先月12日の国際フォーラム以降、私は宏美さんの生声には少しご無沙汰である。この間、宏美さんのステージがなかったのかと言えば、そんなことはない。5/25福岡音楽祭、5/29チャリティーコンサートwith 国府弘子(岐阜県可児市)そして昨日6/1葉加瀬太郎音楽祭(明治神宮)など。だがいくら定年退職したとは言え、私も全ての宏美さんのライブに足を運べるわけではない。仕事や他の用事との兼ね合い、財布との相談、そして妻への忖度🤣などがある。次に参加できるのは、6/9薬師寺境内におけるヨシリンとジョイントのシンフォニック・コンサートである。この貴重な機会、今から胸が高鳴る。

 

 

 さて、私が歌謡曲に興味を持つようになり、初めてファンになったのは南沙織さんであった。1972年の秋に発表された5thシングル「哀愁のページ」は、有馬三恵子・筒美京平という、それ以前の楽曲と同じクリエイターの作品でありながら、シンシア初のバラードというか、ちょっとしたイメチェンがあった。子ども心にとても印象に残っている楽曲である。曲頭の「♪ Say do you know what loneliness is ?/I believe it's one of girl's happiness」という英語のセリフ、そして歌詞中にも「♪ みんな女の子は 哀しみが好きよ」という箇所が出てくる。当時まだ小学校5年生だった小便臭いガキにはとても謎めいた歌詞であり、理解の範疇を超えていた。あれから50年以上の時が経った。それなりに人生経験を積んだオジサンは、解るとは言えないまでも、「哀しみが好き」という女の子の心情を、それなりに想像できるようには成長したような気がする。

 

 そこで今日は、宏美さんの数ある名曲・名唱の中でも、女の子・女性の「かなしみ、せつなさ」などにフォーカスした楽曲をいつものランキング形式で取り上げてみたいと思う。「かなしい」には「悲」と「哀」の2種類の漢字がある。いろいろなサイトを調べてみたが、内容に少しずつ差異があり、何となくニュアンスはわかるものの「これだ!」というものはなかった。ただ「悲」は常用漢字だが「哀」は常用漢字外ということ、「哀」の方が詩歌など文学的表現上好まれる傾向があること、そして「かなしい」には古語で「愛しい」という意味もあった、ということだけ指摘しておこう。今日のブログでは、プチかなしみから深刻なかなしみまで、「哀しくて切ない」オリジナルの名曲を皆様にたくさん思い出していただこう。

 

💔次点 エトランゼ

 「♪ ヒロインめいた 傷心旅行/(略)/せめて華やかに哀しむわ/いつか輝いて出なおすわ」

 華やかに哀しんでいつか輝いて出直そう、という前向きな傷心旅行。サウンドも力強く一歩ずつ歩を進める感があり、次点に留まる。

 

💔次点 悲しみのほとり

 「♪ そうよ許されないこの恋 想い出に出来ない/氷のバラを心に 小さく咲かせたままで/青い湖の底 沈んでしまいたいの」

 この曲のブログに書いた通り、どことなく切ない鶴の想いを思い起こさせるこの曲。タイトルにも「悲しみ」とあるのでランクインさせたいが、ここはカップリング曲に譲って次点。

 

💔次点 パピヨン

 「♪ 蝶々の涙は小さいから/あなたは一度も気づいてくれない/見つめてよ 見つめてよ」

 愛しているあなたに、気づいてもらえない切なさが胸を抉ります。でも、ゴキゲンなディスコ・サウンドに紛れて哀しさが薄まるので、惜しくも次点。

 

💔20位 哀しみの環状線

 「♪ 哀しいほど forget you/最後の get you/(略)/せつない気持ちは 時が過ぎていっても/ちっともうすれないんだね」

 度肝を抜く幅広いレンジで、宏美さんがオトナ〜な哀しみの歌を歌い上げる。哀しみっていくら時間が経ってもちっともうすれないんだね。

 

