読んだり観たり聴いたりしたもの -98ページ目

CUTE×GUY/立野真琴

例によって拾ってきた大量マンガの1つ。

絵柄はあまり好みではないし、漫画的にもそう上手くはないが、まあそこそこ面白かった。
性転換変身もののコメディ。

主人公の女子高生高岡純(すみ)は、憧れの同級生須藤満に告白しようとし、大人っぽい女性が好みの彼を振り向かせるために、秘密の薬を口にする。製薬会社勤務のマッドサイエンティストである父が開発したその薬は、一種のホルモン剤で、純は望み通り大人っぽく色っぽく変身する。ただし、それは「男」としてだった。
こうして、満の事を考えてドキドキ鼓動が高ぶると、そのショックで2時間ほど超イケメンに変身してしまうという難儀な体質になってしまった純は、只野ジュンと名乗り、秘密がばれないようドタバタと二重の学園生活を送るハメになった。
憧れの満には、ジュンとして慕われ、嬉しいやら悲しいやら。おまけにジュンを狙う美人保険医は秘密を探り始める。同じように変身してしまう「仲間」も現れて、いよいよ事態は混迷に…。というようなお話。

満が美少年系の優男なので、ジュンとのBLテイストも売りか。
ままならない変身の発動と変身終了のタイムリミットを、いかにトラブルに絡めて上手く笑いを取るかがキモとなってくるだろう。ワンパターン化しやすいと思うので、次巻以降いかに展開の幅を拡げるかが興味深い。
姿形だけでなく、イケメンとしてのナチュラルな言動を何故が純が易々こなせてしまうという辺りを、もう少し活かした展開になってくると面白いだろう。マッドサイエンティストである父を中心に、よりギャグに寄せてゆくというのも良さそうだ。

妻がかなり気に入っているという事もあり、次巻も読んでみようかと。


立野真琴
CUTE×GUY

人類の月面着陸はあったんだ論 と学会レポート/山本弘他

全然知らなかったのだが、本書によると2002年からの数年間、一連のTV番組をきっかけとしてムーンホークス説(アポロの月面着陸はでっち上げで人類は月面に着陸していないと言う陰謀論)が日本で流行ったらしい。
日本ではマイナーなムーンホークスだが、欧米ではもともとメジャーな陰謀論らしく、これら番組の元ネタも欧米のジョーク番組である。しかし、免疫のない日本人にはジョークという点に気づかず、番組での取り上げ方も、真偽を意図して曖昧にした作りだったため、かなり本気で信じてしまった人が続出したらしい。
そして極めつけは、副島某という自称知識人が、このハシカで熱を上げるあまり、ネット上でのヒートアップも手伝って、とうとう「人類の月面着陸は無かったろう論」(副島隆彦)という怪書を上梓した事である。この書籍は内容のあまりのひどさにトンデモ本として大絶賛され、2005年度の「日本トンデモ本大賞」を受賞した。

この本は、こうした経緯と背景を詳説し、この怪書の誤りを解説するという、ムーンホークスとトンデモ本の解説書である。

内容は、まあまあ面白いが、ムーンホークス説自体、主張派の根拠が弱すぎて門前払いという感じだし、上記の怪書に至っては、散見するだけで、そもそも書籍として論述文の体を成してないという始末である。むしろ、売名などのためにわざと書いているのではないかと疑うレベルだ。突っ込みどころが多すぎるというのは、と学会的には嬉しい悲鳴なのかも知れないが、ちょっとあからさまな感じがして、鼻白んだ感がある。

