衛藤晟一首相補佐官が19日、安倍晋三首相の靖国神社参拝をめぐり米政府を批判した「ユーチューブ」での自身の発言を取り消し、動画を削除する意向を明らかにした件。この発言をめぐり、米国、中国から批判が起きているようです。そして、メディアは衛藤補佐官の発言を「あまりにも稚拙」とコメントしました。
国際問題評論家の古森義久さんは、ブッシュ政権一期目に国務副長官を務めたリチャード・アーミテージ氏へのインタビューで彼が次のような見解を述べていることを2006年のコラムで紹介しています。
「米国社会では殺人者でもキリスト教などの教えに従い、埋葬され、追悼される。同様に日本でもA級戦犯の死後の扱いを一般戦死者と同じにしても、いちがいに糾弾はできない。死者の価値判断は現世の人間には簡単に下せないだろう。いずれにしても日本人の祖先、とくに戦没者をどう追悼するかは日本自身が決めることだ。中国も米国も日本の首相に靖国参拝中止の指示や要求をするべきではない。とくに日中両国間では、民主的に選出された一国の政府の長が、中国のような非民主的な国からの圧力に屈し、頭を下げるようなことがあってはならない」。
これが正論です。にもかかわらず、現オバマ政権は中国に及び腰。スティムソン・センター主任研究員の辰巳由紀さんは、米国が首相の靖国参拝を許容できない理由として、次のように指摘しています。
要は、米国では、靖国神社とは、A級戦犯の合祀や、敷地内の資料館「遊就館」の展示を含め、戦前の日本の行為を正当化する象徴的存在なのである。つまり、そこに日本の総理が参拝することは、事後にどのような説明があったとしても「第二次世界大戦前の日本の行為を正当化する歴史観の肯定」であり、サンフランシスコ講和条約以降の国際秩序(当然、日米安全保障体制もその一部に含まれる)の否定につながる。これは中国や韓国の反応を抜きにして、米国として許容できないものなのである。
サンフランシスコ講和条約は、日本に領土の放棄または信託統治への移管、戦前の国際協定に基づく権利等の放棄、国際協定の受諾を求め、それに日本が応諾したものです。そして日本はこの条約の締結以降、他国と戦禍を交えたことは一度もありません。
それに対し、日本の総理が靖国参拝することを、同盟国である米国が中韓同様に「第二次世界大戦前の日本の行為を正当化する歴史観の肯定」であり、「サンフランシスコ講和条約以降の国際秩序の否定につながる」と批判する。国際秩序の維持を大義名分に第二次大戦以降、幾度も戦禍を交えてきた国に言われる筋合いはありません。
日本の総理の靖国参拝は内政問題です。しかもそれは、首相が行なう英霊たちへの感謝と不戦の誓いです。中国は常に、人権問題などに関する欧米諸国の批判に「内政干渉だ」と反発し、「他国の内政に干渉しない」との外交姿勢を標榜していますが、どうやら中国は日本を国家とは見なしていないようです。
一方、米国の「日本通」の政治家たちは、天皇陛下がA級戦犯が靖国神社に合祀されて以降、靖国神社にご親拝されなくなったことを指摘しているようですが、この点については、青森県 東津軽郡 にある神道 系新宗教 である松緑神道大和山 の流れを汲む松風塾高等学校では生徒たちに次のように教えています。
天皇陛下が靖国神社にご親拝されなくなったのは昭和五十一年からです。「A級戦犯」が靖国神社に合祀されたのは昭和五十三年です。参拝されなくなったのが五十一年、合祀されたのが五十三年です。そこに二年の開きがあります。ですから、天皇陛下が靖国神社にご親拝されなくなったのは、「A級戦犯」の合祀が原因でありません。
その要因は、・・・三木首相が昭和五十年に、(靖国参拝を)「私的参拝だ」と言ったことがマスコミに取り上げられ、国会でもそれが与野党の議論になってしまい、天皇陛下は、翌年の昭和五十一年から八月十五日の靖国神社ご親拝を控えるようになったのです。
これが正論です。戦後およそ70年。その間、対中国 へのODAは外務省公表では約3兆円、財務省 など日本の他機関の援助額を総額すると6兆円を上回るとされます。これだけの援助をしている国に、未だに「日本が歴史問題を悔いず、反省せず、軍国主義の亡者を放さないならば、日本とアジアの隣国との関係に未来はない」と言い放たれています。
そんな中国に経済上の背景から及び腰になっているオバマ政権に対して、衛藤晟一首相補佐官が、安倍晋三首相の靖国神社参拝をめぐって米政府を批判してどこが「あまりにも稚拙」なのでしょう?稚拙なのは、靖国問題を未だネタにして国民を煽ることしかしないメディアの方ですよ。