💔19位 悲恋白書

 「♪ ぼろぼろの心が いたみます/なぐさめる言葉が ありません」

 ドン底まで落ち込んだ気持ち、タイトルも「悲恋」。だが皆様よくご存知の通り、2種類のメロディーが作られ、あくまで明るくテンポ感のある現在の曲調が採用された。そのため悲しみのトーンが和らいでいる。

 

💔18位 さよならは2度ベルを鳴らす

 「♪ このまま 永遠に/逢わなくなるのね/たとえどんなに/綺麗になれたとしても」

 今回ランクインさせた名曲の中で、スケールの大きさという点ではNo.1。「永遠に逢わなくなる」哀しい別離を、ヒロリン渾身の歌い上げで、アルバム『cinéma』を締めくくる。

 

💔17位 ワンウェイ・ラブ

 「♪ 生まれた街 振り返えらない/あなたにも もう逢えない」

 歌詞や歌い方からは、立ち上がり前に進もうという強さも感じられる。だが、全曲を通じて鳴り続ける、陰鬱すぎるピアノのマイナーコードのアルペジオが哀しみを強調するのだ。


 

💔16位 想い出の樹の下で

 「♪ 信じましょう 信じて生きましょう/たとえ はかない 想い出としても」

 若き日の宏美さんの伸びやかな歌声、メジャーの16ビートの高揚感のあるサウンド、そして輝かしい間奏のトランペットソロなどに耳がいってしまうが、歌の内容は実に切ない。

 

💔15位 夏のたまり場

 「♪ この肌の色あせる頃/恋も消えて行くでしょう//もう誰も来ない/ちりぢりになって」

 学生時代、4年間夏休みをプールのアルバイトをして過ごした私には、夏の終わりというのは特別の感興を呼び起こすものなのである。シーズンオフにそのプールに出向いて、余計淋しい想いがつのってしまった経験もある。私の実体験、実感にピッタリの名曲である。

 

💔14位 真珠のピリオド

 「♪ 何か言えばなおさら 傷つきそうで/黙りこくれば 海が騒ぎ出すだけ」

 歌詞表現も音楽も控えめでお洒落。そのせいか私には切なさがいっそうつのって伝わるのだ。個人的な失恋の思い出(笑)とも重なり、堂々のランクイン。

 

💔13位 さ・よ・な・ら

 「♪ こんなあかるい海でなら/沈むつらさもないようで/立ちつくす」

 救いようのない哀しみ、という意味ではこの歌は際立っている。作詞の舟木一夫さんは、どうしてこんなに哀しい歌を宏美さんに書いたのでしょうね。

 

💔12位 哀しみは火のように

 「♪ 嘘よ 今にもくずれかけている私/哀しい気持はいつしか甘い匂い連れて/空を焦がす炎に変る」

 歌の前半では淡々とした情景描写、後半の「嘘よ」から一転して女の哀しみが激情となって迸り出る。今回ランクインした歌の中で、唯一と言っていい、哀しいパッションに溢れた楽曲である。

 

💔11位 摩天楼

 「♪ 死ぬ日まで灼きつく傷あと/ひとりしか愛せない心/(略)/私が死んでも このビル街は/そしらぬ顔して動き続ける」

 大昔、弟が宏美さんの曲の歌詞の一部を言い、私が曲のタイトルを当てるというクイズをやったことがある。「死ぬ日まで」という出題に対し、一瞬判らなかった私だが、「宏美さんの曲で『死ぬ』なんて物騒な言葉が出てくるのは『摩天楼』くらいなんだよな」と言ったことを鮮明に覚えている。そうなんです、2度も「死ぬ」というワードが出てくるのです。

 

🥲10位 れんげ草の恋

 「♪ わかってました そうよ私は/忘れられた訳じゃありません/はじめから あなたの目には/とまらなかっただけです」

 「パピヨン」と類似した内容を持つ、自分の恋情に相手が気づくことのない悲恋を、地味なれんげ草に喩えた佳曲。印象的なチェロとピアノのイントロで、より一層ウェットになる。昨年リリースされたベスト盤に収録されて久々に日の目を見た。宏美さん、50周年では是非歌ってください❣️

 