山本弘他
人類の月面着陸はあったんだ論 と学会レポート

ファンション・ファデ/名香智子

文庫の全4巻を読み終わった。

かなり古い作品だと思うが、読者をぐいぐい引き込む魅力に溢れた素晴らしい作品だった。

主人公の女の子、フランソワーズ・バルザック、通称ファンション・ファデはアフリカ生まれのフランス人である。学者で医者でもある父に連れられ、幼少からアフリカで野生児のように豪放磊落に育ったが、父の薦めでフランスに留学する事となった。婚約者のルウルウ(現地人の女の子。当地の風習では女性同士の結婚はおかしくない)を残し、一人旅立つファデ。
見るもの聞くもの珍しい初めて見る大都会で、夢中になって新しいものを吸収する若い感性が最も反応したもの、それはファッションだった。ファデからにじみ出る、装う事に対する天性の勘、そしてアフリカで育まれた独自のセンスは、そうと意識せずとも周囲の注目を集め、初めはモデルとして、そしてデザイナーとしてファッションの道を歩み始める。ファッションデザイナーという職業をを、自らの価値を問う試金石として、ファデはひたすらにファッションに打ち込んでゆく。そんな中で、幾多の師、ライバル、友人達を得、デザイナーとしても人間としても成長してゆく…。という青春ドラマである。
ファデ自身は恋愛には超奥手で、ルウルウという婚約者もいる事から、あまり恋愛話はない。しかし、周囲は流石フランスと言った感じで、愛憎渦巻くロマンスに溢れ、かなり露骨な描写も多い。

絵柄は典型的なお目目キラキラ少女漫画だが、展開の幅広いドラマは目の離せないイベントの連続で、読み出すと引き込まれる。
何より魅力的なのは、登場人物達が、架空の舞台を踊る人形ではないという点だ。みな自分自身の意志と目的を持ち、時に地道に努力し悩み、また時には腹黒く貪欲に謀り、ひたむきに生きる様が輝くような筆致で描かれる。
主人公ファデの成長が最大のテーマである事はもちろんだが、その他にも、一筋縄ではいかないような人物ばかり登場し、それぞれの思惑が交錯する。
ファデとファデの天才的なセンスを愛するデザイナーの若き貴公子「アベイユ」ことユーフォ。デザイナーとしてのユーフォを育て上げ、権謀に長けたファッション界の女帝マダム・フルール。ファデのライバルとしてそして恋敵として事ある毎に突っかかる天才少女デザイナー、ヴェーラ。マダム・フルールを憎み、ファデやヴェーラを使って帝王の座を狙う、追放された天才デザイナー、アルチュール。
パリの上流階級を舞台に、ファッションデザイナー達の、彼ら自身の人生の物語がめぐるのだ。

特に好きだったのは、ひねた性格で露骨にファデをライバル視する少女デザイナー、ヴェーラである。誰にも負けない努力家で誰にも負けない技量を培い頭角を現すが、ファデやアベイユの天才を知って嫉妬に狂い、翻って自身の才の無さを嘆き、しかしそんなそぶりはおくびにも出さず、自信満々で彼らと渡り合い、ありとあらゆる策を弄し、しかしプライドを損ねるような汚い真似だけは絶対にしない、そんな少女(というには結構歳かも)だ。口汚く、性格も悪く、人を見る目が無くて、けんかっ早いなど、全く似てないが、ある意味、彼女は姫川亜弓である。

ファデがデザイナーとして開花してゆく様とは別に、パリファッション界にうごめくマダム・フルールの野望、フルールの秘蔵っ子ユーフォの謎、そしてファデの出生の秘密と、様々な謎や思惑がもつれ合いながら、終盤物語は混沌へ。

ずっとファデを求め続けたユーフォ。自らの幼い恋心がユーフォを求めている事に気づいたファデ。大団円と思わせて、一転、物語の最後にユーフォはファデの元を去る。
ファデはファデで、ついに自らの出生の秘密を知り、新しい家族を得、心は千々に揺れる。パリで知り合った日本人の日翔に育ての父の面影を重ね、一緒に日本に渡る。そうして日本の夏の景色の中で、ファデの物語は幕を閉じるのだ。

どうしてこうしたラストにしたのか、正直、あまり良くは分からなかった。そもそもこのマンガは、何でもトントン拍子に上手くゆく事はなくて、何かが上手く行きかけると、必ず途中で茶々が入る。ずっと上手くいく事はないし、この先どうなるかは分からないよ、という事を示したかったのかもしれない。

