前回の続きです。
さてさて、そんなこんなで始動した『おうちに帰るまでが遠足です』ですが、とにかく脚本が描いていない部分(尺の問題上)を演出や役者の演技で補う、もしくはお客様が気にならないとなるように持っていかなければなりませんでした。
例えば、七星や千世が病気で苦しんでいるシーンは入れませんでしたし、うららの過去に何があったのかなどは具体的には描いていません。もちろん疑問に思ったお客様もいらしたと思います。しかし、そこに「?」とならないように持っていく必要がありました。そのため、今回は稽古場で皆に、私がこの作品をどう描きたいのか?どういう流れに持っていきたいのか?を何度も伝えました。もちろん皆を混乱させないためにシンプルにではありますが。皆もそれを凄く意識してくれて、しっかりやってくれました。
古野さんが千秋楽の挨拶の時にも言ってましたが、皆に伝えたものの一つに「このお話は、七星と千世以外の役が2人のために一生懸命頑張るお話でもある。みんなでしっかり盛り上げて、ラストの七星と千世にバトンを繋いで欲しい」というものがあります。どの役の子も七星と千世のために一生懸命に走り回り、そして皆から渡されたバトンを七星と千世(玉川さんと村上さん)がしっかりと受け取って毎公演良いゴールをしてくれてました。本当にチームワークの賜物です。一人一人は確かにまだ未熟なのかもしれません(まあ、芝居は経験が左右するものですから)。でも、一枚岩になればとんでもない力を発揮することもあるのです。今回の公演は、そのことをもの凄く実感した公演でした。おっと、前置きが長くなりました。では、それぞれのキャストさんについて書こうと思います。
◯谷川七星役:玉川来夢ちゃん
正直、最初は不安でした。というのも今回が2回目の舞台とのことだったし(しかも前回は1年前!)、そもそも七星という役は非常に難しい役だと思っていたからです。ある程度経験のある役者さんならまあ演じ切ってくれるでしょう。しかし、私はそんな七星は見たくなかった。荒くてもいい。とにかく「生の15歳の女の子」を演じて欲しかったのです。来夢ちゃん、かなり苦戦してました。本当に本番ギリギリまで。私が稽古場で一番細かく演出をつけたのも来夢ちゃんでした。明るくしないといけないところを明るくできなかったり、感情を爆発させないといけないところを爆発させられなかったり。視線や間の長さ、あと「そのセリフを話したいと思えるまで話さなくてもいい」とかとか。自分でも「これは舞台2回目の子に言うことじゃないな…」と反省しつつも、とにかく私にしては珍しく色々と言いました。しかしそれにめげることなく、持ち前の根性と太陽のような明るさで徐々にいい芝居になっていく来夢ちゃん。本当に良く頑張ったと思います。本番ではもう七星にしか見えませんでした。ラストの感情を爆発させるシーンでは、恥ずかしながら私、いつも泣いておりました。来夢ちゃんの声って、非常に生っぽいんですよね。すごく刺さります。
あと、今回は座長としてもよく皆をまとめてくれていました。う~ん、ちょっと違うかな。項羽と劉邦で言えば間違いなく劉邦タイプ(分かる人にはわかるはず)。来夢ちゃんの「肩に力が入っていない」振る舞いが、皆を巻き込んでいったというか。今回の座組のチームワークは間違いなく彼女の効果だと思います。アイドリングさんなので今後どのような活動をしていくのか分かりませんが、とにかく絶対に芝居を続けて欲しい。もっともっと素晴らしくなるはず。楽しみな「女優」さんです。
◯児玉千世役:村上友梨ちゃん
来夢ちゃんとは逆に友梨ちゃんにはあまり何も言ってません。非常に勘のいい子なんですよ。彼女も2回目の舞台とのことでしたが、全くそんな風には思いませんでした。少しやりにくそうにしているシーンもちょっとアドバイスすればクリアしていく。そんな感じでした。しかし、このようなタイプの子は、ある程度まではいくが、そこから先がいけないということがよくあります。「良い芝居」は出来るけど「人の心を動かすような素晴らしい芝居」は出来ないという感じです。友梨ちゃんも稽古途中まではそのような傾向がありましたが(最初から出来てる子というのは、伸びしろが見えにくいと言うこともあったとは思いますが)、稽古終盤近くから、ぐっと良くなっていきました。最終的には友梨ちゃんのシーンやセリフで一番泣いていたような気がします、私。ダメですね~、涙もろい演出家。反省します。でも、いいものはいいですから!
