ライアン・クーグラー監督、チャドウィック・ボーズマン、マイケル・B・ジョーダン、ルピタ・ニョンゴ、ダナイ・グリラ、レティーシャ・ライト、アンディ・サーキス、マーティン・フリーマン、ダニエル・カルーヤ、ウィンストン・デューク、アンジェラ・バセット、フォレスト・ウィテカー、スターリング・K・ブラウン、ジョン・カニ出演の『ブラックパンサー』。

 

アフリカのワカンダ王国の王子ティ・チャラ(チャドウィック・ボーズマン)は、父ティ・チャカ(ジョン・カニ)の死によって新たな国王になる。王の使命として漆黒のスーツに身を包み“ブラックパンサー”となったティ・チャラは、ワカンダで採掘される特殊な鉱物ヴィブラニウムを盗み出した武器商人のユリシーズ・クロウ(アンディ・サーキス)を追うが、クロウはアメリカの元秘密工作員“キルモンガー(死の商人)”エリック(マイケル・B・ジョーダン)と手を組んでいた。

 

ストーリーのネタバレがあります。

 

 

去年の『マイティ・ソー バトルロイヤル』に続くマーヴェル・シネマティック・ユニヴァースの1篇。

 

2016年公開の『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』で初登場したブラックパンサーの単独作品。

 

主人公からまわりの主要登場人物、敵役に至るまでほとんどがアフリカ系の俳優で占められていて、スタッフもやはり黒人が多いんだそうで。これも“多様性”の一環でしょうが、ハリウッドのアクション大作ではきわめて珍しい試みですね。

 

その中に交じる白人俳優のマーティン・フリーマンとアンディ・サーキスはシリーズの過去作からの続投。

 

アンディ・サーキス演じるユリシーズ・クロウは2015年公開の『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』でヴィブラニウムを盗んで悪役ウルトロンと取り引きをしようとしたが左腕を斬り落とされて、今回はそこに武器の付いた義手を装着している。

 

 

 

アンディ・サーキスは去年は『猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)』と『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』でそれぞれモーションキャプチャーでCGキャラの「中の人」を担当してたけど、久しぶりに素顔を見た(僕は『ウルトロン』以外ではピーター・ジャクソンの『キング・コング』以来)。

 

今や素顔が見られるのがなかなかレアな俳優さんになってますがw

 

そのユリシーズ・クロウと結託して正義のヒーロー、ブラックパンサーと戦う“キルモンガー”を演じるのは、ライアン・クーグラー監督の前作『クリード チャンプを継ぐ男』で主人公を演じていたマイケル・B・ジョーダン。

 

 

 

 

『クリード』は「ロッキー」シリーズのスピンオフで、ロッキーの永遠のライヴァルにして親友でもあったアポロ・クリードの遺児アドニスがチャンプを目指すスポ根モノだったけど、僕はわりと好きだったんでその監督が撮るマーヴェル・ヒーロー映画にも期待していました。

 

蓋を空けてみると世界中でヒットしているようで。

 

同じく国王が主人公で豪快なアクション場面のつるべ打ちだったインド映画『バーフバリ』と並べて語られたりもしていて、なかなか楽しい。

 

僕は最近はマーヴェル映画は作品によって観たり観なかったりしてますが、去年は『スパイダーマン:ホームカミング』と先ほどのマイティ・ソーの新作が面白かったから、今回も迷わず劇場に。

 

そして普通に楽しめたんだけど、う~んと、ちょっと期待が高過ぎたのか、世間で騒がれてるほどには燃えなかったな。

 

いや、アフリカ風のデザインを大々的に取り入れた美術や未来的な都市の景観、「タイガーマスク」の“虎の穴”みたいな豹の顔をした岩とかかっこよかったし、もちろん主人公のブラックパンサーも『シビル・ウォー』に続いてその活躍ぶりは観ていて痛快ではありましたが。

 

 

 

 

なんというか、僕はブラックパンサーって格闘技を駆使して闘う野性味溢れる肉体派ヒーロー、みたいに思っていたんですよね。『シビル・ウォー』では軽い身のこなしでウィンター・ソルジャーと肉弾戦をしていたから。

 

で、確かにそういう場面もあるんだけど、今回ブラックパンサーは敵からの攻撃をスーツで受け止めるとそれをエネルギーに換えて溜め込んで、一気に相手に反撃する能力を手に入れる。

 

だからちょうどワンダーウーマンとかマイティ・ソーみたいに「ふんっ!」って力を放出するとまわりの敵がみんないっぺんに吹っ飛ぶ、みたいなアクションが結構ある。

 

まぁ、それはそれで気持ちよくはあるんだけど、ちょっとねぇ…チート過ぎるというか、強過ぎるのね。毎度お馴染みの喩えだけど、ドラゴンボールZみたいな感じで。

 

ブラックパンサーのスーツに縫いこまれたヴィブラニウムを無力化する装置が出てきたりもするけど、基本めっちゃ強い。

 

せっかく黒豹をモティーフにしたコスチューム着てるんだし、僕は「バトルフィーバーJ」のバトルケニアとか「サンバルカン」のバルパンサーみたいな(喩えが古くて申し訳ないですが^_^;)野生の動物の動きを模した戦い方を期待していたので、なんかいかにもCGキャラみたいな動きでピョンピョン飛び跳ねてるブラックパンサーには正直肩すかし食らったような気分になった。

 

 

 

続く『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』で宇宙から来た強敵と闘うにはあれぐらいのスーパーパワーが必要なのかもしれないけど、どうもアクションが単調に感じられてしまって。

 

