PPOS法とアンタゴニスト法の比較報告

 

★ 卵巣予備能が高い女性におけるランダム化試験において、初回胚移植の妊娠成績は、PPOS法とアンタゴニスト法には有意差がなかったとする報告

 

Fertil Steril 2024; 121: 937

  • PPOS法は、卵巣刺激開始からトリガー日までMPA10mgまたはデュファストン20mgを連日服用
  • アンタゴニスト法は、卵巣刺激の6日目または卵胞径14-15mmに達した時点からトリガー日までガニレスト0.25mgを連日注射

 

 

★ PGT-A成績、染色体正常胚率においても、PPOS法とアンタゴニスト法には有意差はなかったとする報告

 

Hum Reprod 2024; 39: 1098

PGT-A成績、染色体正常胚率においてもPPOS法とアンタゴニスト法に有意差はありませんでした

 

★ アンタゴニスト法と比較しPPOS法は、胚の発育時間がやや長く、キャンセル率が高いものの、着床率は高い成績であったとする報告(ただし、妊娠率と流産率には有意差はなかった)

 

F&S Sci 2024; 5: 43

2019〜2021年に行われたブラジルからの研究報告

 

 

  • アンタゴニストと比較しPPOS法では、前核出現までの時間、2細胞までの時間、7細胞までの時間、胚盤胞までの時間が有意に遅かった
  • アンタゴニストと比較しPPOS法ではキャンセル率と着床率が有意に高かった
  • 妊娠率と流産率には有意差を認められませんでした
  • PPOS法は、何よりも費用が安上がりであることが最大のメリットです

 

★ 累積出産率はアンタゴニスト法がPPOS法よりも有意に高い成績であったとする報告

 

Fertil Steril 2022; 118: 701

2016〜2020年に行われた中国からの研究報告

 

 

  • アンタゴニスト法は臨床妊娠率、出産率、出産までの期間がPPOS法よりも良好であり、特に累積出産率は、PPOS法よりもアンタゴニスト法が高い治療成績でした
  • 二つの方法の違いは、胞状卵胞数AFC5個以下、35歳以上で最も顕著に認められました
  • PPOS法は、特に卵巣予備能が高い女性(高AMH、高AFC)に推奨されます
  • PPOS法は、費用を抑えたい方や、注射を避けたい方にとっても適した方法です
  • PPOS法は、全胚凍結が必要で新鮮胚移植は行えない点に注意が必要です
  • PPOS法は、費用や治療の簡便さで有利な選択肢となりますが、累積出産率などを考慮すると、個々の状況に応じた最適な方法を選ぶことが重要です

 

★ 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の方にはPPOS法を推奨する報告

 

Deng R, Arch Gynecol Obstet 2023年

  • 多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)の女性に対する治療法として、GnRHアンタゴニスト法(GnRH-ant)と合成黄体ホルモン併用卵巣刺激法(PPOS)の有効性を比較するシステマティックレビューとメタアナリシスが行われました
  • 8件の研究(GnRH-ant群1,085例、PPOS群1,071例)を対象に分析されました
  • 主要な結果として、PPOS群はGnRH-ant群と比較してゴナドトロピン投与量が多く必要でしたが、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)のリスクが有意に低いことが確認されました
  • 一方、採卵数や妊娠率などの他の主要な指標には有意差が見られませんでした
  • これらの結果から、PPOSはGnRH-antプロトコールが成功しなかったPCOS患者のための代替治療法として有望であることが示唆されました
  • 現在の研究の質や数には限界があるため、さらなる高品質な研究が必要です

 

 

★ まとめ

  • PPOS法とアンタゴニスト法にはそれぞれのメリット・デメリットがあります
  • PPOS法は、多嚢胞性卵巣症候群の方には新たな治療の希望となり得る方法です
  • PPOS法は、費用が安く、副作用が少ないため、コストを重視する方に適しています
  • アンタゴニスト法は、迅速な効果と高い妊娠成功率が期待できるため、特に高齢の方や複雑な不妊治療を必要とする方に適しています
  • 不妊治療は心身ともに負担が大きいものですが、最良の選択をして前向きに取り組んでいきましょう
  • 医師とよく相談して、自分に最も適した治療法を選びましょう