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音楽に映画たまに美術、そして読書三昧のブログです

佐渡裕と辻井伸行

ラヴェルとボレロ

 

曲目/

ラヴェル/ピアノ協奏曲 ト長調

1.アレグラメンテ    8:22

2.アダージョ・アッサイ    10:13

3.プレスト    4:34

4.亡き王女のためのパヴァーヌ    5:46

5.ボレロ    15:01

ダフニスとクロエ 第2組曲 

6.夜明け    5:38

7. 無言劇    5:54

8.全員の踊り    4:26

アンコール

9.ドビュッシー/月の光    5:09

 

ピアノ/辻井伸行

指揮/佐渡裕

演奏/ウィーン・トンキュンスラー管弦楽団

合唱指揮/クリストフ・ヴィゲルバイヤー

合唱/ノイエ・ヴィーナー・シュティメン 合唱 6.8

 

録音:2018/06/02-05  ウィーン、ムジークフェラインザール(ライヴ収録:1-3、9)
        2019/09/30-10/1   グラフェネック、オーディトリアム

 

エイヴェックス AVCL-84109

 

 

 このCDジャケットに使われている書体といい装丁といい少々違和感があるなぁと思っていたら、ジャケット裏面に「Made in Germany」と印刷されているではありませんか。そして、プレスはソノプレスということでベルテルスマン翼下の工場でプレスされています。インターナショナル仕様のデジパックになっていて、解説書は59ページにも及び、ドイツ語、英語そして日本語で書かれています。ただし内容は大したことはありません。デザインは統一されていて、二の丸と思しき紅丸が半円と共にデザインされています。発売はエイヴェックスになっていますが、制作経緯からするとトーンキュンスラーの自主録音をライセンス販売しているものでしょう。辻井伸行とのピアノ協奏曲のみライブ収録で他のラヴェル作品はセッション録音となっています。こちらの会場は夏の音楽祭が開催されるところで、トーンキュンスラー管弦楽団の本拠地の一つです。CDの解説には録音スタッフの写真も掲載されていますが、皆青年で調整卓もなくモニタールームにパソコンが1台置いてあるだけの簡素なシステムです。ただ、マイクだけはしっかり立てています。

 

グラフェネック、オーディトリアム

 

 さて、最初はメインのラヴェルのピアノ協奏曲です。ただし、聞き始めてがっかりします。収録音のレベルが低く通常のセッションでは考えられない小さな音で始まります。これは録音バランスに問題があるCDでしょう。

 

 この曲、ある意味では奇妙な構成を持っています。両端楽章はアメリカでの演奏旅行を想定しているために、ジャスやブルースの要素をたっぷりと盛り込んで、実に茶目っ気たっぷりのサービス精神満点の音楽になっています。そういうところが、バーンスタインの弟子を自認している佐渡氏ですしラヴェルが得意でしたからこういう曲だと血が騒ぐのでしょうか、とにかく、ジャズ心のある人の演奏ですからノリノリの雰囲気が伝わってきます。そして、いつもながら感心するのは辻井氏のピアノテクニックです。最近はレパートリーも広がり表現範囲も広がっていますが、何よりもすごいのはそのアンプ力です。音をひとつづつ聴いて積み上げていっているのでしょうが、その音も粒がそろっていて癖がありません。師匠は川上昌裕しでしょうが、音での譜面から純粋に音楽を吸収しているが故の粒立ちでしょう。写真からここではスタインウェイを使用しているようですが、自宅でもスタインウェイを使っていますから違和感もないでしょう。切れのいいピアノタッチでサクサクと演奏しています。佐渡市のサポートも万全です。

 

 それでいて、その中間の第2楽章は全く雰囲気の異なった、この上もなく叙情性のあふれた音楽を聴かせてくれます。とりわけ冒頭のピアノのソロが奏でるメロディはこの上もない安らぎに満ちています。ロマンチストのポリーニやミケランジェロの繊細さで思い入れたっぷりにピアノ・ソロを聴かせてくれます。

 

