ファンション・ファデ/名香智子
文庫の全4巻を読み終わった。
かなり古い作品だと思うが、読者をぐいぐい引き込む魅力に溢れた素晴らしい作品だった。
主人公の女の子、フランソワーズ・バルザック、通称ファンション・ファデはアフリカ生まれのフランス人である。学者で医者でもある父に連れられ、幼少からアフリカで野生児のように豪放磊落に育ったが、父の薦めでフランスに留学する事となった。婚約者のルウルウ(現地人の女の子。当地の風習では女性同士の結婚はおかしくない)を残し、一人旅立つファデ。
見るもの聞くもの珍しい初めて見る大都会で、夢中になって新しいものを吸収する若い感性が最も反応したもの、それはファッションだった。ファデからにじみ出る、装う事に対する天性の勘、そしてアフリカで育まれた独自のセンスは、そうと意識せずとも周囲の注目を集め、初めはモデルとして、そしてデザイナーとしてファッションの道を歩み始める。ファッションデザイナーという職業をを、自らの価値を問う試金石として、ファデはひたすらにファッションに打ち込んでゆく。そんな中で、幾多の師、ライバル、友人達を得、デザイナーとしても人間としても成長してゆく…。という青春ドラマである。
ファデ自身は恋愛には超奥手で、ルウルウという婚約者もいる事から、あまり恋愛話はない。しかし、周囲は流石フランスと言った感じで、愛憎渦巻くロマンスに溢れ、かなり露骨な描写も多い。
絵柄は典型的なお目目キラキラ少女漫画だが、展開の幅広いドラマは目の離せないイベントの連続で、読み出すと引き込まれる。
何より魅力的なのは、登場人物達が、架空の舞台を踊る人形ではないという点だ。みな自分自身の意志と目的を持ち、時に地道に努力し悩み、また時には腹黒く貪欲に謀り、ひたむきに生きる様が輝くような筆致で描かれる。
主人公ファデの成長が最大のテーマである事はもちろんだが、その他にも、一筋縄ではいかないような人物ばかり登場し、それぞれの思惑が交錯する。
ファデとファデの天才的なセンスを愛するデザイナーの若き貴公子「アベイユ」ことユーフォ。デザイナーとしてのユーフォを育て上げ、権謀に長けたファッション界の女帝マダム・フルール。ファデのライバルとしてそして恋敵として事ある毎に突っかかる天才少女デザイナー、ヴェーラ。マダム・フルールを憎み、ファデやヴェーラを使って帝王の座を狙う、追放された天才デザイナー、アルチュール。
パリの上流階級を舞台に、ファッションデザイナー達の、彼ら自身の人生の物語がめぐるのだ。
特に好きだったのは、ひねた性格で露骨にファデをライバル視する少女デザイナー、ヴェーラである。誰にも負けない努力家で誰にも負けない技量を培い頭角を現すが、ファデやアベイユの天才を知って嫉妬に狂い、翻って自身の才の無さを嘆き、しかしそんなそぶりはおくびにも出さず、自信満々で彼らと渡り合い、ありとあらゆる策を弄し、しかしプライドを損ねるような汚い真似だけは絶対にしない、そんな少女(というには結構歳かも)だ。口汚く、性格も悪く、人を見る目が無くて、けんかっ早いなど、全く似てないが、ある意味、彼女は姫川亜弓である。
ファデがデザイナーとして開花してゆく様とは別に、パリファッション界にうごめくマダム・フルールの野望、フルールの秘蔵っ子ユーフォの謎、そしてファデの出生の秘密と、様々な謎や思惑がもつれ合いながら、終盤物語は混沌へ。
ずっとファデを求め続けたユーフォ。自らの幼い恋心がユーフォを求めている事に気づいたファデ。大団円と思わせて、一転、物語の最後にユーフォはファデの元を去る。
ファデはファデで、ついに自らの出生の秘密を知り、新しい家族を得、心は千々に揺れる。パリで知り合った日本人の日翔に育ての父の面影を重ね、一緒に日本に渡る。そうして日本の夏の景色の中で、ファデの物語は幕を閉じるのだ。
どうしてこうしたラストにしたのか、正直、あまり良くは分からなかった。そもそもこのマンガは、何でもトントン拍子に上手くゆく事はなくて、何かが上手く行きかけると、必ず途中で茶々が入る。ずっと上手くいく事はないし、この先どうなるかは分からないよ、という事を示したかったのかもしれない。
ユーフォはずっとファデを陰日向になり見守ってくれていた。ある意味、そこからの卒業という事かもしれない。マンガ「タッチ」のラストで、達也が南から急に離れていくような、そんな青春の通過儀礼を描きたかったのかも。
生みの母から奪ってまで自分を育てたかったマダム・フルールの狂気とも言える愛の深さに、ユーフォが受けた衝撃の強さ、という事だろうか。ユーフォに背負わされた宿命の絶望とも言える深さを思うと、この話の本当の主人公はマダム・フルール、そしてユーフォであってもおかしくはないと思った。。

