
先日、ガルデルマ社のグローバルミーティング「GAIN 2024」が韓国で開催され、世界14ヶ国から注入治療を行っている医師が677人集まりました。慶田も昨年10月に開催されたドバイでのGAINに続き、今回もご招待いただき参加して参りました
テーマはemberting next injection trend
注入治療の次なるトレンドを生み出す
ガルデルマに属する複数の専門家らが1年かけて行った、包括的なトレンド予測調査に基づいた6つの世界的な美容トレンドが示されました。
詳しくは「GAIN by GALDERMA @韓国~その1」をご覧ください

さて、GAINで聴いたプレゼンテーションの中で興味深いデータがありました。
それは、今世界的に需要が高まっている「GLP-1受容体作動薬」についてです
知らない方のために簡単に説明すると・・・
GLP-1(ジーエルピーワン)は、私たちの体内にあるホルモンの一種で、血糖値を下げる役割を担っています。GLP-1受容体作動薬(以下、GLP-1製剤)は、このホルモンと同じ働きをしてくれる薬のことです
本来は2型糖尿病患者のインスリン値を管理するために作られた治療薬ですが、食欲を抑えて、体重を減らす効果があることから、肥満大国とされるアメリカで「GLP-1ダイエット」として爆発的に広がりました
さらに、電気自動車テスラの創業者イーロン・マスク氏をはじめ、影響力のあるハリウッドスターやインフルエンサーが「すごく痩せた」と発信したことで人気に拍車がかかり、米国では社会現象にまでなっています
TikTokでは、GLP-1製剤の1つ♯Ozempic(オゼンピック)のハッシュタグが付いた動画が7億回以上再生され、昨年2023年においては、世界で最も売れた医療用医薬品の2位が「オゼンピック」でした。なんと、実に365.83億ドル(前年比72.2%増、約5兆6704億円)
GLP-1製剤の市場は前例のない速度で成長しているのです
日本国内でも美容・痩身目的で自由診療によるGLP-1薬使用拡大
日本でも、大手美容クリニックなどが「注射を打つだけで簡単」「食事制限しなくても痩せる」などを謳い文句に、「GLP-1ダイエット」として自由診療での処方に相次いで乗り出しています。
現在、数種類のGLP1製剤があり、その中でもダイエット効果が高いとされる
【注射】
●オゼンピック(セマグルチド)
●ビクトーザ(リラグルチド)
●マンジャロ(チルゼパチド)
【内服薬】
●リベルサス(セマグルチド)
が出されています。
コロナの影響でオンライン診療が進み、簡単に欲しい薬を手に入れられるようになったことも背景にあり、使用者が急速に拡大しています
昨年には、国内は出荷に制限がかかるなど供給不足が相次ぎ、こうした状況から、日本医師会や日本糖尿病学会、厚生労働省などの関係機関は、「糖尿病でない人への安全性と有効性は確認されていない」「不適切な診察や処方で健康が脅かされる可能性がある」といった趣旨の警告を示しています
さらに、別の深刻な事態も懸念されています。それは、ダイエット目的の利用に拍車がかかると供給不足となり、本来薬を必要とする糖尿病や肥満症の患者に行き渡らなくなることです
こうした流れもあり、今年2024年2月のから保険適用になった肥満治療薬である「ウゴービ」の発売に先立って、厚労省などは「GLP-1受容体作動薬」では初めて医療機関や薬局向けのガイドラインを公表しました。
この中では、投与の対象となる肥満症患者の明確な条件や、日本肥満学会の専門医が所属することなど、投与できる医療機関の条件を示していて、ダイエット目的に投与してはならないとしているほか、副作用に対して適切な対応ができる体制を整えるように求めています。
GLP-1薬の副作用・適用外使用の危険性
GLP-1製剤の種類によって異なりますが、出現する副作用としては、悪心・下痢・嘔吐といった胃腸障害が代表的な例です。重大なものとしては、低血糖、急性膵炎、胆嚢炎などが挙げられます。さらに同薬による体重減少は、主に中枢神経系への作用を介した食欲抑制によるものといわれているので、精神面への影響を懸念する医師もいます。
2型糖尿病や肥満症の治療でGLP-1製剤を用いる際は、栄養指導と運動指導をきちんと行い、定期的な診察と血液検査できちんと評価し、必要であれば同薬の減量・中止といった対応を取ることになりますが、ダイエット目的の自由診療では、診察や経過観察がないなど、不適切な処方が行われているケースが散見され、医師としての倫理的な問題もあります
他に服用している薬との相互関係や、健康リスクの可能性を把握しないままスタートしていることもあるのです
そして2024年現在、ダイエット目的での使用は日本で承認されていないので、万が一重大な副作用が発生した場合、公的な救済が受けられない可能性もあります。
個人輸入などはもってのほかです。偽造品や粗悪品で健康被害を招く恐れがあります
急激な体重減少に伴う脂肪萎縮について
GLP-1薬による健康被害とは別に外見的な副作用も世界中で問題視されています
GAINの中でも話題としてあがりましたが、「オゼンピックフェイス」という言葉をご存じですか
GLP-1製剤を減量目的で使用し、短期間で急激に体重減少したことで、顔面の脂肪萎縮(ボリュームロス)が生じ、頬がこけたり、皮膚がたるんだりする現象を表現した造語です。
GLP-1製剤の1つであるオゼンピックに由来して、ニューヨークの医師が言ったこの言葉がTikTokで話題になりました。
骨粗しょう症やサルコペニア肥満のリスクも
GLP-1製剤による効果を過信して運動や正しい食事をしないでいると、筋肉量の減少につながり、様々なリスクを高める大きな要因になります。
食事の摂取量が減ると脂肪はもちろん、筋肉や骨も分解してエネルギーにします。そのため、食べないダイエットを続けていると、将来骨粗しょう症のリスクが増えます。
また、急激なダイエットでは、筋肉量が減って、相対的に脂肪の割合が増す「サルコペニア肥満」も問題視されています。
生活習慣病にかかりやすく、運動能力、特に歩行能力が低下して、寝たきりになるリスクが高まります。また、糖尿病や肺炎などを発症しやすくなり、死亡率が高くなることも分かってきました。
更年期以降の女性は、特にサルコペニア肥満のリスクが高まるので、筋肉を減らさないように健康的に減量することが求められます。
当院ではGLP-1製剤を処方していません。
たまにお問合せをいただきますが、当院では、健康な方がGLP-1受容体作動薬を使用することへのリスクや薬剤不足により正規使用したい患者さまが使えない状況になる社会的マイナスを考慮し、処方することはありませんので、ご理解くださいますようお願いいたします
GLP-1ダイエットは、本来と異なった用途で薬剤を使用するため、必ず医師の指導のもとで行うべきです。薬剤の副作用もきちんと理解した上で、体調に異変がないか、きちんと自分自身でも観察する必要があります。
ご参考になさってください

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