流星の絆
著者:東野圭吾
出版社:講談社 講談社文庫
何者かに両親を惨殺された三兄妹は、流れ星に仇討ちを誓う。14年後、互いのことだけを信じ、世間を敵視しながら生きる彼らの前に、犯人を突き止める最初で最後の機会が訪れる。三人で完璧に仕掛けたはずの復讐計画。その最大の誤算は、妹の恋心だった。涙があふれる衝撃の真相。著者会心の新たな代表作。---データベス---
この小説は『週刊現代』に2006年9月16日号から2007年9月15日号まで連載され、2008年3月5日に講談社より単行本が刊行され、2011年4月15日には講談社文庫版が発売されています。そして、2026年7月8日には児童向けに編集された講談社青い鳥文庫版が発売されたところで、シリーズ累計166万部を突破したことが公表されています。また、2008年10月17日から12月19日まで二宮和也氏の主演でTBS系「金曜ドラマ」枠で放送されたことを覚えてい人も多いのではないでしょうか。この記事を執筆現在ではNetflixで配信されていますし、アマゾンプライムでも視聴できますが、見放題ではなく有料のレンタル配信となっています。Amazonは最近はこういう配信が多いですね。
下は現在会員なら視聴可能な東の作品です。
🎞️沈黙のパレード
🎞️マスカレード・ホテル
🎞️マスカレード・ナイト
🎞️さまよう刃
📺東野圭吾「さまよう刃」
🎞️容疑者Xの献身
🎞️真夏の方程式
🎞️ラプラスの魔女
📺ガリレオ
📺流星の絆 8/5配信開始
📺東野圭吾「ゲームの名は誘拐」
📺東野圭吾「変身」
📺東野圭吾「カッコウの卵は誰のもの」
📺東野圭吾「幻夜」
📺東野圭吾「分身」
📺東野圭吾「片想い」
📺東野圭吾「ダイイング・アイ」
さて、単行本で480ページ、文庫本では600ページを超える長編小説です。大きな章は無く週刊誌連載時の号数と同じ53のブロックに分けられています。この作品、なんの予備知識もなく読み始めました。本の厚さから長編だということは分かっていましたが、最初はドラマ化されているのも知りませんでした。2000年代はテレビはほとんど見ていませんでしたし、ましてや東野圭吾作品も全く興味がなかったのです。テレビドラマ化されているのでサスペンスドラマということはわかりますが、それ以上にヒューマンドラマということに驚きました。文藝春秋の「東野圭吾公式ガイド」には氏の言葉でこの作品について以下のように書かれています。
"この「流星の絆」で書こうと思ったこと、それは兄弟や家族の「絆」です。両親を殺された三兄弟が色々悪いことをするんですが、最終的に兄二人が、妹を幸せにするために自分たちを犠牲にしてまでも頑張ろうとする。そんな流れを考えました。"
それもあり、最初の20ページくらいで涙腺が緩みます。長男の功一が、妹の静奈を思い遣って「まだ静奈は知らないから、せめて明日までは寝かせてやりたい」って言うところに功一の心情が描かれます。何も知らないで寝ている幼い静奈がすごく切ないですなぁ。いずれ静奈に事実を知らせる必要がありますが、どう伝えるべきか考えるだけでも絶望的な気持ちになる感じはつらすぎます。功一にとって、自分が事実を知った時よりも、静奈が事実を知ったら、どんなに悲しい思いをするかを想像した時の方が、もっと辛くなるというところにすごく共感します。
場面は変わって孤児院を卒業し、その後の詐欺をしているシーンでは、詐欺の手口がとても巧妙で、東野圭吾氏の、詐欺の手口についての記述はそれが本筋のストーリーではないだけに感心させられます。まるで2003年に公開されたデカプリオ主演の「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」を彷彿とさせます。ここでは、詐欺を躊躇なく行う功一の価値観に納得できて、本当にそう思っている詐欺師もいるかもしれないと納得させます。こういう描写ができるのが東野圭吾氏なんでしょう。