ユーフォはずっとファデを陰日向になり見守ってくれていた。ある意味、そこからの卒業という事かもしれない。マンガ「タッチ」のラストで、達也が南から急に離れていくような、そんな青春の通過儀礼を描きたかったのかも。

生みの母から奪ってまで自分を育てたかったマダム・フルールの狂気とも言える愛の深さに、ユーフォが受けた衝撃の強さ、という事だろうか。ユーフォに背負わされた宿命の絶望とも言える深さを思うと、この話の本当の主人公はマダム・フルール、そしてユーフォであってもおかしくはないと思った。。


名香智子
ファンション・ファデ

見学しよう工事現場3 ダム/溝渕利明

シリーズ第三弾は、これまた土木の雄、ダム。

この本もシリーズの例に漏れず、豊富な写真と詳細な解説で、非常に楽しめる作りとなっている。
これまた最新の重力式コンクリートダムである、栃木県の湯西川ダムを題材に取り上げ、ダム建設の醍醐味を語る。高さ100m超、貯水量7億2千万m3以上を誇る大きなダムである。
他の土木建築と比べ、特にダムは、実際のダム本体の建設以前の、調査や事前工事に膨大な時間とコストをかけている事が分かる。湯西川ダムも、本体工事自体は3年という超スピード工法での建設だが、調査と事前工事には10年以上の期間をかけている。

重力式コンクリートダムとは、コンクリートの自重で堰き止めた水圧を受け止める方式のダムである。ゆえに、膨大なコンクリートを必要とし、湯西川ダムの場合、100万m3、ダンプトラック25万台分のコンクリートを使用している。
もちろん、そのような大量のコンクリートを購入していては勿体ないので、セメントだけ買って、砂利や砂などの骨材は現地周辺で生成し、現場でコンクリートを製造するのだ。つまり、ダム建設に先だって、コンクリートの製造設備を建設するのである。
そうして製造したコンクリートを、どうやってダムの形につくってゆくのか、きめ細かい管理や工法などについての説明が詳しい。本書でもシリーズ同様、現場で働く人達のインタビューが大変素晴らしい。

巻末には、世界のダム、日本のダムについてのコラムもある。世界最大のアーチダムである、アメリカコロラド川のフーバーダム(映画トランスフォーマーで破壊されるらしい)は、これ1つで、日本のダム全ての貯水量を上回るという事で驚いた。急峻な地形の日本では、ダムは、建設も維持もかなり工夫が必要のようである。

シリーズ最後は橋である。こちらも楽しみだ。


溝渕利明
見学しよう工事現場3 ダム

3DS/シアトリズム ファイナルファンタジー/スクウェア・エニックス

という事で、パルテナで忙しいのにもかかわらず、こちらも買ってしまった。
体験版で十分に知っていたとは言え、やっぱり面白い。買って良かったと思った。

体験版では分からなかった点としては、カオス神殿の闇の楽譜がかなり面白いという事があり、嬉しい誤算だ。
これはランダムピックされた2曲をセットにして、ランダム生成された難しめの譜面をプレイするモードである。
ランダム生成なので、どんなチョイスでどんな難易度のどんな譜面なのか、バラエティは無限である。楽譜には、番号と共に、発見者としてプレイヤーの名前がクレジットされる。
クリアできれば新しい楽譜が手に入る。また、ドラクエ9の地図のようにすれちがい通信でも交換できる。地元ではまだ交換できていないが、販売数も好調のようであるし繁華街へ行けば期待できるだろう。
なお、本作はセーブデータを2つ作れるので、1本のソフトで自分と妻がプレイしているが、3DSではソフトが刺さっていなくてもすれ違い通信可能なため、妻とは連日すれ違い通信をして闇の楽譜を交換している。

