• 精子のDNA断片化とは、精子のDNAの損傷、具体的にはDNAの2重らせん構造の鎖がちぎれてしまうことです。
  • 主に酸化ストレスの影響によるものと考えられています。
  • このDNAが損傷した精子の割合が精子DN断片化率で、精子の質を表す指標の1つです。

 

 

 

★   精子のDNA損傷が3日目以降の胚発育に関与する

Hum. Reprod. 2004; 19: 611

  • 精子によって卵子内に運び込まれた父親の遺伝情報(DNA)は母親のDNAと融合し、子供のDNAが形成されます。
  • いずれのDNAの健全性も求められますが、特に父親の精子DNAは3日目以降(8細胞以上)の受精卵(胚)の発育に関与していると考えられています。
  • そのため精子DNAの断片化(損傷)がART成績の低下を招きます。

 

 

★   精子DNA損傷は胚発育、妊娠、出産への影響する

Plos One 2013; 8: e56385

  • 精子のDNA損傷は、卵子の酵素によりある程度修復されますが、どの程度なら修復可能であるかは明らかにされていません。
  • 修復されなかったDNAは次世代へ引き継がれる可能性もあります。
  • 精子のDNA損傷は、流産リスク増加との関連が示唆されています。
  • マウスのDNA断片化を生じさせた精子を用いて顕微授精を行うと、精子の前核形成が障害され、最初の胚発生が遅れることが報告されています。

 

★ 精子DNA 損傷は、精子染色体異常とリンクし、胚発生率の低下、着床率の低下、流産率の上昇に関与する可能性があります

 

Arab J Urol 2017; 16: 21

Role of sperm DNA fragmentation in male factor infertility: A systematic review. 

  • 精子のDNA損傷に関する論文を解析した結果、自然妊娠や人工授精妊娠では、精子のDNA損傷と妊娠成績に負の相関を認めました。
  • ART妊娠(体外受精、顕微授精)では、精子のDNA損傷と妊娠成績の関連は弱いですが、精子のDNA損傷が高いと流産率が高くなることは間違いありません。