 第3楽章は、またまた跳ねるようなピアノで十分スィングしています。それにしてもラヴェルのオーケストレーションは多彩です。第1楽章もそうですが、鞭の音がいいアクセントになっています。よく聴くとこの楽章の中には「ゴジラ」のメロディが潜んでいます。ヨーロッパでのコンサートは終演とともに割れんばかりの拍手ではなく、本当に音楽を楽しんだという慈しみの拍手です。

 

イメージ 2

 

 

 

 

 

 さて、このCDではボーナストラックとしてコンサートでアンコールで披露されたドビュッシーの「月の光」が収録されています。幾分ラヴェルのテンポに引き摺られているのか単独での演奏より速いテンポで演奏されていますが、かえって当時のライブの盛り上がりを彷彿とさせる演奏になっているような気はします。

 

 

 さて佐渡裕のラヴェルの中では多分何回も登場している「ボレロ」です。セッションでは、すでにフランスのラムルー管弦楽団とも録音していましたし、映像でも残っているものもあります。それらの中では多分一番遅いテンポで演奏されています。ただ、15分というのは天田の演奏の中では比較的スタンダードなテンポではあります。当のラヴェルは17分程度というのが希望であったらしいのですが、そういうテンポでは一流のオーケストラでなくては多分弦が崩壊する遅さです。まあ、このぐらいのテンポがちょうどいいのでは無いでしょうか。セッション収録だけあってオーケストラはなかなかの力演をしています。トロンボーンなど結構拳を聴かせています。ですが、全体を通して言えることはやや予定調和的なまとまり方をしていて、何度も録音している割には成長の跡が感じられないのが残念です。佐渡氏は以前も何かで話していましたが音楽の両輪としてのオペラへのアプローチがまだ弱いような気がします。せっかく音楽の中心のヨーロッパで長く活躍しているのですから、もう少しオペラへのアプローチを深めてもらいたいものです。

 

 

 ところでヨーロッパに長く住む佐渡氏です。こんな楽しい動画がネットに上がっていました。しばし、ウィーンの街並みを散策してみてください。

 

 

 

ショルティの軌跡

 

 

 今日はゲオルグ・ショルティの命日です。ショルティはピアニストとしても活躍した時期がありましたが、指揮者としてはキャリアの最初からオペラを中心に活躍してきました。指揮者の中には、高年齢になると長時間のオペラを演奏する体力が無くなって管弦楽専門にシフトする指揮者もいますが、ショルティは晩年に80歳を過ぎても、オペラでバリバリと指揮していました。エネルギッシュはショルティの指揮の特徴でもあります。

また、オペラで磨いたダイナミックな演奏や、ドラマチックな表現を管弦楽の作品にも持ち込、他の指揮者では聴けない緊迫感や魅力を引き出しています。また、引き締まった演奏もショルティの特徴です。

 

 最近はさっぱり名前を見かけなくなりましたが、下のドキュメンタリーの中で、ヴァレリー・ゲルギエフはショルティのことを「炎のような熱さと、氷のように(オーケストラを)コントロールして、そのコンビネーションによって驚くべき効果を生み出した」と語っています。

そして特にシカゴ響との1970年代、80年代の話になりますが、楽譜に忠実な演奏を心掛けていました。主役はあくまでも作品で、それを足しも引きもせずに最大限引き出すのがショルティの音楽解釈の特徴だったと思います。特に2回おこなったベートーヴェンの交響曲全集は最たる例です。1回目の録音ではリピートを全て実行するという原点主義に基づき、重厚長大のトレンドの中で全集がアメリカのグラミー賞、そして、日本のレコードアカデミー賞を受賞しています。

 

 オペラ中心の活動でしたが、1971年にシカゴ交響楽団のシェフについた後は時代も味方したのでしょう。バーンスタインがニューヨークを去り軸足をヨーロッパに移したタイミングで、オーマンディはCBSからRCAに移籍していましたがレパートリーはCBSの焼き直し、クリーヴランドはセルを失い迷走、メータは人気がありましたがノミネート止まりで受賞はゼロです。そうなると、勢いがあったのはショルティぐらいでしょう。初めてのツァーにオケを連れ出し、それまでのアル・カポネの街だったシカゴをオーケストラの街にイメージチェンジさせた事が成功の足がかりとなりました。