さて、このゲームには一つ難点があるのだ。
ゲームモードに「シリーズ」というものがある。FFの1つの作品を選択して、オープニング、EMS(イベントミュージックステージ)、FMS(フィールドミュージックステージ)、BMS(バトルミュージックステージ)、エンディングと、ストーリー仕立てで連戦するモードである。その作品を振り返るように名シーンをピックアップしており、当然ながらネタバレ満載だ。
我が家では、これまでプレイしたFFシリーズは、4、7、8、10、10-2、13、であり、それ以外のシリーズも13-2以外は全て所持しており、いつかプレイしたいリストには当然載っている。
そのプレイ時期を早めなければならないのでは、という問題なのである。

シアトリズムとして、未プレイのFFシリーズの楽曲もプレイしたいが、ネタバレは嫌。
ならば、先回りして本歌をクリアしておくしかないではないか。

さしあたって、9か12あたりから攻めてみたい所。1~6は、ステートセーブのあるWiiのVCでのプレイが良だろう。

なお、シリーズモードではなく、チャレンジモードなら単なる楽曲プレイだけで、ネタバレ度は極めて低いが、シリーズをプレイしないとチャレンジでの楽曲が解禁されないので辛いところである。闇の楽譜には、シリーズプレイの有無とは無関係に楽曲が登場する。


スクウェア・エニックス
シアトリズム ファイナルファンタジー

3DS/新・光神話 パルテナの鏡/任天堂

前々から期待していたタイトル。もちろん、ジョーシンwebで予約して、発売日からさっそくプレイしていた訳である。
昨日ようやくストーリーモードである「ひとりで」をクリアし、キリが付いたという事で書いておく。セーブファイルのクリア率は79.7%となっている。プレイ時間はここまで20時間。ただし、これらの時間は対戦や融合にかなり割かれており、シングルプレイ自体のプレイ時間は約10時間。

このゲームは、3DSの立体視機能を活かした、三人称視点のアクションシューティングである。
本編である「ひとりで」モードは、ストーリーに沿った章で構成される。各章は、「罪と罰」のようなオートクルーズシューティングとなる5分程度の空中戦、敵地へ降りてからの探索TPSである地上戦、そしてボス戦の3パートで構成される。操作系統としては、空中戦と地上戦の大きく分けて2種があることになる。
もう一つの柱は、地上戦の操作系を用いて対戦を行う「みんなで」モードである。ローカルそしてWifiに対応している。実はこちらがメインモードだ。

このゲームを一言で表すなら、カスタムできるTPSのスマブラ、とでも言おうか。
他のゲームで例えると、「罪と罰」+「ガチャフォース」と言ったところ。

このゲームのキモは、主人公の飛べない天使ピットが使用する武器、「神器」の多様さにある。
神器は狙撃系、打撃系など9系統に数十以上の種類が用意されているが、それぞれがガラッと異なる個性を持っている。例え同じ系統の神器であっても、グラやエフェクト、効果音はもちろん、弾の威力、飛距離、精度、誘導性、チャージ時間、移動速度、などなど、多数のパラメータを調整して、使用感の「味付け」がなされており、はっきりと神器の個性を感じる事ができるのだ。
つまり、主人公はピットしかいないのだが、使用する神器を選択する事により、事実上、「多数の使用キャラ」が選択できるゲーム、という事になる。そのキャラ数とバラエティの幅は、スマブラ以上である。だれでもお気に入りの神器が見つかるだろう。

そして、バトルに持ち込めるパワーアップアイテムである「奇跡」が、さらにこの多様さに拍車をかける。奇跡には、強力なボム系攻撃であったり、パラメータ強化、属性攻撃付与、特殊能力発動など、多彩なものがそろっている。

例えば、威力は絶大だが移動速度が極めて遅い巨塔系の神器と、移動速度が速くなる奇跡を組み合わせる。狙撃系の神器と、弾が透明化して見えなくなる奇跡を組合せ、遠くから見つからずにチクチク削る。豪腕など打撃系神器に、打撃強化系奇跡を組み合わせて特攻。などなど、好みに応じて無数の戦術が考えられるだろう。
あーでもないこーでもないと自分だけの戦術を考えるのは本当に楽しい。まして、実践で上手くハマった時の快感は凄まじい。

