ショルティのロマンティック | geezenstacの森

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ショルティのロマンティック

 

曲目/ブルックナー

交響曲 第4番 変ホ長調≪ロマンティック≫〔ノヴァーク版

1.第1楽章:躍動的に、速すぎずに 18:00

2.第2楽章:アンダンテ・クアジ・アレグレット 4:49

3.第3楽章:スケルツォ(躍動的に) 10:07

4. 第4楽章:フィナーレ(躍動的に、しかし速すぎずに) 20:12

 

指揮/ゲオルグ・ショルティ

演奏/シカゴ交響楽団

演奏:1981年1月, シカゴ・オーケストラ・ホール

 

キング LONDON K28C120

 

 

 こちらは第5番の翌年1981年に録音されたのが交響曲第4番「ロマンティック」です。第5番まではメディナ・テンプルでの録音でしたが、ここではレコーディング場所がシカゴ響の本拠地であるオーケストラ・ホールに代わっています。ブルックナーの交響曲では第4番と第7番が牧歌的で穏やかな作品ですが、ショルティのキャラクターには合っていないかもしれません。ここでのショルティとシカゴ響の演奏はとにかく弦が美しく、金管もだいぶ冒頭は抑えていますが、トゥッティに入ると実にパワフルになります。第4楽章はとにかく鳴り響いて、すごいの一言。ただショルティらしいなと思うのは穏やかなフレーズでの慈愛や美しさです。

 

 ブルックナーはマーラーよりも先に聴き始めました。マーラーには声楽付きの作品が多かったというのがその理由ですが、廉価盤には全く登場していなかったというのがその理由です。でも、輸入盤の世界では揃っていました。その筆頭がシューリヒトの演奏でした。第7番はノンサッチにありましたし、第9番はセラフィムにラインナップされていました。ということで最初に知ったのはその2曲でした。そのうちキングからベーム/ウィーンフィルの第4盤が発売されます。FMでエアチェックしてベタ褒めのその演奏を貪るように聴いたものです。

 

 ということで、第4番は交響曲としてはベーム/ウィーンフィルがディフェクトスタンダードになりました。どちらもデッカの録音ということで録音は優秀ですが、ベームに比べるとこのショルティのブルックナーはとにかく金管が強烈です。

 

 第1楽章は、筋肉質で弾力のあるホルンの第一主題がひびきますが、そこからしてブルックナーのいわゆる原始雲の世界が感じられません。軽々と鳴るトゥッティ。トランペットがテヌートぎみですがくっきりはっきりで、どう聴いてもジェームス・ハーネスの影がチラチラします。リズミックな第二主題。第三主題も軽く鳴り響きます。弱音部では少々森の雰囲気がありますがベームに比べると差は明らかです。コラールも生き生きとした表現です。トゥッティがカラッとすっきり鳴り響き過ぎて、重量感がありませんが、これだけ軽々と鳴り響くと快感でもあります。コーダのホルンも豪快に鳴ります。

 

 第2楽章は、深みのある主要主題。薄く細身の副主題。シャープで良く通るフルート。温かみのある弦楽合奏。弱音部分はとても美しく自然を感じさせてくれますが、クライマックスではやはり金管がビンビンと鳴り響き重厚さがありません。コーダはテンポを落としてしっとりと終わっています。

 

 第3楽章、元気の良いトゥッティ。金管が明るく鳴り響きます。シカゴsoらしい勇ましい金管です。主部とは対照的な穏やかでのんびりとしたトリオ。主部が戻るとまた金管が爽快に鳴り渡ります。

 

 第4楽章、速いテンポでホルンが第一主題を暗示します。第二主題の前に第一楽章の第一主題が出る部分も心地よく鳴ります。第二主題はあまり表情を付けずにあっさりと演奏されます。

 

 シカゴ響は機能が優秀すぎて、このオケのサウンドはシャープすぎるきらいがあります。これはショルティが求めたものなのでしょうが。オケが巧すぎてブルックナーの風情があまり感じられないのはやはり、アメリカのオーケストラの欠点なのでしょうか。近現代音楽にはこのシャープさと馬力は必要なのかもしれませんがロマン派の音楽には???となります。まだマーラーの方が相性がいいのでしょうなぁ。とても格調高いロマン派絵画を近代的な意匠の、メタリック調の、高価で高級な額縁に入れてみた、そしたら、その組み合わせが悪くて絵そのものの素晴らしさが半減してしまった、そういう感じなんでしょう。小生には、カール・ベーム指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のシンフォニックで重厚だが、どこか神秘的なものを感じさせる、あの名演が先に耳に焼き付いてしまっているためでしょうかねぇ。ショルティファンにはお勧めですが、ブルックナー・ファンの方は、「こういう演奏もある」という変わり種わ聴きたい向きには2枚目、3枚目としてはお勧めです。