 

 まあ、そういう軌跡は変に語るより下のドキュメントの方が多くを語っています。

 

 

 

 

これまで取り上げたショルティの記事

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ショルティは生涯に31個のグラミー賞を受賞しています。ちなみに、グラミー賞 は、 アメリカ の音楽専門家団体である ザ・レコーディング・アカデミー が主催する 音楽賞です。 アメリカの 音楽産業 において優れた作品を創り上げたクリエイターの業績を讃え、業界全体の振興と支援を目的としています。最近はポップスのビヨンセがこの記録を2023年に更新しましたがそれまではこのショルティがトップでした。ちなみに2位以下は、

2 ゲオルグ・ショルティ 31
3 クインシー・ジョーンズ 28
4 アリソン・クラウス 27
4 チック・コリア 27
6 ピエール・ブーレーズ 26

 

となっています。そして、少々長くなりますが以下がゲオルグ・ショルティの受賞歴です。決して、DECCAだけでなく、RCAやCBSへの録音も含まれているというところがショルティが如何にアメリカで人気があったかが分かろうというものです。

 

 

1962
Best Opera Recording (1)
VERDI Aida
Georg Solti, conductor
Leontyne Price, Rita Gorr, Jon Vickers, Robert Merrill, Giorgio Tozzi
Rome Opera House Orchestra and Chorus
RCA

 

1966
Best Opera Recording (2)
WAGNER Die Walküre
Georg Solti, conductor
Birgit Nilsson, Régine Crespin, Christa Ludwig, James King, Hans Hotter, Gottlob Frick
Vienna Philharmonic
London

1972
Album of the Year—Classical (3)
Best Choral Performance—Classical (other than opera)(4)
MAHLER Symphony No. 8 in E-flat Major
Georg Solti, conductor
Heather Harper, Lucia Popp, Arleen Augér, Yvonne Minton, Helen Watts, René Kollo, John Shirley-Quirk, Martti Talvela
Chicago Symphony Orchestra
Chorus of the Vienna State Opera
Singverein Chorus
Vienna Boys’ Choir
Norbert Balatsch and Helmut Froschauer, chorus masters
David Harvey, producer
London

1972
Best Classical Performance—Orchestra (5)
MAHLER Symphony No. 7 in E Minor
Georg Solti, conductor
Chicago Symphony Orchestra
London

1974
Album of the Year—Classical (6)
Best Classical Performance—Orchestra (7)
BERLIOZ Symphonie fantastique, Op. 14
Sir Georg Solti, conductor
Chicago Symphony Orchestra
David Harvey, producer
London

1974
Best Opera Recording (8)
PUCCINI La bohème
Sir Georg Solti, conductor
Montserrat Caballé, Judith Blegen, Plácido Domingo, Sherrill Milnes, Vicente Sardinero, Ruggero Raimondi
London Philharmonic Orchestra
John Alldis Choir
Wandsworth School Boys’ Choir
RCA

1975
Album of the Year—Classical (9)
Beethoven’s Complete Symphonies 
BEETHOVEN Symphony No. 1 in C Major, Op. 21
BEETHOVEN Symphony No. 2 in D Major, Op. 36
BEETHOVEN Symphony No. 3 in E flat Major, Op. 55 (Eroica)
BEETHOVEN Symphony No. 4 in B flat Major, Op. 60
BEETHOVEN Symphony No. 5 in C Minor, Op. 67
BEETHOVEN Symphony No. 6 in F Major, Op. 68 (Pastoral)
BEETHOVEN Symphony No. 7 in A Major, Op. 92
BEETHOVEN Symphony No. 8 in F Major, Op. 93
BEETHOVEN Symphony No. 9 in D Minor, Op. 125
BEETHOVEN Overture to Egmont, Op. 84
BEETHOVEN Overture to Coriolan, Op. 62
BEETHOVEN Leonore Overture No. 3, Op. 72b
Sir Georg Solti, conductor
Chicago Symphony Orchestra
Pilar Lorengar, Yvonne Minton, Stuart Burrows, Martti Talvela
Chicago Symphony Chorus
Margaret Hillis, director
Ray Minshull and David Harvey, producers
London

