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最新ゲーム業界の動向とカラクリがよーくわかる本 第2版/橘寛基

先日、図書館に行くと就活本コーナーができていた。業界研究本も並んでいて、ちょっと面白そうだったので、この本を借りてみた。

ゲーム業界の歴史、現状、そして未来。ビジネスの仕組みと、現状分析、問題点そして今後の予想と、業界知識を平易に解説した良書であると思った。基本的に、1テーマを見開きにまとめ、図表も多く理解しやすいだろう。
業界寄りでもなく批判的すぎでもなく、また、各業界陣営からも等距離で、客観的な分析と解説が良心的だ。
ただ、ゲームは単なる娯楽商品ではなく日本を背負って立つ芸術作品たるべし、というようなニュアンスが強く、若干気になった。

普通の人よりちょっとだけ業界に詳しいゲーム通、程度の人なら、誰でも知っているような情報レベルであるが、データと共にコンパクトにまとめてあると、なかなか読みでがある。

しかし、2010年1月の第2版だが、すでに丸2年、変化の早い業界では、内容は幾分古びている。本書では、WiiDS旋風が一服し、FF13でのPS3のブレイクを期待し、PCネットゲームのアイテム課金に未来を見て、スマホの台頭に注目し、PSPGoのお手並みを拝見、という感じの状況である。懐かしいねえ。

誤植・誤記が酷いのはいただけない。「小会社」とか失礼すぎるだろう。校正やってないんじゃないか。だから秀和は、とか言われてしまうんだろう。そこだけが残念である。

それにしても、就職活動の対象としてゲーム産業を捉えるとは、どういう感覚なんだろう。
娯楽産業である。しょせん玩具である。例えどれだけ頑張ったところで、飽きられたら終わり、というキビシイ世界なのである。よもや成長とか安定などを求める人はいないだろうが、本当にゲームが好きでゲームにさえ関われたら十分、という人でもなければ、ちゃんと娯楽屋商売の本質を理解しておくべきだろう。ビジネス視点の客観的な業界本も良いが、山内語録とか読んだ方がためになるのではなかろうか。

橘寛基
最新ゲーム業界の動向とカラクリがよーくわかる本 第2版

ぬらりひょんの孫/椎橋寛

例によって、大量ゲットコミックスの消化。あー、やっと少し減ってきた。

ちょっと前には平台に積んであったり人気本コーナーで見かけたりした事のあるマンガ。
よって、ちょっと楽しみにしていたが、期待はずれでガッカリ。
どうにも趣味が合わなかったようだ。

妖怪の総大将と言われるぬらりひょん。その孫にして、百鬼夜行を率いる血統を四分の一だけ受け継ぐ小学生、奴良リクオにとって祖父は憧れだった。早く祖父の代紋を継いで三代目になりたいと願っていた。しかし、人間としての小学校での生活の中で、妖怪が人間に悪さをする事、人間に嫌われている事、妖怪の話をするとリクオも爪弾きにされる事、などを身に浸みて感じ、三代目の座は嫌だと逃げ出す。そんなリクオに業を煮やし、三代目の座を狙う妖怪どもがリクオを亡き者にしようと謀る。リクオは間一髪難を逃れたものの、代わりに多くの級友が巻き添えに。事件の衝撃と級友を助けようとする意志がもたらしたのか、1/4だけある妖怪の血が沸き立ったかのように、リクオはガラッと人格と風貌が変わり、精悍な若頭として手下の妖怪を率いて現場に駆けつける。鮮やかな手際で雑魚妖怪を倒すリクオには、間違いなく総大将としての資質がある。そう手下どもに感じさせたが、事件解決後、気を失って倒れたリクオは元に戻り、本人には全く活躍の記憶がなかった。
それから数年。事件をきっかけにますます妖怪から距離を置き、妖怪との関わりがばれないように、人間として人間社会で受け入れられるように努めるリクオは中学生になっていた。あの精悍で大将の器だった人格への変化も、なりを潜めたままである。
しかし、ぬらりひょんの孫である限り、妖怪がらみの事件は続く。安寧を求めるリクオと、代紋を欲するリクオのもう一つの人格。総大将の座を巡り、全国津々浦々に妖怪組織の抗争絵巻がゆっくりと開かれようとしていた…。と言うような話。

