●Sam Cooke/Twistin' The Night Away(1962) 

●Ray Charles/Modern Sounds In Country and Western(1962) 

●Otis Redding/Pain In My Heart (1964) 

●The Impressions/Keep On Pushing(1964) 

●The Temptations/Temptations Sings Smokey (1965) 

●Don Covay & The Goodtimers/Mercy!(1965) 

●James Brown & The Famous Flames/I Got You(1966) 

●George Benson/George Benson Cookbook(1966) 

●Jackie Wilson/Higher and Higher(1967) 

●Jimi Hendrix/Are You Experienced(1967) 

●Magic Sam/West Side Soul(1967) 

●Chuck Berry/Chuck Berry In Memphis(1967) 

●Muddy Waters/Electric Mud(1968) 

●The Staple Singers/Soul Folk In Action(1968) 

●King Curtis/Instant Groove(1969) 

●Roland Kirk/Volunteered Slavery (1969) 

●The Isley Brothers/It's Our Thing(1969) 


●Marvin Gaye/That's The Way Love Is(1970) 

●Donny Hathaway/Everything Is Everything (1970) 

●Bill Withers/Just As I Am(1971) 

●Sly & The Family Stone/There's Riot Goin' On(1971)

●Buddy Guy & Junior Wells/Play The Blues(1972) 

●Al Green/I'm Still In Love With You(1972) 

●The Wailers/Burnin'(1973) 

●Jimmy Cliff/Unlimited(1973) 

●Fela Kuti & Africa70/Afrodisiac(1973) 

●Cornel Dupree/Teasin'(1974) 

●Average White Band/Cut The Cake(1975) 

●Harbie Hancock/Man-Child(1975) 

●O'Jays/Family Reunion(1975) 

●Stevie Wonder/Songs In The Key Of Life(1976) 

●Boz Scaggs/Silk Degrees(1976) 

●Chaka Khan/Chaka (1978) 

●Earth,Wind & Fire/I Am(1979) 


●The Jacksons/Triump(1980) 

●Bobby Womack/The Poet(1981) 

●Roger/The  Many Facets Of Roger(1981) 

●Gil Scott-Heron/Reflections(1981) 

●Linton Kwesi Johnson/Making History(1983) 

●George Adams-Don Pullen Qualtet/City Gates(1983) 

●Peabo Bryson & Robarta Flack/Born To Love(1983) 

●上田正樹/No Problem(1983) 

●RCサクセション/OK(1983) 

●RATS & STAR/Soul Vacation(1983) 

●円道一成/Run to Live,Live to Run(1984)

●Tina Turner/Private Dancer(1984) 

●Simply Red/Picture Book(1985) 

●The Robert Cray Band/Strong Persuader(1986) 

●Gregory Abott/Shake You Down(1986) 

●Anita Baker/Rapture(1986) 

●Terence Trent D'Arby/Introducing The Hardline To T.T.D (1987) 

●Fishbone/Truth and Soul(1988) 

●The Dirty Dozen Brass Band / VooDoo (1989)

●Neville Brothers/Yellow Moon(1989) 

●Youssou N'Dour/The Lion(1989) 


●Public Enemy/Fear Of A Black Planet(1990) 

●Lenny Kravitz/Mama Said(1991) 

●Arrested Development/3 Years, 5 Months And 2 Days In The Life Of...(1992) 

●Guru/Jazzmatazz Vol.1(1993) 

●Take6/Join The Band(1994) 

●Sounds Of Blackness/Africa To America(1994) 

●Meshell Ndegeocello/Peace Beyond Passion(1996) 

●Lauryn Hill/Miseducasions Of Lauryn Hill(1998) 

