ご好評の、美容医療と恋愛シリーズ
前回は、『美容医療と恋愛シリーズ~その9;ビラビラしてちゃダメですか?』と題して、女性器の個性と経年変化を加味し、いずれ白くなって萎縮し消失する小陰唇形成術に待った!を申しました。
様々な女性器を診てきた大雑把な印象ですが、機能的に切除が必要な症例は1パーセント以下だと思います。
左右非対称だったり、大陰唇よりはみ出て少し大きかったり、黒ずみがあったりすることで、「男性に嫌われるかもしれない」と不安を煽り手術誘導するビジネス目的のクリニックにご注意を
お人形のようなプライベートパーツでなければ愛されないと思い込み、人体改造するのは「不健全にもほどがある!」略してフケホドだと思いますよ。
今回は、女性器以上に根深い『おっぱい問題』を考えたいと思います。
題して、『巨乳じゃなくちゃダメですか?』
ここで、豊胸術の歴史を振り返ってみましょう。
かつて重篤な全身の健康被害『ヒトアジュバント病』を出した『シリコン豊胸』『パラフィン豊胸』は美容外科医だけでなく医療界に衝撃を与えた豊胸術負の歴史です
当時は豊胸バッグが開発されておらず、医療用シリコンジェルなどの材料を、直接乳腺内や乳腺下に注入する方法が取られていました。
ヒトアジュバント病とは、パラフィンやシリコンジェルなどの異物が体内に長期存在することにより膠原病類似の病態を呈する疾患です。
下記は分かりやすい論文ですので、ご興味あればご一読ください。
なお、ヒトアジュバント病は、シリコンやパラフィンを直接乳腺内に注入したことで生じており、最新の豊胸用シリコンバックとは異なります。
豊胸バッグにも涙の歴史がありました。
1960年代初頭の開発当初は、薄いシリコンの被膜にシリコンジェルを詰めた『シリコンバッグ』が世界で初めて開発。
初期のシリコンバッグは容易に敗れ、シリコンジェル豊胸と同様の被害が出ました
そこで中身を生理食塩水に変更した『生食バッグ』が開発されます。
ところが、表面がツルツルしていて、ずれやすいという難点があり、表面がザラザラした『コヒーシブシリコンバック』が登場します。
ところが、アラガン社のソフトコヒーシブシリコンで、『BIA-ALCL(ブレストインプラント関連未分化大細胞型リンパ腫)」のリスクが高まるという重篤な健康被害が発生し、回収と定期検診の奨励が行われています
インプラントの周囲にたまった水分の中にリンパ腫の細胞が現れ、乳房の腫れやしこりなどの症状が出るというもので、乳癌とは異なります。
出現する時期は挿入後平均9年。
ヒトアジュバント病も悲惨な副作用ですが、リンパ腫は癌ですので、業界に大きな衝撃が走りました。
最新のバッグでは安全性が高いと言われていますが、注入後直ぐに副作用は発現しないため、数十年単位での安全性は担保されていません
一般的に、豊胸バッグに限らず、長期的に異物が体内に残ると、身体の免疫機構がエラーを起こし、様々な疾患を発症しうるということを決して忘れないでください
10数年前から『ヒアルロン酸豊胸』が増えましたが、持続期間が短いと患者さんには好まれませんでした。もちろん現在でも行われています。
そして、5~7年前から新たな充填剤『アクアフィリング豊胸』が流行りだしました。
こいつが激ヤバな注入剤でして、乳腺の炎症を生じ、重症例ではドロドロに溶解するなど、悲惨な症例が複数報告されています
それでも、美容外科クリニックでは、豊胸手術が人気です。
それはなぜか?
