このレコード、Side 2の3曲目に収録された"No Words for Dory"がとにかく絶品です。静かなバラードなのですが、とにかく切なく美しい演奏です。このDoryって誰かと思ったら、裏ジャケの解説を見ると、当時の妻ドリー・プレヴィンのことだということです。妻に捧げた曲なのか・・・そりゃ、完璧な曲、完璧な演奏じゃなきゃマズイでしょうなぁ。ちなみにプレヴィンは5度結婚しています。この後、クラシック界で活躍し出した時は女優のミア・ファローと結婚して3人の子供を儲けています。ジャズ時代のプレヴィンも良いものです。
この録音のプレイバックを聴いて、ライナーは「これは私のこれまでのレコードの中で最も美しいものだ。とても気に入ったよ」と述べたと伝えられています。第1楽章は「Allegro non troppo」の指示で書かれています。これはAllegro のテンポで、Allegro らしい感じがするはずです。一方、これより遅かったらAllegreを使うはずです。ですからAllegrettoはもう少しゆったりとした感じでしょう。で、このライナーの解釈はかなりアレグロ寄りです。微妙な違いだし、解釈によっては境界線が曖昧になることもありますが、この定義でいくとだいたい11分台がそのテンポではないでしょうか。調べると1970年台の演奏はだいたい13分台です。1960年代だとミュンシュ、ラインスドルフ、そして御大のトスカニーニがだいたいこのテンポです。このブログでもこの4番はハイティンク、アバド、ワルターと取り上げていますがどうも好印象を持っていません。この交響曲第4番の第1楽章はアウフタクトで始まるのがいけなかったのかもしれません。3度下降し、また3度上昇する主題と相まって、どうも女々しい様な気がして好きになれなかった理由でしょう。交響曲第1番とは全くイメージが違いますからね。それがライナーの印象はその女々しさが全くありません。このテンポ感が良いのでしょう。
そして、今回この「THE 20TH CENTURY MASTORS」を手に入れてこのセットにベルリンフィルとの録音があったのでこれは如何にと聴いてみた次第です。そして、これが大当たりでした。確かに録音は1937年と古いのですが、待望のベルリンフィルとの録音ということで期待に胸を膨らませました。そして、案の定シューリヒトスタイルを踏襲しながらの『英雄』は、テンポを大きく揺らすことなく、オーケストラの響きを透明かつ機能的に鳴らしながらも、内側から湧き出る熱いカンタービレと引き締まったリズム感で魅了してくれました。ついでにパリ音楽院(ORTF)との録音も聞きましたが感銘度はこのベルリンフィルに軍配が上がりました。まさに重苦しさを排し、古典的な気品と推進力を両立させたその解釈は、モノーラル時代のそれもSP原盤による演奏としては第一級品です。
この1959年8月24–25日の録音、ちなみにパーソネルは、André Previn & His Pals = André Previn (p), Red Mitchell (b), Shelly Manne (ds)。アンドレ・プレヴィンのピアノがメインのピアノ・トリオ編成。ベースに名手レッド・ミッチェル、ドラムに名手シェリー・マンが担当している。米国ウエストコースト・ジャズの最強のリズム隊でもありました。タイトル通り、レナード・バーンスタインのミュージカル「ウエストサイド物語」のオリジナルスコアから8曲を選び、ジャズ風にアレンジしています。これがまあ、なんと絶品。「ウエストサイド物語」のジャズ・ピアノ・トリオによるカヴァーは、オスカー・ピーターソンのものが有名だが、そのピーターソンのカヴァーよりも、このプレヴィンの方が内容が濃いです。