1976
Best Classical Orchestral Performance (10)
STRAUSS Also sprach Zarathustra
Sir Georg Solti, conductor
Chicago Symphony Orchestra
Ray Minshull, producer
London

1977
Best Choral Performance (other than opera) (11)
VERDI Requiem
Sir Georg Solti, conductor
Leontyne Price, Janet Baker, Veriano Luchetti, José van Dam
Chicago Symphony Orchestra
Chicago Symphony Chorus
Margaret Hillis, director
RCA

1978
Best Choral Performance, Classical (other than opera)(12)
BEETHOVEN Missa solemnis in D Major, Op. 123
Sir Georg Solti, conductor
Lucia Popp, Yvonne Minton, Mallory Walker, Gwynne Howell
Chicago Symphony Orchestra
Chicago Symphony Chorus
Margaret Hillis, director
London

1979
Best Classical Album (13)
Best Classical Orchestral Recording (14)
Brahms’s Complete Symphonies
BRAHMS Symphony No. 1 in C Minor, Op. 68
BRAHMS Symphony No. 2 in D Major, Op. 73
BRAHMS Symphony No. 3 in F Major, Op. 90
BRAHMS Symphony No. 4 in E Minor, Op. 98
BRAHMS Academic Festival Overture, Op. 80
BRAHMS Tragic Overture, Op. 81
Sir Georg Solti, conductor
Chicago Symphony Orchestra
James Mallinson, producer
London

1979
Best Choral Performance, Classical (other than opera)(15)
BRAHMS Ein deutsches Requiem, Op. 45
Sir Georg Solti, conductor
Kiri Te Kanawa, Bernd Weikl
Chicago Symphony Orchestra
Chicago Symphony Chorus
Margaret Hillis, director
London

1980
Best Classical Orchestral Recording (16)
BRUCKNER Symphony No. 6 in A Major
Sir Georg Solti, conductor
Chicago Symphony Orchestra
Ray Minshull, producer
London

1981
Best Classical Album (17)
Best Classical Orchestral Recording (18)
MAHLER Symphony No. 2 in C Minor (Resurrection)
Sir Georg Solti, conductor
Isobel Buchanan, Mira Zakai
Chicago Symphony Orchestra
Chicago Symphony Chorus
Margaret Hillis, director
James Mallinson, producer
London

1982
Best Choral Performance (other than opera) (19)
BERLIOZ La Damnation de Faust, Op. 24
Sir Georg Solti, conductor
Frederica von Stade, Kenneth Riegel, José van Dam, Malcolm King
Chicago Symphony Orchestra
Chicago Symphony Chorus
Margaret Hillis, director
Glen Ellyn Children’s Chorus
Doreen Rao, director
London

1983
Best Classical Album (20)
Best Classical Orchestral Recording (21)
MAHLER Symphony No. 9 in D Major
Sir Georg Solti, conductor
Chicago Symphony Orchestra
James Mallinson, producer
London

1983
Best Opera Recording (22)
MOZART Le nozze di Figaro, K. 492
Sir Georg Solti, conductor
Kiri Te Kanawa, Lucia Popp, Frederica von Stade, Samuel Ramey, Thomas Allen, Kurt Moll
London Philharmonic Orchestra
London Opera Chorus
Christopher Raeburn, producer
London
This recording actually tied with the soundtrack for Verdi’s La traviata with James Levine conducting the Metropolitan Opera Orchestra; principal soloists Teresa Stratas, Plácido Domingo, and Cornell MacNeil.