ズバリ、巨乳信仰です⛩️⛩️⛩️
美容外科医も皮膚科医も、シリコンジェル豊胸によるヒトアジュバント病という負の歴史から、バストに異物を注入するのはハイリスクだと学んだはずなのに、アクアフィリングのような得体のしれない製剤を、超大手美容外科クリニックで堂々と注入し続けました。
これには当初から警鐘が鳴らされていました。
案の定、アクアフィリング豊胸後の乳腺崩壊という副作用が後を絶ちません。
その恐ろしい実態は、ぜひ、ネットで検索してみてください
アラガン社のソフトコヒーシブシリコンで、BIA-ALCLという癌(リンパ腫)が発生しているにも関わらず、「こっちのバッグなら安全ですよね?」とリスクを軽視する傾向は相変わらず・・・
『痩せてる=美しい』という『スリム信仰』が根強いがために、不健康なダイエットやダイエット関連商売が消えないように、『巨乳信仰』の洗脳を解かなければ、不必要な豊胸手術は無くならないと思うのです。
もちろん、乳癌手術後の乳房再建などは、患者様のQOLを高める素晴らしい手術ですし、きちんとフォローアップもされるので安心だと思います。
審美目的の豊胸術の場合、定期的に画像検査して経過観察する医師はどのくらいいるでしょうか?
10年~20年の長期に渡るフォローアップが必要です。
おっぱいは本当に大きい方が良いのか?
理想のバストとは何ぞや?
ちょっと考えてみたいと思います
芸術を愛する者の宿命か、私は曲線フェチです
古典的な美術の世界では、ふくよかな女性的ラインが好まれました。
今の美的感覚からすれば、かなりむっちりが理想だったのです。
そして、モデルやツイギーブームでスリム体型がもてはやされる時代もありました。
そうです、バストにも時代と共に流行があるのです。
日本での巨乳ブームは細川ふみえさんがグラビアに登場した頃に始まり、現在も続いているような気がします。
あの頃のふーみんさんのバストは素晴らしかったですね
女性でも顏をうずめたくなるくらいです
そうそう、男女問わず、豊かなバストを見てしまう理由は、我々の原体験かもしれません。
授乳中のおっぱいは、普段の2~3カップ分ほど大きくなります
慶田なんて乳牛状態になりましたよ
だから、赤ちゃんから見ると、
全お母さん=巨乳
ゆえに、
豊かなバスト=母性=包容力
を想起させるのでしょうね。
そういえば、おっぱい星人だった長女は2歳の頃、レストランで天高く両腕を広げながら
「ママのおっぱいはこ~~~んなにおおきいの」
とのたまい、大笑いされました
小学校の中学年まで、
「ママのおっぱいはイチゴミルクの味」
と断固として申しておりました。
現実の味を知るのは次女が生まれた11歳のとき。
ぺろっと舐めて余りのまずさに幻想だったことを知ったのでした
そもそも医学的には、乳房は授乳以外の役目はありません。
子宮が子を育てる袋以外の役目を持たないのと同様といえるでしょうか。
セックスの充実という観点では、乳房ではなく、乳頭が重要ですのでね
昨年末に異業種の方々とお食事をする機会があり、私の仕事に関する質問からの流れで、バストについてヒアリングする機会がございましたので紹介しますね
男性の年齢は35~55歳、12人。
「豊胸手術が人気の背景には、男性のニーズがあるように思いますがいかがですか?」
「やっぱりバストは大きい方が良いのでしょうか?」
「実際にバックを入れた女性とのご経験がある場合、その感想はいかがでしたか?」
と質問しました
結果としては、
「大きいとつい見てしまうが、ただの反射、本能」
「大きければ良いというものではない」
「もみ心地、触り心地が大事」
「観賞用と実使用(笑)は違う」
「大切なのは感度」
「好きになった人の胸なら愛しいと思う」
「ぽっち(乳頭)が付いていれば事足りる」
「手術で作ったバストは不自然に硬いし横向いた時に流れないし好みで無かった。次は無かった。」
「みんな違ってみんないい」