名香智子
ファンション・ファデ
かなり古い作品だと思うが、読者をぐいぐい引き込む魅力に溢れた素晴らしい作品だった。
主人公の女の子、フランソワーズ・バルザック、通称ファンション・ファデはアフリカ生まれのフランス人である。学者で医者でもある父に連れられ、幼少からアフリカで野生児のように豪放磊落に育ったが、父の薦めでフランスに留学する事となった。婚約者のルウルウ(現地人の女の子。当地の風習では女性同士の結婚はおかしくない)を残し、一人旅立つファデ。
見るもの聞くもの珍しい初めて見る大都会で、夢中になって新しいものを吸収する若い感性が最も反応したもの、それはファッションだった。ファデからにじみ出る、装う事に対する天性の勘、そしてアフリカで育まれた独自のセンスは、そうと意識せずとも周囲の注目を集め、初めはモデルとして、そしてデザイナーとしてファッションの道を歩み始める。ファッションデザイナーという職業をを、自らの価値を問う試金石として、ファデはひたすらにファッションに打ち込んでゆく。そんな中で、幾多の師、ライバル、友人達を得、デザイナーとしても人間としても成長してゆく…。という青春ドラマである。
ファデ自身は恋愛には超奥手で、ルウルウという婚約者もいる事から、あまり恋愛話はない。しかし、周囲は流石フランスと言った感じで、愛憎渦巻くロマンスに溢れ、かなり露骨な描写も多い。
絵柄は典型的なお目目キラキラ少女漫画だが、展開の幅広いドラマは目の離せないイベントの連続で、読み出すと引き込まれる。
何より魅力的なのは、登場人物達が、架空の舞台を踊る人形ではないという点だ。みな自分自身の意志と目的を持ち、時に地道に努力し悩み、また時には腹黒く貪欲に謀り、ひたむきに生きる様が輝くような筆致で描かれる。
主人公ファデの成長が最大のテーマである事はもちろんだが、その他にも、一筋縄ではいかないような人物ばかり登場し、それぞれの思惑が交錯する。
ファデとファデの天才的なセンスを愛するデザイナーの若き貴公子「アベイユ」ことユーフォ。デザイナーとしてのユーフォを育て上げ、権謀に長けたファッション界の女帝マダム・フルール。ファデのライバルとしてそして恋敵として事ある毎に突っかかる天才少女デザイナー、ヴェーラ。マダム・フルールを憎み、ファデやヴェーラを使って帝王の座を狙う、追放された天才デザイナー、アルチュール。
パリの上流階級を舞台に、ファッションデザイナー達の、彼ら自身の人生の物語がめぐるのだ。
特に好きだったのは、ひねた性格で露骨にファデをライバル視する少女デザイナー、ヴェーラである。誰にも負けない努力家で誰にも負けない技量を培い頭角を現すが、ファデやアベイユの天才を知って嫉妬に狂い、翻って自身の才の無さを嘆き、しかしそんなそぶりはおくびにも出さず、自信満々で彼らと渡り合い、ありとあらゆる策を弄し、しかしプライドを損ねるような汚い真似だけは絶対にしない、そんな少女(というには結構歳かも)だ。口汚く、性格も悪く、人を見る目が無くて、けんかっ早いなど、全く似てないが、ある意味、彼女は姫川亜弓である。
ファデがデザイナーとして開花してゆく様とは別に、パリファッション界にうごめくマダム・フルールの野望、フルールの秘蔵っ子ユーフォの謎、そしてファデの出生の秘密と、様々な謎や思惑がもつれ合いながら、終盤物語は混沌へ。
ずっとファデを求め続けたユーフォ。自らの幼い恋心がユーフォを求めている事に気づいたファデ。大団円と思わせて、一転、物語の最後にユーフォはファデの元を去る。
ファデはファデで、ついに自らの出生の秘密を知り、新しい家族を得、心は千々に揺れる。パリで知り合った日本人の日翔に育ての父の面影を重ね、一緒に日本に渡る。そうして日本の夏の景色の中で、ファデの物語は幕を閉じるのだ。
どうしてこうしたラストにしたのか、正直、あまり良くは分からなかった。そもそもこのマンガは、何でもトントン拍子に上手くゆく事はなくて、何かが上手く行きかけると、必ず途中で茶々が入る。ずっと上手くいく事はないし、この先どうなるかは分からないよ、という事を示したかったのかもしれない。
ユーフォはずっとファデを陰日向になり見守ってくれていた。ある意味、そこからの卒業という事かもしれない。マンガ「タッチ」のラストで、達也が南から急に離れていくような、そんな青春の通過儀礼を描きたかったのかも。
生みの母から奪ってまで自分を育てたかったマダム・フルールの狂気とも言える愛の深さに、ユーフォが受けた衝撃の強さ、という事だろうか。ユーフォに背負わされた宿命の絶望とも言える深さを思うと、この話の本当の主人公はマダム・フルール、そしてユーフォであってもおかしくはないと思った。。