ジェームズ・ワン監督、ジェイソン・モモア、アンバー・ハード、パトリック・ウィルソン、ヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世、ウィレム・デフォー、ニコール・キッドマン、テムエラ・モリソン、ドルフ・ラングレン、ランドール・パーク、マイケル・ビーチ、ジュリー・アンドリュース (声の出演)ほか出演の『アクアマン』。2018年作品。

 

アトランティスの女王アトランナ(ニコール・キッドマン)と灯台守トーマス・カリー(テムエラ・モリソン)との間に生まれたアーサー・カリー(ジェイソン・モモア)は海洋生物と心を通わせる力があり、また超人的な身体能力を発揮して海の平和を守っていた。ある日、大津波に襲われたカリー父子を海底国ゼベルの王ネレウス(ドルフ・ラングレン)の娘メラ(アンバー・ハード)が助けて、アーサーにアトランティスの新たな王として海底の国々と地上との戦争を食い止めるよう求める。

 

DCコミックスが原作の「DCエクステンデッド・ユニヴァース(DCEU)」の1本。『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』(2016)と『ジャスティス・リーグ』(2017)に登場した“アクアマン”の単独作品。

 

僕は『バットマン vs スーパーマン』の感想で「今後『ジャスティス・リーグ』は観ない」と宣言して(理由は感想でどうぞ)その通り結局いまだに観ていないんですが、と言いつつそれ以外の『スーサイド・スクワッド』(2016)や『ワンダーウーマン』(2017)は観ていて、今後公開予定という『スーサイド~』でマーゴット・ロビーが演じたハーレイ・クインを主人公にしたスピンオフも観るつもりでいます。

 

要は、面白そうなら観ちゃいますよ、と。

 

僕はこれまでのDCヒーロー映画の退色したようなザラついて暗い画質の映像が苦手だったんですが、この『アクアマン』は予告篇の映像が明るくて綺麗で、しかも主人公のアクアマンもあまりウジウジ悩んだりしないような豪傑キャラっぽい雰囲気だったので、これなら自分も楽しめそうだな、と思って。

 

『ワンダーウーマン』もそうだったように、世界中で大ヒットしてるそうですね。

 

毎度のようにやたらと褒めまくってる人たちがいる一方で、長過ぎる上映時間(143分)にうんざりしたり大味な内容を鼻で笑う感想も散見する。

 

まぁ、監督が『ワイルド・スピード SKY MISSION』を撮ったジェームズ・ワンである時点で(『SKY MISSION』は最後は泣けますが)それは予測できたことですが。

 

もちろん、「海のバーフバリ」と呼ばれるぐらいだし、せっかく劇場で観るんなら大いに楽しみたいのはやまやまなんですが、これまでの経験から世間とか映画ファンが大絶賛してる映画が必ずしも自分の好みに合うとは限らないことがわかっているので、そこは過剰に期待し過ぎないようにしました。

 

その日は朝から「午前十時の映画祭」でタランティーノ監督の『パルプ・フィクション』(1994)を観て、しばらく休憩を挟んでこの映画を鑑賞。ちなみに『パルプ~』の上映時間は154分。

 

尺が長い映画を続けて2本観るというのはそろそろキツくなってきていて、前もって白状すると、『メリー・ポピンズ リターンズ』に続いて『アクアマン』でも主人公“アクアマン”ことアーサーと異父弟のオーム(パトリック・ウィルソン)が何やら言い争ってる場面で意識が遠退きました。

 

途中で寝ちゃってもそんなに支障はなかったけど。

 

どんな内容だったかというと、先ほどもタイトルを挙げた『バーフバリ』と、それから『マイティ・ソー』、そして『崖の上のポニョ』(『リトル・マーメイド』も)が合体したような“てんこ盛り映画”だった。

 

観る前から感じてたことだけど、ジェイソン・モモアが演じるアクアマン=アーサーは豪放磊落な性格(酒好きなところも)や長髪に髭ヅラ、筋骨隆々という外見、そして神話的な世界の“王”となるところなど、明らかにマーヴェル・ヒーロー映画『マイティ・ソー』でクリス・ヘムズワースが演じたソーとキャラがカブってて(兄弟で争うとこなども)、僕は『ソー』同様に『アクアマン』の原作は知らないからどちらが先だとかいったことはわからないけど、映画の方はマーヴェルが先にやってるわけだから、これはもう完全に『ソー』の路線を狙ってるなぁ、と。

 

昔観た劇団カクスコの芝居の中で「久保田利伸と中西圭三…どっちかいらないよね」という台詞があったけど(笑)それをちょっと思い出した。

 

ここまで堂々と節操なく「頂いてる」と、いっそ清々しいものがありますが。

 

ソーは『マイティ・ソー バトルロイヤル』(2017)で散髪して短髪・隻眼になったし、4月公開の『アベンジャーズ/エンドゲーム』以降でどうなるのかわからないので、もしかしたらソーの「神話の英雄キャラ」を会社の枠を越えてアクアマンが継ぐことになるのかもしれませんが。

 