友梨ちゃんの素晴らしいところは、セリフのメッセージ性。とにかく、相手に自分の言葉を伝えようとする。そして、それが見ている側にもすごく伝わってくる。刺さる。これは多分本人の性格でしょうね。非常に嘘のない子で、普段からすごく自然体でいる。そんな友梨ちゃんと来夢ちゃんとのW主演ですからね。そりゃ、チームワークも良くなりますとも。
そしてもう一つ。彼女の見せる感情は非常に美しく繊細。とにかくギリギリまで感情を隠す。そして隠し切れなくなり、急にボワッと溢れてくる。もう堪りませんね。月組の千秋楽の別れのシーンの友梨ちゃんはやばかった!思わず嗚咽の声が出そうになり、途中で目を逸らしてしまいましたから。
ホント、この一ヶ月かそこらで、非常に成長したなあと思いました。
◯鳥羽うらら役:古野あきほちゃん
このお方、非常にお芝居が上手い!アイドルとか女優とか関係なく上手い。そんなレベルの子です。グラビアとかをやっているので「アイドル」という呼称が正しいのかもしれませんが、私の中では完全に「女優」です。あきぽんがうららで本当に良かったと思います。
うららという役は非常に難しいんです。ほとんどバックボーンが描かれていないにもかかわらず、感情を爆発させないといけないシーンがあるからです。というか、台本上では爆発させるシーンではなかったかもしれませんが、私が爆発させて欲しいと注文を付けました。しかも「今までにあなたから聞いたことがないような声でセリフを言って欲しい」と。正直、彼女に付けた演出はこれだけです。あとの細かい芝居(影芝居含め)は全部彼女が自分で考えてやってくれてました。行間を埋めないといけない部分が多いうららという役を肉付けし、一つの素晴らしいキャラクターに昇華させたのは完全に彼女の功績です。いや~素晴らしい!秘めたる思いを常に胸の中に抱き、それでも七星と千世のために必死に走り回るうららという少女。こういう役は非常にお客様からスポットが当たりにくい。でも、すべてのお客様にあきぽん演じるうららは、キラキラと輝いて見えたのではないでしょうか?この子には他にももっと色んな役をやらせてみたいです。今回のようなファンタジーではなく、等身大の24歳の女性とかもやらせてみたい。その時はどのような輝きを放ってくれるのか?お気に入りの女優さんがまた一人増えました!
うわー、長くなったので今日はこの辺で!頑張って全員分書きますので、お楽しみに!
さてさて、そんなこんなで始動した『おうちに帰るまでが遠足です』ですが、とにかく脚本が描いていない部分(尺の問題上)を演出や役者の演技で補う、もしくはお客様が気にならないとなるように持っていかなければなりませんでした。
例えば、七星や千世が病気で苦しんでいるシーンは入れませんでしたし、うららの過去に何があったのかなどは具体的には描いていません。もちろん疑問に思ったお客様もいらしたと思います。しかし、そこに「?」とならないように持っていく必要がありました。そのため、今回は稽古場で皆に、私がこの作品をどう描きたいのか?どういう流れに持っていきたいのか?を何度も伝えました。もちろん皆を混乱させないためにシンプルにではありますが。皆もそれを凄く意識してくれて、しっかりやってくれました。
古野さんが千秋楽の挨拶の時にも言ってましたが、皆に伝えたものの一つに「このお話は、七星と千世以外の役が2人のために一生懸命頑張るお話でもある。みんなでしっかり盛り上げて、ラストの七星と千世にバトンを繋いで欲しい」というものがあります。どの役の子も七星と千世のために一生懸命に走り回り、そして皆から渡されたバトンを七星と千世(玉川さんと村上さん)がしっかりと受け取って毎公演良いゴールをしてくれてました。本当にチームワークの賜物です。一人一人は確かにまだ未熟なのかもしれません(まあ、芝居は経験が左右するものですから)。でも、一枚岩になればとんでもない力を発揮することもあるのです。今回の公演は、そのことをもの凄く実感した公演でした。おっと、前置きが長くなりました。では、それぞれのキャストさんについて書こうと思います。
◯谷川七星役:玉川来夢ちゃん