一言で言うなら、よくあるバトルものである。平凡な能力の主人公と、強大な力を持った主人公のもう一つの顔、というパターンも定番だろう。
画力がイマイチで、構図もワンパターンなので、ごちゃごちゃしたコマ割と相まって、非常に読みづらい。
ストーリーもプロットも、かなり強引で無理がある印象。妖怪という題材も生かし切れておらず、不自然に浮いてしまって、魑魅魍魎の神秘性などを感じさせない。画面が明るすぎておもちゃみたいなのだ。妖ものなら、「うしおととら」や「結界師」のように、「闇の雰囲気」を感じさせなければ成立しえないのではないか。その点、先日の「妖怪のお医者さん」はまだマシだった。

バトルもの一直線となりそうな引きで、1巻でもう十分堪能した印象だ。

椎橋寛
ぬらりひょんの孫

悪魔とドルチェ/鈴木ジュリエッタ

こちらも、大量ゲット漫画の消化として頑張って読んだもの。
2巻まで。

両親が海外赴任しているので、小倉マユリは一人暮らしをして高校へ通っていた。一見普通の女子高生だが、実は彼女は見習い魔女である。ママから教わった魔法陣と秘伝のお菓子(ドルチェ)のレシピ。今日もお菓子作りに没頭すれば、友達がいない寂しさなど気にならない。面倒な買い物など雑用はアメ玉を報酬に小悪魔を召還してお使いを頼むのだ。
そんなある日、一張羅の制服に紅茶をこぼし、慌てて呼び出してしまったのは、地獄の大公ビュートと名乗る偉そうな大物悪魔だった。若い男の姿ながら、少しでも隙を見せれば魂を取られそうな悪魔の威圧感に震え上がるマユリ。うっかり正直に、アメ玉の報酬でスカートの染み抜きを契約しようとしていた事を言ってしまい、悪魔の激昂は最高潮に。しかし、しりもちをついて後ずさるマユリに悪魔はささやく「お前… 甘い匂いがする」。マユリの作った洋ナシのフランを食べて、ビュートは涙を流して喜んだ。「こんな美味しいもの 初めて食した」。そう、悪魔は甘いお菓子に弱いのである。すっかり機嫌を良くしたビュートは、契約成立とつぶやくと、魔法で制服を数着作り出して去っていこうとした。
命からがらピンチを脱したマユリだったが、その心の底では、これまでに知らなかった暖かな気持ちが、ほのかに揺らめいて灯ったのを感じていた。「待って…! まだ あるの!私の 得意レシピ」「どうしたらいい?どうしたら また… 会えるかなっ」身を乗り出して自分でも意外な台詞を叫ぶマユリ。「…さっきまで 泣き叫んでいた くせに」「変わってるな お前」ニヤリと笑うと、ビュートは彼の召還専用の魔法陣を作って地獄へ帰った。
こうして、ビュートを中心に、甘く、そして時には辛く、マユリは波瀾万丈の日常を送る事になったのである。さてさて、彼女の恋の行方は…。というようなお話。

しかし、久々のヒットであった。これは非常に気に入った作品である。
客観的に見れば、決して傑作マンガという訳ではないし、絵もストーリーもとても至高という訳ではないだろう。

それでも、ナンというか、一言では言えないが、すごくセンスが良い感じがするのだ。
波長が合うというか、読んでいると、心安らぐ感じ。

名作マンガは星の数ほどあるが、何度も読める漫画はそうはない。大概のマンガは1回読めば十分だし、2回も読んだら満腹、3度も読めば食傷するだろう。ストーリー重視の作品などは特にそうした傾向が強い。

一方で、何度も読める、何度も読みたくなる漫画、というものに希に出会う。
ストーリーなど百も承知でも、読んでいる事自体が楽しいのだろう。
ブログのエントリで持ち上げている作品は、大概そんな感じのものだ。

