阪急電車/有川浩
例によって職場で拾った本。
この著者の本は「図書館戦争」以来である。すっかりビッグネームになったね。
関西人にはなじみ深い阪急電車。その支線を舞台に、たまたま同じ電車に乗り合わせた見ず知らずの人達が織りなす人生模様を描く。それぞれの人生を歩きながら、人は出逢いを経て、その道を僅かに変える。ほんの一言、ほんの一瞥がそのきっかけになり、そして僅かに逸れた道が、人生のはるか先では、大きな違いを生む。人生には、劇的と言って良い、そんな瞬間がある。この本では、ローカル線の車内を舞台に、そうした人生の転機となるエピソードを集めたほのぼのとしたテイストの掌編集である。1つの話に出てくる主人公が、別の話では脇役として登場し、複雑に絡み合っている、ある種のリレー小説という点がミソ。ある日あるダイヤの列車内を、多数の人物の視点から描いたという感じである。
非常に上手い。読みやすい文章、そこそこ盛り上げ、ツボを心得た展開、あっさりとまぶした蘊蓄。一言で言うなら優等生的な小説だろう。
ただし、それだけである。
良い意味でも悪い意味でも、あとに何も残らない小説。暇つぶしを求められたら自信を持って薦められる本だろう。
ある意味計算でもあるだろうが、登場人物が平べったい。とくにジェンダー的な視点など典型的で頑迷で視野狭窄で、悪い意味での「キャラクター」そのものだろう。作者の手駒感が、非常に鼻につく印象だ。描きたい人物があるのではなく、得たいウケがあり、その為に作ったキャラ、という事が透けて見える感じなのだ。読者に読まれたいと思うあまり、本当に自分の書きたい事を書いてないのではないだろうか。秀作をまとめる事に異様に長けた、そんな気がする。
もっと、自分の本心にある不整合を、ゴリっとそのまま書き殴ってしまったほうが良いのでは。小説としての技巧レベルは落ちても、きっと読後に残るものが出てくるだろう。
または、逆に、とことんまで技巧に走っても良いかも。その意味で言えば本書の構成など、もっともっと巧妙に組み上げられるはずである。取り敢えず現状は中途半端。
本書を読んで、一番じんわり来たのは、解説の名に児玉清を見た時だった。

有川浩
阪急電車
この著者の本は「図書館戦争」以来である。すっかりビッグネームになったね。
関西人にはなじみ深い阪急電車。その支線を舞台に、たまたま同じ電車に乗り合わせた見ず知らずの人達が織りなす人生模様を描く。それぞれの人生を歩きながら、人は出逢いを経て、その道を僅かに変える。ほんの一言、ほんの一瞥がそのきっかけになり、そして僅かに逸れた道が、人生のはるか先では、大きな違いを生む。人生には、劇的と言って良い、そんな瞬間がある。この本では、ローカル線の車内を舞台に、そうした人生の転機となるエピソードを集めたほのぼのとしたテイストの掌編集である。1つの話に出てくる主人公が、別の話では脇役として登場し、複雑に絡み合っている、ある種のリレー小説という点がミソ。ある日あるダイヤの列車内を、多数の人物の視点から描いたという感じである。
非常に上手い。読みやすい文章、そこそこ盛り上げ、ツボを心得た展開、あっさりとまぶした蘊蓄。一言で言うなら優等生的な小説だろう。
ただし、それだけである。
良い意味でも悪い意味でも、あとに何も残らない小説。暇つぶしを求められたら自信を持って薦められる本だろう。
ある意味計算でもあるだろうが、登場人物が平べったい。とくにジェンダー的な視点など典型的で頑迷で視野狭窄で、悪い意味での「キャラクター」そのものだろう。作者の手駒感が、非常に鼻につく印象だ。描きたい人物があるのではなく、得たいウケがあり、その為に作ったキャラ、という事が透けて見える感じなのだ。読者に読まれたいと思うあまり、本当に自分の書きたい事を書いてないのではないだろうか。秀作をまとめる事に異様に長けた、そんな気がする。
もっと、自分の本心にある不整合を、ゴリっとそのまま書き殴ってしまったほうが良いのでは。小説としての技巧レベルは落ちても、きっと読後に残るものが出てくるだろう。
または、逆に、とことんまで技巧に走っても良いかも。その意味で言えば本書の構成など、もっともっと巧妙に組み上げられるはずである。取り敢えず現状は中途半端。
本書を読んで、一番じんわり来たのは、解説の名に児玉清を見た時だった。