正直、最初は不安でした。というのも今回が2回目の舞台とのことだったし(しかも前回は1年前!)、そもそも七星という役は非常に難しい役だと思っていたからです。ある程度経験のある役者さんならまあ演じ切ってくれるでしょう。しかし、私はそんな七星は見たくなかった。荒くてもいい。とにかく「生の15歳の女の子」を演じて欲しかったのです。来夢ちゃん、かなり苦戦してました。本当に本番ギリギリまで。私が稽古場で一番細かく演出をつけたのも来夢ちゃんでした。明るくしないといけないところを明るくできなかったり、感情を爆発させないといけないところを爆発させられなかったり。視線や間の長さ、あと「そのセリフを話したいと思えるまで話さなくてもいい」とかとか。自分でも「これは舞台2回目の子に言うことじゃないな…」と反省しつつも、とにかく私にしては珍しく色々と言いました。しかしそれにめげることなく、持ち前の根性と太陽のような明るさで徐々にいい芝居になっていく来夢ちゃん。本当に良く頑張ったと思います。本番ではもう七星にしか見えませんでした。ラストの感情を爆発させるシーンでは、恥ずかしながら私、いつも泣いておりました。来夢ちゃんの声って、非常に生っぽいんですよね。すごく刺さります。
あと、今回は座長としてもよく皆をまとめてくれていました。う~ん、ちょっと違うかな。項羽と劉邦で言えば間違いなく劉邦タイプ(分かる人にはわかるはず)。来夢ちゃんの「肩に力が入っていない」振る舞いが、皆を巻き込んでいったというか。今回の座組のチームワークは間違いなく彼女の効果だと思います。アイドリングさんなので今後どのような活動をしていくのか分かりませんが、とにかく絶対に芝居を続けて欲しい。もっともっと素晴らしくなるはず。楽しみな「女優」さんです。
◯児玉千世役:村上友梨ちゃん
来夢ちゃんとは逆に友梨ちゃんにはあまり何も言ってません。非常に勘のいい子なんですよ。彼女も2回目の舞台とのことでしたが、全くそんな風には思いませんでした。少しやりにくそうにしているシーンもちょっとアドバイスすればクリアしていく。そんな感じでした。しかし、このようなタイプの子は、ある程度まではいくが、そこから先がいけないということがよくあります。「良い芝居」は出来るけど「人の心を動かすような素晴らしい芝居」は出来ないという感じです。友梨ちゃんも稽古途中まではそのような傾向がありましたが(最初から出来てる子というのは、伸びしろが見えにくいと言うこともあったとは思いますが)、稽古終盤近くから、ぐっと良くなっていきました。最終的には友梨ちゃんのシーンやセリフで一番泣いていたような気がします、私。ダメですね~、涙もろい演出家。反省します。でも、いいものはいいですから!
友梨ちゃんの素晴らしいところは、セリフのメッセージ性。とにかく、相手に自分の言葉を伝えようとする。そして、それが見ている側にもすごく伝わってくる。刺さる。これは多分本人の性格でしょうね。非常に嘘のない子で、普段からすごく自然体でいる。そんな友梨ちゃんと来夢ちゃんとのW主演ですからね。そりゃ、チームワークも良くなりますとも。
そしてもう一つ。彼女の見せる感情は非常に美しく繊細。とにかくギリギリまで感情を隠す。そして隠し切れなくなり、急にボワッと溢れてくる。もう堪りませんね。月組の千秋楽の別れのシーンの友梨ちゃんはやばかった!思わず嗚咽の声が出そうになり、途中で目を逸らしてしまいましたから。
ホント、この一ヶ月かそこらで、非常に成長したなあと思いました。
◯鳥羽うらら役:古野あきほちゃん
このお方、非常にお芝居が上手い!アイドルとか女優とか関係なく上手い。そんなレベルの子です。グラビアとかをやっているので「アイドル」という呼称が正しいのかもしれませんが、私の中では完全に「女優」です。あきぽんがうららで本当に良かったと思います。
うららという役は非常に難しいんです。ほとんどバックボーンが描かれていないにもかかわらず、感情を爆発させないといけないシーンがあるからです。というか、台本上では爆発させるシーンではなかったかもしれませんが、私が爆発させて欲しいと注文を付けました。しかも「今までにあなたから聞いたことがないような声でセリフを言って欲しい」と。正直、彼女に付けた演出はこれだけです。あとの細かい芝居(影芝居含め)は全部彼女が自分で考えてやってくれてました。行間を埋めないといけない部分が多いうららという役を肉付けし、一つの素晴らしいキャラクターに昇華させたのは完全に彼女の功績です。いや~素晴らしい!秘めたる思いを常に胸の中に抱き、それでも七星と千世のために必死に走り回るうららという少女。こういう役は非常にお客様からスポットが当たりにくい。でも、すべてのお客様にあきぽん演じるうららは、キラキラと輝いて見えたのではないでしょうか?この子には他にももっと色んな役をやらせてみたいです。今回のようなファンタジーではなく、等身大の24歳の女性とかもやらせてみたい。その時はどのような輝きを放ってくれるのか?お気に入りの女優さんがまた一人増えました!
うわー、長くなったので今日はこの辺で!頑張って全員分書きますので、お楽しみに!