最初で最後の二人の戦い”ザマの戦い”
その後の二人の人生
『アド・アストラ』13巻、最終巻です。帯の通り、第二次ポエニ戦争(ハンニバル戦争)に終止符が打たれます。そしてその後の展開ではそれぞれの人生の終止符も打たれる最終巻です。
”ザマの会戦”直前から始まります。
感想と展開
12巻の最後に、ハンニバルがスキピオに和平会談を求め、実現して意図を隠しながら時間を稼いでいるその意図を見抜いたスキピオ、緊急訓練を施し最終決戦に
それがこの扉絵に表されています。
ザマは、カルタゴから内陸にあります。ハンニバルのアルプス越えでイタリア半島に攻め入ってから16年、ついにアフリカの地”ザマ”での決戦となります。
カルタゴ軍の特徴の一つが、この象兵にあります。しかし象兵にはデメリットもあります。パニック状態になると、敵味方の区別なく暴れまくることです。
ハンニバルは、この象兵を先に思いきり突っ込ませてローマ陣営でパニックにならせて、その騰勢を乱そうと象兵を一気に繰り出します。
それを和平会談の後でスキピオは見抜いていました。
まっすぐに突進する象兵に対して、歩兵隊はその象をあけて通過させてから、後ろからおしりを狙う形で対応して、ハンニバルの「ゾウ突進パニック作戦」を無力化します。
ハンニバル軍の特徴として、歩兵ではローマに押されていても、その間に地中海世界最強のヌミディア騎兵で、ローマ騎兵を圧倒して、反転してローマ軍を包囲殲滅するという戦術でした。
しかし、ヌミディアを統一したヌミディア王マシニッサはスキピオのローマ軍にいます。
このマシニッサがハンニバル軍のヌミディア残党騎兵などを蹴散らします。
そして
スキピオ側がハンニバルを包囲殲滅にかかります。
ここで、ハンニバルにずっと付き従ってきたシレノスが、カルタゴを残すためにハンニバルにスキピオに降伏して、自らの首を差し出すことを提案します。
ハンニバルはカルタゴの未来のために、その提案を飲み、カルタゴ本国に戻り、降伏することを提案します。
反対もありましたが、スキピオは自らの首を差し出すこともここで述べます。
降伏することとなり、ハンニバルらはスキピオのもとにいき、和平交渉として自分の首を差し出すことを言います。
スキピオは、そこでローマ側の和平案を示します。
①50年年賦の賠償金
②海外領土の放棄と、マシニッサの統一ヌミディア王国の独立の承認
③交戦権のはく奪、ローマの承認なしの戦争の禁止
※②と③が、のちのカルタゴの滅亡(第三次ポエニ戦争)につながります(マンガには描かれていません)。
ハンニバルは殺されませんでした。
ハンニバルは、これからもローマを倒すべく活動することを宣言して去ります。
ローマに凱旋したスキピオは、この勝利により「スキピオ・アフリカヌス」という尊称が与えられ、英雄になります。
その後も、セレウコス朝シリアを打ち負かすなど、軍事面でその才を発揮していきます。
しかし、”ローマの盾”ファビウスの後継者のカトー(マールクス・ポルキウス・カトー・ケーンソーリウス:大カトー)のスキピオ弾劾により、足元をすくわれ、スキピオは失脚させられ、ローマ政治の表舞台から去ります。
※この大カトーも、カルタゴ滅亡に追い込んでいく役割を果たします(マンガの先の話)
カンパニア地方のリテルヌムに引っ込みます。二度とローマにもどることはなく、紀元前183年に息を引き取ります。
大英雄のはずですが、スキピオは先祖代々の墓に入ることを拒んだそうで、墓の場所も分からないんだそうです。自分を失脚に追いやったローマに対する怨恨があるようです。
一方のハンニバルですが
ローマとの和平後は、カルタゴで政治改革を、50年年賦の多額な賠償金を5年で払い終えるというカルタゴの繁栄を実現させます。しかし、その剛腕から、カルタゴ内部の反対派はローマと組んでハンニバルをカルタゴから追い出します。
軍事だけでなく、政治でも力を発揮する平時でも有事でも力を発揮する恐るべき才能の持ち主といえます。
ハンニバルはその後、黒海南岸のビテュニア王国に逃れます。
ローマは、王国に対してハンニバル引き渡しを求めます。
平時でも有事でも才能を発揮し、ローマに挑もうと思い続けるハンニバルはローマにとって、相変わらずの恐ろしい存在ということなんでしょう。
王は匿っていないと伝える一方、ハンニバルを国外に逃がそうとします。
しかし、ハンニバルは、ローマ兵に追い詰められます。
ハンニバルは服毒自殺を遂げます。死んだのはスキピオと同じく紀元前183年のことでした。
同じ年に、カルタゴの英雄もローマの英雄も死ぬということで、そういう宿命にあったということなんでしょうか。偶然とはいえ劇的な終焉となりました。
”ザマの戦い”の展開や、ハンニバルの祖国カルタゴへの思いなどマンガで確認してください。
これにて『アド・アストラ』は終了です。
ただ、次回ですが、その後のカルタゴをマンガの先になりますが書きたいと思います。
アド・アストラ 1~12巻まで
『アド・アストラ』1巻は、こちら
『アド・アストラ』2巻は、こちら
『アド・アストラ』3巻は、こちら
『アド・アストラ』4巻は、こちら
『アド・アストラ』5巻は、こちら
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『アド・アストラ』10巻は、こちら
『アド・アストラ』11巻は、こちら
『アド・アストラ』12巻は、こちら