やや独特な印象を受けるキャラ絵と、構図の妙だろうか、クルクルと表情を変えるキャラが本当に生き生きと見える。そしてやや普通ではないマユリと、かなり普通でない地獄の悪魔達の、共に少々ずれた感性や行動が、実に新鮮に映るのだ。
何でもないような線ながら細部まで描き込んでファンタジックなセンスを感じる背景や小物、衣装なども素晴らしいバランスだ。
マンガのセオリーを無視したかのような、緩急激しいストーリーも非常に個性が強くて味わいがある。
しかし、それが徒になったか、非常に残念な事に、この2巻で休載とのことである。
もっと読みたかったと思いつつ、すでに何度も読み返している。

と言う事で、この著者の他の作品を漁ってみようと思う。

鈴木ジュリエッタ
悪魔とドルチェ

妖怪のお医者さん/佐藤友生

例によって、職場から大量ゲットしてきたコミックスを頑張って消化。
これは2巻まで入手。

妖怪に育てられた人間(?)の少年、護国寺黒郎、通称クロは、育ての親である妖怪を病気で失った事から、妖怪のお医者さんになる事を心に決める。修行のため人里に降り、そんな出自を隠しながら、目立たぬよう町の学校に通い出したクロだったが、お祓い師の孫で妖怪が見えてしまう琴子に正体を知られてしまう。それは、霊感があるためかえって妖怪とのトラブルを招いてしまった琴子を助けるためであった。妖怪と人間の間で、妖怪を救い、そして人間をも救う仕事。そんな妖怪のお医者さんとクロ本人に興味を抱いた琴子は助手になる事を決めた…。と言うような話。

構成も絵も上手く、読みやすい。ただし、琴子とクロの出逢いの回を両者の視点で描き直していて、同じシーンを2度も読まされるが、あまり意味があるとは思えない。また、情緒に訴える表現が、底が浅い上に大仰でやや鼻につく。軽いギャグや微エロ系から結構ダークな表現まで振り幅のある画面はメリハリがあって良い。

多分2巻まででは分からないのだろうが、主人公自体の立ち位置やその目的など、漫画全体の方向性がぼんやりしており、「その先」に興味を持ちにくい。妖怪、人間、医者、敵対と、この辺りのテーマをまとめきれるのか。

あればあったで読んでも良いが、無ければ無いで、まあ良いか、という所。


佐藤友生
妖怪のお医者さん

阪急電車/有川浩

例によって職場で拾った本。
この著者の本は「図書館戦争」以来である。すっかりビッグネームになったね。

関西人にはなじみ深い阪急電車。その支線を舞台に、たまたま同じ電車に乗り合わせた見ず知らずの人達が織りなす人生模様を描く。それぞれの人生を歩きながら、人は出逢いを経て、その道を僅かに変える。ほんの一言、ほんの一瞥がそのきっかけになり、そして僅かに逸れた道が、人生のはるか先では、大きな違いを生む。人生には、劇的と言って良い、そんな瞬間がある。この本では、ローカル線の車内を舞台に、そうした人生の転機となるエピソードを集めたほのぼのとしたテイストの掌編集である。1つの話に出てくる主人公が、別の話では脇役として登場し、複雑に絡み合っている、ある種のリレー小説という点がミソ。ある日あるダイヤの列車内を、多数の人物の視点から描いたという感じである。

非常に上手い。読みやすい文章、そこそこ盛り上げ、ツボを心得た展開、あっさりとまぶした蘊蓄。一言で言うなら優等生的な小説だろう。

ただし、それだけである。
良い意味でも悪い意味でも、あとに何も残らない小説。暇つぶしを求められたら自信を持って薦められる本だろう。

ある意味計算でもあるだろうが、登場人物が平べったい。とくにジェンダー的な視点など典型的で頑迷で視野狭窄で、悪い意味での「キャラクター」そのものだろう。作者の手駒感が、非常に鼻につく印象だ。描きたい人物があるのではなく、得たいウケがあり、その為に作ったキャラ、という事が透けて見える感じなのだ。読者に読まれたいと思うあまり、本当に自分の書きたい事を書いてないのではないだろうか。秀作をまとめる事に異様に長けた、そんな気がする。
もっと、自分の本心にある不整合を、ゴリっとそのまま書き殴ってしまったほうが良いのでは。小説としての技巧レベルは落ちても、きっと読後に残るものが出てくるだろう。
または、逆に、とことんまで技巧に走っても良いかも。その意味で言えば本書の構成など、もっともっと巧妙に組み上げられるはずである。取り敢えず現状は中途半端。

