卵子と酸化ストレス
卵子と酸化ストレス Behrman HRら: J Soc Gynecol Investig 8, S40-S42, 2001. 卵母細胞から卵子への分化には、酸化ストレスが深く関わっていることが明らかにされつつあります。 卵母細胞は2回の減数分裂を経て 卵子を形成するが、第一減数分裂はROS(活性酸素)の刺激により進行、一方、次のステップである第二減数分裂には抗酸化物質が関与しています Tamura Hら : J Pineal Res 44, 280, 2008. 排卵(ovulation)後に形成される黄体(corpus luteum)においても酸化ストレスの関与が報告されています。 黄体期(luteal phase)の 初期~中期にかけて抗酸化酵素の一つである銅/亜鉛が上昇、黄体退行期では低下します。 黄体退行期では過酸化脂質 (lipid peroxidation)の形成が観察されています。 また、加齢(aging)に伴う卵子の品質低下には、ミトコンドリアDNAの酸化損傷が関わっており、DNA酸化損傷マーカー 8-hydroxy-2'-deoxyguanosine (8-OHdG)の増加が観察されています。 子宮内膜症(Endometriosis)と酸化ストレス Mier-Cabrera Mら:BJOG 118, 6, 2010. 子宮内膜症は、子宮内膜が子宮内腔や子宮体部以外において増殖する疾患であり、不妊治療中の方にはかなりの頻度で見受けられる疾患です。 腹腔液中の脂質化酸化物(マロンジアルデヒド: MDA)、IL-6やTNF-α、IL-βといった 炎症性サイトカイン、IL-8やVEGFといった血管新生因子、MCP-1、酸化LDL(ox-LDL) 濃度の上昇が報告されています。 Sharma I ら:Fertil Steril 94, 63, 2010. 子宮内膜症患者において脂質過酸化マーカー:イソプラスタン 濃度の上昇も報告されています。 Foyouzi N ら: Fertil Steril 82,1019, 2004. Nアセチルシステイン(N-acetylcystein: NAC)やビタミンEといった抗酸化物質は子宮内膜組織の増殖を抑制すると報告しています。 Szczepanska Mら: Fertil Steril 79, 1288, 2003. 患者において 血清抗酸化レベルが低値を示すことが報告されています。 Parazzini Fら: Hum Reprod 19, 1755, 2004. 抗酸化物質を豊富に含む野菜果物の摂取は、子宮内膜症の発症リスクを 低減することが示唆しています。