そしてとどめを刺すのが、これら神器の育成だ。
1本1本の神器には、射撃・打撃の威力と、6個まで付与される特殊パラメータの固有値があるのだ。
どちらのモードでも、バトル中にご褒美として神器を入手できるが、これらのパラメータは入手時にランダムで決まる。そして、「ひとりで」なら、難易度を上げると強い神器が出やすくなっている。
また、弱い神器であっても、それらを掛け合わせる「融合」によって、能力を引き継いだより強い神器を生み出す事ができる。

こうして、バトルをして神器をゲット→ゲットした神器を融合して強化→強化した神器と奇跡で戦術を考える→考えた戦術を有利にする神器を求めてバトル、というループは、なかなかやめ時が見つからない。

このように、このゲームは基本的には、スマブラなどの対戦ツール系のゲームである。側に置いておいて長い事チクチクと遊べるだろう。
かといって、ストーリーである「ひとりで」がおまけという事はない。こちらも素晴らしい出来映えだった。とくに、ピットやパルテナ、その他のキャラが掛け合い漫才の如く、シーンの展開に合わせてこれでもか、というぐらいに喋りまくる演出が実に良かった。
ストーリーはシリアスなものではなく、ゲーム自体のパロディなどメタギャグも多い、非常にコミカルな路線で、万人向けの楽しめる内容だ。とは言え、任天堂の事である。単純な善と悪の戦いなどといったライトなだけでは終わらず混沌とし二転三転するシナリオの幅と、時にポロポロと時に堂々と提示されるシニカルでブラックなユーモアに、大人も十分に堪能できるだろう。

音楽も素晴らしい。難を言うなら、バトル中は忙しすぎてじっくり聴いている暇はない、という点だ。もちろんぬかりなくサウンドテストモードもあるが、クラニンのサントラを申し込んだので、楽しみに待っている所。コンポーザーには有名どころを揃えて粒ぞろいの楽曲群である。とくに、メインテーマである、パルテナのテーマは、編曲をあちこちのモードで聴く事もあり耳に残る。この曲は桜庭統の作曲となっておりでさすがである。

「ひとりで」モードは、その演出も含め、かなりのボリュームであると思うが、難易度システムがそのボリュームをさらに増やしている。
手持ちのポイントである「ハート」を注ぎ込んで難易度を変更するという「悪魔の釜」システムは斬新だ。ハートを賭けて難易度を上げれば上げるほど、得られるハートや神器のレベルは上がる。しかし、実力以上に上げて失敗すれば、ハートを失う。リスク&リターンである。また一方で難易度をゼロに下げればほぼ無敵、という初心者救済システムもかねているところが面白い。ただし、このゲームは、基本的にはコアゲーマー向けゲームである事は間違いないだろう。
また、 宝物庫という、スマブラで言うところのクリアゲッターが、これでもか、というぐらいに用意されている。
これを一通りやろうとするだけで、コツコツゲーマーなら月単位で時間がかかり、長い事遊べるだろう。
もちろん、上で述べたように、対戦&神器育成は終わりの見えない遊びとなるだろう。

「みんなで」の対戦モードも面白い。ルールが2つあり、バトルロイヤル6人対戦と、3vs3のチーム戦である「天使の降臨」だ。とくに天使の降臨は、強くない武器にも意味がある、という点が独特だ。神器にはそのパラメータの強さに応じた「価値」がポイントで表示されている。チームにはそれぞれチームポイントがあり、倒されたプレイヤーの神器のポイントがそこから引かれるのだ。つまり、分不相応な強い神器を持っていっても、使いこなせなければ、返って足を引っ張るだけ、という事だ。チームポイントをゼロにしたプレイヤーが天使に生まれ変わり、先に天使を倒された方が負け、というルールである。天使は他のプレイヤーであるファイターに比べて基本性能がシャア並に強化されているので、天使になった途端に敵を蹴散らしに向かっても良いだろう。しかし、敵も当然天使を集中して狙ってくる訳なので、いくら強くても囲まれるとヤバイ。よって、天使はずっと逃げている、という戦法もアリだろう。この辺の駆け引きがミソである。