🥲9位 涙に願いを

 「♪ 涙 涙 渇いた胸に/せめて ひとつ 潤いをください//寂しい目をして 旅立つ鳥さえ/ふるさとに 帰る日を 知っている」

 レコーディング時、スタジオが静まり返ってしまったという逸話を持つこの曲。宏美さんの切ない名曲の中でも、その救いのなさが際立つ1曲だ。一五一会の音色も、この曲ばかりは虚しく響く。

 

🥲8位 恋夏期

 「♪ 陽灼けがあせてしまう頃には//どんな想いでここにいるでしょう」

 「夏のたまり場」とよく似たシチュエーションの曲である。だが、ブリッジからサビの音楽的な盛り上がりでは、こちらに軍配。「陽灼けがあせてしまう頃には」という歌詞が、実感を伴って胸に迫る。アルバム『思秋期から…男と女』は、「思秋期」をはじめ「幸福号出帆」「ピアノ弾きが泣かせた」など切ない名曲の宝庫である。

 

🥲7位 夕凪海岸

 「♪ みじめなこの私を 誰も見ないふりしてくれる/町まで帰るのが とても怖いの」

 主人公の周囲の人たちが、皆彼女のことを憐んでいるーーというのは、宏美さんの他の歌ではちょっと思い当たらないシチュエーションである。主人公のいたたまれなさは、想像に難くない。

 

🥲6位 花のことづけ

 「♪ あなたにはわからない/この小さな言葉など/いつの日もかなしみの/ぼくの恋なんかは」

 どうしてこんなに哀しく苦しい歌なんだろう。こんなにも好きなのに、人を愛するときめきや喜びが全く感じられない歌も珍しい。私の中では、後年の「友達の詩」に通ずるものがある佳曲。

 

🥲5位 シンデレラ・ラッシュアワー

 「♪ ハートはいつまでたやすいですか/自分らしさを自由にできて/あのときめきをもう一度 あなたのそばで」

 楽し過ぎた学生時代が終わり、みな散り散りに就職して時代が移ろっていた頃に出会ったこの曲。当時の自分の心情にシンクロし過ぎていた。あの胸がキューッと苦しくなる感じ、今も思い出せる。

 

🥲4位 あざやかな場面

 「♪ 若い日なら何もかも/許されるもの/そんな無茶を信じてた/涙を流して」

 「想い出の樹の下で」やこの曲の「哀しみ」は、シンシアが歌った女の子が好きな哀しみの部類か。この2曲に通ずるメジャーのあくまでも爽やかなサウンドもそう思わせる所以だろう。

 

😭🥉 ラブレター

 「♪ 手紙が来ないから 私は悲しくて/(略)/封筒だけでもいい 手紙を下さい」

 初めてこの歌を聴いた時から、私は「♪ 封筒だけでもいい」というフレーズが悲しすぎて…😭。こんなに切なさが沁みる歌もありません。

 

😭🥈 すみれ色の涙

 「♪ 淋しかったから あなたを愛して/淋しかったから あなたを憎んだ/淋しかったから あなたにさよならを」

 「淋しかったから」愛し、憎み、そして別れる。シンプルな言葉の選び方の裏に深い意味が隠されていると感じる。なずななのはなさんという方のブログが秀逸であるのでご紹介しておこう。

 

 

😭🥇 友達の詩

 「♪ 手を繋ぐくらいでいい/並んで歩くくらいでいい/それすら危ういから/大切な人は友達くらいでいい」

 なんて哀しいのだろう。なんて切ないのだろう。失恋や別離よりも辛く、深い哀しみがこの歌にはある。私の中で今回のランキング断トツ1位とさせていただきたい。(中村中さんのメジャー盤より前に宏美さんのバージョンが発表されているので、オリジナル扱いとした。この曲を1位に据えるための方便というか、若干ご都合主義ではあるが😜)

 

 

 いかがでしたか。何となく思い出すだけで少ししんみりした気持ちになられてしまったのでは、と心配です。さて、来週には何らかの形で薬師寺コンサートの模様をお伝えできるかと思います。どうぞ楽しみにお待ちいただければ幸いです。😊