20年前の320日に起きた地下鉄サリン事件。当時私は、その週、前年の10月に転職した東京本社・熊本事務所勤務の会社の研修で徳島に三泊、その後、私用で神戸に二泊後、事件前日に帰熊(きゆう)し親戚の法事に出席した後、その翌日、事件当日は出社して通常業務を行っていました。


今思い起こせば、事件を知って、熊本に戻って良かったな位にしか思っていませんでした。その事件がオウム真理教によるテロであったとはそのとき知る由もありませんでした。ただ、少なくとも、世を騒がす新興宗教集団との関連性を疑わせる余地は十分ありましたが・・・


改めてチェックしてみると、「1995年に週刊新潮 が発表した『今年を代表する男』の読者アンケートで、麻原彰晃が野茂英雄に次いで2位を獲得。また上位10人には麻原以外にも坂本堤 村井秀夫 ・上祐史浩とオウム事件の関係者が4人ランクイン」とありますから、当時の喧騒ぶりが偲ばれますね。



内村&麻原

そして、この一連の事件を思い起こすとき、私には元教祖の麻原彰晃とともに同県出身である「天下一家の会」の創始者・内村健一が連想されてしまうのです。2015年の現在、恐らく、すでにこの双方の「事件」を知る日本人も少なくなっていると思いますが・・・。


天下一家の会」とは、内村健一(19261995)1967年に熊本県 上益城郡 甲佐町 で設立した第一相互経済研究所が母体になって起こした、日本での最初のマルチ商法集団と言っていいと思います。


マルチ商法multi-level marketing)は、世間一般的な概念としては連鎖販売取引 あるいはそれに類似した販売形態の通称である。(ウィキペディア)


「天下一家の会事件」とは、内村健一設立した研究所が、1973年に「ねずみ講」のシステムを構築し、日本全国に会員を「増殖」させて起こした詐欺事件。内村は、疑惑をもたれながら、1980年に第12回参議院議員通常選挙 全国区に無所属で出馬して落選し、本人が破産宣告後、1983年に有罪確定し、収監されるまで続いた事件。


私が両者を同時に想起するのは、この「天下一家の会」と内村に有罪が確定した翌年の1984年(昭和 59年)に、麻原彰晃 (松本智津夫)が後に「オウム真理教」となるヨーガ 道場「オウムの会」(その後「オウム神仙の会」と改称)を始めています。


そして、その内村健一が逝去した1995年にオウム真理教が「地下鉄サリン事件」を起こしたのです。何か因縁めいたものを感じざるを得ません。「天下一家の会事件」は「詐欺」事件として収束しましたが、オウム真理教はその「詐欺」事件を、国家への無差別テロ事件にまで発展させてしまいました。


「天下一家の会」も「オウム真理教」も基はと言えば、マルチ商法で資金を得ていることに変わりはありません。前者は「ねずみ講」式の利回りと組織構築、後者は「浄土」を商材にした個人財産没収、更には無報酬労働の提供を課しました。


20年前に起きたことは、国内初の神経ガスによる無差別テロ事件。20年前に終わったことは、国内における安全神話。しかしながら、「利殖」を餌にした詐欺事件ばかりではなく、「肉親の情」に付け込む詐欺事件は収束の光が見えず、「心」を弄ぶ新興宗教集団や詐欺集団は引きもきらずの様相を呈しています。


内村健一も麻原彰晃も私も同郷人。この二人の「先輩」について、同情する一縷の余地はありませんし、この二人の因縁について、同郷人としてこの負の連鎖が断たれることを願って止みません。また、高度成長期の負の遺産の象徴のような「水俣病問題」を含めた大きな礎として、同郷人として背負って行かねばならいと覚悟する次第です。


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