最後に特筆すべき点として、斬新な操作体系について。
CM等でも強調しているように、このゲームは、アナログパッドで移動、Lボタンで射撃、ペンで照準、の簡単操作、という売りである。もちろんそこに嘘はないが、実は、本当に重要なのは、地上戦での、ペンフリック(タッチペンを素早く払うように動かすこと)による視点移動操作なのである。

計算機の演算性能が上がり、ポリゴンによる3D空間の表現が可能になった時、3D空間ゲームが登場した。3D空間では、物体を任意の方向から見た映像を瞬時に作成する事ができる。
では、逆にどこからどう見た映像を表示したらベストなのか?実はこれが難問なのだ。3Dゲームの歴史は、そのまま3D空間を切り取る「カメラ」の歴史でもある。操作キャラの後方上部に張り付いて前方を俯瞰するカメラ、トップビューのカメラ、監視カメラのような特定位置からの固定アングルを操作キャラの移動と共に切り替えるメラ、2Dライクに主人公の向きとは無関係にサイドから映し続けるカメラ、操作キャラの視点をそのまま表示する主観カメラ、などなど。そしてこれらのカメラをどう動かすか?プレイヤーに操作させるのか、自動で視点を変えるのか?そうしたカメラの機能を設計する事が、3Dゲームの設計においてかなりのウェイトを占めるのである。
例えば、モンハンやメタルギアなどは、右手系のスティックやボタンを使用した、完全手動カメラである。特にMGSPWなどの場合、射撃武器の照準が画面センター固定なので、視界の移動=照準の移動となる。
これはこれで完成された一つの手法であるが、正確に精度良く動かしたい照準と、キョロキョロ素早く見回したい視界で、それぞれ異なるレスポンス要求があるため、双方で妥協せざるを得ないという欠点があった。

そこで、このパルテナのペンフリックカメラである。
パルテナでは、照準の移動は、下画面のタッチ移動(ドラッグ)によって行う。下画面のタッチで、上画面の相似的な位置を照準するのではない、という点に注意して欲しい。ペンを浮かせて別の場所をタッチしても照準は移動しない。そして、フリックすると払った方向へカメラが高速回転する。回転は慣性が付いてしばらく回り続けタッチすると停止する。回転の速度はフリックの速度で調節可能だ。
つまり、ドラッグとフリックを使い分ける事で、何とペン一本で照準とカメラの問題を解決してしまったのである。フリックすれば、真後ろの敵に、瞬時に回転して向き合う事ができる。そして同時にドラッグで照準を動かして、精密射撃も可能なのである。
特殊な操作に最初はとまどうだろう。しかし、数時間プレイして一旦慣れてしまうと、これまでの3Dゲームのカメラ操作が信じられないほどもっさりに感じて、俺はニュータイプか、と思うほど素早くアクションを繰り出せるのだ。もちろん、ライバル達もニュータイプなのでそうそう勝てはしないが。それでも、このコントロールされたスピード感は素晴らしく、一旦この操作感を知ってしまうと、十字キーやアナログスティックでの視点移動にはもう戻れない。この操作体系は、今後、3DSでのある種のスタンダードになる事は間違いないだろう。
もちろんMGSの操作系は、そのゲームのスピード感に非常にマッチしており、これをペンフリックで作ったら満点かというとそれは疑問である。しかし、パルテナをスティックカメラでプレイすると魅力は半減だろう。

とにかく、信じられないほど盛りだくさんの内容で、信じられないほど丁寧に作ってある本作は、アクションが嫌いでなければ誰にでも安心して薦められる傑作である。

唯一難点を挙げるとするなら、ネット対戦の「みんなで」を、マリオカートのようなシステムで、フレンド+ネットの他人プレイヤーを織り交ぜて遊べる仕組みがあると良かったかも。とくに、天使の降臨など、フレンドチーム同士での対戦モードがあると白熱したのではないだろうか。

