2015年から書き始めた「眠る旧日本海軍」シリーズも足かけ5年になって、まだ続くとは思いませんでした。でもこれは嬉しい悲鳴です。

その立役者は昨年亡くなったポール・アレン氏(マイクロソフトの共同創業者)及び、彼が率いる探査チームです。オーナーが亡くなられても、彼の遺志を引き継いだ探査チームの活動は旺盛ですね。

戦艦「比叡」が初めて発見され、続けて戦艦「霧島」の最新画像が届けられて以降、ちょくちょくと探査チームのfacebookを覗いていたのですが、4月になってからは令和改元に気を取られていて、すっかり疎かになっていました。その間、新たに3つの日本海軍の軍艦の海底画像が届けられました。駆逐艦「新月」、軽巡洋艦「神通」重巡洋艦「古鷹」です。

これは日本人にとっても感慨深い事だと思います。

う~ん、リアル「艦これ」だなぁ。

 

先ずは4月18日付で海底動画公開された駆逐艦「新月」。

ソロモン諸島クラ湾の外側、水深745mで発見されました。画像は探査チームfacebookの公開動画より。

 

 

4月の動画公開でしたが、今年の1月頃には発見されていたようです。つまり比叡や霧島とほぼ同時期ですね。ソロモン諸島近海はガダルカナル島北側のアイアン・ボトム・サウンドを始め、沢山の日米艦船が沈んでいます。発見された「新月」も検証と確認による艦船特定に時間をかけたのかもしれません。

 

 

 

これまでポール・アレン探査チームは動画の他に解説付きのチャプター画像を公開してきており、梅之助もそれを和訳して、さらに追加で調べてブログ記事にしてきたのですが、「新月」に関しては動画のみ。その為、梅之助もミリオタではないので一つ一つについては詳しい解説が出来ません。

 

 

動画中に簡単なテロップが時折あったので、その部分については分かる範囲で記載します。

 

 

 

軍艦模型を作っている人ならば、分かる人もいるんでしょうね。

 

 

上図は動画テロップにて「操舵室」とありました。結構、破損しています。

 

 

 

テロップはありませんでしたが、(左)はマストではないでしょうか。(右)はその上部先端のアップです。

 

 

九六式25mm高角対空機銃です。新月には3連装のものが4基備えられていました。

 

映画「男たちの大和」ロケセットでの九六式3連装25mm高角対空機銃

(サイト「Vessel And Ships Photo Gallery」様より)

 

 

こちらは魚雷発射装置。

 

 

65口径九八式10cm高角砲です。

新月には4基8門備えられました。この図は艦の後方の三番砲塔として設置されたもののようです。

 

 

 

(左)は上図砲塔の頭部後方を横から見たところで、(右)は上図砲塔を真後ろから見たところになります。

 

65口径九八式10cm高角砲 (Wikipedia より)

 

 

 

(左)は爆雷だそうです。

 

 

 

 

こちらは艦の前方に設置された65口径九八式10cm高角砲。

 

 

 

「秋月型」駆逐艦の5番艦として誕生した「新月」。

対英米開戦日の1941(昭和16)年12月8日に起工し、高角砲や対空機銃の充実・改良を加えた防空型駆逐艦として1943(昭和18)年3月に竣工しました。

 

駆逐艦「新月」 (サイト「大日本帝国海軍 連合艦隊 WORLD WAR 2:太平洋戦争 海戦の記録」様より)

 

就役後は本土近海での訓練や護衛任務を経て、すぐにソロモン方面へ進出。

当時の日本軍はガダルカナル島からは撤退していましたが、まだまだこの方面での激しい戦いを続けていたのです。

第三水雷戦隊旗艦となった新月は襲撃や輸送作戦を務め、共同で敵の軽巡洋艦や駆逐艦を撃沈しています。しかしその直後に起きた「クラ湾夜戦」(7月5~6日)にて、身を挺して米側の集中攻撃を受け漂流・沈没に至りました。艦長以下約290名が戦死し、旗艦だったため第三水雷戦隊司令部も全滅しています。

 

米側から撮影されたクラ湾夜戦 (Wikipedia より)

 

さて、日本の駆逐艦には自然現象や植物などの名前を付ける事が慣例でした。

眺めてみれば、その自然現象もホント優美で繊細な名称が多いです。この「新月」を始め、「涼月」、「宵月」、「朝顔」、「清霜」、「島風」、「春雨」、とここで列挙するのが無意味なほど多数。「朝顔」なんてNHK朝ドラみたい。

勇ましそうな名前でも、「太刀風」、「吹雪」、「雷(いかづち)」、「電(いなづま)」、「荒潮」、「大波」といった具合。

梅之助は駆逐艦の名称に「生来持つ日本人の心情」というものを、いつも感じてしまいます。

 

以下、沈没地点データはGoogleマップで見る軍事的スポット参照。

 

 

 

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