●Aretha Franklin/Rose Is Still A Rose(1998) 


golden(以下g):「いやー、だらだらと書いているうちに60枚にもなってしまいました。」
blue(以下b):「やりすぎや。番外編も入れたら64記事やで。」

g:「まだまだ語り足りない感じだけど。」

b:「まぁ、すごいミュージシャンがぎょーさんいてるから、なかなか絞れんけどな。

g:「もちろん全部好きなんですが、大好きな60枚というよりも、時代ごとに特徴の強いものをピックアップしていったらこんな数になっちゃった、という感じ。」
b:「60年代、70年代、80年代とそれぞれ17枚ずつ。これでもう51か。」

g:「あと90年代が9枚。」

b:「90年代はそこまで聴きこめてへんねん。ディアンジェロとかエリカ・バドゥとか、マストなもんもけっこうあるねんけど。」

g:「ザ・ルーツとかもかっこよかった。」

b:「まぁそれを言うんやったら、60年代・70年代にはもっと好きなんがぎょーさんあるねんけどな。」
g:「ジーン・チャンドラーとかアーサー・アレクサンダーとかはベスト盤でしか聴いてないから、適切なアルバムがなかったんだよね。」

b:「60年代初めはまだまだシングルレコード中心の時代やからな。」

g:「熱いシャウトのサム&デイヴにウィルソン・ピケット。フォーキーな魅力のクラレンス・カーター、70年代ならジョニー・テイラーや大人のウェルメイドな質感のブルック・ベントンに、O.V・ライトやジョニー・ブリストル、ア・カペラでゴスペリーなパースエイジョンズ。全部書こうと思ったらゆうに300枚越しちゃうよ。」

b:「ソウル/R&Bと銘うってはいるけど、どっちかっちゅーと、ソウル・ブルース・ジャズ・ファンク・ロックといったジャンルのすき間で落っこちそうなのをいっぱい拾った感じやな。」

g:「いや、実際、60年代の最初の頃って、ジャズもブルースもソウルもごちゃ混ぜなのよ。レイ・チャールズはジャズも演ってたし、このシリーズではジョージ・ベンソンを取り上げたけど、ソウル・ジャズなんてのもヒットしていたようだし。」

b:「ドナルド・バードとかラムゼイ・ルイスとかオルガンのジミー・スミスとか。」
g:「ローランド・カークやハービー・ハンコックになると完全にジャズ・ミュージシャンというか、明らかにソウル・ミュージックではないけどね、でもど真ん中のジャズからは外れちゃってて、その外れ方が魅力的だった。」

b:「外れ方がかっこいいといえばジミ・ヘンドリックスもそうやし、テレンス・トレント・ダービーやレニー・クラヴィッツあたりもそうやな。」
g:「広義のブラック・ミュージックというか、ロックとソウルのボーダーっていうか。」

b:「そういうことならファンカデリックやリヴィング・カラーも入れるべきだったのでは?」

g:「その辺のサンプルとしてはフィッシュボーンを入れたんだけど。リヴィング・カラーまでいくと完全にロックだと思うんだよね。黒人が演るロック。」

b:「プリンスとマイケル・ジャクソンは?」

g:「マイケルはジャクソンズを入れたし、プリンスはねぇ、うーん、僕では語り手として不十分なので割愛してしまいました。超重要人物ではあるんだけど。

b:「アヴェレージ・ホワイト・バンドはまぁ納得やけど、ボズ・スキャッグスとかシンプリー・レッドはどうなん?」
g:「いやー、ボズの70年代後半の作品群はめちゃくちゃソウルフルだし、ソウルに接近する入口として80年代中期のイギリスのブルー・アイド・ソウルは大きなムーヴメントだったんだよ。」