その代わりに彼の頼れる親衛隊隊長の“オコエ姐さん(ダナイ・グリラ)とスキンヘッド・シスターズ”がかっこいいアクションをキメてくれますが。

 

 

 

槍を武器にまるで「黒い三連星」のようなフォーメーションを組んで闘う姿にはホレボレしました。

 

見どころは彼女たちのアクションかな。

 

ティ・チャラ一行とユリシーズ・クロウが対面するカジノの場面(原作者のスタン・リーおじいちゃんもギャンブラー役で登場)とそのあとのカーアクションの舞台がいきなり韓国になるんだけど、それは韓国ではカーアクションの撮影が可能だから。実際本物の街なかの道路で行なわれたカースタントは迫力ありました。※追記:韓国のシーンはアトランタで撮ったんだそうです^_^;

 

 

 

 

ただ夜間なので観づらかったのと、その中身も若干『マトリックス リローデッド』の劣化版みたいな雰囲気がなきにしもあらずで。

 

この映画、舞台となるのはほとんどが架空の国であるワカンダ王国の中なので、そういう意味では異世界が舞台の「マイティ・ソー」と似ていなくもない。

 

先ほどの街の風景など、見応えのある映像もあるんだけど、一方でどこか合成臭いというか、本物っぽさが希薄なんだよね。馬鹿デカいサイとか出てくるし。

 

ティ・チャラとナキアが昼間に歩く、オープンセットが組まれたワカンダの街並みがいつも同じ方向から撮られているのも気になった。意外と街の広さが感じられなくて。

 

映像が部分的に『バーフバリ』に負けてるんじゃないか、って思えるところもあった。

 

クライマックスなんかも、草原で透明なシールドを張って戦うとこなんかが『スター・ウォーズ/ファントム・メナス』っぽかったりして。もうずいぶん前の映画ですが。

 

マーヴェル映画ってリアルな映像が売りだと思うんだけど、僕はこの映画のVFXにはちょっと疑問を感じてしまった。

 

あれでいいのかな?って。

 

去年観た『スパイダーマン:ホームカミング』はニューヨークを舞台にしていて現実の風景の中にスーパーヒーローがうまく溶け込んでいるように見えたし、スパイダーマンは万能じゃなくてその能力にも限りがあるから生身の人間っぽさがちゃんと残っていた。

 

『ブラックパンサー』でも生身のティ・チャラが王の座を懸けてライヴァルや敵と闘う場面はあるんだけど、素手や槍などを使ったアクションの撮り方があまり巧くなくてこれも単調に感じられてしまった。すごくもったいなかった。

 

キルモンガーも変身したあとの姿がブラックパンサーとほとんど変わらないので、見た目あまりキャラも立ってなかったし。

 

 

 

マイケル・B・ジョーダンは好演だったけど、でも彼は目許が優しくてもともと根っからの悪人っぽくないので、敵だと思っていた奴が実は…という意外性はあまりなかった。

 

あそこはもっと凶悪な感じの男が本当は…という方がよかったんじゃないかなぁ。最後にあっさり自害してしまうのも、ああいう最期が気高い戦士に相応しいから、ということなんだろうけど、カタルシスはなかった。

 

もったいぶって出てきたユリシーズ・クロウもあっちゃり殺されちゃうし。

 

悪い奴を倒してめでたしめでたし、で終わらせたくない、という作り手の意欲は感じましたが、僕はアクション映画としてかなり消化不良でしたね。

 

全体的にアクションの組み立て方や撮り方が上手とは言い難くて、最後の戦いが間延びしてるように思えた。上映時間134分はちょっと長かったなぁ。

 

単純な勧善懲悪ではなくて敵側が主人公のネガというか、王国が残した多くの矛盾を孕んだ存在だったり、「欧米列強に侵略されていないアフリカ」というIfの世界を映像化してみせたことは興味深かったです。

 

変身ヒーローに呪術的な要素を取り入れたのも目新しかったし。

 

「単なるヒーローアクション」に飽き足らない人は、この映画に新鮮味を覚えるかもしれない。

 

アメコミヒーロー映画はまだまだ新しい切り口がある、ということを示したとは言えるでしょう。

 

登場キャラもそれぞれ魅力的でティ・チャラの妹で王女のシュリ(レティーシャ・ライト)はキュートだったし、ルピタ・ニョンゴ演じるナキアも理知的で、ティ・チャラの母親で女王のラモンダ役がこれまで颯爽としたヒロインを演じてきたアンジェラ・バセットだったのもよかったから(オコエは「グレイス・ジョーンズみたいな女」と言われてたしw)、アクション以外のドラマ部分でも楽しめたというのはある。

 

主演のチャドウィック・ボーズマンはさすがジェームス・ブラウンを演じたこともある人だけに、若さゆえに揺れながらもカリスマ性をたたえた王を説得力を持って演じている。ちょっとしゃがれ気味の声がセクシー。

 

 

 

 

これは主人公が試練を経て、ついに「王」として歩み始める物語。

 

最後にティ・チャラが、これまで自国のテクノロジーを秘密にしてきたワカンダがそれを外の世界に向けて提供する、と宣言して映画は終わる。

 

なんとなく、そんなに都合よくいったら苦労はしないよなぁ、とどこか虚しさを感じなくもないのだけれど、未来への可能性と希望あるエンディングだと捉えたい。

 

ブラックパンサーには、いつかバーフバリと競演してほしいなぁ(^o^)

 

第91回アカデミー賞作曲賞、美術賞を受賞。

 

 

※チャドウィック・ボーズマンさんのご冥福をお祈りいたします。20.8.28

 

ワカンダ・フォーエヴァー!!

 

 

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