1983
Best Choral Performance (other than opera) (23)
HAYDN The Creation
Sir Georg Solti, conductor
Norma Burrowes, Sylvia Greenberg, Rüdiger Wohlers, James Morris, Siegmund Nimsgern
Chicago Symphony Orchestra
Chicago Symphony Chorus
Margaret Hillis, director
London

1985
Best Opera Recording (24)
SCHOENBERG Moses und Aron
Sir Georg Solti, conductor
Franz Mazura, Philip Langridge
Chicago Symphony Orchestra
Chicago Symphony Chorus
Margaret Hillis, director
James Mallinson, producer
London

1986
Best Classical Orchestral Recording (25)
LISZT A Faust Symphony 
Sir Georg Solti, conductor
Siegfried Jerusalem
Chicago Symphony Orchestra
Men of the Chicago Symphony Chorus
Margaret Hillis, director
Michael Haas, producer
London

1987
Best Orchestral Recording (26)
BEETHOVEN Symphony No. 9 in D Minor, Op. 125
Sir Georg Solti, conductor
Jessye Norman, Reinhild Runkel, Robert Schunk, Hans Sotin
Chicago Symphony Orchestra
Chicago Symphony Chorus
Margaret Hillis, director
Michael Haas, producer
London

1988 
Best Opera Recording (27)
WAGNER Lohengrin
Sir Georg Solti, conductor
Jessye Norman, Eva Randová, Plácido Domingo, Siegmund Nimsgern, Hans Sotin, Dietrich Fischer-Dieskau
Vienna Philharmonic
Vienna State Opera Chorus
Christopher Raeburn, producer
London

1988 
Best Chamber Music Performance (28)
BARTÓK Sonata for Two Pianos and Percussion
Sir Georg Solti and Murray Perahia, pianos
Evelyn Glennie and David Corkhill, percussion
CBS

1991
Best Performance of a Choral Work (29)
BACH Mass in B Minor, BWV 232
Sir Georg Solti, conductor
Felicity Lott, Anne Sofie von Otter, Hans Peter Blochwitz, William Shimell, Gwynne Howell
Chicago Symphony Orchestra
Chicago Symphony Chorus
Margaret Hillis, director
London

1992
Best Opera Recording (30)
STRAUSS Die Frau ohne Schatten 
Sir Georg Solti, conductor
Hildegard Behrens, Júlia Várady, Sumi Jo, Reinhild Runkel, Plácido Domingo, José van Dam
Vienna Philharmonic
Vienna State Opera Chorus
Vienna Boys’ Choir
Christopher Raeburn, Morten Winding, and Stephen Trainor, producers

1997
Best Opera Recording (31)
WAGNER Die Meistersinger von Nürnberg
Sir Georg Solti, conductor
Karita Mattila, Iris Vermillion, Ben Heppner, Herbert Lippert, José van Dam, Alan Opie, René Pape
Chicago Symphony Orchestra
Chicago Symphony Chorus
Duain Wolfe, director
Michael Woolcock, producer

 

 最初がオペラで最後もオペラというまさにショルティの人生にふさわしい受賞歴です。

 

 

ショルティ/ラスト・コンサート

 

曲目/マーラー

交響曲第5番嬰ハ短調

1.第1楽章: 葬送行進曲(威厳ある歩調で、厳格に、葬列のように)  12:24

2.第2楽章: 嵐のように激動して、最上の激しさをもって   14:43

3.第3楽章: スケルツォ(力強く、速すぎずに)   16:42

4.第4楽章: アダージェット(きわめて遅く)   9:58

5.第5楽章: ロンド=フィナーレ(アレグロ)  14:43  

ベートーヴェン:

6.《エグモント》序曲 作品84*   8:08

 

指揮/ゲオルク・ショルティ

演奏/チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団

 

録音/1997/06/12.13 Schweizer Radio DRS

   1947*

 

DECCA   475 9153

 

 9月5日はゲオルグ・ショルティの命日ということもありバーンスタイン引き続いて取り上げることにしました。白鳥の歌はゲオルグ・ショルティと縁のあるオーケストラで縁のある曲でした。不思議な運命を感じます。つまり、オーケストラがチューリヒ・トーンハレ管弦楽団ですがが、このオーケストラはショルティがデッカと契約して最初の録音を行ったオーケストラ(1947年のこと)だということがまず一つ。そして、ショルティがシカゴ交響楽団と最初に録音した曲もマーラーの交響曲第5番(1970年のこと)だったことがもう一つ。さらに言えば、ショルティが迫害を逃れて、世界大戦時を過ごしたスイスで最後の録音となったことにまで運命的なものを感じてしまいます。

