●問題の読み込み方
技術士二次試験の必須科目の問題は、リード文と問題文で構成されています。
ここでは、令和3年度の上下水道部門の必須Ⅰ-1のリード文と問題文(1)を見てましょう。
【リード文】
日本の将来人口は、減少していくことが予想されている。この人口減少により上下水道事業では、将来水需要の減少に伴う料金収入の減少や職員数の減少が見込まれている。一方、多くの施設は、老朽化が進行しており、更新時期を迎えつつある。
このため、今後も安定して事業を継続していくためには、厳しい財政状況の下で執行体制の省力化を図りながら事業を進められるように上下水道事業の基盤強化を着実に進めていくことが求められている。
【問題文】
(1)上下水道事業に共通する事業基盤強化に関して、技術者としての立場で多面的な観点から3つの課題を抽出し、それぞれの観点を明記したうえで、課題の内容を示せ。
まず、用語の確認ですが、質問文(1)の中で使われている「観点」とは、「課題」をワンフレーズで表したものです。
「課題」とは、目標を達成するための取組、又は問題点を解消するための取組を意味します。
この問題では、3つの観点をピックアップする必要があります。
そこで、リード文を整理してみます。
以下のような構成になっています。
これを眺めると、3つの観点を決定しやすいです。
観点は、同じ階層で揃える必要がありますので、①料金収入減少、②職員数減少、③施設の老朽化にするのが妥当です。
また、この問題のテーマは「事業の基盤強化」です。
「事業の基盤」は、「ヒト・モノ・カネ」を指します。
基盤を強化するわけですが、上下水道事業の場合、職員の減少(ヒト)、施設の老朽化(モノ)、料金収入の減少(カネ)を解消することを意味します。
つまり、リード文から導き出した3つの観点と合致するわけです。
●知識を身に付けるための例題
知識を身に付けるための例題を2つ作ってみました。
問1は、前述の問題の続きになるものです。
問2は、まったく別物です。
以下の通りです。
問2の記入例
水源において水質的な問題が生じている。
具体的には、カビ臭物質の発生である。
この対策として、
①ダム管理者等への適切な曝気の協力依頼
②浄水場の運転管理者等による原水の定期的な臭気測定
③粉末活性炭の注入、粒状活性炭処理設備の導入
を実施する必要がある。
●例題の解答例
2つの例題の解答例です。
まず、問1についてです。
下表のようになります。
これは一つの例ですから、他のも対応策が存在すると思います。
また、広域連携、官民連携を職員数減少への対応だけではなく、料金収入減少への対応にも書いて良いです。
問1の解答例
次に、問2についてです。
水道施設区分が4種類、水道品質区分が3種類あるので、計12種類を作成することができます。
ここでは、4つの解答例を作成しました。
問2の解答例1
取浄水施設 において 水量 的な問題が生じている。
具体的には、 井戸の揚水量の減少 である。
この対策として、
① 取水ポンプ、スクリーンの更新
② 水源の変更(井戸の堀替え、河川水への変更)
③ 他の浄水場との統廃合
を実施する必要がある。
問2の解答例2
送配水施設 において 水圧 的な問題が生じている。
具体的には、 ポンプ停止時のウォーターハンマの発生 である。
この対策として、
① ポンプの吐出弁の電動化と開閉速度の変更
② 緩閉式逆止弁の設置
③ フライホイールの増強
を実施する必要がある。
問2の解答例3
送配水施設 において 水質 的な問題が生じている。
具体的には、 残留塩素濃度の低下 である。
この対策として、
① 追加塩素設備の整備
② 管路の排水作業
③ 老朽化管の更新とダウンサイジング
を実施する必要がある。
問2の解答例4
給水装置 において 水質 的な問題が生じている。
具体的には、 受水槽における残留塩素濃度の低下 である。
この対策として、
① 受水槽の定期的な点検・清掃の指導(水道事業者の視点)
② 直結式給水への変更の提案(水道事業者の視点)
③ クロスコネクションの防止
を実施する必要がある。
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