ケルテス/LSOの新世界
曲目/ドヴォルザーク
Symphony No.9 in E Minor, Op.95, B.178
1. Adagio – Allegro molto 12'33 (9:48)
2. Largo 12'29 (11:46)
3. Scherzo (Molto vivace) 7'27 (7:39)
4. Allegro con fuoco 11'19(11:05)
指揮/イシュトヴァン・ケルテス
演奏/ロンドン交響楽団
録音/1966/11/21,22、12/03 キングスウェイ・ホール
P:レイ・ミンシェル
E:ケネス・ウィルキンソン
最近はそうでもありませんが、20年ほど前はケルテスのロンドン交響楽団とのドヴォルザークの交響曲全集は全く人気がありませんでした。ケルテスといえば1961年に録音したウィーンフィルとの「新世界から」の評価が高くて、それがためにロンドン響と録音したものが霞んでしまっていたのかもしれません。しかし、このケルテスのドヴォルザークの交響曲全集は世界初の全集でした。レコード時代には国内版は高いので輸入盤を個人輸入の形でコツコツと1枚づつ購入していました。ジャケットが全てブリューゲルの絵を使ったもので中々味がありました。
レコード時代のジャケット
で、CD時代に発売されたのがこの写真の全集だったのですが、CDに無理やり収めることにしたために交響曲第2番など1枚目の最後に第1楽章だけ収録され全曲聞こうとすると1枚目と2枚目をセットしなければまともに聴けないという残念な仕様でした。これはクーベリックの全集にも言えることで、こちらも曲がブチギレの収録になっていました。
そんなマイナス面はあるのですが、このロンドン響との録音は彼がモントゥーの在任中から始まり、主席指揮者を務めた期間に録音されたものです。ホルンの名手、バリー・タックウェルも在籍していた当時のロンドン交響楽団は、技術はもちろん、表現力にもかなり高度なものがあり、また、英 DECCA の優秀な録音技術もあって、この作品本来のロマンティックな味わいを満喫することができます。重厚にしてややブラームス寄りのシンフォニックで構築力の勝った豪快なドヴォルザークで若々しさを感じさせるケルテスの指揮のもと、ロンドン交響楽団は快演を繰り広げています。この第9番では、たとえば第1楽章の、第2主題、ウィーン盤は、テンポそのまま、でも、ロンドン盤では、ぐっと、テンポを落として、フルートを、ゆったり歌わせ、鄙びた味わいすら、出しています。他のサイトの記述を信頼するとここで吹いているのはジェームス・ゴールウェイで、スピード感やパート・バランスも、こちらのほうが、ケルテスの指示が、徹底しているように感じます。
演奏自体は5年前のウィーン・フィル盤に比べて落ち着いており、ケルテスの円熟と培われた風格が感じられます。旧盤の評価が圧倒的に高いのですが、こちらも十分良い演奏で普遍的な名演に仕上がっていると思います。旧盤にない提示部の繰り返しがあるのが意外ですが、交響曲全集なので楽譜に忠実であろうとしたのでしょう。
また、ここではケルテスはジムロックの慣用版の楽譜を使用しているようで、第1楽章冒頭の4小節目のホルンが3拍目のアウフタクトで32部音符で入っています。後の校訂版ではこの部分は2拍目のアウフタクトで64部音符で入ります。パ・パーンと鳴るか、パパーンと鳴るかの違いですが、これだけで結構印象は変わるものです。ケルテスは9番でも同様の処理をしています。下の楽譜は一般的な64部音符のものです。

このホルンの扱い決して時代で別れているようではないようでカラヤンやベーム、小澤征爾あたりはケルテスと同じ処理、クーベリック、ヤンソンス、ヤルヴィあたりは後者のタイプで演奏しています。ただ、最近の若手は山田和樹をはじめ、エストラーダ、オロスコあたりはすべて後者タイプです。ウィーンフィルを聴いてからこのロンドン響盤を聴くと、ティンパニの扱いの違いにびっくりします。ウィーン盤は中央奥からかなりくっきりとした響きでやや硬めのマレットで叩いているかのような響きですが、ロンドン盤は中央やや左奥でこの時代の大きめのヘッドのマレットで叩いていてややくぐもった響きがしています。ただ全体のバランスでいったら音楽に溶け込んだ響きでこちらの方がまとまりがあります。
第2楽章はロンドン響の響きが美しいです。中間部になって音楽が別の動きを始め、音楽がより積極的になります。この辺の加減が上手で、クライマックスも無理がありません。全体のバランスの取れた録音はこのキングスウェイ・ホールを知り尽くしたデッカの録音スタッフのチームワークのおかげでしょう。
第3楽章はウィーン・フィル盤とは所によって楽器のバランスを変えており、新鮮味があります。特にホルン陣のバランスが突出していて同じ演奏はしないというケルテスの工夫が感じられます。たぶんこの第3楽章が一番旧録音との違いが感じられるのではないでしょうか。上のタイミングは()が旧録音です。この第3楽章だけは旧録音より早いテンポで演奏しています。
第4楽章はひと言で表せば誠実な演奏です。ここでもじっくりとしたテンポ設定で、構成力が確かで最後まで聴かせる力があります。当時の主兵のオーケストラということもあり、各奏者の曲を知り尽くしていてその特徴を引き出しているという点ではケルテスの成長をうかがわせる堅固で立派な演奏です。






