 

 今回取り上げる第5番は、ショルティが得意とする作品で、すでにCDが2種(1970・1990)、映像ソフトが1種(1986 廃盤)リリースされていますが、オーケストラはすべてシカゴ響だっただけに、今回のトーンハレ管との演奏は興味津々です。1997年7月12、13日、チューリヒ、トーンハレでのライヴです。この年に創設されたチューリヒ芸術祭におけるコンサートということです。13日のコンサートはスイス放送協会(DRS2)によって生中継されたとのことで、これを主体に12日の録音も編集素材となっていると考えられます。ということで、録音データにはいつものデッカのクルーの記載はありません。


 当時のトーンハレ管は、この演奏の2年前、1995年に着任したデイヴィッド・ジンマンのもと、改革精神に満ちた活動をすでに開始していただけに、御大ショルティの指揮下でも、そのフィジカルな魅力は遺憾なく発揮させられていたことはまず間違いないと思われるからです。 ショルティとトーンハレ管弦楽団と言うとまず、彼のオーケストラ作品初録音となった1947年の『エグモント』序曲と『レオノーレ』第3番が思い出されますし、最近では、1996年にマーラー第10番のアダージョを初めて演奏するというコンサートで話題を呼んたのが記憶に新しいところです。現代の世界的マーラー指揮者として知られたショルティが、意外にもこの作品を演奏していなかったという事実が、少なからぬ驚きを持って迎えられていたものです。


 これがショルティにとって最後のコンサートとなり、9月5日、フランス、アンティーブにて自伝の最終校正を終えた後、就寝中に亡くなってしまう。その自伝についてはこちらで取り上げています。

 


 客演ということもあってか、他流試合の面白味と興味深さがあり、良くも悪くもショルティの豪腕ぶりは鳴りを潜めています。第1楽章冒頭におけるトランペットの輝かしさはいかにもショルティらしい響きです。その後は力みを感じさせず、しなやかでむしろ柔らかいくらいですが、このオーケストラの個性でもあるのでしょう。いつものショルティが聴かせる強引なまでの腕っぷしの強さは稀薄で、それゆえかドライブ感の弱さはありますが、その分美感が削がれていないのは皮肉でしょうか。 


 第2楽章はパンチには欠けますが、伸びやかで開放的な音色が心地良く、そつなくこなしています。これはかなりオーケストラの名人芸に助けられている部分があります。ジンマンに鍛えられたアンサンブルの良さが光ります。
第3楽章はオーケストラの各セクションにおける、室内楽的な掛け合いの愉しさが際立ちます。一方でショルティはしっかり手綱を握り、くっきりした造型は彼の至芸のなせる技でしょう。
有名な第4楽章はショルティにしてはややオーケストラ任せで、食い足りない感がありますが、第5楽章に入るとパンチが効いた盛り上がりを聴かせているのはさすがといえます。解釈のコンセプトも以前と大きく変わっていない はずなのですが,いつもの肩をいからせたハイテンションな指揮ぶりとは異なっ た,力みのない的確なフレージングと,落ち着きのあるなじみの良い響きを聴 かせていることに驚かされます。

 

 

 

 

 フィルアップされているのはショルティの指揮者としての初録音となったベートーヴェンの「エグモント」序曲です。これが初CD化のようです。聴き手からすると一気にタイムスリップする形ですが、不思議と違和感は感じさせません。キビキビとした若々しい息吹と、このオーケストラの伸びやかな音色は50年の時を超えても良い意味で保持されているのだと微笑ましく感じさせます。若干のスクラッチノイズは聴こえますが,鑑賞上はほとんど問題にな らないレベルだろうと思います。 肝心の演奏の方は,ショルティの指揮の下で整然とした演奏を行っており, プロフェッショナルな演奏の記録として不足のないものではあると思うのです が,アンサンブルの締まりというか求心力はいまひとつで,駆け出しの指揮者 の演奏だなと思ってしまったのも事実です。

 


 

 

 

 


 

Claude Bolling

Suite for Chamber Orchestra and Jazz piano trio

 

