ハンニバルの戦略・戦術に翻弄されるローマ
アド・アストラ4巻
アド・アストラ3巻で、独裁官ファビウスの持久戦略は失敗に終わり、新たにもう一人の独裁官に任命されたミヌキウス(3巻では、ファビウス軍の騎馬長官)がハンニバル軍と対峙します。
ハンニバルの部下ギスコと戦いに勝った自信満々のミヌキウスですが、ハンニバルのしっかりとした地形の観察などから導き出された緻密な戦術にはまります。ギスコとの勝利も、持久戦略で戦わないファビウスに対して、ミヌキウスにハンニバル軍に勝ったという事実により、ローマ軍に積極的な戦法を取らせる罠で、ハンニバルに導かれるように戦いを挑んでしまったミヌキウスのローマ軍は散々に破れます。
その状況を知ったファビウス軍陣営にいる大スキピオと大スキピオのフィアンセの父アエミリウスは、ファビウスに救援を出すように進言しますが、ファビウスは自らの持久戦略に基づき、それに反して戦ったミヌキウスを救うことを反対しますが、最終的には援軍を出して救うことになります。大スキピオをアエミリウスの立ち回りで実現します。
ハンニバルは援軍が現れたのを見て、「ピュロスの勝利」を避けるために素早く撤退を決定します。
ファビウスの独裁官の任期が終わり、大スキピオ、アエミリウス、ミヌキウスらはローマにもどりますが、軍隊の戦いだけではないハンニバルの策がローマでは始動していました。
執政官選挙で、持久戦略のファビウスの後継的存在として立候補する貴族のアエミリウスと、そのファビウスの戦略に異を唱え、ハンニバル軍がファビウスの領地は襲撃しないのはむしろハンニバルとのつながりがあるのではないかと指摘して執政官選挙に臨むヴァロが言論で対決し、ローマが分断されるように仕向けられていました。
ハンニバルの軍略・政略両面にわたり、冴えを見せ、ローマを苦しめていく第4巻でした。