それでは今回がラストの振り返りになります。

同じく最大の感謝と愛情を込めて、Bチームの面々についてです。

 

○天野久仁子役:民本しょうこ

ボブジャックシアターの看板女優。各地でモンスターと呼ばれている彼女ですが、今回は大人な女性の役。とは言っても暴れるところは暴れますが。本人も自覚していた通り、前回はAチーム丸山の国生像を追ってしまったために消化不良気味だったこともあり、今回は事前に「民本だからやれる天野久仁子を目指そう」と話し合い、稽古をしては修正、今のいい感じ、など煮詰めていきました。前回苦労したこと、そして3年の月日が民本を女優として進化させていたこともあり、今回は彼女なりの久仁子を構築してくれたのではないかと思います。総合的に見れば、ここ最近の彼女のベストアクトだったんじゃないかなと思います。彼女なりの久仁子を保つための演技ポイントが最初のシーンの方であるのですが、そこさえ外さなければ「感覚派の民本」よろしく、いつも安定した演技を見せてくれました。ラストの方の破壊力はとんでもなかったと思ってます。やはりこの女優のポテンシャルは凄いの一言。一皮剥けたんじゃないかと思われる民本。今後の活躍にご期待ください。

 

○櫟沢みのる役:東将司さん

今回、東くんをこのポジションにキャスティングできたのは非常に大きかった。そう思わせるとても素敵なみのるを見せてくれました。前回はこの役、小島ことりだったんです。ことりも良かったのですが、久仁子とのバランスを考えたときに、ことりだと民本が無意識のうちに頼ってしまっていたといいますか…。その点東くんは民本から見てリアルに年の離れた後輩です。それが今回の久仁子像を作る上で非常に良い方向に作用してましたね。東くんの凄いところは「稽古中及び前回ご一緒してからの伸び」ですね。1年半くらい前に初めてご一緒したのですが、もう別人です。えげつない進化を遂げております。それは今回の稽古中でも然り。本番に入ってもさらに進化。私が思っていた「男性版櫟沢の一番難しいところ」を難なくクリアしていきました。稽古中もいいところまで行っていたんですが、本番入ってついに突き抜けました。私の予想を良い意味で大幅に裏切るところまで櫟沢みのるという役を持って行ってくれました。これくらいの年代の役者で、嫌味なく自然にこういった役を演じられるというのは彼の強みになっていくかもしれませんね。影のMVPの一人だと思っております。

 

○浮橋尋史役:添田翔太さん

添田くんの尋史、とても良かった。もう、彼の人柄がとても良い方向に作用しておりましたね。優しく接すること、そっと寄り添うこと、あれほど自然体でできるなんて本当に貴重な存在の役者だなと。1ミリも無理がない。尋史って、意外と臭いセリフ、小っ恥ずかしいセリフを言ってるんです。しかし、添田翔太という役者のフィルターを通して出てくる言葉には、そんなもの全く感じない。色んな役者さんとご一緒してきましたが、今までに出会ったことがないタイプですね。彼もとても息の長い役者になりそうな雰囲気がプンプン漂っています。これは私が昔から主張していることですが「普通の役を普通に演じて、それでいて何かしらの特徴やその人なりのもの」を出せる役者さんはとても貴重です。ほとんどの人は「何かを出そうとして」出してますから。自然と滲み出てくる役者ってあまりいないような気がします。普通にやって本当に普通なだけの人はたくさんいますが笑。ご一緒してみて、改めて彼の良さを実感しました。とても良い役者に出会えたことに本当に感謝。また絶対にご一緒したい。

 

○竹河雨音役:高橋明日香さん

「抜群の安定感を誇るあすぴー」、それが私の中での彼女の1番の印象でした。4年前?に出てもらった時もそれを強烈に感じました。正直な話をしますが、それがとても良いことであり、でも少し物足りなさも感じていました。それが今回、完全に覆りました。完全体だと思っていたあすぴーが別の段階に行っていました。おそらくですが、以前の彼女は「この役のゴールはここ」というものがあり、それに向かって最短距離を邁進するというお芝居の作り方だったのだと思います。しかし、今の彼女は「この役のゴールはなんとなくこの辺。そこに向かって色んな道伸びてるけど、色んな道を通って向かってみよう」という感じに変わったのではないかと。だから、もしかしたら進んでいるうちにゴールが変わってしまうかもしれないし、進んだ道が途中で行き止まってるかもしれない。でもそれによってたどり着いたところは、より豊かで面白みのあるゴールになっている。そういうことを楽しむ余裕ができているのかなと。そこから最終的に安定に持っていける。明らかに「良い女優」から「凄い女優」の階段を登り始めてます。今から次にご一緒する時が楽しみでなりませんね。

 