b:「黒いロックもあれば、白いソウルもあるっていうことやな。」

g:「一時期のJ・ガイルズ・バンドも真っ黒やし、ホール&オーツとかKC&サンシャイン・バンド、ブルース・ブラザーズあたりはものすごくソウルフルやと思うけどね。」

b:「白いソウルだけやなく黄色いソウルもあるねんけどな。」

g:「上田正樹、RCサクセション、RATS & STAR、円道一成は番外編として書いたけど。」

b:「RCは当時ソウルとは思ってへんかったけど、オーティスやストーンズを見本にしたサウンドはけっこうソウルフルやった。」

g:「今だったらそういうプロモーションで売り出されたのかも知れないけど、当時は誰もそんなふうには捉えてなかったよね。」

b:「80年代日本にはまだソウルは馴染んでなかったからな。」

g:「日本で黒っぽいのが根付いたのは久保田利伸以降という印象だけどね。まさにバブル頃。」

b:「まぁ、ソウルフルということは、肌の色だけちゃうってゆーことやな。」

g:「一般に信じられている“ジャンル”という区分けを取り除いてみたい、という気持ちはありました。」
b:「まぁ、音楽に限らんけど、ジャンルやカテゴリーっちゅーのは、わかりやすい反面、色眼鏡っちゅーか、そーゆーのは起こりやすいからな。」
g:「典型的なスタイルの人ってなんだかなぁって思っちゃうんですよね。ベースボールキャップとアディダスのラッパーとか、革ジャン長髪ブラックジーンズのメタルの人とか、チェックのシャツで長髪メガネのオタクとか、あとパンチパーマにキラキラシャツのヤクザとか。」

b:「そんなヤクザ、今どきおらんって(笑)」

g:「まぁとにかく、そーゆーステレオタイプ。」
b:「現実はもっと複合的で横断的やで、と。」
g:「そうそう。」
b:「何を人から与えられたちっこいスタイルに収まって、いっちょ上がりで満足しとんねん、と。」
g:「そうそう。」
b:「あほちゃうか、ほんましょーもないで、と。」
g:「そこまでは言ってませんが・・・」
b:「いわゆるブラック・ミュージックの世界も、ジャンルの壁はけっこうあるからな。」
g:「ジャズ、ファンク、ブルースあたりは特にね。」
b:「このアルバムを聴かずして語るな、とか、初心者、入門編とか、そーゆーモノ言いな。」
g:「なんだかなぁって、ね。別に道を極めるつもりもないのになんで入門しなくちゃいけないんだ、と。」
b:「なんか上から感があるねんな。」
g:「そういうのを取っ払ってみたかったんだよね。」

b:「それはそれで“俺はこういう独自評価をしてるぜ”っぽい感じがハナにつくけどな。」
g:「ハハハ、そうかもね。まぁ、いろいろと聴いてきたものを思うままに広げていくとこうなった、ってことで。」

b:「まぁええけどな。」

g:「そもそものチョイスを見渡してみると、評論家を斜めに見つつも、『ミュージックマガジン』とか『レコードコレクターズ』とか中村とうよう系の雑誌の影響ってけっこうあるんだよね。」

b:「そやな。」

g:「ネットのない時代、ああいう雑誌が一番の情報源だったし、唯一といっていいくらい、ヒットチャートに偏らず幅広い音楽をカヴァーしてた雑誌だったからね。」

b:「フェラ・クティなんて、ああいう雑誌で出会わない限り、聴く機会なんかなかったわな。」

g:「民衆と音楽という文化の関わりをとことん突き詰めた方でした。」

b:「あとはやっぱりピーター・バラカンさんからの影響はあるねんな。特に信奉者というわけではないけど。」

g:「『魂のゆくえ』はバイブルのように読み尽くした。」

b:「今回のシリーズの文章で、自分の言葉のつもりで書いてたら、すでにバラカンさんが書いてたことだった、ってのがあるかも知れん。」

g:「パクッたわけじゃなく、それくらい染み付いた、と。」

b:「『魂のゆくえ』って新版が出ててんな。再発やと思ったらめちゃくちゃ書き直されててビックリしたわ。」

g:「ソウル・ミュージックの歴史と魅力が愛情あふれる平易な文章で綴られています。おすすめです(笑)。」




b:「さて、と。いやぁ、こんだけ力入れて語るに値するソウル/R&B、或いはブラック・ミュージックの魅力って、何やろね。」
g:「いきなり深い質問だね。」
b:「何か惹かれるもんがあるわけやろ。」
g:「やっぱりリズムというか、グルーヴだろうね。」
b:「わかるわ。」
g:「このリズムの心地よさがツボにはまるとね、申し訳ないけどもっさりしたリズムの音楽は聴けないよね。」
b:「ビートが早いとか遅いとかではなく、スロウな曲でもタイム感の中に心地よいリズムがあるかどうかやな。」
g:「JBの“全ての楽器はドラムだ”っていう言葉を紹介したけど、ほんとそうだよね。ヴォーカルやハーモニーの中にもグルーヴがあるかないかが大事。」
b:「ときどき、ドラムとベースだけ聴いてるときってあるもんな。」

