オーフラ・ハーノイのオッヘンバック | geezenstacの森

geezenstacの森

音楽に映画たまに美術、そして読書三昧のブログです

オーフラ・ハーノイのオッヘンバック

曲目/オッフェンバック
1.Concerto Rondo In G Major For Cello & Orchestra(チェロのための協奏的ロンド) 21:21
2.Overture To A Grand Orchestra(大オーケストラへの序曲) 8:37
3.Souvenir D'Aix-Les-Bains Valse(エクス・レ・バンの思い出) 4:36
4.Schüler Polka(シュラー・ポルカ) 2:12
5.American Eagle Waltz(アメリカン・イーグル・ワルツ) 6:08

 

チェロ/オーフラ・ハーノイ
指揮/エリック・カンゼル
演奏/シンシナティ・ポップス管弦楽団

 

録音/1983/09/03,09 
  
P:ジュディシュ・シャーマン

 

VOX CUM LUNDE MCD10022

 

イメージ 1

 

 どうも現在はMMG(モス・ミュージック・グループ)は活動を停止しているようです。このCDは目玉はオッフェンバックの「チェロのための協奏的ロンド」でしょう。ものによってはチェロ協奏曲という表記になっているものもあります。当時まだ17歳のオーフラ・ハーノイが復活蘇演ののちにレコーディングしたことで大いに話題になりました。多分このCDがオリジナルだと思います。もちろんオリジナルはレコードでの発売ですが、当時のVOXのCUM LUNDEシリーズはデジタル録音で発売していましたのでその一枚に組み込まれていたはずです。このCUM LUNDEでは、ミヒャエル・ギーレンとシンシナティ交響楽団の一連のレコーディングがピカ一でした。

 

 さて、今日、「ホフマン物語」「地獄のオルフェ(天国と地獄)」「美しきエレーヌ」などのオペラで知られるオッフェンバックは、9歳より始めたチェロの腕前で生前「チェロのパガニーニ」と謳われるほどでした。既存の曲に飽き足らず、みずからの演奏用レパートリーとして書き上げたのがこの作品です。オッヘンバックにはちゃんとしたチェロ協奏曲があり、そちらは「チェロ協奏曲「軍隊風」(1847)」という作品で全曲演奏に50分あまりを必要とする大作ですが、あまり一般的ではありません。こちらも、1951年に作曲されていますがほとんど忘れ去られていた作品で、この録音がなされた1983年にオーフラ・ハーノイが蘇演させたものです。その蘇演は1983年9月1、2日に行なわれ、その直後にこの録音がなされています。多分ディスコグラフィを確認する限り、オーフラ・ハーノイのデビュー盤ではないかと思います。この録音、オリジナルはヴォックスですが、「チェロのための協奏的ロンド」だけは一時期RCAからも発売されていましたし、現在でも、カナダのドレミレーベルから発売されています。でも、本家のヴォックスでもこの曲だけはカタログリストから見当たりませんので原盤は売却してしまったのかもしれません。まあ、それは別としてこれはオリジナルレコードをCD化したものです。正式な曲名は「Concerto Rondo In G Major For Cello & Orchestra」なのに輸入代理店を通すと「チェロ協奏曲ト長調」という表記になっていますから混乱してしまいます。

 

 また、蘇演のコンサートはシンシナティ交響楽団の定期で行なわれているのに、このジャケットではポップス管弦楽団の表記になっているのもおかしなところです。当時はテラークから一連のポップスオケのレコードが発売されていたのでそっちの名前の方が売れると判断したんでしょうかね。そんなことで突っ込みどころ満載のCDです。

 

 ライナーノートによると、この作品は1955年までオッフェンバックの一族が保管していたようで、その後ワシントンのアメリカ議会図書館に寄贈されたということです。それを指揮者のアントニオ・デ・アルメイダが発見したという経緯を持っています。手稿は76ページに及ぶもので、随所にオッヘンバックらしさが漂っている楽しい曲です。確かにチェロの独奏はありますが、冒頭からオペレッタの雰囲気で金管やスネアドラムが賑々しく活躍します。チェロはオペレッタのアリアのように中間部では切々としたメロディを歌い上げます。ハーノイはこの曲をレコーディングした時は17歳で、それも話題になったようですが、中々どうしてこの演奏で聴かれるチェロはぽっと出のチェリストでないことを伺わせる才気が光っています。

 

 この曲、ネットで検索してもこのハーノイの演奏以外存在しないようです。そんなこともあり、YouTubeにアップすることにしました。まあ、聴いてみて下さい。

 


 ただ、この音源、当時はヴォックスの日本発売窓口がなかったようで国内盤は発売されなかったようです。そんなことで、RCAからリリースされたのでしょうね。ちなみにこの後ハーノイはヴィヴァルディのいくつかのチェロ協奏曲の世界初演を果たすなどして、1987年以降RCA Victorの看板チェリストとして多くの有名曲の録音を残しました。先年、ソニーから「ヴィヴァルディ:チェロ協奏曲とソナタ集(5枚組)」のボックスセットが発売されたのは記憶に新しいところです。

 

 さて、このCDはオリジナルということで、それ以外にも結構珍しい曲目が収録されています。1843年にケルンで初演された「大オーケストラへの序曲」もほとんど耳にしない作品です。弦楽の旋律が美しい曲でまるでメンデルスゾーンの作品を聴いているような勘次です。カンゼルは緩急を活かした音楽づくりで、ドラマチックに盛り上げています。まあ、ポップス端を歩んだ人なのでこういう曲は得意としていたのかもしれません。

 

 次の「エクス・レ・バンの思い出」はクラリネットの旋律で始まるしっとりとした曲です。1873年6月に作曲された晩年の作品でオッフェンバックがパリの劇場のマネージャーになって活躍していた頃の作品です。

 

 

 「シュラー・ポルカ」は詳しくは分りませんが、1860年にクララ・シュラー夫人のために書いた作品です。この2年後にオッフェンバックは「天国と地獄」で大ブレークします。

 

 さて、オッフェンバックは1876年にはアメリカを巡業し、40回ものコンサートを指揮し大人気を博します。このとき作曲されたのが最後の「アメリカン・イーグル・ワルツ」です。曲は吹奏楽のイントロのような響きで開始されます。この曲はトランペットのソロが活躍し、ここでも、ソロとしてフィリップ・コリンズの名前がクレジットされています。彼はシンシナティ響の首席奏者で、1975年から1991年までその地位にありました。トランペットの教則本なんかも著しているようです。ここでは、彼の華麗なタンギングテクニックを聴くことができます。作品は先のアルメイダが発見したもので、オーケストラバージョンは未発表のものだったようです。この曲なんか、トランペット奏者のレパートリーとしてはかなり面白いものではないでしょうか。