THE NARROW MARGIN

刑事のウォルターは、マフィア幹部の未亡人を列車でシカゴ⇒ロスと護送する。
ウォルターの顔はばれており、敵が襲撃の機会を狙っている。
偶然アンという女性と知り合いになり、話すようになる。敵はアンを未亡人と認識しているようである。アンも危険にさらされる。


映画関連目次(闇雲映画館)

製作:1952年、脚本:アール・フェルトン、監督:リチャード・フライシャー


■ はじめに

◆ 登場人物(キャスト)
 フランキー・ニール(-) - シカゴのマフィア、本作時点では死亡
 ニール夫人(マリー・ウィンザー) - フランキーの妻
 ウォルター・ブラウン(チャールズ・マッグロー) - 刑事
 ガス・フォーブス(ドン・ベドー) - 刑事、最初に殺される
 アン・シンクレア(ジャクリーン・ホワイト)
 トニー・シンクレア(ゴードン・ゲバート)
 ケンプ(?)
 ヨースト(?)
 デンセル(?)
 サム・ジェニングス(?)

「チャールズ・マックグロー」と書いているのが多いが「チャールズ・マッグロー」ではないだろうか?

◆ 状況説明

邦題はなかなか露骨。原題は狭い列車の中での攻防を表現したものだろう。

裁判の証人をシカゴからロスアンジェルスまで列車で送っていく。証人はマフィア幹部フランキー・ニールの未亡人。裁判で証言するだけではなく、フランキーの贈賄リストも持っていく。注、字幕では「収賄リスト」となっているが、ニールの立場から言えば「贈賄リスト」ではないのか?英語では「pay-off list」なので贈賄の方が正しそう。

敵から狙われる可能性があるので、しっかりと護送しなければならない。

最初にニール夫人を迎えに行った時に敵に襲われて同僚のガスが射殺される。この時にウォルターの顔が相手にバレる。しかしニール夫人の顔はバレていない。

列車は、ラフンタ(コロラド州)やアルバカーキ(ニューメキシコ州)などを経由して走っていく。ウォルターとニール夫人は、10号車のA,Bの個室、AとBは合わせて一室となっており外の通路への共通の扉がある。どちらがA,Bかは説明されないが、ニール夫人のいる方はもう一つの部屋に移って、そこから外に出る。

ニール夫人がわりと反抗的で協力しないので苦労する。

ウォルターの顔がバレているので、常に監視されている。またやたら太った乗客がいて、怪しい行動をしている。

ある少年(トニー)がウォルターが拳銃を持っているのを発見する。この少年が「拳銃を持っている、怪しいやつだ」と騒ぎまわる。後に、この少年に「極秘の仕事をしている」と(実は本当のことを)打ち明けて、この少年の信頼を得る。

トニーの母親(アン・シンクレア)と子守が乗っている。アンと機会があって話す。(意図的ではないが)敵の眼をくらますためにアンを利用する形となる。敵はアンを見張る。
 


■ あらすじ

◆ 出発

ニール夫人とタクシーで駅に向かうが、ウォルターは駅の手前で降りてニール夫人だけが先に駅に向かう。ウォルターの顔がバレているからである。ニール夫人には部屋に入ってじっとしているように言う。

ウォルターは駅に着いた。プラットフォームに入り様子をうかがう。敵(ケンプ)もウォルターを見張っている。荷物を運んでいるカートに隠れて列車に乗り込んだが、すぐにケンプに発見された。部屋も分かってしまった。

発車後にケンプが「荷物がこっちに来てないか?」と来る。ニール夫人がいる部屋を「空き室なので荷物はない」と開けるのを拒否する。

◆ 食堂車

ウォルターは食堂車に向かっていくがケンプと会って視線が交錯する。食堂車で女性(アン・シンクレア)と同じテーブルに座る。アンが間違ってコップの水をこぼしてウォルターのスボンが濡れて、それをきっかけに親しくなる。

この間にケンプが部屋に入り込んで拳銃を構えながら中を調べる。二部屋とも調べる。この時はニール夫人はトイレにいて難を免れる。車掌が来て注意する。

ウォルターは部屋に戻ろうとするが、ケンプの姿が見えたので他の部屋に入って隠れる。トニーがいて警戒されるが、部屋を間違えたと言い訳する。

◆ ヨースト

部屋に男が訪ねてきた。「ヴィンセント・ヨースト」と自己紹介した後に、ストレートに「リストをくれ」「金が欲しくないか。25000~30000ドルを出す」。ヨーストは紙幣をウォルターのポケットに突っ込むが、それを突き返す。