g:「ほんとにかっこいい演奏ってのはやっぱりリズム、グルーヴだよね。」
b:「ソウルの魅力のもうひとつはやっぱり、歴史的に抑圧され続けてきた民族が持つブルース感覚やろな。」
g:「豊かな暮らしを謳歌するアメリカ社会から置き去りにされている劣等感や、搾取され続けていることへの矛盾、怒り。変革へのエネルギーや、逆に変わらない社会へのあきらめと絶望感。そういう諸々の主張や感情は、ブラック・ミュージックがブラック・ミュージックたる大きな要素だよね。」

b:「ボブ・マーリーやフェラ・クティ、リントン・クウェシ・ジョンソンが入っているのもそういうことやな。」
g:「ソウル/R&Bにある黒人解放の流れと共鳴して世界へ広がった音楽として無視できないと思うんだよね。」

b:「カーティス・メイフィールドのソロとか、クラッシュと共演したマイキー・ドレッドなんかも入れときたかったな。」

g:「うん、まぁ名作を全部拾うと70年代ばっかりになっちゃうからね。」

b:「やっぱり音楽っていうのは、伝えたいことがあるもんとか、いろんな感情が噴き出すみたいに溢れてるもんが、より聴き手にちゃんと届くもんなんやろな。」
g:「歌詞で伝えるのとはまた別のレベルでね。悲しい、嬉しい、むかつく、許さない、やってられん、愛しい、やりたい、助けて、ありがとう・・・そういういろんな感情がストレートに表現されているからこそ響く。」

b:「ストレートにではなく回りくどくでもええねんけど、ガツンときたりグラグラ来たりする演奏には何かあるわな。」
g:「その何か、っていうのが、ソウルなんじゃないかと。音楽のスタイルではなく、way of lifeとしてのソウル。」
b:「まぁ、そういうことやろな。」
g:「遡れば1900年代初頭のジャズの誕生以来、音楽的な発明は全部黒人たちが始めてきたんですよね。ジャズもブルースもドゥワップもロックンロールもファンクもレゲエもラップもヒップホップも。」

b:「白人はそれを頂いてはアレンジしてきたけど、元を辿れば全部ブラック・ミュージック。」

g:「黒人たちが発明したものを白人たちがアレンジし、それがまた逆輸入的に黒人たちにフィードバックされ。」

b:「この60年代〜90年代の60枚のリストから、そういうブラック・ミュージックの変遷が見えてくれば、というのが狙いやけどな。」

g:「音楽というものは、人間の本能にダイレクトに訴えかけるから、言葉よりも簡単に国境を越える。だから混合が進みやすいんだろうね。」

b:「音楽を通じて人種の融和が進んだとも言えそうやな。いや、逆に分断を煽った面もあるか。」

g:「敵を作って格差や分断を煽るやり方ではなく、愛と共感をベースにしたやり方で世の中を変えることはできないものかという思い。サム・クックの章に書いたソウルのスピリットは、今こそ思い出されるべきなんでしょうけどね。」



g:「では最後に、そういう思いを込めてもう一枚。90年代後半にリリースされた、どっぷりと濃いゴスペル・アルバムを紹介して〆ましょう。ラッキー・ピーターソン&メイヴィス・ステイプルズの『Spirituals&Gospels』を。」




b:「ちょうどクリスマスっぽくてええやん。」

g:「オルガンの音色が渋いでしょ。」

b:「メイヴィス・ステイプルズもさすがの貫禄やな。」

g:「こういうのを聴くと、ブラック・ミュージックに脈々と受け継がれているスピリットを感じるよね。」

b:「連綿と受け継がれてきたソウルとグルーヴ。そこがやっぱり肝やな。」