任天堂
新・光神話 パルテナの鏡

高校デビュー/河原和音

例によって、大量持ち帰りコミックの一つ。2巻までを読んだ。

しっかりした作りで面白い。

中学三年間を部活のソフトボールに捧げた熱中少女、晴菜。同時に少女漫画をもこよなく愛する彼女は、高校入学を機に、ある目標を打ち立てる。
中学はソフトに捧げた。私は、マンガの恋愛にも心底憧れている。ならば、高校は恋愛に全てを賭けようと。

しかし、モテ・恋愛とは無縁だったスポーツ少女は、モテようと努力すればするほど空回り。そのあからさまなイタい姿と雰囲気に、抜群のナンパスポットでさえ、たたずむ晴菜に声をかける者はいなかった。
入学早々の挫折にうちひしがれる晴菜。しかし、ふと思う。そうだ、ソフトでも大事なのはコーチの指導だった。適切な指導で、彼女はぐんぐんソフトの技量を上げた。頑張り屋で努力家でおまけに単純な彼女には、進むべき道を教えてくれる存在が必要なのだ。
ひょんな偶然から、男ウケの感性が抜群で驚異のモテ男、ヨウと知り合う。彼は同じ高校の先輩だった。度を超すモテ体験から傷つき辛酸を舐め、すっかり恋愛に辟易としているヨウは、晴菜から恋愛モテコーチの頼みにも、つれない返事で歯牙にもかけない。
しかし、それでも必死で連日頼み込む晴菜。晴菜の芯にある真剣さ、ひたむきさに感じ入ったヨウは、2つの条件を出してコーチを引き受ける。絶対に泣かない事。そして、絶対に俺を好きにならない事。
こうして、デコボコ師弟の恋愛修行が始まった…。というような話。

パターンとしては良くある感じでは。
恋に恋する少女が、本当の恋心を知ってゆく過程。夢の王子様を追い求めながら気づく、身近な異性への募る思い。初めて経験する、失恋、届かぬ想いの辛さ。恋愛によってかき乱される人間関係の苦悩、などなど。

ドロドロした方向へ持っていかず、スポーツ少女晴菜の性格のそのまま、明るく直球勝負の展開は、作風に合っていると思うし、好印象だ。しかし、その分若干アクが薄い。ヨウの妹麻美がもうすこしヒネてくれると幅がでるだろう。

結局、口ではキツイ事を言いながら親身になってコーチしてくれるヨウの素晴らしさに惹かれ、彼に禁断の恋をしてしまう晴菜、と予想通りの展開。しかし直球少女では展開も早そうで、それだとあっと言う間に終わってしまいそうだが、一体どう盛り上げてゆくのか興味がある。

8年前の作品だが、それでも、高校は恋愛に賭けるとか、休日はスポットで終日ナンパ待ちとか、あとメインテーマであるモテ・ファッション研究とか、こうした感性のリアリティはどんな感じなのだろう。あるラインまではリアルで、そこから僅かにはみ出た部分がギャグ・コメディとなるのだろうが、不幸にしてその辺のニュアンスは掴めない。

友達だからかどうかは分からないが、椎名軽穂と作画の雰囲気がすごくよく似ている。細部をもう少しクリアにした感じで、絵は河原和音の方がレベルが2つぐらい上だろう。方向性は、河原和音が水性ボールペンとすれば、椎名軽穂は筆ペンかな、といった印象。

機会を見て続きも読んでみたい。

河原和音
高校デビュー

スラムダンク 20巻/井上雄彦

湘北の強さ、そしてまた陵南の強さを思い知らされる。

ゴリ赤木と魚住の真っ向勝負が、彼らの3年間の回想を交えて展開。
チームメイトに恵まれ、水を得た魚のように才能を開花した赤木が凄まじい活躍。彼を止めるには、もはやファウル退場も覚悟で、魚住を投入する他はない。陵南田岡監督もとうとう我慢しきれず立つ。
とぎすまされた集中力がもたらすファウルギリギリのプレイで、魚住は湘北へのプレッシャー役を一人で張る。
そして負担から解き放たれた仙道は、コートを舞う。