ヨーストは割とくどくどウォルターを落とそうとする。ウォルターはあまり話さない。隣の部屋でニール夫人が、ドアに耳をくっつけて聞いている。

ヨーストは「気が変わったらいつでも来い。しかし我々か夫人を殺したら、その話はない」と立ち去る。

ウォルターはニール夫人に「朝食を持ってくる」と言って部屋を出る。途中でケンプが席から出るのを見かけたので、ケンプの席で上着を探る。

ポケットにあった書類を見る。「女は社内にいる。アルバカーキ到着前に動け」「デンセルが接触する」。読んだ後にポケットに戻した。注、ケンプは個室ではなく、座席とベッドが通路に直結している。

その後ケンプにすれ違ったので「荷物は?」「まだ探してる」。

◆ 再び食堂車

アンがいたので同じ席に座る。ケンプと太った男が少し離れた同じ席に座っている。アンとウォルターを見張るように、こちらを見ている。ウォルターも用心して、彼らをちらちら見る。

太った男が立って二人に話にきた。アンに「よく合うね」。そしてウォルターに「サム・ジェニングス」と自己紹介して「話したいことがある」。

「空き部屋を譲りたがっていると聞いた」「断る」「なぜ?」「答える義務はない」と押し問答になるが「車掌の意見を聞いてみる」と立ち去る。

ウォルターも席を立つが、依然としてケンプが見張っている。

ウォルターが立ち去った後、アンのところにトニーが来て「(ウォルターのことを)泥棒。拳銃を持ってる」と告げ口。ケンプが見ている。アンがケンプに気が付いて「不審人物ね」という顔をする。

部屋に車掌とジェニングスが来て、また部屋の件で要求する。ウォルターが拒否する。車掌は「代金を払えば使わないのも自由」と言うとジェニングスは諦める。。

◆ ラフンタ

ラフンタに停車した。ケンプが下りる。外から車内を偵察している。

ボーイが部屋に頼んでいた朝食を持ってくる。ウォルターは受け取ろうとするが、アンが通りかかると、ウォルターは「頼んでない」と嘘をつく。アンには「午前中は食べない」と先ほど言ったからで、それを受け取ると室内に、別の人間がいることがばれるから。

アンは買い物をするために降りる。ウォルターもニール夫人のためのサンドイッチと電報を打つために下車する。

ヨーストが再度ウォルターに裏切りを持ち掛けるが断る。サンドイッチを買った後に電報を打つ。内容はケンプとヨーストについての調査依頼。しかしヨーストは横線を引いて取り消したうえで原稿を渡す。注、理由は明示されてないが、ヨーストはラフンタで下車する。それを察知したためと思われる。

ケンプには電報が来る。「相手の女性の偽名はシンクレア。アルバカーキ前で実行に移せ」。

部屋に戻ってサンドイッチを渡すと、自分の立場もわきまえずに夫人は大きく音楽をかけている。そして「敵はアンを私と思っている」というので「あんたは最悪だ」「(アンを身代わりにしていることで、)ちゃんと護衛の仕事をしている」と口論。

◆ 格闘

ラフンタを発車する。休憩用の車両があり、座席が車両の両側に向かい合わせに並んでいる。一方にアンが座り、反対側にケンプが座っている。

アンが立ち上がって車両から出ていく。ケンプも出ていく。ウォルターがケンプを後ろから襲って格闘となる。ケンプを捕えて追及する。

「太った男は誰だ?」「知らない」。さらに殴って追及すると「リストと子連れの女が目的。シンクレアと名乗っている」「彼女は無関係だ」。そして「彼女を生かす方法を考えろ。リストを渡せば誰も傷つかない」と取引を持ち掛ける。ウォルターは拒否。ケンプはデンセルの件については白を切る。

「逮捕する」と言っていると車掌とジェニングスがくる。身分証を出す。「鉄道特別捜査官」。ジェニングスがケンプを連れていく。

ジェニングスはケンプを連行していくが、途中で別の男(デンセル)に拳銃をつけつけられる。逆に捕らえられる。

◆ ニール夫人とアン・シンクレアの正体

ニール夫人はウォルターに「リストを渡すんでしょ。彼らと取引しないの。一生安泰よ」などと相変わらず勝手なことを言っている。車掌が「ジェニングスの姿が見えない」と知らせてくる。

