建物価格・概算価格。
我々設計事務所に仕事を依頼される時、当初の企画は無料です。
そして、この企画段階でお客さんの方では、もちろんいくつかの設計事務所や工務店、へたをすると住宅メーカーなんかにも企画を依頼して比べていらっしゃるのが普通です。
これをこちらの側から見て「競合」といいます。
「何社かで競合している」というわけです。
これに対し、最初から頼む先を1社に決めていることを「特命」といいます。
つまり「この建築家に頼みたい」とか「この大工さんに建てて欲しい」なんて時のことです。
この「競合」をしている時に、当然企画設計の内容などを比較されるわけですが、この時「建物価格」の見積もりを要求される方が必ず何人かに一人はいらっしゃいます。
何度もいう話ですが、建物に定価はありません。
私達は設計事務所ですから、建物の値段など付けようがありません、たとえ積算士に頼んで標準価格で見積もりをしてもらったとしたって、実際に工務店がその価格でやるかどうかなんてわかりようがありません。
それに工務店にしても、正確な価格は設計図を見積もりしなければ出しようがないんです。まだ設計図どころか設計請負契約もしていないんですから・・。
あくまでも”だいたい○○万円くらい”としか言いようがない・・。
この”だいたい○○万円”のことを「概算価格」といいます。
工務店などに依頼する際、企画段階でこの「概算価格」をきくと「概算見積もり」をしてくれます。
この「概算見積もり」は、きちんと見積もりをするのではなく、建物の大きさや仕様のレベルから過去の実績価格を参考に、この大きさの時のコンクリート量は約このくらい、木の量はこのくらい、この仕様の部屋が何平米でそれに掛け率をいくら掛けて何万円、などとだいたいの価格を想定して出す作業です。
当然、この「概算価格」は正規の価格ではありません。あくまでも指針を出すためのもので、最終的に設計見積もりした「価格」とのすりあわせをします。
我々設計事務所が出すのはあくまでも「想定価格」です。つまりこれは、お客さんに「いくらで建てて欲しい」と頼まれた価格のことで、これは「いくらなんですか」ではなく「いくらにして下さい」と言われた価格に最終的にするのが”我々の仕事”ですから、ある意味この「想定価格」は「実施価格」ということにもなります。
つまり、見積もりもくそもないんです。言われた価格にするのが仕事なんですから・・。
昨今この「価格」を当初から要求される人がいるのは、メーカーハウスが定価を出して来るからだと思われます。
メーカーハウス、特にプレハブや2X4などの企画住宅は最初から仕様が全て決まっていますから、それらがコンピューターに最初からインプットしてあって、間取りだけ入力すれば価格が一瞬にして出てきます。工場で生産し、企画かされた建物だから出来ることなんです。
大手の木造や鉄骨造などを扱う住宅メーカーは絶対に当初から「価格」を出したりはしません、それは嘘になりますから・・、あくまでも「概算価格」です。
逆に言うと、設計もしていないうちから「価格」を出す会社は、それが設計事務所だろうと工務店だろうとそれは嘘です。
設計して見積もってみて、当初出した「価格」より安く出ればその会社の丸儲け、高く出れば「追加」といことになります。
アトリエ繁建築設計事務所HP
http://homepage3.nifty.com/ateliershigeru/