まさかキョーコはもう寝たのだろうかと考えた。


 瞬間、胸元が震えた。

 キョーコかも知れないと素早くスマホを手に取る。



『 ……もう、寝ちゃった? 』



 表示されたメッセージを見て甘い笑みが浮かんだ。

 やっぱりそうだよな、と思った。


 今回、蓮とキョーコは機内で隣り合わせの席だった。

 そもそも東京からロサンゼルスまで長時間のフライトだし、結婚式を挙げる前に両親と初顔合わせをしてもらう予定もあったのでなるべくキョーコが疲れないようにという配慮もあり、また今までお互いに頑張って来たご褒美の意味も込め、ファーストクラスを利用したのだ。


 その際、お互い寝ていた時間も同調していたから、自分が眠くないのならキョーコも同じに違いないという確信が蓮にはあった。



『 まだ寝てないよ。眠くも無いし 』


『 えへへ、そうよね。私もそう。そっちの部屋はどう?広い? 』


『 無駄に広いよ。一人でこれは広すぎる 』


『 えー、そんなに広いの?でも東京のあのお家よりは狭いんでしょ? 』


『 どうだろう。気になる?だったらおいで?こっちにきて自分の目で確かめてみればいい 』


『 やだ。おいでって言わないで。それを言われたら行きたくなっちゃう 』


『 そう?じゃ、もっと言おうかな。キョーコ、こっちにおいで? 』



 これに対する返信はなかった。それがむしろ蓮に確信を抱かせた。 

 静かに腰を上げた蓮は入り口ドアに向かった。その途中で呼び出しベルが軽やかに響き、再び甘い笑みが浮かんだ。



 君、本当は

 この部屋の向こうで待機していたんじゃないの?



「 ……はい? 」


「 キョーコです 」


「 だと思ったよ。はい、どうぞ、いらっしゃい 」


「 いい。けじめだから部屋には入らないの。ただ顔を見に来ただけだから 」


「 ……入らないの? 」


「 そのつもり 」


「 本当に?でも部屋の中ぐらい見ておいても良くないかな?デュリスさんは俺たちが利用することを前提にメッセージカードを置いてくれたのだろうし、巨人のブーケみたいな花は花嫁の君に向けてだと思う。それに、この部屋自体が物語に出て来る宮殿みたいな内装だから、見るだけでもかなり色々楽しめると思うけど 」


「 え…そうなの? 」


「 そうだよ。なんて言ったって4つ星ホテルのジュニアスイートだからね。カーテンでさえかなり凄いから、見ごたえあると思うよ。だから、おいで? 」


「 あうぅぅぅ!!おいでって言わないでぇ。胸キュンしちゃって行きたくなっちゃう! 」


「 そんなことを聞いたら連発したくなるな。キョーコ、おいで?ほら、おいでって。キョーコ、おいで、おいで、おいで 」



 真っ赤になった顔をたまらず両手で覆ったキョーコは、いないいないばぁをするように手を横にずらすと、上目遣いで蓮を見上げた。



「 ……っっ!卑怯よ、敦賀さんってば! 」



 本当に愛しいな、と思う。

 いま彼女が自分を敦賀さん…と呼ぶのは、自分がその外見だからなのだ。



 もちろんこの姿のまま飛行機も利用してきた。

 もう隠す必要はないのだ。


 日本の俳優・敦賀蓮の本名が久遠・ヒズリであることは公表されているのだから。




「 キョーコ、おいで? 」


「 ……っ……ふぅぅぅぅっっ!! 」


「 おいで 」


「 ……っ……入る 」


「 ぷっ。うん、おいで? 」


「 もうやだ!お願いだから、おいでを連発しないでぇぇぇ!! 」


「 あはははは。惜しいな、こんなに君に効くってあらかじめ知っていたらさっきフロントで言いまくったのに。君が無駄に一部屋取る前に 」


「 冗談でしょ。あんな場所で連発されたら、打たれすぎてキュン死しちゃう 」


「 フッ。俺なんてキョーコが可愛すぎて死にそうだよ。だからそうなる前に早くおいで? 」


「 もう、敦賀さん!!わざとそれを言わないで! 」



 グーで結ばれたキョーコの右手を蓮が軽々と受け止める。そして未来の花嫁を引き寄せた。

 ドアクローズの働きで扉が自然に閉じるとオートロックがかかった音が聞こえ、その時にはもう、蓮はしっかりキョーコを抱きしめていた。



「 キョーコ…… 」


「 ん? 」


「 いつでもいいよ。いつでも俺の胸においで?ここは君専用だから 」


「 うきゅうぅぅぅぅっっ!! 」


「 あれ?俺いまキョーコを抱きしめたと思ったけど実は違った?リスだったかな? 」


「 もうやだ、敦賀さん。私、幸せ過ぎて息が止まっちゃいそう… 」


「 俺も。キョーコが可愛すぎてこの腕が君を抱きしめている形で固定しちゃいそう 」


「 なる訳ないし!! 」


「 あはははは 」


「 もう! 」


「 キョーコ、こっち。冷えた赤ワインが置いてあったから二人で乾杯しよう 」


「 ……っ…赤ワイン?本当に? 」


「 本当だよ、ほら 」


「 うわぁぁぁ…すごい、ドラマみたい!飲みたい 」


「 だろ。お注ぎしますよ、お姫様。君の20歳をお祝いした時みたいに 」


「 うれしい。今度は飲み過ぎないようにします 」


「 クス。気にしなくていいよ、別に。休みはたっぷりあるんだし… 」



 結局、この夜

 蓮はキョーコを離すことなく。


 二人はデュリスが用意したジュニアスイートで幸せな一晩を共に過ごした。






 ⇒◇2 に続く


間に合った!!…このお話は20話前後で完結する予定です。



⇒その腕の中で眠りたい◇1・拍手

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