殺人事件から14年後。この小説が発表された2007年当時は殺人事件の時効は事件発生から14年に設定されていました。間も無くその時効の期限が来るという時にこの物語は存在しています。ただし、小説の中ではその事項についてはあまり言及されていません。そして、ストーリー中盤からは詐欺の方向性からちょっと逸脱していきます。物語の軸となるのは、流星の下で立てた「俺たち三人は絆で繋がっている。だから、何もこわがるな」という誓いです。それが次男の泰輔がレストランチェーン「トガミ亭」の御曹司の戸神行成の父親が両親殺しの犯人の横顔に似ていると言い出すところから方向性が変わっていきます。つまり、
「あの夜・・・父さんと母さんが殺された夜、家の裏口から出ていった男・・・今の男が、あの時の男だ」という泰輔の衝撃的な一言で一気に物語は復讐のフェーズへと加速します。それにしても長編でありながら、冒頭の刑事が登場するところから、すでに伏線が色々貼ってありそれが最後の戸神家での対決シーンで次々と明らかになっていく様は推理小説の醍醐味をきちんと抑えています。
さらに、「『アリアケ』のハヤシライス。今夜食べたハヤシライは、あれと同じだった。同じ味だった」という静奈の気づきが証拠となり、政行を標的とした復讐計画が動き出します。しかし、「あいつ、惚れてるよ。戸神行成に惚れてる。芝居じゃない。本気で惚れてるんだ」という一言によって計画は大きく揺らぎます。
次第に推理小説に恋愛感情が持ち込まれます。静奈が行成を本当に好きなのに、行成の前で架空の人物を演じなければならず、全て嘘の友人関係を話している時の虚しくなる気持ちを想像していくとだんだん切なくなります。戸神行成は本当の静奈のことは全然知らないで、偽の偽名の高峰沙緒里を好きになっていきます。自分の本心を抑えて、どんどん辛くなる静奈ですが、兄弟のためには両親の仇を取らなければなりません。静奈のメンタル崩壊しちゃうんじゃないかなって思ってたら、やっぱり最後の方で決壊してしまいます。こういうところは男と女のドラマになっています。
行成の家に見学に行ったシーンは後半の注目点の一つです。行成のお母さんが、静奈を本当に気に入って、高価な香水を譲ってくれて、静奈が下を向いて涙を堪えるシーンがあります。これから策に陥れようとしている相手から、温かく接してもらうことの罪悪感を感じたのでしょう。また、これが嘘じゃなくて本当の関係だったらどれだけ嬉しかったかとドラマ的には盛り上がります。
ただ、展開思わぬ方向に展開していきます。行成が真実を知ってからの行動は特に想像以上でしょう。実の父親が犯人なのかを行成が思いもよらない方策で暴こうとします。親が大罪を犯してしまうような人と思われる割に、ずいぶん真っ直ぐ育ったような性格をしていると思われる描写にちょっと驚きます。
犯人の最後について真っ先に思ったのは、そんな終わらせ方をしたら、功一が怨恨でやったと警察に疑われないか心配ということでしょう。なにしろ犯人はあっさり飛び降りてしまうのですから。犯人の心理はわからないけど、これまで何度も終わらせるべきか考えてきて、ついに全てが露見した時、ここで本当に終わりにしよう…と思ってしまったのでしょう。大罪を犯して、同情の余地はないのかもしれないけど、犯人も悲しい人生を背負っていたのだと考えさせられます。
エピローグ的に、静奈を救済するために功一がが行成のところへ全てを洗いざらい話に行きます。そして、行成は指輪を購入することを提案します。騙されて買うはずだった指輪を買い、功一達にお金を貸す理由とすると同時に、静奈にその指輪で告白してみせるという流れは泣かせます。序盤に出てきた偽の高級指輪が、最後に重要なアイテムとしてまた出てくるとは・・・・。
こんなエンディグならドラマ化にはうってつけの流れです。ということで、この後はドラマで「流星の絆」を楽しむことにします。







