などでございました。
いかがでしょうか
男性陣としては胸の大きさにはそれほどこだわっていないようですね
とくに真剣に交際する彼女や奥様を選ぶ際には、おっぱいの大きさは二の次どころか三の次以下の条件のようでした
なお、今回ヒアリングした方々が、至極真っ当な業種の常識人の方々ですので、母集団による考え方の違いはあると思います。
でも、相当お酒が回った状態(前頭葉抑制下)でヒアリングしましたので、結構本音だと思います
トータルで考えて、「男性に好かれたいがために人体改造するのはどうなんだろうか・・・」と思ってしまいました。
沢山の指名客を得て、売り上げを上げたいキャバ嬢など夜職の女性ならいざ知らず、貴女はたった一人の大切な誰かに愛されることがゴールですよね
万人が「おぉ~スゲ~」と唸るような巨乳に人体改造する必要はないのです
以前、『大谷選手の妻に学ぶセルフブランディング』でも述べたように、自分が求める運命の人をイメージして、戦略的に自分磨きをしなくてはなりません。
ゴール設定を誤ると結果も不幸になる可能性が高いもの
巨乳だから選ぶという男は、別の巨乳が現れればつまみ食いします。
実は大きいおっぱいは好きな方だけど、愛しているから胸の小さめの貴女を選んだ男は、少々のことで目移りしません。
結局、人が人を選ぶ場合、見た目は一次審査で、中身と相性が最重要項目なのですから
ところで、皆様、術前術後写真って、せいぜい3か月後、1年後くらいしかご覧になったことないですよね
60代後半になって、身体が痩せてしまった時、バックをいれた体がどういう風になるかを想像できますか
わたくしは、お風呂屋さんに行くのが結構好きなので、何人か見たことがあります
体格に見合わないバックで伸展した皮膚は、静脈が透けていて、身体は痩せて骨と皮状態なのにカンカンっとお椀型のおっぱいが鎮座している状態。
「痛々しい・・・」
という言葉しか浮かびませんでした
美容医療や手術を受ける場合は、30年後40年後を考えておかなければなりません。
授乳で縮んでしまったバストに小さめのバックを入れるのはアリですが、
ビフォー写真でも美乳でスタイルの良いやせ型なのに、さらに大きなバックを入れてしまうのは、お風呂屋さんで見たような末路になるのではないかと心配です
術者の技術に問題なくても、長期的安全性なども考慮し、遠い将来を見据え、慎重に決めてくださいね
美容皮膚科でできるローリスクな施術で美しいデコルテやバストメイクする施術もご紹介しておきますね
1. ケミカルピーリング(乳酸ピーリング・マッサージピール):肌の滑らかさと透明感を高めニキビや毛穴詰まりを改善。下記の照射とのコンビネーションで行う。
2. ジェントルレーズプロ照射:産毛の脱毛と軽い美白
3. ピコトーニング・ピコフラクショナル照射:確実な美白。乳輪と乳頭の美白効果もある
4. フォトフェイシャルM22照射:ニキビやニキビ痕の改善
5. 水光プラス:潤いアップ、肌質の向上。
お顔に出来る施術はほぼ全てバストにもできます
大きさは変わらなくても、肌触りが滑らかでしっとり吸い付くような美肌で、ハリがあれば十分ご満足いただけると思います。
以下は今回のまとめ
時代と共に流行があり、誰一人として同じ形は無い。
母性を感じさせるパーツ。
白く美しいデコルテは最高のレフ版。
お手入れしておくとメリットはある。
重力、老化、授乳で垂れ下がるものだから、胸で相手の心を掴んでも一時的な効果しかない。
乳癌が増えているので、年に一度は乳がん検診を受け、早期発見が鍵。
乳房にアクアフィリングなどの異物を注入するのは厳禁。
現状では豊胸バッグによる豊胸手術が安全と言われているが、長期的安全性の担保は無い、また身体全体が老化したときのことを想像すべき。
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