本書を読んで、一番じんわり来たのは、解説の名に児玉清を見た時だった。

有川浩
阪急電車

ちょっと江戸まで/津田雅美

例によって大量持ち帰り漫画の一つ。
2巻だけしかない半端本だったが、津田雅美なので、迷わずゲットした。

そして、1巻を待とうかどうしようか考えたが、さっさと妻が読んでしまって高評価だったので、読んでみた。
何か設定がイマイチよく分からないが、確かに面白かった。
その後、津田ファンであるうちのスタッフに1巻+αを借りて、取り敢えず3巻まで読んだ。

この漫画は、江戸時代が大好きという著者がその妄想をゆるーく描き殴るために設定した、平成20年、開府405年の江戸の町、というパラレルワールドをを舞台に繰り広げられるコメディである。

山野を飛び跳ねる農民の子として育った主人公、そうびは、一見男の子に見えるがきりっとした女の子である。身寄りを亡くし宿場町で暮らす彼女の前に、ある日一人の侍が現れる。母から聞かされていた通り、彼女はさる旗本の落胤であるという。縁切りに行ったはずの侍に素性を見込まれて、逆に江戸の町へ連れてゆかれ、北町奉行桜井家の妹として暮らす事になる。初めて見る江戸の暮らしは、見るもの聞くもの目新しい。自分と同じで寡黙な異母兄を敬愛し、兄に報いるためにも、この地で精進しようと昌平坂中学へ意気込んで通うそうびであった。
しかし、そんな折り、さらなる編入者に学校は沸いていた。御三家である水戸の嫡男が、気まぐれで入学してきたのだ。美少女と見まがう容貌の「ぼっちゃま」に見込まれ、美男美女の逆転コンビが誕生。江戸の町の日常と、そこで巻き起こる事件など、二人が織りなすユーモラスなエピソードを綴る、と言う感じ。

上でも描いたように、一言で言うと、江戸好きが蘊蓄を語りたい漫画。非常に楽しく江戸の雑学を習得できるだろう。
漫画自体としても、ベースは安定した作り。キャラもしっかりしているし、お話もそこそこ。
ただ、基本は雰囲気漫画だと思うので、それほど江戸には興味ない、という向きには、若干退屈な感じだろう。ちょん髷の月代ヘアは、キャラの見分けが付きにくい。蘊蓄話におんぶしたままの、パノラマ展開で終わる回もままあり平板に感じる事も。
多分、展開でどうこうしようという漫画ではないと思うので、多分、後半もこの流れのままだろう。
まあ、そこが長所なのではあるが。

後半も楽しみである。

津田雅美
ちょっと江戸まで

見学しよう工事現場4 橋/溝渕利明

シリーズ最終の4巻で取り上げるのは、橋。

開通で話題になっている新東名。その未開通部分に掛かる豊川市の佐奈川橋の建設を詳解する。
トンネルと橋の多い新東名を象徴するような、山奥のトンネルとトンネルの間に掛かる、全長700m、高さ89mのコンクリートけた橋である。
本書の末でも紹介されているが、橋は構造によって分類されるが、コンクリートけた橋は、現在最も多いタイプの橋で、橋脚を作り、その上に橋げたを架ける、鉄筋コンクリート製の橋である。
佐奈川橋では、景観と環境に配慮し、できるだけコンクリートの量を減らすように高強度のコンクリートや鉄筋を使用しPRC工法を採用。こうした細部も詳しく解説されている。
コンクリートけた橋といっても、橋脚を作って、橋を乗せるんだろう、ぐらいの知識しか無かったので、地上80mの橋脚天端に橋の要、柱頭部を作り、そこから両側に橋げたを少しずつ作りながら伸ばしていく工事の様子を写真で知って結構驚いた。先端にワーゲンという巨大な移動作業車を作り、それを移動させながら型枠を作って少しずつ鉄筋コンクリートの橋げたを伸ばしてゆくのだ。よくちゃんと精度が出るなと感心した。
シリーズ定番の現場の声も多数収録し、現場で働く人の気持ちや様子がよく分かる。