曲目/

Suite For Chamber Orchestra And Jazz Piano Trio    

1.Gracieuse    7:15

2.Sereine    7:55

3.Enjouée    6:48

4.Aria - Animée    15:17

5.Brillante    10:40

 

ピアノ/クロード・ボーリング

ベース/ Adrian Beer*, Philip Simms

Drums – Jean-Luc Dayan

指揮/ジャン=ピエール・ランパル

演奏/イギリス室内管弦楽団

<オーケストラメンバー>

コンサート・マスター/ホセチ・ルイス・ガルシア

Violin [1st] – Carol Slater, Chris Bevan, Josef Fröhlich, Macies Rakowski, Paul Willey

Violin [2nd] – Andrew Walton, David Juritz, Jim McLeod, Jonathan Evans-Jones, Lorraine McAslan, Mariette Richter, Mary Eade

Viola – Cathy Stevens, Graham Oppenheimer, Norbert Blume, Simon Rawson

Bass [String] – Jean-François Rougé

Bassoon – Jan Cuthill, Julie Andrews 

Cello – Anita Lasker, Dietrich Bethge, Joanna Milholland, Olga Hegedus

Clarinet – Nicholas Bucknall, Thea King

Flute – Chris Nicholls*, Richard Adeney

Horn – Anthony Halstead, Christian Rutherford

Oboe – James Brown , Neil Black 

 

録音/1983 

E:ジョン・カーランダー

P:クロード・ボーリング

 

CBS  FM-37798

 

 

 小生のように映画音楽から入った人間は「クロード・ボーリング」と表記しますがジャズ・ピアニストからするとクロード・ボリング」という表記になるようです。ただ、映画音楽作曲家として活躍したのは主に1960-70年代でしたから最近では穂リングの表記の方が一般的なようです。ただ、上記のような経緯からこのブログではボーリングと表記します。フランスのジャズ・ピアニスト、作曲家のクロード・ボーリングが手掛けた映画音楽はこれまでに100本以上に及びます。なかでもジャン=ポール・ベルモンド、アラン・ドロン出演の1970年公開のフランス映画「ボルサリーノ」はご存知の方も多いはず。こんな音楽でした。

 

 

 ボリングはクラシック音楽家との「クロスオーバー」的なコラボレーションでも知られています。ジャン=ピエール・ランパルとの共演作『フルートとジャズピアノ三重奏のための組曲』は、バロックの優雅さと現代のスウィングを融合させ、長年ベストセラーとなり、その後も同系統の他の作品が続きました。この作品は特にアメリカ合衆国で人気を博し、発売後2年間ヒットチャートのトップに君臨し、ビルボードのトップ40に530週間、約10年間ランクインしました。

 

 ランパルとの共演後、ボリングはギタリストのアレクサンドル・ラゴヤ、ヴァイオリニストのピンカス・ズーカーマン、トランペット奏者のモーリス・アンドレ、チェロ奏者のヨーヨー・マなど、様々なジャンルの多くのミュージシャンと共演していますた。彼はまた、ライオネル・ハンプトン、デューク・エリントン、ステファーヌ・グラッペリ、ジャンゴ・ラインハルト、オスカー・ピーターソンなど、他の多くのアーティストと共演したり、彼らにトリビュート演奏を披露したりしました。初期はフィリップスに録音していましたが、のちにCBSへ次のようなアルバムを録音しています。

 

Suite for Flute and Jazz Piano Trio (1975年、Columbia Masterworks) ※with ジャン=ピエール・ランパル

With the Help of My Friends (1975年、Who's Who in Jazz)

Concerto for Classic Guitar and Jazz Piano (1976年、CBS) ※with アレクサンドル・ラゴヤ

Suite for Violin and Jazz Piano (1977年、Columbia Masterworks)

Jazz Gala 79 (1979年、America)

Concerto for Classic Guitar and Jazz Piano (1980年、Angel) ※with アンヘル・ロメロ

Picnic Suite (1980年、CBS)

Bolling: Toot Suite (1981年、CBS) ※with モーリス・アンドレ

Suite for Chamber Orchestra and Jazz Piano (1983年、CBS) ※with ジャン=ピエール・ランパル

The Original Bolling Blues (1983年、Mercury)

