ボタンの花咲く(徳川園)
ボタンの花は美しいもの、「百花の王」と呼ばれます。
山辺の春が遅れています(冬の間の大雪のため)。
そのため、心には、やや油断がありました。
町(平地)の花たちは、かえって、例年より早く花開いています。
4月16日の日本庭園・徳川園、ボタンの花が、通年よりやや早く盛りを迎えています。
(やや、盛りを過ぎた状態に見えました)
ボタンの花 ①
ボタンの花 ➁
花のうちを、覗きこんで見ます。
コロナ時代なのでマスクをしながらの撮影ですが、人通りが絶えたときにはマスクをはずし、香りを確かめます。
それは脳に直接届くように思えます。
短い栄華・花の命を、わたしの命のうちに、刻み込みます。
徳川園の風景 ①
龍仙湖と、観月楼の風景。
日差しが強く、写真を撮ると、夏の風景のように映ります。
徳川園の風景 ➁
龍仙湖と観月楼の風景。
松の幹が、空間に斜めに線を入れ、それもまた美しく思えます。
2022年4月16日(日)に日本庭園・徳川園(名古屋市 東区)も訪れ、春の青空のもと、春の花を見ました。
もうボタンの花が盛りを迎えています。
(やや盛りを過ぎた印象です)
例年より、花の訪れが、5日ほど早い印象です。
(春の花たちが一斉に咲き始め、この日は山野草系の植物たちの花に多く出会ったため、1時間と予定していた散策時間が、3時間に延びました/写真撮影のため)
徳川園は、武家庭園(日本庭園)です。名古屋駅から車で15~20分程の距離にあります。JRの最寄り駅は大曽根(大曽根/中央腺で、名古屋から4駅目の駅)で、下車後徒歩10分程で園に着きます(バスなら、大曽根発の栄行きで2区乗車)。
平成16年に庭園として整備されました。尾張徳川家の宝物を展示する徳川美術館が、隣接しています。
自宅から20分程の場所に、徳川園があります(自宅から徒歩8分+JR1区3分+降車後徒歩10分)。
庭園の花たちを楽しむため、そして隣接する美術館(徳川美術館)の展示を見に、折々訪れています。
小学生の頃(50~45年程前)、家も近かったので、この場所で遊んでいました。
園内に大きな池はなく(小さな池はあった)、どこでも見られる公園でした。驚くほどの変わり様です。
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【徳川園について(公式サイト掲載文)】
徳川園は、徳川御三家筆頭である、尾張藩二代藩主光友が、元禄8年(1695年)に自らの造営による隠居所である大曽根屋敷に移り住んだことを起源としています。当時の敷地は約13万坪(約44ha)の広大さで、庭園内の泉水には16挺立の舟を浮 かべたと言われています。
光友の没後、この地は尾張藩家老職の成瀬、石河、渡邊三家に譲られましたが、明治22年(1889年)からは尾張徳川家の邸宅となりました。
昭和6年(1931年)、十九代当主義親から邸宅と庭園の寄付を受けた名古屋市は整備改修を行い、翌年「徳川園」が公開されました。
昭和20年(1945年)に大空襲により園内の大部分を焼失した後は一般的な公園として利用されてきましたが、平成16年秋に日本庭園としてリニューアルしました。
ボタン園
たくさんのボタンの花が、咲いています。
多くの方が、訪れています。
ボタン(冬牡丹/ボタン科 ボタン属 落葉小低木)
生薬名:ボタンピ(牡丹皮) ※根の皮を用いる。
ボタンは、もう花の盛りと言ってよい状態でした。
例年より、5日(~7日)ほど早いのではと、そう思います。
徳川園では、たくさんの地植えのボタンがあります。
それらが、いっせいに咲いていました。
(上の画像はボタンの、島の藤という 品種名です)
中国西北部が原産、もとは薬用として古い時代に日本に渡って来たものです。
中国・唐の時代(618~690年、705~907年)より後は、花の美しさから、多くは観賞用として意識されるようになりました。
華美な花を咲かせるので、「百花王」「花王」とも呼ばれます。
タネが発芽しない事もあるので、子どもを産まないという意味で、名に「牡(おす)」の文字を使ったとされます。
太平洋戦争前はタネから育てていたため、なかなか増やす事が出来ませんでした。
そのため、高値で取引されていました。
戦後は、シャクヤクを用いた接ぎ木での栽培が成功したため、市場に大量に出回るようになりました。
20cm程の鉢植えが3月~4月に花屋さんやホームセンターで、2,000円程で販売されています。
それを植える事が出来るので、各地にボタンの花咲く名所が出来ました。
ボタンは落葉小低木、「木」です。
ボタンは冬になると葉を落としますが、幹は残ります。
花の印象が似ていて区別しにくいシャクヤク(芍薬)は、木ではなく、「草」です。
そのため、冬になると地上に出ている部分はすべて枯れてしまいます。