ウォルターはアンに会いに行く。その後にケンプとデンセルが(ウォルターとニール夫人の)部屋に入ってくる。ニール夫人が襲われる。夫人がバッグから拳銃を出そうとする。しかし射殺される。二人がバッグを確認すると、ニール夫人はシカゴの警官。

ウォルターはアンに会って「無関係な人間(アン)が巻き込まれている」「君が誰かと勘違いされている」とはっきりとは言わずに警告する。

「事情を全部聞かせて」と言うので「フランキー・ニールの妻を護送中」とはっきりと事情を話すと「ニール夫人は私」と驚くべきことを口にする。そして「リストはすでに地方検事に送ってある」。

車掌がドアをノック。「ジェニングスが見つかった」と二人でアンの部屋を出ていく。

◆ ラスト

最初に注。アン(本当はニール夫人)一行の部屋とウォルターとニール夫人(本当はシカゴの警官)の部屋は構造が違う。二室が一組になっていて境界にドアがあるのは同じ。しかしアンの部屋は両方の部屋がドアで通路に通じている。

デンセルは、アンの部屋の前に立つ。部屋に鍵がかかっている。拳銃で撃ち壊すのは音がするので躊躇。もう一つのドアをノックする。トニーがウォルターだと誤解してドアを開ける。注、デンセルがアンを狙うのは、(最初は誤解ではあったが)誤解ではなく、ラフンタで電報を受け取り、さらにニール夫人がシカゴの警官であることを確認したから。

デンセルが乱入。トニーに拳銃を突き付けて脅して、もう一つの部屋にいるアンに境界のドアを開けさせる。アンに拳銃を突きつけて、リストを渡すように要求する。注、本当はリストはすでに送付済みでアンはリストを持ってはいない。

ウォルターが駆けつけて、トニーの部屋に入る。アンは拳銃を突き付けられており、また境界のドアは鍵がかかっているので、突入できないという状況。

この時は夜で、さらに停車している。注、緊急停止用のヒモをケンプが引っ張った。

ここで向かいの線路に列車が入ってきて止まった。当列車の窓と向かいの列車の窓が同じ位置にある。そして向かいの列車の部屋はライトが消えている。注、向かいの列車が止まったのは、こちらが緊急停止したから(たぶん)。

その窓にもう一つの部屋の様子が反射して映っている。アンが拳銃を突き付けられているのが見える。

ウォルターはアンに「アン、君を助けられない。諦めてリストを渡せ。戸棚にあるだろ」と叫ぶ。アンはウォルターの意図を理解した(はず)。デンセルが戸棚に寄って開けようとする。それをウォルターは反射で確認する。

ウォルターはドアを拳銃で撃って突入した。アンは部屋の隅に避難。ウォルターはデンセルを射殺。この状況を見たケンプは逃走する。しかし列車から降りたところで逮捕される。
 


■ 蛇足

ストーリーには影響しないので紹介しなかったが、敵の自動車が列車と並走している。最後にケンプは逃げ出して、この自動車に乗る。しかし自動車がパトカーに挟まれて逮捕される。

地方検事。アン(本当はニール夫人)は「リストはすでに地方検事に送付済み」と言う。地方検事は州単位で任命される。連邦政府から任命される連邦地方検事と選挙で選ばれる州地方検事がある。州地方検事は1~4人で州単位なので、かなりの権力を持っている。本作の場合は州地方検事だと思われる。

 


■ 出演作

マリー・ウィンザー
(1948)悪の力/苦い報酬/Force of Evil
(1956)現金に体を張れ/The Killing
(1952)その女を殺せ/THE NARROW MARGIN
(1949)地獄の銃火/Hell Fire
(1953)月のキャットウーマン/Cat-Women of the Moonton
(1956)女囚大脱走/SWAMP WOMEN
(1952)マンモスの逆襲/The Jungle
(1952)アウトローの女・女強盗団の酒場/Outlaw Women
(1950)贋札造りのリル/Dakota Lil
(1963)火星からの侵略/The Day Mars Invaded Earth
(1955)女性美術商殺人事件/No man's woman
(1957)リゾート連続殺人事件/The Girl In Black Stockings
(1955)二挺拳銃の女/Two-Gun Lady
(1954)ハワイ犯罪地図/Hell's Half Acre
(1950)フレンチー:殺された父親の仇/FRENCHIE
(1950)石油採掘権と遺言書と殺人事件/Double Deal
(1949)バシュフル盆地のブロンド美人/The Beautiful Blonde from Bashful Bend
(1953)眠らない町/City That Never Sleeps