Suite for Cello and Jazz Piano Trio (1984年、CBS Masterworks) ※with ヨーヨー・マ

Bolling [Band] plays Ellington [Music] (1987年、CBS) 

Bolling: Suite No. 2 for Flute and Jazz Piano Trio (1987年、CBS)

Sonatas for Two Pianists (1989年、CBS)

Warm Up the Band (1991年、Columbia)

 

レコードのレーベルはグリーン色と今まで見たことが無い仕様です

 

 このアルバムはデジタル収録になった1983年に行われています。で、ここではジャン=ピエール・ランパロは指揮に回ってイギリス室内管弦楽団を指揮しています。ジャズのピアノトリオ(ピアノ&ベース&ドラム)+チェロorフルートという編成のボリングの他の録音に比べるとクラシック色は強めです。室内オーケストラ+ジャズのピアノトリオのために書かれたバロック風の合奏協奏曲のような作品です。室内オーケストラのパートは、ほぼクラシックです。親しみ易いメロディ、ポリフォニーたっぷり、ジャズの小粋なフレーズ。クラシックを主に聴いていてバッハが好きで、時々ジャズも聞く私には、楽しい音楽です。ボーリングのこれらの作品はしばしばクラシックのコンサートでも取り上げられているほど馴染んでいる作品でもあります。この曲は組曲ということで5つの作品から構成されていますが、全曲で50分以上を必要とする大作です。まあ、とくとお聴きください。

 

 

 

 

 

 

 

オーフラ・ハーノイ

プレイズ ビートルズ

 

曲目/

1.エリノア・リグビー

2.ヒア・ゼア・アンド・エヴリフェアー

3.イン・マイ・ライフ

4.アンド・アイ・ラヴ・ハー

5.ストロベリー・フィールド・エヴレィフェアー

6.フェン・アイ・アムシックスティ・フォー

7.ミシェル

8.ナウ・フェアーマン

9.イエスタディ

10.サムシング

11.ガール

 

チェロ/オーフラ・ハーノイ

演奏/オルフォード四重奏団

編曲/ドゥーグ・ライリー

 

録音/1984/09  ティモシー・イートン・メモリアル・教会フローラ・マクライ・オーディトリウム

P:ジュリアン・ライス

E:アントン・カイトフスキー

 

RCA  RCL−8433(原盤 加ファンファーレ)

 

 

 このレコードは1986年に発売されています。同時にCDも発売されたようですが市場にはあまり流通しなかったようです。個人的にもカナダ育ちということで、あまりつかみどころのないチェリストでした。82年にカールギーホールデビューして注目され、「チェロの妖精」としてアイドルみたいに扱われました。1983年にジャック・オッフェンバックのチェロ協奏曲を世界初演し、VOXから発売された録音は話題になりました。小生も以前記事にしています。

 

 

 このアルバムこそVOXが発売しましたが、以後RCAとの契約ができ、これ以降の録音はRCAからの発売となります。ただし、この録音の原盤はカナダの「ファンファーレ」と言う所のものになり、日本ではRCAからのライセンス生産ということで発売されました。で契約が切れたのでしょう。この原盤は今はRCAにも無いということで、現在では音源は別の会社から発売されているようです。もともとこのアルバムはオルフォード四重奏団との合同のアルバムでした。日本ではオーフラ・ハーノイの単独のアルバムのように思われていましたが、実際は違っていたんです。そういうこともあり、ライセンス切れで今では発売されていないのでしょう。近年、ソニーから発売されたオーフラ・ハーノイのボックスセットもこのアルバムは収録されていないのは、その辺に理由がありそうです。

 

 

 クラシックからやや離れたビートルズもということで、1時は人気があったようです。ただこうして聞いてみると、アレンジがしょぼくて、4重相談と、その中に含まれるチェロとのコラボということですから、音色的な変化がそれほど感じられません。やや特色が薄いなぁというのが聞いた感想です。それはタイトル曲の「イエスタデイ」や「ミシェル」でも言えると思います。