スキピオ、特例でついにローマ軍司令官となる
『アド・アストラ』9巻 帯にある通り、これまでは司令官に策を進言できても、自分では一群を指揮してハンニバルと対峙することができなかったスキピオが、ついに執政官代理で軍司令官になる第二次ポエニ戦争(ハンニバル戦争)の大きな転換点となる巻です。
感想と展開
シシリア(シチリア)島のシラクサ奪還は、スキピオがアルキメデスからその秘密を教わり、それを生かして奪還に成功しますが、残念なことにアルキメデスはそのローマ軍兵士に殺されてしまいます。
そして、ハンニバルに対しては戦わないが、ハンニバルがいないところでは反撃をするというのちにファビウス戦略とも呼ばれる元老院長老のファビウスのその戦略が効果を出し、ハンニバルに扉を開いた同盟都市のカプアも、その扉を開いた指導者が殺害され、ローマに帰属します。
後世から振り返れば、適切な選択だったと思いますが、ここまで冷徹にその戦略を非難を受けても遂行し続けた元老院長老のファビウス
シラクサ奪還にカプアの帰属と喜びに沸く、ローマにまさかの知らせが・・・
スキピオの父のスキピオはその後イベリア半島のカルタゴ軍(ハンニバルの出発点)の攻撃に派遣されていましたが、その父がハンニバルの弟のハッシュに敗れ、殺害されてしまいます。
こちらがそのハッシュ
その父スキピオの軍をやぶった大きな功績は、ハッシュよりも、8巻に登場した東ヌミディアのマシニッサ王子の騎馬隊でした。
この当時、地中海世界で最強の騎馬隊といえば、マシニッサらのヌミディア騎兵でした。
ローマは執政官ネロを司令官に、イベリア半島のハッシュ討伐に軍を向けますが、最終的には取り逃がして帰還します。取り逃がしたことに非難を受ける執政官ネロに、スキピオは取引を持ち掛け、自分を軍の指揮権を行使できる地位への推薦を依頼します。
元老院長老ファビウスは、資格年齢に達していない(=十分な経験を積んでいない)ネロのスキピオ推薦を反対しますが、そこでスキピオが立ち上がり、ファビウスと激しい論戦を行い、猛将マルケルスもスキピオに加勢して、ついには、イベリアでの軍事指揮権が与えられます。
※ローマでは様々な役職に資格として年齢がありました。スキピオはその年齢未満で昇進をしていきます。
扉絵のスキピオ、ついに軍司令官に。この三又の槍にも実はこの巻の展開で意味がありますが、それはマンガでご確認ください。
スキピオ軍は、イベリア半島のタッラコ(黄色の星)に上陸します。
イベリア半島で、カルタゴの拠点は赤い十字マークのカルタゴ・ノヴァです。
カルタゴ軍(オレンジのひし形)は、ハンニバルの弟のハッシュ軍、同じく弟のマゴ軍、そしてジスコーネ軍が展開しています。
スキピオは、自軍に海と陸からハッシュ軍に向けて進撃することを伝えますが、これは陽動で本当の狙いは、都市カルタゴ・ノヴァでした。
兵たちは、その本拠を落とせるわけがない。ハッシュらもすぐに落ちるわけがないと思いますが、スキピオは1日で落とすと宣言し、本当に落とします。
どうやって落としたのか、その策略はマンガでご確認を、扉絵の三又の槍も関係しています。
そして自分はローマのハンニバルになることを宣言します。
軍事指揮権を得て、ハンニバルとの戦いで学んできたことを実戦で実行できる地位となり、力を発揮するスキピオ、その名将の第一歩を飾る9巻でした。
アド・アストラ 1~8巻まで
『アド・アストラ』1巻は、こちら
『アド・アストラ』2巻は、こちら
『アド・アストラ』3巻は、こちら
『アド・アストラ』4巻は、こちら
『アド・アストラ』5巻は、こちら
『アド・アストラ』6巻は、こちら
『アド・アストラ』7巻は、こちら
『アド・アストラ』8巻は、こちら