故ポール・アレン氏が設立した沈船探査チームが、4月26日付のface bookで日本の軽巡洋艦「神通」を発見したとして、その海底画像を公開しました。
この事は「ITmedia NEWS」でも報じられています→こちら。
場所はソロモン諸島クラ湾近海の水深約900mの地点。付近では先日記事にした駆逐艦「新月」も発見されている為、発見自体は新月とほぼ同時期の今年1月頃と思われます。
以下、画像は探査チームfacebookの公開動画より。
いきなり日本海軍の軍艦を示す「菊花紋章」の木製台座が見えます。
当時の日本海軍の軍艦は、菊花紋章を艦首先端に取り付ける決まりになっていました。戦艦大和などは有名ですね。これは形式上、「大元帥陛下の所有」を象徴的に表す為です。
ただし格式の問題もあって、大量生産される小型艦艇、例えば駆逐艦や潜水艦には取り付けられませんでした。その為、一般概念上は駆逐艦なども軍艦の一種ですが、日本海軍では名目上として軍艦とは呼ばず、それぞれ駆逐艦、潜水艦と呼んでいました。
つまり日本海軍における「軍艦」は分類上、巡洋艦以上になります。
海底に横たわる船首部分。
今回も駆逐艦「新月」と同様に動画のみの公開なので、動画テロップを元に分かる範囲で解説します。
主砲の50口径三年式14cm単装砲です。神通にはこれが7門装備されました。7門のうち、写真がどこのものかは分かりません。
九六式25mm連装高角対空機銃です。
61cm四連装魚雷発射管。2基8門が搭載されました。この写真は右舷側のものだそうです。魚雷が3発残っているのが確認できますね。
搭載航空機を射出するカタパルト。
50口径三年式14cm単装砲を斜め後ろから見たところ。
砲塔の後部がむき出しになっていて、機構部が見えるようになっています。砲塔と言うより、むしろ盾に近いでしょうか。
上図の砲の機構部分をズームした写真。
爆雷投下台だそうです。
左舷側の魚雷発射管。1発残っています。
船体内部にある魚雷発射管本体機構との事。
前方のマスト。梯子が見えます。
上図マストの下方部分。天地が逆になっています。
50口径三年式14cm単装砲。上の方で紹介したものと同一なのか、それとも他の個所のものなのかは分かりません。
1939（昭和14）年に撮影された軽巡洋艦「神通」 （Wikipedia より）
軽巡洋艦「神通」は1925（大正14）年7月、「川内型」軽巡洋艦の2番艦として竣工しました。
就役2年後の1927年の夜間訓練中に、不幸にも駆逐艦「葦」と衝突して多数の殉職者を出す事故（美保関事件）を起こし、当時の艦長が自決するという悲劇が起きています。
対英米開戦後は第二水雷戦隊の旗艦として、各地の戦線を転戦しました。
1943（昭和18）年7月12～13日にかけて夜戦となったコロンバンガラ島沖海戦にて、神通は探照灯を照射し米側の攻撃を一手に引き受けます。そのお陰で日本側の他の艦船はほぼ無傷で戦う事が出来、海戦を優勢に進めました。その代償として神通は座乗司令部もろとも沈没するに至っています。生存者は20名と少しで、竣工時の定員が約450名という事ですから、まさに全滅でした。
米軍側から撮影されたコロンバンガラ島沖海戦 （Wikipedia より）
神通は大炎上しながらも反撃の魚雷を7本発射し、そのうちの1本は敵軽巡「リアンダー」を大破させた魚雷の一つだと言われています（リアンダーはこの損傷修理の為、戦争中は二度と前線に戻れなかった）。今回公開された海底映像からは合計4本の魚雷が残っていたので、再装填してまで戦い抜いたのかもしれません（あるいは発射は7本ではなく、4本だったという見方も出来る）。
また米軍資料によると、神通は艦首以外が沈んだ状態で2時間以上も1番砲のみで砲撃を続けたとされています。
後に米国の戦史家であるサミュエル・モリソンはこう称えました。
「神通こそ太平洋戦争中、最も激しく戦った日本軍艦である」と。
以下、沈没地点データは「Googleマップで見る軍事的スポット」参照。
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