皆さま
ちゃまみつ、泣けてよかったな。
泣いていいんだからな。
悲しいときは悲しいでいいんだぞ。
今回は悲しみのその後の
お話しです。
詳しくは本文をお読みください。
本日もよろしくお願いします。
【自己紹介】
-----------------------------------------------------------------------------
「オウムの一生物語」
~⑭今を見て、過去を許していく~
前回までのお話しはこちらです。
【第一部①~⑩話/人生の課題が作られる】
【第二部⑪話~/人生の課題と向き合う】
過去の家族との関係性を「悲しかった」と
認めることができたオウムのちゃまみつは、
その悲しみをひとり感じ切っていきました。
その様子を師匠として見守ってきた
雲十郎は、いよいよちゃまみつに
声を掛けたのです。
「ちゃまみつ、今の気分はどうだ?」
「はい、悲しくて悲しかったですが、
今はもう悲しみも果てたように思います」
「そうか、では、これからどうしたいんじゃ?」
「僕は、この看板を書く仕事が大好きです。
だから、この仕事を極めて、もっともっと
多くのオウムたちに喜んでもらいたいです」
「そうか、そうか、今に視点が移ってきたようじゃな」
「はい、今日からどんどんオウムたちを魅了する書を書いていきます!」
白いフワフワの毛が特徴的な
オウムの雲十郎は、きっぱりとした
表情でちゃまみつを見つめました。
「いやいや、ちゃまみつ、ちょっと待て」
「え、なんででしょうか?」
「ちゃまみつ、お前さっきどうなりたいと言った?」
「え、もっとこの仕事を極めていきたいと・・・」
「そうじゃったな、だからこそ、ちゃまみつには
まだやることがあるんじゃよ」
「雲十郎さん!もう、僕は思いきり書いて表現したいんです!」
フーっと雲十郎は、息を吐きました。
「自分を表現するからにはな、過去を許してしまう必要があるんじゃ」
「え、過去はもう、僕は悲しみ切りました」
「それは、わかっとる。だからこそ、もう許してしまうんじゃよ」
少しうんざりした表情を浮かべるちゃまみつでしたが、
自分を思いきり表現した作品を作るためにも、
ちゃまみつは過去を許すことにしました。
ちゃまみつが、過去を許すと決めてから、
少し経つと、ちゃまみつに様々な想いが
湧いてきました。
でも、どこかでその家族との辛い経験は
実は自分には必要なことだったのでは
ないかと思い出していったのです。
まさか、このときちゃまみつは自分で
決めてきたなどと思ってはいませんでしたが、
どこかでそれを思い出したように感じていました。
父ユクオが失踪したことは、
家族にとって悲しいことだと
信じて疑いませんでした。
でも、ユクオにはその決断をするしか
方法が思いつかなかったということも
ちゃまみつは、理解していったのです。
ユクオが突然失踪したことで、ちゃまみつは
「家族を大切にすることの大切さ」を
学んだのです。それをちゃまみつは、
腑に落ちました。
「お父さん、僕はきっと幸せな家族を築くよ」
母トモコからは、叩かれましたし、
辛い言葉もかけられました。
でも、これもトモコはそういう役割を
担ってくれたとちゃまみつは、感じるように
なったのです。
あえて、トモコは嫌われ役を買ってくれ、
ちゃまみつに子どもを叩くことの愚かさ、
言葉がどれだけオウムを傷つけるのか、
それをちゃまみつに教えてくれたのです。
母であるトモコから言われた
「あんたなんて産まなければよかった」
生まれつき左羽が悪いちゃまみつに対し、
「いつか飛べなくなるわよ」
そんな言葉は小さいちゃまみつの
胸をざっくりとくりぬいたのです。
それによって、ちゃまみつは子どもを
叩くことなんて絶対にしたくないし、
言葉を大切に扱うようになりました。
「お母さん、痛みを教えてくれてありがとう」
そんなときに、苦しんでいた自分自身を
許し、父ユクオを許し、母トモコも
許すことに成功したのです。
そう、ちゃまみつは、辛い家族関係を
選んで生まれることで、家族を通して
「大きな愛」を学ぶことができました。
これこそがちゃまみつの大きな
生まれてきた目的のひとつでもあります。
そのことは、ちゃまみつにとって大きな
財産、光となった瞬間でした。
オウムのちゃまみつは、過去の
辛い辛い闇のような出来事を
見事に光に変えることができたのです。
そうして、どこかでちゃまみつは、
なぜ、雲十郎が過去を許す必要が
あると、言っていたのかも理解することが
できました。
過去を闇から光に変えたことで、
これを活かして、看板を書くことに
自分を思いきり表現できるように
なるということだったのです。
「ようやく、僕は思いっきり表現していけるんだ!」
「そして、僕は幸せな家族を築くんだ!」
そうして、雲十郎がしわくちゃに
喜んだ顔をしている前で、
ちゃまみつは筆をくちばしで
くわえて、キラキラとした目を
輝かせているのでした。
【続く】
-------------------------------------------------------------------
執筆依頼なども承っております。
-------------------------------------------------------------------
この物語を読んで何か一つでも
感じていただけたら嬉しく思います。
世の中が今よりも幸せな場所になっていきますよう
想いを乗せて書いています。
皆さまよろしくお願いいたします。