全4冊、とても面白く、またためになる絵本シリーズだった。工作好きの子供には絶対にお奨めだ。

小さな人間が、巨大な建造物を作り上げる事のできる不思議。
それを為し得ているのは、工具や工機、そして知識だけではない。最も大事なのは、計画、管理、そしてチームワークなのだ、という事がよく分かる本である。ピラミッドを造ったのも人間の手である。
今日行う作業、それを見越して、何日も何週も前から、段取りし、手配し、周知し、きちんとスケジュール管理するのだ。これが日本の工事現場での高い精度と安全を支えているのだ。もちろん工期の短縮によるコストダウンも重要な点である。
こうしたマネジメントはすごく面白い仕事だろう。だから、こうした土木建設のシミュレーションゲームがあると楽しいだろうと思う。シムシティのもっと局所的なゲームかな。予算をもらって、設計・施工して橋やトンネルを造るのだ。


溝渕利明
見学しよう工事現場4 橋

スラムダンク 21巻/井上雄彦

全国への切符を賭けた陵南と湘北の激闘に幕。

「何故桜木がそこにいるんだぁ!?」
陵南田岡監督の言葉が象徴するように、八面六臂の活躍を見せる花道。福田を止め、仙道を止め、そして魚住を止め、陵南の追撃をことごとく押さえてしまった。
ゲームを読んで的確に動いている訳ではない。常人離れした反射神経と身体能力で、素人が必死に食らいついていった結果がそこにあるだけだ。

そしてメガネ君こと木暮である。彼は決して名選手ではない。しかしゴリと共に、湘北3年間、中学から6年バスケをやってきた男である。ここぞという試合の、ここぞという場面で、彼は積み重ねてきた想いを込めて3Pを決める。迷い無くシュートを放ち、そしてゴール。自負と確信と驚愕と歓喜が混じった、その表情がよい。

そして4点差で残り58秒。仙道も2Pを決め、一瞬も気が抜けない終了間際の攻防が、台詞も音もないコマで綴られる。この一点に賭ける集中力で世界が引き延ばされたかのような印象深い表現だ。

試合終了。感涙にむせぶ選手達。そして観客。全ての選手を讃える田岡監督のコメントは感動的である。

巻の後半は、全国の個性的な強豪をチラ見せしてゆく。
さて、湘北と海南はこいつらとどう渡り合ってゆくのか。

次巻いよいよ全国か。しかし、残り10巻しか無いんだよな。描ききれるのか一抹の不安。



井上雄彦
スラムダンク 21巻

絶対平和大作戦/小椋アカネ

例によって、大量持ち帰りコミックスシリーズ。

これも、まずまず面白かった。

現代風のとある世界でのお話。森と湖の北国メテオラと南の砂漠の国カナン。両国は長きにわたり国境を巡って戦争を続けてきた。しかし最近、ようやく和平が結ばれ両国に平和が訪れた。
北の英雄と讃えられる王子ヨハネと、南の聖女と謳われる王女ユーダ。この二人の国境を超えた愛の炎が、両国の王を説き、国民を諭し、停戦へと国を動かしたのである。