直情的で男臭くて悩まないヒーロー、というのはどこかでみんなが求めている古典的な英雄像なのだろうか。ソーが愉快な神様キャラだったように、アーサーも見てるだけで気持ちのいいウミンチュ(海人)のアニキだから。

 

この映画は、ジェイソン・モモアとアンバー・ハードを眺めて楽しむ映画かなぁ。

 

海の王国のお姫様でアーサーとはともに戦い惹かれあうヒロインのメラ役のアンバー・ハードは、元夫のジョニー・デップとのいざこざからしばしば揶揄気味に語られたりしてるけど、この映画の彼女は本当に魅力的で、とてもキュートでカッコイイ。

 

 

 

真ん中はジェームズ・ワン監督。後ろ姿はヴァルコ役のウィレム・デフォー

 

メラを主人公にしてスピンオフを作ってほしいぐらい。

 

赤い髪のメラの外見が『リトル・マーメイド』のヒロイン、アリエルにそっくり、とも言われる。

 

『崖の上のポニョ』のポニョは波の上を走るけど、メラはシチリア島で家々の屋根の上を豪快に走り抜ける。あの場面は繰り返し観たくなるほど。

 

メラはヒーローに守られるヒロインではなくて、自ら戦いヒーローを救う戦士である。

 

そして、アトランティスの王オームと政略結婚をさせられそうになるが、それを拒む。

 

アーサーの母アトランナもまた、かつて政略結婚をさせられそうになって陸へ逃亡、そこでトーマスと出会ったのだった。

 

そういえば、ピクサーアニメ『メリダとおそろしの森』のヒロインでやはり政略結婚を嫌うお姫様のメリダも赤毛だったけど、赤い髪の毛をしたヒロインというのは「自己主張する女性」を象徴する意味合いでも込められているのだろうか。

 

まぁ、そんなこと言ったらキューティーハニーだって魔女っ子メグちゃんだって野沢雅子だって髪は赤いですが。

 

『マイティ・ソー』がそうだったように、ハッキリ言ってこの『アクアマン』にも大真面目に語るような内容はなくて、昔ながらの貴種流離譚とか、主人公が二つの引き裂かれた世界の架け橋のような存在であることなど、お約束やありがちなお話の塊なんですが、だからこそ肩肘張らずに気楽に観られるというのはあって子どもたちには打ってつけなんではないかと。

 

ただ、連休中に観て結構混んでたにもかかわらず、観客のほとんどはイイ年した大人たちでした。

 

まぁ、上映時間143分は小さな子たちにはしんどいかもしれないし、実は子どもよりもむしろ大人の方が夢中になってるのかも。

 

この映画には、ちょうどレイ・ハリーハウゼンが特撮を担当した昔のストップモーション・アニメ映画『アルゴ探検隊の大冒険』とか「シンドバッド」シリーズなどを彷彿とさせる懐かしい雰囲気があって、そこに、“かつての子どもたち”が惹かれているんじゃないだろうか。もちろん、アメコミ原作の映画だから原作やDCEUのファンもいるのだろうけれど。

 

超古代文明“アトランティス”を描いたアドヴェンチャー映画はいくつもありますが、僕が思い出すのは幼い頃にTVで観た『アトランティス7つの海底都市』(1978年作品。日本公開79年)。

 

 

 

先ほどのハリーハウゼンの映画のようにストップモーション特撮が主流だった当時のアメリカの作品でパペットの怪獣や操演で動く大ダコなどが登場して、ミニチュアの建物を破壊したり主人公たちに迫ってくる場面が楽しかった。

 

『アクアマン』にもサメやクジラなどの実在の海洋生物の他にも、エラのついたドラゴンみたいな生き物やハリーハウゼンの映画のリメイクである2010年の『タイタンの戦い』に登場したクラーケンそのまんまなモンスターも出てくる。監督は『パシフィック・リム』のKaijuからインスピレーションを得た、というかまんま頂いたようですが。あの映画も深海を舞台にしていました。

 

 

 

そういうファンタジー世界にアメコミスーパーヒーローの活躍が合わさって、オモチャ箱をひっくり返したような楽しさが溢れている。古典的な英雄譚を最新のVFXを駆使して描いている。

 

敵の“ブラックマンタ”(ヤーヤ・アブドゥル=マティーン2世)のコスチュームの頭でっかちなデザインとか「一体どーしちゃったの^_^;」と思うし、でもそういうイイ意味でのユルさやおおらかさ、昔ながらのアドヴェンチャー映画の懐かしさがウケているということなのかな。

 

ブラックマンタが海に落下する場面は何度も観たい。可愛過ぎるw

 

父親をアーサーに見殺しにされて復讐を誓うシリアスな悪役であるブラックマンタにさえどこかユーモラスな印象があるのは、あのマスクのせいでしょう。

 

オームが被るまるで半魚人のようなマスクなどもそうだけど、往年のB級SFファンタジー映画っぽさを狙ってあえて野暮ったいデザインにしてる気さえする。

 

さすがに143分は長いと思ったし予想していた通り僕はそこまでハマらなかったけど、この「途中で寝ちゃっても惜しくない」感覚、懐かしい雰囲気の映画を観ている心地よさは嫌いではなかった。

