ロンドン管楽合奏団のモーツァルト | geezenstacの森

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ロンドン管楽合奏団のモーツァルト

グラン・パルティータとナハト・ムジーク

 

曲目/モーツァルト

セレナード第10番『グランパルティータ』変ロ長調K361(370a)

第1楽章: Largo - Allegro Molto    7:44

第2楽章: Menuetto (Allegretto) - Trio I-II    5:45

第3楽章:Adagio    5:38

第4楽章:Menuetto (Allegretto) - Trio I-II    4:51

第5楽章:Romanze (Adagio - Allegretto - Adagio)    6:51

第第6楽章: Thema Con 6 Variazioni (Andante)    10:15

第第7楽章:Finale (Molto Allegro)    3:34

セレナード第12番『ナハトムジーク』ハ短調K388

第1楽章:Allegro    8:29

第2楽章:Andante    4:53

第3楽章:Menuetto In Canone    5:00

第4楽章:Allegro    6:34

 

指揮/ジャック・ブライマー

演奏/ロンドン管楽合奏団

オーボエ/テレンス・マクドナー、ジェームス・ブラウン

クラリネット/ジャック・ブライマー、バジル・チャイコフ

バセット・ホルン/ステェファン・トリエール、フレデリック・ロウ

バスーン/ロジャー・バーンスティングル、ロナルド・ワラー

ダブル・バスーン/ケネス・クーパー

ホルン/アラン・シヴィル、イアン・ビール、ジェームスW・ブラウン、イアン・ハーパー

 

録音/1962/122−29  デッカ 第3スタジオ ウエストハンプステッド、ロンドン

P:エリック・スミス

E:ゴードン・パリー

 

デッカ 478 5989

 

 

 この組み合わせのCDは一般には市販されていません。「デッカ・アナログ・イヤーズ」という50枚組のボックスセットに収蔵されていたものの一枚です。ロンドン管楽合奏団は1962年から70年代にかけて活動した団体でクラリネット奏者のジャック・プライマーが中心となって活動していました。この録音は第3集で、レコード時代は「グラン・パルティータ」一曲で発売されていました。CDの方はこれにプラスして、ボーナスとして第2集に収録されていた「ナハト・ムジーク」が収録されています。どちらも名曲ですなぁ。下は当時発売されたはシリーズ背のジャケットです。いずれもなかなか品のあるデザインが採用されています。

 

 

 これらの録音は1962年12月2日から29日にかけて集中的に録音されています。イギリス中の名手が集まっていますからこういう機会でないとなかなか実現しなかったのでしょう。それもあり、音楽的にも非常に充実した響きと演奏になっています。珍しいのはこれらの録音がデッカの第3スタジオで収録されているということです。下の写真がそのスタジオです。

 

 

 改めてデータを確認すると、プロデューサーは名指揮者ハンス=シュミット・イッセルシュテットの息子のエリック・スミスが担当しています。モーツァルトに一家言持っていたプロデューサーですからまさにうってつけといっていいでしょう。自慢のデッカツリーのマイクが右端に確認できます。

 

 ジャック・プライマーはこの録音時、まだロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団のクラリネットの首席でした。ただ、1961年にビーチャムが引退し、後任にルドルフ・ケンペが着任していました。やっぱり音楽の方向性が違ったのでしょうか、翌年には退団してBBC交響楽団に移籍します。さらにBBC交響楽団にピエール・ブーレーズが着任するとここでも方向性の違いから今度はロンドン交響楽団の首席に転じます。ここは当時はアンドレ・プレヴィンが音楽監督でしたから馬が合ったのでしょうなぁ。

 

 気心の知れた管楽奏者が集まっての演奏ですから、安心して聴いていられます。ウィーン風とはまた一味違う合奏の楽しさが伝わってきます。どうも日本ではそのウィーン風が受けるのかこの一連の演奏の評価はあまり高くありませんでしたが、改めてこの演奏を聴くとサロンで演奏された夕餉のひと時を十分に表出しています。ホルンのバリー・タックウェルがいい仕事しています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 次は「ナハト・ムジーク」です。モーツァルトの時代はセレナーデとディヴェルティメントが同じ余蘊感覚で書かれていますが、こちらも管楽合奏団のみのセレナードということができます。デッカは管楽のみの作品はこりロンドン管楽合奏団で、それ以外の作品はボスコフスキーに任せるという形で膨大なモーツァルトの作品を録音していきますが、この管楽作品はそのプロジェクトの口火を切ったものだったのでしょう。

 

 ちょっと規模は小さいですが、こちらもモーツァルトの魅力にあふれた作品になっています。この2曲を聴くとディナーのフルコースを満喫したような気分になれるのは小生だけでしょうか。そうそう、こぼれ話的なネタですが、ビートルズのアルバム「サージェントペパーズ」のなかの「ア・デイ・イン・ザ・ライフ」でクラリネットを吹いているのはこのジャック・プライマーなのです。