花の時期に見分けたいというかたは、樹皮があるかどうかを、確かめてください。
(樹皮があればボタンです。シャクヤクは草なので、全体がやわらかな印象ですし、樹皮がありません。)
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ボタンの根皮(生薬名:ボタンピ、牡丹皮)を、薬にします。
それは表現が難しい、独特の香りです。
鼻の奥が刺激される香り、春の香りを放つ土壌を思わせる香りです
「わきあがる血の熱を抑える(例えば怒りによって感情が抑えられない、たとえば熱病によって鮮紅色の出血がある など)」という、クールダウンの働きをします。
漢方薬では、イライラ・のぼせを治す抗ストレス薬・加味逍遙散に、配合されています。
血流促進し、チクチク痛(頭痛・生理痛)を治す桂枝茯苓丸にも、配合されています。
【 ボタンピ(牡丹皮) 性味:苦・辛、微寒 帰経:心・肝・腎 効能:清熱涼血、活血化瘀 】
【ボタンピが配合される漢方薬: 加味逍遙散(かみしょうようさん)、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん) 】
品種名:島の藤。
とても美しい花色です。
ボタンの花 ➁
品種名:島の藤
ボタンの花 ③
淡い色合いの花びらも、濃い色合いの花びらも、それぞれが美しいもの。
金子みすゞ さん の詩にありますが、「みんなちがって、みんないい」です。
ボタンの花 ④
光をはじく、ボタンの白い花びら。
ボタンの花 ⑤
茶室の敷地内に植えられていたボタン
カンボタン(寒牡丹/ボタン科 ボタン属 落葉低木)
これは、寒ボタン(かんぼたん/寒牡丹)の花です。
茶室の敷地内に植えられていました。
(上の画像のボタンと同じ場所でした)
ボタンは普通、年に1度、春に花咲きますが、寒ボタンは年に2度花を付ける変種です。
(開花は冬と春)。
春・夏には葉を茂らせますが、花を咲かせる秋からは、葉を多く残しません。
限りある生命力を身にとどめるため、葉に回す栄養を抑えているからなのでしょう。
(茂らせても、冬の弱い日差しでは、エネルギー産生がうまくいかないのでしょう)
また生育に時間がかかり、花を咲かせるまで10年程も待たなくてはなりません。
「冬に咲く」ということに価値があるため、春に咲く花をツボミのうちに摘んでしまうこともあります。
カンボタンの表示
フジ(藤/マメ科 フジ属 つる性落葉低木)
ボタンの背後に、小さなフジ棚がありました。
じつに美しく目に映ります。
山合いでも目にしますし、公園ではフジ棚があって目にすることがあります。
淡い青紫色が、やわらかな印象を与えます。
日本特産植物で、本州・四国・九州に自生しています。
フジの老木に出来るコブ(瘤)が、胃ガンに良いとされます。
60年程前にフジコブが入った顆粒製品「WTTC」が販売され、使い続けられて来ました。
延岡にある九州保健福祉大学のフジの木に、たくさんのフジコブがついているのを見ました。
(WTTCとは、藤瘤・訶子・菱の実・鳩麦の穀物部分を配合し、英名の頭文字をとった命名です)
フジの花
フジの花と、ボタンの花 ①
ボタン園(徳川園の北門といえる大曽根門から入場すると、右折してすぐの位置にあります)の横に、フジ棚があります。
人気アニメの説明を借りると、「(悪い)鬼を近づかせない花」なのだそうです。
(これはフィクションだと思います。薬草の業界で30年以上勤めましたが、魔を遠ざけるというような話は耳にしませんでした)
フジの花と、ボタンの花 ➁
敷地の西側・高台にある、茶室です。
和服の女性が、この建物の雰囲気にあって、良いものです。
茶室からの風景
茶室横の道
シロバナマンサク(白花満作/マンサク科 シロバナマンサク属 落葉低木)
別名:フォザギラ・マヨ―ル (アメリカ南東部原産)
西側の高台にある茶室・瑞龍亭の出口近くで、咲いていました。
マンサク科と言いますが、日本の野で見られるマンサクの早春花とは、ずいぶん異なる印象です(似たところがない)。
見た目だけの印象ですが、外来種の強さが感じられます。
シロバナマンサクの花
茶室の入口
ウグイスカグラ(鶯神楽/スイカズラ科 スイカズラ属 落葉低木)
樹木園(敷地の奥側)に、ウグイスカグラの小さな花が咲いています。
細長いラッパ形の花の直径は1cm程、小さな花です。
もう2ヶ月近くも、ピンクの小花は咲いています(1花の寿命が長いのではなく、次々に咲いていきます)。
赤い小さな果実(楕円形:長さ1~2cm)も、そこについていました。
ヤマウグイスカグラ(日本固有種)の変種です。
本州(中西部)・四国の山野に自生する姿を見る事が出来ます。
一般的には2月初旬から花を見せ始め、4月中旬頃まで花を咲かせ続けます。
(ひとつの花が長く咲いているのではなく、次々と花が咲き継ぎます)。
