• 酸化ストレスと、それを防御する仕組みで、生体内バランスは保たれています。精子卵子も例外ではありません
  • 酸化ストレスは、精子の成熟・活性化・キャパシテーション(受精能獲得)に必要で、精子形成においてもなくてはならないものですが、過剰では精子DNA損傷を受ける可能性があります
  • 精子の細胞膜は、多価不飽和脂肪酸が豊富で、脂質の過酸化が生じやすい特性があります
  • 精子には細胞質はなく、代わりに精液中の抗酸化作用酵素が酸化ストレスの除去を行っています
 
  • 男性不妊の多くに酸化ストレスが関係しています。通常は活性酸素のダメージを受けても抗酸化力が働いてバランスを保っていますが、酸化力が抗酸化力を上回ると酸化ストレスとなってしまいます。
  • 酸化ストレスによる精子障害のメカニズム。酸化ストレスは、精子頭部のDNAを損傷したり、体部や尾部の細胞膜の脂質や細胞質のタンパク質を酸化します。DNA損傷は受精率低下や流産率上昇を招きます。また、細胞質の脂質の酸化は細胞膜の柔軟性を低下させ、精子細胞のタンパク質の酸化もあいまって、運動性の低下を招きます。

 

Hum. Reprod. Update 2008; 14: 243.

 

  • 酸化ストレスの原因として、環境汚染物質、タバコ、アルコール、栄養バランスの偏り、肥満などが挙げられています
  • 男性不妊の原因のほとんどは、造精機能障害(精子がうまく造られない状態)であり、その半分弱は特発性と呼ばれる原因不明ですが、この原因不明の多くは酸化ストレスと関連していると推定されます。

  • 酸化ストレスの原因として精索静脈瘤が見つかった場合には手術をすすめられることがあります

  • 男性因子に対して適切な対策を行うことで、精液所見だけでなく、体外受精などの生殖補助医療成績が改善されることが知られています