注)ネタバレあるかも。

 

頻発するエラー終了に心が折れてウィッチャー3を投げてしまい、仕方なく他のゲームに手を出すことに。

洋ゲーのぶっきらぼうさにいささかウンザリして国産がやりたくなったので、評判がいいことは知っていたが難しそうだと思って敬遠していた「十三機兵防衛圏」を2週間ほどプレイ。で、今日クリアした。

 

感想。

 

確かに、すごいゲームだと思った。

他に類似の作品は、まずないだろうなあ。

超絶独創的だった。

 

・視点も時系列もバラバラの群像劇をプレイヤーの任意で進められる自由度の高さがありながら、最終的にはすべてのシーンのつじつまが合うように構成されたストーリー

 

・戦闘とストーリー進行とその補完テキストとを3つのパートに分け、それぞれ自由に進められるパート構成。

 

・複雑なはずなのに使いやすく美しいUI

 

・タワーディフェンスの戦闘(←賛否あるようだが、個人的にこの単純さと爽快感、そして育成要素はツボです)

 

・どこかレトロかつ頽廃的な雰囲気のあるタッチのグラフィック

 

これらはゲームというメディアでしか作れないエンタメであり、映画でも推理小説でもない新しい表現の形として革命的とすら言える。

これを超える作品はそうそう作れまい。

まず作ろうという気にならんだろう。

ちょっと狂気を感じる。

(最後のおまけのやりこみは、50面までやっても終わらなかったので調べたら、9999面まである(!)とのこと。やっぱり狂気じみてる。)

 

ただし、それがゲームとして面白いかどうかは別問題。

ストーリーがあまりにも難解すぎて、クリア後に解説読んでもまだよく分からない。

これを初見で理解できるのか、みんな。

一応何度も復習できるように究明編があるのだが、う~ん…。

 

ゴーストオブツシマやウィッチャーでも感じたのだが、テキストの量が多すぎる。

私は紙の本なら読めるが、スマホでもタブレットでもPCでもあるいはテレビ画面でも、長文は読めない。

これが致命的。

よほど画面に近付くかでかいテレビでやらない限り、つらいだけだろ。

まず目が疲れるよ。

 

各シーンでも謎がどんどん増えて行って、しまいに自分は何が分からないのかが分からない状態になっていき、どうでも良くなってくる。

 

もう一度初めからやり直せば伏線とかも味わいながらプレイできるかもしれないが、もはやその気力はない。

 

というわけで、十三機兵防衛圏の採点は…

 

80点!

 

難解な推理小説を、本を読むつもりでプレイする人なら楽しめるかも。

あくまで個人的感想だが、万人向けではないと思う。

しかしゲームは常に「今までにない新しい体験」を創造し続けているわけで、そういう意味ではゲーム史に残る傑作という意見には同意できる。

 

★以下、エンディング後のネタバレ含むので念押しでご注意を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

このストーリー、本当に個人的な意見だが、全く面白くなかった。

 

まず、誰が誰だか分かりにくい。

結局主人公たちは「22世紀に生きていた自分から複製されたクローンである」という設定が最後の最後に明かされるわけだが、同じ人物のクローンが複数いたり、名前も違っていたり、果ては「すでに肉体は消滅していて、記憶のみがインストールされたAIやアンドロイドになっている」という離れ業まであったりする。

この説明がないまま延々と数百枚の紙芝居を見続けて背後の設定を理解することが「エンタテインメント」になりうるのかどうか。

やはり万人向けではない。

 

SFの「技術的に可能だから」という強引な設定が面白いと感じるか荒唐無稽と感じるかは本当に紙一重だと思うのだが、私の場合は最後に真相が分かった後、「なーんだ」と思ってしまった。

技術的にもろもろの仕掛けが可能だったとしても、誰にも共感できない。

人類の絶滅が避けられない運命にあったとして、「技術的に可能なら他の惑星でも種を保存するべきだ」と思うだろうか?

作中に登場するSF的技術を想像力で受け入れようとすると、人間という生き物に対しての想像力のスイッチを切らないといけない、という問題があるように思う。

※ちなみに、タイムマシンが不可能なことは原理的に明らか。自分自身の時間だけは必ず未来にしか進まない。「1日たつごとに昨日に帰る、ということを繰り返せば年を取らなくなる」ということにはなりえないのだから。

 

また、何でもかんでも恋愛要素が絡む展開にちょっと「?」だった。

しまいにはBLまで絡んできて、うんざりしてしまった。

(※同性愛者がいても構わんのだが、これを題材として作られた物語には私は全く共感できない。)

しかしこれも、最終的にこの13人+2人だけが人類の生き残りである(なぜか全員日本人)ということになり、彼らはたどり着いた惑星でつがいになって子孫を増やさないといけないので、性愛への情熱が旺盛なのである。

これも、なぜ誰もかれもぞっこん惚れ込んでいる相手がいるのだろう?という疑問が、結末を見て「なーんだ」という感じ。

十郎くんがヌード姿で現れた恵ちゃんに手を引かれて外へ出ていく、という最後のシーンは、これから交尾しまくる猿の惑星、という感じで、なんだかなあ。

あと、同じ人物の複数のクローン同士で惚れた相手が異なるというのも話が複雑になる以上の効果がないように思った。

 

というわけで、本でも映画でもゲームでも、評判が良くても悪くても、実際に自分で見ないと分からないことはたくさんある。

十三機兵防衛圏、とりあえずどんなゲームか分かった、ということは収穫だった。