もちろん、湘北も負けていない。
流川、リョータ、三井、そして花道も、噛み合った歯車のように、唸りを上げて駆け回り、得点を重ねてゆく。
「君たちは強い」という安西先生の言葉通りに。

しかし、前巻から時限爆弾のように田岡監督が予測していた、湘北の不安要素が顕在化し始める。
各自3つを背負ったファウル、選手層の薄さ、安西先生不在、そして素人花道。

仙道のスーパープレイで、ジリジリと追い上げられる恐怖に、今まで気づきもしなかった疲労が選手にのしかかる。
ここまで来たら気合いだ、のかけ声も空しく、途切れる集中力、目立ち始めるミス、そしてとうとう、三井が倒れ…。

こんなときに安西先生がいてくれたら…。
どうなる湘北。次巻で勝敗決するのか?

しかし、すでに20巻である。全31巻という事は、スラムダンクという作品は、花道のこの1年時のインハイまでの激闘を描いたら終わりそうだ。陵南戦もこれで4巻目。という事は、陵南を下して、全国に行って、あと湘北の2試合分ぐらいを描いて終わりかな?


井上雄彦
スラムダンク 20巻

ふしぎ遊戯 玄武開伝 1/渡瀬悠宇

先日のキャンペーンで大量に持ち帰ったマンガの一つ。
本編?の「ふしぎ遊戯」はかなり有名という事で、こちらも読んでみた。
独立した外伝っぽい感じで、本編を飛ばして、こちらのシリーズだけ読んでも問題ない様子。

ベテランの安定した筆致で、作画もストーリー展開も不足のない印象。
しかし、逆に言うと、すべすべに磨かれた肌触りでは、ザラついて心に引っかかるようなポイントも無く、スッと流れていってしまう感じ。

お話は、大正のお転婆娘、多喜子がヒロイン。自分と労咳の母を省みず、考古学の調査に飛び回る父がもたらした、一冊の書。亡くした母への慟哭と、父への怒りをぶつけた時、多喜子はその書籍を通じて異世界へと飛翔した。世界が滅ぶ時現れるという、玄武の巫女、として、異世界での多喜子の冒険が始まる…。という所か。

一言で言うと、犬夜叉なのだな、という印象。

壮大なバックストーリーに、次から次への発生イベント、魅惑的なキャラ、と、すごく良くできているとは思うが、多分、趣味の問題だろうが、すでに1巻にしてお腹一杯状態だ。
続きはまあ、機会があれば読んでみたい。


渡瀬悠宇
ふしぎ遊戯 玄武開伝 1

極限の科学/伊達宗行

大変面白い本だった。
著者の言うには高校生以上を対象との事である。確かに科学好きの高校生なら読めるだろう。が、スラッと書かれた文章の、その意味までじっくり理解しようとすると、やはり初歩的な量子力学、物性物理、熱力学、電磁気学などの知識が必須だろう。よって、専門に分類した。

やはり、極限とは、ロマンである。
この本では、温度、圧力、そして磁力の3分野について、その極限を目指す現代物理の挑戦を紹介する。一つだけ毛色が違うなと思うだろうが、磁力は著者の専門なのだ。

俯瞰的な視点がよい。各分野での歴史的な発展を紹介していたり、物理学全体の中での、各分野の占める位置など、総合的に体系的に述べてある。
また、実験屋の誇りに満ちた、実験の詳細についての生き生きとした記述は読んでいて胸が躍る。
初めて聞くような、目から鱗の指摘も多く、大変ためになる。

独特のリズムがある文章は、やや古風な点を除けば、大変親しみやすく、人柄が偲ばれるようだ。


伊達宗行
極限の科学