○椎本羽汰役:小島ことり

ことり、やっぱり最高だな。身内ながら引っ張りだこなのがわかります。面白いのはもちろんですが、本当に誰と合わせても抜群に相性が良いように思わせる対応力。益々増量して、見た目もバケモノになりつつありますが、役者としてもバケモノですね。そんなことりと上記に書いたようなあすぴーがコンビを組むんですから、そりゃ「雨音&羽汰」コンビが最強になるのわかります。このコンビがBチームにもたらしてくれたものは多く、本当に計り知れない。私的にことりの一番好きなところは「どんな変な演出をつけてもなんの疑いもなくやってくれる」ところです笑。多分、私のことを信頼してくれてるんだと思います。もしくは、もしお客様が変な空気になっても扇田さんの責任と思っているのかと。最高です。本当にうちの劇団になくてはならない存在。リーサルウエポン。もしどこぞの国の「ロイヤルなんちゃら劇団」みたいなところが「ことりを譲ってくれ」と言ってきても譲る気はありません。

 

○賢木雪斗役:田中彪さん

初めましての時は「なんだかチャラそうなやつだなあ」だったのですが笑、まあお芝居に対してものすごく真摯に向き合ってる。遅れての合流だったのですが、稽古初日からセリフはほぼ入っていたし、色んなアイデアを稽古場に持ち込んできてくれるし、とても素晴らしい役者。あの作り方で、最後はちゃんとかわいそうな人間に見えるんですもん。結構とんでもないことをさらっとこなしてるんです。最近になって脚本・演出も手がけるようになったみたいですし、本当に才能豊かな人間ですね。さっきまでヘラヘラ笑っていたと思ったら、急に感情のスイッチがバチン!と入ったり、もうね、訳のわからない底の見えない男。セリフのテンポ感やリズム感も抜群に良いし、当然度胸もある。大胆だと思ったら、すごく繊細な部分も見せてくる。本当に見ていて飽きがこない。なんなんだ!この役者は!笑。今回の雪斗への配役は、私のベスト配役の1つだと思ってます。次ご一緒した時はこんな役やあんな役をやらせてみたいとこちらの想像力を掻き立てる素晴らしい役者さんですね。

 

○賢木幹役:松木わかはさん

いや~、今回のわかはちゃん、抜群に良かったと思いません?彼女の面白い面、儚い面がとても良いバランスで出ていたのではないかと。彼女の感情的なお芝居は本当に大好き。まずあのちょっとハスキーな声。感情がスッと乗ってくるというか、とても生っぽさを感じさせてくれるというか。表情も良いし、起伏の作り方が全く読めないし、私の大好きが詰まったようなお芝居です。以前のブログにも書きましたが、今回のお芝居でテーマにあげていた感情表現を最も高い水準で遂行していたのは彼女じゃないですかね。一度も同じ表現がなかったんじゃないかな。だからこそ毎回、幹の葛藤や辛さ、寂しさ、孤独、本当に色んなものがぐちゃぐちゃに混ざった感情が生々しくこちらに伝わってきて、一瞬で役の歴史を感じさせてくれました。今までコメディー作品でしかご一緒したことがなかったので、彼女の魅力を改めて感じることができました。これから年齢も重ねて益々輝きを放つであろうことが容易に想像できる、そんな素敵な女優さんですね。

 

○水橋淡吾役:渡辺宏明

我が劇団の幽霊部員。あまり存在が知られていなかったようですが、今回の作品でボブジャックシアターの渡辺を皆様に強く印象付けられたのではないでしょうか。決して派手な役ではないのですが、持ち前の良い声と聞き取りやすい台詞回し、何を考えているのかわからない佇まい、それが完全にマッチしたのが今回の役だったのではないかと。元々は爆発的な感情を持った役で本領を発揮するタイプの役者だったのですが、年を重ね、名バイプレーヤーを自然に演じられるようになりましたね。役者界隈にもその衝撃は伝わったみたいで「え?あの人誰?とても気になる役者さんなんですけど」という役者さんの感想をよく目にしました。ちょっと誇らしいです。これからは劇団公演に参加する回数も増えていくのかな?モンスターばかりじゃなくて、ボブジャックにはこういう役者もいるということを是非覚えておいてください笑。

 

○関屋楓役:土井裕斗さん

東くんと同じになってしまいますが、やはり言わせてください。土井くんをこの役にキャスティングできたことは本当に大きかった!なかなかいませんよ、楓を無理なくやれる男優さんって。見た目が完全に楓。ちなみに、アリスインデッドリースクールという他団体さんの作品で、Aチームの楓をやった栞菜ちゃん、Bチームの楓をやった土井くんともに「墨尾優」という役を過去に演じているのですが、今回意図的に二人を楓に配役したわけではありません。偶然です。

土井くんは普段、叫んだり、感情を前面に出したりする役を演じることが多いらしいのですが、今回は徹底的に抑える方向でやってもらいました。とても良い選択だったと思っております。彼が感情を抑えれば抑えるほど、楓が本当にかわいそうに見えた。とても素晴らしい感情表現だったと思います。そこにグイグイ当たっていく宮島小百合さん演じる今日子。とても良いバランスでした。非常に面白い存在になりそうな役者さんですね。今回のような土井くんの役、もっともっと見てみたいですね。