 

かつてサム・ライミ版「スパイダーマン」シリーズで悪役を演じていたウィレム・デフォーがDCではイイ人を演じてるけど(海人っぽい髪型に違和感がなさ過ぎ)、ヒーロー物にこの人が出てくるとどうしてもそのうち裏切るんじゃないかと思ってしまってw

 

伝説のトライデントを手に入れようとするアーサーの前に立ちはだかる巨大な怪獣カラゼンの声をジュリー・アンドリュースが演じているんだけど、初代メリー・ポピンズがなんで怪獣役?(;^_^A

 

エフェクトが加わってるから声聴いただけじゃ誰だかわかんないだろうし。

 

このあたりのオマージュが謎だった。

 

クリード 炎の宿敵』にも出演しているドルフ・ラングレンがヒロイック・ファンタジーのコスチュームを着て映画に出てるのを僕が見るのは『マスターズ/超空の覇者』以来で、あの映画でラングレンは“ヒーマン”の格好で街なかをウロウロしてたのが、今回は海底の王国を統べる威厳のある王を演じている。

 

 

 

 

かつての「ドォォ~~ン」と擬音が入りそうな威圧感はないものの、何かちょっと感慨深いものがある。これからもメジャーな映画でドルフ・ラングレンを見たいなぁ。

 

アーサーの母親ニコール・キッドマンは確かにスリムだし顔も若々しく見えるんだけど、アンドロイドみたいでだいぶ痛々しい感じになっていて、年を取ることを許されない人は気の毒だな、と思った。

 

 

 

ジェームズ・ワン監督はアトランナ役は最初からニコール・キッドマンをイメージしていたそうだけど、ワン監督はオーストラリア育ちなので、やはりオーストラリア出身のキッドマンに思い入れがあったんだろうか。

 

オーム役のパトリック・ウィルソンは10年前の『ウォッチメン』でも最近の『ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ』でも冴えない中年に見えたのが、この映画では美青年に変貌。

 

 

 

ほんとに顔をいじってるのかCGで映像修正してるのか知らないけど、明らかに以前よりも若返ってる。

 

ちなみに兄のアーサー役のジェイソン・モモアの実年齢は39歳、弟役のパトリック・ウィルソンは45歳。

 

 

 

 

若く見える俳優が必要なら実際に若い俳優をキャスティングすればいいのに。

 

キッドマンもウィルソンもこの映画では人間ではなくて海底人という設定なので、人間にあらざる容貌なのは意図的なものなんだろうけど、なんか不自然なんですよね。

 

アーサーの父トーマス役のテムエラ・モリソンが映像の中で若返っているのはアトランナと出会った若い頃と年取った現在の両方を描いているからなので、物語上の必然性があったわけだけど。

 

テムエラ・モリソンはかつて「スター・ウォーズ」シリーズでバウンティ・ハンターのジャンゴ・フェットを演じてた人だから、いつ鎧を着て戦いだすかと思った(^o^)

 

内容についていちいちツッコミを入れてもしかたない映画ではあるので、あとはもうこういうタイプの映画を面白いと感じられるかどうかだけなんですが、アクアマンことアーサーは銃も効かず原子力潜水艦を一人で持ち上げてしまうほどの怪力の持ち主でありながら、槍とか矛で闘ってるのが奇妙で強さの基準がよくわからなくて^_^;

 

だからまだ殴り合ったり肉弾戦をしてるうちはいいんだけど、アベンジャーズがそうだったように「強さのインフレ」気味になってくると興味が薄れる。アクアマンはせっかくいいガタイしてるんだから、「ワイスピ」がそうだったように戦いは拳で行なってほしい。

 

『バーフバリ』が面白かったのも、ぎりぎり肉体を駆使して闘ってたからだし。

 

トライデント(三又槍)というのは神話にちなんだものだから、ヒーローの武器にもちゃんと意味が込められているのは面白いですが。『マイティ・ソー』でいうところの“ムジョルニア(ハンマー)”みたいなものだもんね。その特別な武器を持つ者こそが真の王である、と。

 

“トライデント”というと、僕はどうしてもチューインガムを思い浮かべちゃうんですがw

 

海中の国々が総力を挙げて戦うけど結局は王を決めるために兄弟で決闘するところなど、『バーフバリ』でもそういうの観たなぁ、と。最後の闘いは残念ながら『バーフバリ』のようなカタルシスはなかったですが。

 

全篇きらびやかなCG絵巻といった感じで音響も迫力あるし楽しいんだけど、最初に書いたようにその心地よさに深い海の底に沈んでいくような眠気に誘われて、しばらく夢うつつなまま観ていました。

 

一応『ジャスティス・リーグ』よりもあとの話だけど、これまでのDCEU作品からはある程度独立していて関連作を観ていなくてもこれだけで楽しめるし、変に他の作品とのクロスオーヴァーを匂わせていないのは好感持てたかな。

 

これから公開される『シャザム!』もそうだけど、DCはこれまでとは違う明るいヒーロー映画に路線変更するつもりなんだろうか。

 

この映画の成功がその傾向をさらにうながすことになるかもしれませんね。

 

 

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