ショルティの「春の祭典」 | geezenstacの森

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ショルティの「春の祭典」

 

曲目/

1.ストラヴィンスキー/春の祭典  32:04

2.ラヴェル/ボレロ  14:45

3.シェーンベルク/管弦楽のための変奏曲 Op.31  19:15

 

指揮/ゲオルグ・ショルティ

演奏/シカゴ交響楽団

 

録音:1974/05/14 1

   1975/05/14 3

   1976/05/24.25 2  マディソン教会、シカゴ 

P:レイ・ミンシュル 1.3

  ジェームズ・マリンソン 2

E:ケネス・ウィルキンソン

  ジェームズ・ロック 1

DECCA   478 5966

 

 

 最近はとんとCDを取り上げていなかったので久しぶりに記事にすることにしました。何とも変わった組み合わせのCDですが、これは「デッカ・アナログ・イヤーズ」に収録されたCDの組み合わせです。日本では売れないと見えて国内盤は「春の祭典」に「展覧会の絵」が組み合わされて市販されました。1970年代は4チャンネル録音を経てアナログ録音が成熟期を迎えていて、この「春の祭典」の録音も当時Hi-Fi録音として話題になった1枚でした。メインが「ハルサイ」ということでこのジャケットが使用されています。

 

第一部:大地礼賛
 「序奏」かなり締まったファゴットで始まります。とても静まった空気感です。克明に動く各々の楽器がデッカツリーのマルチ録音を印象付けます。「春のきざし」ではバネのように弾む弦が印象的でする。金管の短く強いホルンの響きや、下っ腹に応えるティンパニの響きも聞き応えがあります。実際この録音はメインのエンジニアがケネス・ウィルキンソンで、サブにジェームズ・ロックがついた2人体制で収録されています。そんなことで、とにかく色んな楽器が手に取るように分かる克明な演奏になっています。意外なことに金管は激しく咆哮することは無く、案外冷静です。「誘拐」では容赦なく咆哮するホルン。トロンボーンも強烈ですがきっちりショルティにコントロールされています。そして「春の踊り」では重く尾を引くコントラバスも速めのテンポでさっさと進みます。元気の良い演奏です。ティンパニは三つの音をはっきりと分けて演奏しています。ピッコロの後もスピード感のある演奏です。「敵の都の人々の戯れ」も屈託無く伸び伸びと鳴り響く金管に木管も統率が取れていて見事なアンサンブルです。「賢者の行列」は本来なら音量が落ちるはずのホルンが全く音量を落とさずに演奏します。前半最後の「大地へのくちづけ、大地の踊り」は全ての音が前に出て来て色彩のパレットを広げたようです。

 

第二部:いけにえ
 「序奏」は大太鼓が入ると崩れ落ちるように重くなります。いろんな楽器の動きが明快に分かります。次の「乙女たちの神秘なつどい」は艶やかで色気のあるビオラ。アルトフルートからは速めのテンポでさっさと進みます。引き締まったホルン。ゆっくりと重い11拍子が特徴です。「いけにえの賛美」では色彩が豊かでバネのようにリズム弾みます。「祖先の呼び出し」は意外にもティンパニはあまり激しくありません。ファゴットもあっさりとしています。つつ゜く「祖先の儀式」は弱奏と強奏の差がとても大きいです。トゥッティのエネルギーは巨大です。「いけにえの踊り」はティンパニがミュートされているのでリズムがとても先鋭です。研ぎ澄まされたトロンボーン。マルチマイクでいろんなパートがとても鮮明で、とても元気な演奏でした。色彩感も豊かで、シカゴsoのパワーもさすがでした。

 

 

 

 「ハルサイ」は名録音が多く、このブログでも数々取り上げていますが、この録音、定位が抜群で奥行き感が見事です。さすが二人のエンジニアがいい仕事しています。

 

 


 次のラヴェルの「ボレロ」はこのホールにしては残響を多めに取り込んでいます。このメディナ・テンプル。このイスラム様式のエキゾチック感満載なこの建築物、実は寺院ではなく、4000席以上の大劇場として作られた巨大なホールとなっています。広大な空間を感じられる代わりに、やや過剰となる残響音のため、マイクを近接しセッティングする必要があり、若干深みに欠けるのが録音の際の難点でした。
 開始の木管ソロから流石に上手く、しなやかさにも不足はありませんが、1stクラリネットとファゴットソロのバックのハープはもう少しの感もします。意外にテナーサックスソロが達者で艶かしい表現で主張があって面白いです。まあ芸達者が揃っていますからねぇ。この曲はシカゴ響の名人芸を楽しむためのものでしょう。トロンボーンソロなんかはやりたいようにやっている印象です。弦楽セクションが入ってからは若干テンポをあおってゆくのですが、音量の高まりになる位置がかなり早く、中盤には既にかなり分厚い表現になっています。ホルンのリズムアクセントも実に強力です。ですが全体にフランス音楽らしいエスプリさが欠けているのも事実で、ただうまけりゃいいってもんでもないことが露呈しているとも言えます。

 

 

 最後はストラヴィンスキーからさらに進んだ表現主義から無調、そして次ぎに来る12音技法の創始者シェーンベルクの作品です。そして、「管弦楽のための変奏曲」は、オーケストラによって初めて書かれた12音技法作品でもあります。しかも、この作品1928年にかのフルトヴェングラーがベルリンフィルで初演している作品なんですなぁ。

 12音技法というのはドから順番に半音ずつ上げていくと、1オクターブにつき12の音があります。この12の音をすべて均等に使って作曲して、調性から逃れようという技法です。この音列(セリー)の原型とその展開系を上げたり下げたりの組み合わせで音楽を作っていくわけです。それらが変奏として展開してゆくのであるが、9つの変奏をそれぞれにテンポを変えて演奏するのがこの曲ということになります。

 

 まあ、現在の小生の理解力では一度聴いたらもういいか、というレベルですので感想はありません。聴いて楽しくなければ音楽とは言えないですからねぇ。