 

○ロボ子役:倉持聖菜さん

ロボ子、いや~ヤバかった。最後の手紙のシーンは本当にやばかった。あんな衣装着ているのに完全に楓のお母さんに見えましたもん。パートで帰ってきて疲れながらも、楓に手紙を書き、その途中でそばで寝ている赤ん坊のみのるが泣き出し、それを笑顔であやし、また手紙に戻る…そんな母の姿がありありと浮かんできました。みのるが生まれたからこそ、楓に対する愛情が深まり、それと同時に後悔も強まる。そんな母の葛藤と愛情をふんだんに感じさせてくれました。手紙の読み方は一応演出をつけたのですが、私特有の微妙なニュアンスの演出をつけただけなのに、一発であの読み方になりましたからね。鳥肌が立ちました。ものすごい感性の持ち主ですよ。彼女も声が実に良い。子供っぽくもあり、大人っぽくもあり、元気だけど艶っぽくもなる、そんな変幻自在に声の持ち主です。土井くんとのバランスも抜群でした。とても良い女優さんに出会えた。その感覚がハンパないです。

 

○須磨今日子役:宮島小百合さん

今回のさゆりんには珍しくあれこれ注文をつけましたが、それも全て完璧にこなし、なおかつ最終的にはそれに自分なりのものを上乗せしてくるんですから、素晴らしいの一言ですね。前回須磨今日子を演じてくれた花奈澪さんが強烈だったので、演出していてその印象を拭い去るのが大変だったのですが、今回のさゆりん版今日子も負けず劣らず強烈なものになりました笑。さゆりんはその爆発力が印象強いと思うのですが、感情的なお芝居もとても素晴らしい。楓から色々聞かされるシーンは結構稽古をしたのですが、さゆりんの感情表現のおかげで私が想像していたものとは異なるけど、それよりもずっと素晴らしいシーンになりました。宮島小百合、恐るべしです。とても落ち着いているのでベテランな感じを醸し出していますが、まだ22歳(あれ?23歳でしたっけ?)ですからね、本当にこの先どこまで行ってしまうのか、全く想像がつかない。この人も底が全く見えない女優さんですね。

 

○明石健造役:宮井なんちゃら

この年齢になって、どんどん進化していってる宮井くん。今回の健造、私的には初演の時よりも何倍も好きですね。「ロリコン」と言った時のお客様の笑い声も明らかに初演より増していました。それだけ、さらにロリコン感が出てきているということでしょう。ありがたいことに、今年は本当にたくさんの作品に呼ばれ、色んなところで大活躍をしておりました。劇団の最古参である彼が評価をされることは、純粋に嬉しい。劇団のために色々身を削ってくれているし、もっともっと売れてほしい。心の底からそう思います。そのためには私ももっともっと頑張らねばなのですが。改名効果がそろそろ切れてくるかもしれないので、そろそろ「宮井パンティーストッキング」への改名を勧めたいと思います。

 

○田中花役:水野絵理奈さん

この女優さんも初めまして。ちょっと変わったところのある人ですが笑、とても一生懸命で真面目な女優さん。所属の劇団ではセクシー担当らしいのですが、今回はその武器を封印して、役に挑んでもらいました。決して器用なタイプの役者ではないので、稽古でも多少時間がかかったのですが、何度ダメ出しされてもガツガツ当たっていく姿は、とても好印象。そして、一度手にしたものは何がなんでも離さない。おそらく影でとても努力をしているのだと思います。こういうタイプの女優さんが最終的には凄い女優さんになるものなのです。どんどん上積みしていくわけですから。今回の作品でも、稽古当初とは別人なくらい進化してくれたのではないかと思っています。座組に対してもとても献身的だし、こういう人が座組にいてくれると本当に助かるんです。お芝居を始めたのが遅いらしく、実はまだそこまでキャリアがないとのことで、今後の進化と活躍がとても楽しみな女優さんです。次はどんな姿を見せてくれるのか?要チェックですね。

 

 

というわけで、この辺りで今回の振り返りブログを終えたいと思います。

劇団公演はとても大変で苦労することも多いのですが、その分、本番が始まってからの喜びやお客様への感謝の気持ちが強くなります。今回も本当にたくさんの方々に支えられ、公演を終えることができました。応援してくださる皆様に応えるためにも、これから益々精進して作品作りに挑んでいきたいと思っております。前にも書きましたが、ノッキンは是非シリーズ化やスピンオフを作っていきたい作品でもありますので、またいつの日にか天国探偵社で新しい物語をお贈りできるよう頑張ります。たくさんのご来場、本当にありがとうございました!!

 

ノッキンオンヘブンズドア演出:扇田賢