ボタンの花のようには目立ちませんが、さわやかな良い春花です。
「ウグイス カズラ」ではありません、「カグラ(神楽)」です。
ウグイスカグラの果実
ゴモジュ(御門樹/スイカズラ科 ガマズミ属 常緑低木)
ゴモジュは、花がわずかに残っている状態でした。
花の時期が過ぎようとしています。西の茶室(瑞流亭)前で、見る事が出来ます。
首里城の門前に植えられていた事から、ゴモンジュ(御門樹)と呼ばれる様になったとされます。
葉の香りがゴマに似るから「ゴマ樹」が転化したという説もあります。
南方系の樹で、日本では南西諸島・奄美大島・沖縄などで見られます。
小さな花であり、花の直径は1cmもないほどです。
茶室前に、案内ボランティアのかたがいらして、説明をしてくださいました。
ありがとうございます。
訪れる方が、喜んでくれそうです。
イカリソウ(碇草/メギ科 イカリソウ属 多年草) ※生薬名:インヨウカク(淫羊藿)
生薬名:インヨウカク(淫羊藿) イカリソウの全草を用います。
茶室脇に、イカリソウの花を見つけました。
この花色は、日本の山野で見られるものと同じです。
(この日、徳川園の他の場所でイカリソウを見つけましたが、花色は白と赤が混じったもので、栽培品種かも知れません)
日本でも見られるイカリソウは、船のイカリを思わせる形の花を咲かせるメギ科植物です。
どうでしょう、姿を見ると、まさにその通りでしょう。
そしてこれは、滋養強壮の薬として用いられるものです。
薬草を勉強しようと思い、2001年の4月から月1回(以上)、伊吹山に通い始めました。
登山口から登り始め、最初に見つけたのが、このイカリソウでした。思い入れのある花です。
漢方処方にはほとんど入れられてはいません。
しかし、ユンケルなどの栄養ドリンクの高額タイプに、インヨウカク(淫羊かく)という名で配合されています。
ちなみにこの名は、「これを食べた、老いた雄羊が、若さを取り戻したくさんの子を作った(生殖能力を取り戻した)」という言い伝えからつけられています。
乾燥生薬(インヨウカク・500g)も、かっては多く流通していましたが、アルカロイドを含む生薬について厚生労働省は流通を抑えたい意向があるようです。
今は乾燥生薬としては、ほとんど流通していません。
しかし、園芸を趣味にされる方が、観賞用に、これを栽培される事も多いもの。
ハート形の葉、そして茎を、ホワイトリカーにつけて、滋養強壮のための薬草酒として用います。
(30年ほど前までは、そういう方が多くありました)。
【インヨウカク(淫羊藿) 性味:辛、温 帰経:肝・腎 効能:補腎壮陽・袪風湿】
ニシキギ(錦木/ニシキギ科 ニシキギ属 落葉低木)
日本の山野にも自生していて、このように花も見ることが出来ます。
ニシキギは秋に紅葉する葉が、錦のように美しいもの。枝に、長刃のカミソリのような突起がつくのが特徴です。その突起は軽くて、コルク質になっています。
枝にできる翼状部だけを集め、トゲぬきに用います。
とげ抜きに
鬼箭を黒焼きにしてごはん粒で練って、患部にはります。
月経不順に
1日量15~20gを水600mlで煎じて、約半分に煮詰め、空腹時に3回に分けて服用します。
※中国ではニシキギを衛矛(えいぼう)と呼び、翼状部の生薬名を鬼箭羽としています。
徳川園の風景
強い日差しが画面の色を変え、夏の風景のように見えます。
徳川園の風景
さわやかな風が、湖面を流れて行きます。
アマドコロ(甘野呂/キジカクシ科 アマドコロ属 多年草)
※中国植物名:玉竹(ぎょくちく)
東アジア、そしてヨーロッパに分布する植物です。
日当たりの良い草原・山野で、見られます。
白い花を見ていると涼やかな印象で、良い感じ。
花の姿から、白い陶製のベルを連想しました。
ヤマノイモ科の「トコロ(野呂)」に見た目が似ていて、その根を食べると甘い事から、アマドコロ(甘野呂)と呼ばれています。
庭にアマドコロを植えて、増やした後に、根を掘り起こして少し食べました。
そのときは、よい甘味を感じました。
そして、噛んでいるうちに粘りを感じました。
アマドコロは、ひもで吊り下げた陶製の鈴を思わせる白花を咲かせます。
それはナルコユリも同じ。
ふたつの種類の花は、とてもよく似ています。
どう見分けるのでしょう。
このアマドコロは、茎が角ばるものです。
そして、花と花柄のつなぎには、突起がありません。
ナルコユリは、茎が丸である(稜がない)こと。
そして、花と花柄のつなぎには、緑色の突起があります
アマドコロの花
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⇒ 3月27日の徳川園①(春空を目指して咲くアンズ)を みる
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