…というのは表向き。
実は戦争を終わらせるために二人が仕組んだ偽装恋愛なのである。生まれた国が違えば、性格も大幅に異なる二人。まして最近まで憎しみ合っていた国同士の王族である。婚約し国境の街に居を構えたものの、人目のないところでは、悪態を付き、喧嘩が絶えなかった。特に王女ユーダのヨハネに対する嫌悪は凄まじく、自国の民を殺しまくった粗暴な英雄を全否定し冷ややかな眼差しではねつけていた。一方のヨハネも、いつまで経ってもとことんまで嫌い抜くユーダの頑迷さに堪忍袋の緒を切らし、いつでも最後は喧嘩になるのだった。

…というのはまたまた表(?)向き。
実は心の奥底では惹かれ合っている二人だった。しかし初めての恋にとまどうユーダは、自分の心の変化に怯え、子供のように反発するしか表現の方法を知らなかったのだ。そして、突っかかれるとついつい反応してしまうヨハネもまだまだ大人の余裕というものにはほど遠い状態である。

要はツンデレの話である。
あ、あんたなんか嫌いだけど、平和のためだから、し、仕方なく婚約してあげてるんだからね!というヤツである。
しかし、本作では少年誌のようにそこまで記号的で平面的という事もなく、揺れる少女の心理を丁寧に描いているので好感が持てる。また、構造としては良くある類の話であるが、王族同士で、平和が掛かった偽装婚約という設定が意外と面白い。
ただ、二人とも、あまり王族という感じはしない。せいぜい良家の子女という感じで、本物の王族の持つ、雰囲気や態度、思考、物腰、言動などからはほど遠い印象である。話の展開も当然それらの影響を受ける。必然的にどうしても作品としてのスケール感が出ないので、そこはある程度割り引いて鑑賞する必要があるだろう。
絵柄もそう上手いという程ではないが、割合好みのタイプで点が甘い。にっこり逆への字口には弱いのだ。

展開も気になるし、ぜひ続きも読みたいと思う。

小椋アカネ
絶対平和大作戦

今日も明日も。/絵夢羅

例によって大量持ち帰りマンガの1冊。

いわゆる業界マンガ。漫画家を目指す少女のお話である。割合面白かった。

漫画家に憧れる高校一年生、笹神ちかが、幼なじみで姉の同級生でもある少女漫画家の百瀬稜の仕事場に転がり込む所から物語は始まる。
代々教師の家系で、はみ出し者として親兄弟から爪弾きにされて育ったちかは、ついに家出を決意したのだ。同じように親の意向に背いてデザイナーになった姉のはるかを頼り身を寄せ、姉の元彼で現役少女漫画家の稜を紹介されたのだ。
隔週連載の修羅場にドップリと身を置く稜は、ベタすらできないズブの素人であるちかを疎ましく思うが、はるかの手前もあり、また、技術はど下手なもののちかに眠るマンガのセンスを認め、磨けば光る原石として育てる事にした。しかし、アシとしてちかを指導する一方で、目前の仕事に追われるあまり忘れがちだった、漫画とはなにか、なぜ漫画を描くのか、という原点を、ちかのピュアな言動を通して稜は見つめ直してゆく。この物語は、稜の視点でちかの成長を描くだけでなく、ちかによって漫画家としても人としても成長する稜自身の姿をも描く、そんな漫画である。

作画が少々癖がある感じだが、丁寧で読みやすいし、構成も自然。自分で嫌と言うほど知り抜いている漫画家という職業がテーマであるので、そこは有利だろう。しかし、逆に、どれだけ現実に囚われずにそこにフィクションやファンタジーを盛り込めるのか、ストーリーを紡げるのか、という点は実際には難しそうでもある。その辺りのバランスが課題だろう。

作品の雰囲気はややコメディ寄り。やや大げさに言うなら、銀魂の銀時が稜で、そこへ若干無邪気になった神楽が弟子入りした、という感じか。実際、個人的にはかなりこの印象が強い。
ちかは純粋で素直な女子高生だが、イノセントな言動が返ってボディーブローのように相手をえぐるタイプ。ギャグとしても結構好みだ。

漫画を描くハウツーやテクニック、実技指導など、漫画好きには興味深い話題はそれだけでも読んでいて面白い。
漫画家漫画というのは昔から名作が多いジャンルである。今後に期待したい。

絵夢羅
今日も明日も。